日が落ちて海が少し荒れて来た中、守たちの帰りを待つ晴風では
「漂流物漁っている場合じゃなくなってきたねぇ~」
「うぇ~気持ち悪い~」
昼間からずっと漂流物を漁っていた松永と姫路であったが、荒れてきた海の中で、下を向いて作業をしていた為か船酔いを催した様子。
そして彼女達の周りには沢山の漂流物というよりごみが落ちていた
そして艦橋では
「そろそろ艦長達が戻ってくる時間だよね・・・・」
「此処で合流にしたんですけどね・・・・・・」
買い出しに行った守と明乃達の帰りが遅いのに2人は、気になっていた。そんな中ましろは
「(守・・・・・ちゃんと帰ってきてくれるよな?)」
再会したばかりの弟がまたいなくなってしまうのではと不安に思っていた
「あの・・・・副長?」
「はっ!・・・・こほん!・・・・艦長はまだか!」
「ひっ!?」
鈴が心配そうにましろに訊くとましろはほかの乗員が不安にならないように、咳ばらいをし、そして帰るのが遅い岬のことを言い。驚いた鈴は軽い悲鳴を上げてしまう
「まだですね・・・」
「何、呑気に買い物してるんだ!」
ましろは、余りに帰りが遅い守と明乃達に呆れ果てる。
そんな時、五十六が艦橋に突然やって来て、
「ん?・・・・ひっ!」
ましろは、何かと思い五十六の方を向くと突然、ビックリな顔をする。何故なら、五十六がある物を口の咥えていたのだ。
それは、昼間、通販会社の箱から逃げたあのマウスだった。
五十六はマウスを生け捕りにして、まるで艦橋の皆に自慢するかの様に見せた。
「・・・・かわ・・・・いい・・・・」
立石は、五十六が生け捕りにしたマウスを見て、可愛いと目をキラキラさせ、五十六が床に置いたマウスを手に取る。
すると五十六は自分の獲物を横取りするなと言いたいのか、飛びかかろうとするが
「こら、こら、落ち着け、五十六。ブレイク!ブレイク!」
西崎に抱えられ動きを封じられる。そんな中。捕らえられてたマウスは自らを手のひらに乗せてくれた立石の頬に自らの頬を寄せる。
「人懐っこいですね・・・」
幸子はマウスを見て和む。
「生き物は持ち込み禁止だろ!」
「飼い主が見つかるまで預かっておきましょうか?」
「うっ・・・・」
幸子が飼い主が見つかるまで、自分が責任を持って、預かるというとましろは何も言えなかった。
ましろと幸子がこのハムスターの様な生物について話している時、展望指揮所で見張りをしていたマチコが水平線から此方に接近して来る艦船を発見した。
「間宮、明石および護衛の航洋艦二隻!右60度!!距離200此方に向かう!!」
「また攻撃されちゃうの~!?」
「どうする?撃っちゃう?」
「いやな予感が的中した・・・・・」
皆が不安そうに言い合う中、立石の手にいたハムスターのような生物もその光景を見ていた。だが、その目は先ほどの愛嬌がなく怪しく目が光っていた。やがて、間宮、明石、浜風、舞風は探照灯と照らしながら晴風の左右を固める。
甲板に居た砲術委員の武田と小笠原も松永と共に不安そうに周囲を見渡す。
「ドマヌケ共が何をやっている!買い出し組はどうした!?」
「まだ戻ってきていません!」
「なにっ!?」
ミーナが幸子にそう言っている間に間宮、明石、浜風、舞風は探照灯と照らしながら二手に分かれ、更に美甘と媛萌、美波が乗るスキッパー2艇と守、明乃と平賀を乗せたブルーマーメイドの哨戒艇が晴風へと向かっていた
「艦長達が戻ってきました!ブルーマーメイドの哨戒艇もいます!」
「ブルーマーメイドって私達を捕まえに来たの~!?」
艦船に包囲されさらに後ろからはブルーマーメイドまで現れた。晴風の艦橋の不安と緊張がピークに達したその時、
「カレーなんか食ってる場合じゃねぇぇーー!!」
突如、艦橋に怒声が響いた。皆が声のする方に振り替えるとそこには目が赤く光り、獣のように唸り、いつもおとなしい雰囲気とはまるっきり違う立石の姿があった
「た、立石さん?」
「なんだ?カレーって‥‥」
幸子は普段の立石からは考えられない声を出した彼女に困惑し、ましろは今日の夕飯のメニューでもないカレーの事を口走った立石に困惑する。
「それより逃げないと‥‥」
鈴は何とかしてこの場から逃げようと言うが、
「何言ってんだ!逃げてたまるか!攻撃だー!!」
立石は攻撃をしようと言う。その好戦的な態度は余りにも普段の立石らしからぬ態度であった。
「おっ、撃つか?撃つのか?」
そんな立石の態度に疑問を感じつつ撃てるかもしれないと西崎は少し期待した目をする。
「止めろ、戦闘禁止だ!!」
ましろは、絶対に攻撃するなと言うが
「黙れ!!ブラコン!!」
「ブ、ブラッ!?」
完全に正気を失っている志摩は、全く聞く耳を持たなかった。ましろに至っては立石にブラコンと言われ若干ショックを受ける
「『もう逃げるのは嫌!』『そうよね、逃げちゃ駄目!私、戦う!』」
「良いから、止めろ!!」
幸子がまた一人芝居を始める中、完全に正気を失っている立石をましろと西崎が取り押さえる
「離せぇ・・・・・・」
「大人しくしろ・・・!」
2人に抑えられ立石は、暴れ出す。そして・・・
「「うわっ!?」」
立石の物凄い力にましろと西崎は、壁に叩き付けられる。
「うっ!?・・・・お、落ち着け!」
ミーナは、立石に落ち付けと言うが
「!!!!!!」
2人を振り払った立石は、全く聞かず獣のような唸り声をあげ、そして獣のような姿勢を取り艦橋を飛び出す。それをミーナたちは追いかけるのであった
艦橋を出た立石は獣のようにデッキから魚雷発射官から更に飛び移って行く。
『あっ・・・・・・』
甲板で様子を伺っていた光、美千留、理都子、果代子は、飛び移る立石を見て、何かと思い立石飛び移る方向を見る
そして彼女は九六式25ミリ単装機銃の元にたどり着き、そして
「明石!間宮!お前らにやられるタマじゃねーんだこっちはーーーー!!!」
銃口の照準を明石へと向ける。
「本当に撃つ気だ!?」
西崎はてっきり立石が冗談で言っているのかと思ったが、どうやら立石は本気の様で、引き金に指をかけると、それを引いた。。そして銃口から25ミリ機銃弾が四方八方へと発射される。
機銃の乱射にデッキに居たましろと芽衣、幸子、鈴は、床に伏せ更にそれを見た光、美千留、理都子、果代子は、怯える。
だが、15発しかない25ミリ機関銃はすぐに弾切れになる
「ああ、撃っちゃたね!」
「何て事をしたんだ!・・・・」
ましろの中にこれで本当に自分達は反逆者になってしまったと言う絶望感が沸きあがる
「タ・・・タマちゃん?」
「守君!?これはどういうこと!?」
哨戒艇にいる平賀はどうことなのか守に訊くと
「恐らく、彼女は気が動転してパニック症状を起こしていると思うな・・・・このままじゃ怪我人が出る。俺が止めます」
「とめるって・・・どうやって?」
「こうやってです!!」
平賀が言い終わるや否や。守は数歩下がると助走をつけ哨戒艇からジャンプする。そして立石のいる機銃座へと見事着地する
「う・・・うそ?あそこまで数十メートルもあるのに・・・」
平賀は数十メートル離れている距離から飛び移った守の身体能力に驚いた
「はあぁぁ…今のはちょっと怖かったな・・・・」
無事に着地で来たことに安心する守。あのジャンプで機銃座につけるかは彼も自信がなかったが何とか飛べたことに安堵した。
「ううう~~~!!!」
守は機銃弾全弾を討ち尽くした立石が自分に向かて威嚇しているのを見る
「(どうしたんだ立石さん。いつもと違うな?)立石さん。落ち着け・・・・落ち着くんだ。彼らは敵じゃない。おとなしくするんだ」
「うるさい!!邪魔するなら!!」
そう言い立石は守に襲い掛かろうとするが・・・・
「落ち着けと言っている!立石砲術長!!」
「っ!?」
小柄な守の大きな怒声に思わず動きが止まる。守は15歳とは言え数々の戦地を転々とし幾度の修羅場を潜り抜けたエースでありベテランの軍人。
その気迫に彼女は思わずビビってしまうが・・・
「う・・・うがぁーーー!!!」
「いでっ!!!」
すぐさま守に襲い掛かり、彼の腕に噛みつく。そして噛みついた腕から血が滲み始める
「守!!」
その様子を見たましろはそう叫ぶと、守は
「はっ!そんなもんかよ。痛くもないぞ!!」
「っ!?」
腕に噛みついても微動だにしない(若干痛がったが)守に立石が驚く。すると
「このドアホウのドマヌケが~!」
追いついてきたミーナが立石を守るから引き剝がし掴むと海へと投げ込んだ。
しかし、運悪く立石が落ちたところは、冷たい夜の海だった。
「「あっ!?」」
真下が海なのに気づき二人はしまったという顔をするがもう時すでに遅く、海面から水柱が上がり立石は海に落ちる
「タマちゃーん!!」
「立石さーん!!」
甲板からはクラスメイト達が海に投げ飛ばされた立石の安否を心配する。
「っ!?」
立石が海へと投げられるのを見た守は慌てて機銃座から飛び降り海へと飛び込み、海中へ沈む立石を拾い上げた。
「ぷはっ!!立石さん、大丈夫か!?」
「う、うぃ‥‥」
「よしっ!おーい大丈夫だ!ロープくれ!!」
「う、うん!マー君!捕まって!!」
縄が着いた浮き輪が投げられ、守は立石と共にそれに捕まり、船体から降ろされた縄梯子で晴風の甲板へと戻った。
甲板には艦橋メンバーも降りて来て、立石を海へ投げ飛ばしてしまったミーナは立石に抱き付き、
「よくぞド無事で~」
「それを言うならご無事だって‥‥」
間違った日本語で立石が無事だった事に安堵し、西崎は冷静にミーナの間違った日本語にツッコミをいれる。
「あら?あなたそんな所にいたの?」
幸子は立石のスカートのポケットに入っていたあのハムスターの様な生物に気づく。
ハムスターの様な生物は直ぐに助けられたとは言え、一時的に海水に浸かったせいかぐったりとしていた。
「守!大丈夫か!?噛まれた腕は?痛むか?」
「俺のことは大丈夫だよ姉さん。こんな傷。ナチ公の爆撃や対空射撃に比べれば何でもないって」
「何を言っているんだお前は?」
ましろはそう言うが守が大丈夫という言葉に少し安心する
「タマちゃん大丈夫・・・?」
明乃が立石に怪我がないかを尋ねる。
「うぃ!」
「あれ、いつもの調子に戻ってる?」
立石は、先程の様子と違い何時ものおとなしい無口な状態に戻っていた。
「聞いて!・・補給艦の皆は、助けに来てくれたんだよ・・・!!」
「岬艦長の言う通り、明石の旗信号を見てくれ姉さん」
「え?」
二人の言葉にましろは、明石のマストを向くと、マストには、救助に来たという国際信号用の旗が掲げられ、その旗は夜風になびいていたのだった
守の過去編を書く必要がありますか?
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是非してほしい
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いいえ
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どちらでもいい