ましろを乗せ、守が操縦する二式水上戦闘機はしばらく飛んだあと、徐々に晴風のもとに降下していった。
そして二式水戦が晴風の傍につくとキャノピーが開き、守が出て来て翼の上に乗り後方のキャノピーを開け、後方の席に座っていたましろに手を差し伸べ
「姉さん。出れる?」
「ああ、ありがとう守」
守の手を取り席を立ち翼に降りるましろ。そして二人が晴風に乗った瞬間・・・・
「すごいよ!!マー君!本当に飛んだよ!!しかもすごく速かったよ!」
「ねえ!副長!空を飛んだ感じはどうだったの!?」
と、みんなワイワイと集まって二人に詰め寄った
「シロちゃん!飛んでみてどうだった?」
「どうっと言われると・・・・言葉にできないほどすごかったですね」
明乃の質問にましろはそう答えた。実際のところ初めて飛んだときは驚きと感動が混じってとても言葉に表せないのは事実だった。だからましろは苦笑でそう答えた。
「言葉にできない!」
「そんなにすごいんだ~」
「空の世界ってどんな感じだろうな~」
と、みんな空を飛んだときどんなものか想像するが、空を飛ぶ乗り物がない世界の住人ではやはり想像できなかった。すると瑠奈が
「あ、でもマー君に乗せてもらえばわかるかも!」
「あっ!そうか!!」
瑠奈の言葉に和住そう言うとみんなは守の方を向いて
「マー君!次は私が乗りたい!」
「私も私も!!」
「ワシも乗りたいぞ!」
「私も乗りたいぞな!」
と、空を飛んでみたい、二式水戦に乗ってみたいという子たちが守にそう言うと守は
「分かりまし。わかりました。皆さん落ち着いてください。順番で乗せますので・・・・それで次に乗りたい方は誰ですか?」
守は次に誰が乗りたいのか訊くと
「「「「はいっ!!」」」」
とその場にいた全員が手を上げた。それは守も大体予想は突いていたのだが思わず苦笑してしまった。すると・・・・
『艦長!!学校から緊急電です!!』
艦内に残っていた鶫が学校からの緊急伝をキャッチし、それを放送で明乃たちに知らせた
「何事だ!?」
「総員、直ちに配置について!!」
何事かと思い、明乃は、直ちに総員配置の号令を出す。歓迎会から一転、生徒達は、急いで配置に着く。そして二式水戦でのフライトも中止となり二式水戦はクレーンで後甲板にあげられる。そして守はドライバーを持ち二式水戦の翼にある固定ボルトを回し翼を折りたたませた。
通常の二式水戦はこんなことをすることができないが、守の乗る二式水上戦闘機は守の専属整備士であり守の所属していた部隊の整備長だったナツオ整備長によって潜水艦にも搭載できるように翼が特殊攻撃機晴嵐のように折りたためるように改造されていたのだ。
「いったい何事だ?穏やかじゃないな?」
守は二式水戦の翼を折りたたみ始めながら、そう呟き、折り畳みが終わると二式水戦に防水布をかぶせそれを固定した後、艦橋へと走り出すのだった
「電文の内容は?」
一方、艦橋ではましろが艦内電話で鶫に学校からの電文内容を尋ねる。
『北緯19度41分東経145度0分地点で武蔵を捜索していた東舞校教員艦との連絡が途絶えた・・・周辺で最も近い位置にある晴風は現地に向かい状況を報告せよ・・・なお戦闘は禁止。自らの安全を最優先する事・・・・以上』
「武蔵がこの近くに‥‥」
明乃は、武蔵の方を聞いて驚く。武蔵の艦長であり親友であるもえかの通信を聞いて以来、探していた武蔵がこんな近くに居たとは予想外だったからだ。
しかも横須賀への帰還命令から武蔵が居る海域へと向かう様、命令が変更された。
「艦長…分かってはいますが命令はあくまで状況報告ですよ?」
ましろは、あくまで状況を報告するのみだと明乃に再認識させる。ましろは明乃の気持ちがよくわかっていた。もし武蔵に守がいたらきっと同じ気持ちになっていただろう・・・・だが、今は任務が優先と考えた。そのため少し心苦しかったが、明乃にそう言う
「そうだね・・・・・出航用意!錨を上げ!!・・・両舷前進強速ヨーソロー!!見張りを厳に・・・」
明乃の指示により晴風は、急ぎ武蔵が居る海域へと向かう。
4月15日17:00
アスンシオン島沖
「増援の8隻到着!・・陣形、整いました!!」
あれから、武蔵と東舞鶴男子海洋学校の教員艦隊の戦闘は、熾烈さをきし、流石の教員艦隊も不利だと認識し、直ぐに増援を呼んだ。
こうして、教員艦隊は、増援8隻を得て、残存艦6隻合わせて、その数14隻になり、武蔵を取り囲む様に陣形を整える。
だが、武蔵の砲撃の前に全く歯が立たず苦戦、晴風が到着した頃には、戦闘は、膠着状態になっていた。
「凄い!?‥‥凄すぎます!?‥‥」
艦橋で戦闘状態を見た幸子が震える声で目の前の光景の感想を口にした。
それは他のみんなも同じで両艦の戦闘を見て、艦橋に居る者は、息を詰める。
「夾叉も無しに行き成り命中させる何て‥‥あんなのに狙われたら‥‥」
芽衣が夾叉もしないで目標に命中させる武蔵の砲術の凄さに驚いていた。
「操艦もあんなに大きな艦があっという間に針路を変えている‥‥」
鈴も武蔵の操艦能力を褒める。やはり、横須賀女子海洋学校の中でも成績優秀者を乗せているだけの事はある。
「如何して!?‥‥何でこんな事に‥‥」
明乃は、何故、こんな事になっているのか驚愕しながら、双眼鏡を見る。そして守も同じくその戦闘を見ていた
「あれが・・・・武蔵か」
そう守はつぶやく。戦艦武蔵、大和型二番艦にて、守のいた世界では1944年のレイテ沖海戦で爆沈している。そして第三次大戦でも大和型戦艦をベースにした戦艦はあるが、今目の前にあるのは昭和に建造されたいわば初代武蔵だ。
初代武蔵を見て守は少し驚きと興奮を覚えた。だが、やはり航空機のない世界だからであろうか兵装は両減に15センチ三連装砲搭載の就役時の姿であった。
守たちが武蔵を見ていると・・・・
「モカちゃん!!」
いきなり明乃が声を上げた。その声に守とましろが声を上げた明乃を見る。そして
「シロちゃん・・・悪いけど・・・後は任せて良い?・・・私・・・・行ってくる。」
突然、明乃は、ましろに艦を任せ、何処かへ行くと言い出した
「行くって何所にだ!?」
行き成り何所に行くのか問うましろ。
「武蔵のところへ・・・・・・・」
「・・・ば、馬鹿を言うな!・・・状況は、既に把握した確認した報告が最優先だ…」
ましろは、武蔵に向かう明乃を止めようとする。それもそうだ武蔵のいるところは戦闘空域、下手に行けば砲撃に巻き込まれる危険性があった。だが、明乃は、ましろの言葉を聞かずに行こうとする。それに対して、思わずましろは、明乃の肩を掴み
「い、いい加減にしろ!!・・・毎度毎度、自分の艦をほったらかしにして飛び出す艦長が何所の世界に居る!!・・・海の仲間は家族じゃないのか!!・・・この艦の仲間は、家族じゃないのか!!・・・如何なんだ答えろ!!」
遂に勝手な行動を取る明乃に切れ、明乃に怒鳴る。ちょうど艦内放送の無線が入ってて、ましろの怒鳴り声は、艦に響き渡ってしまう。それを聞いた生徒は、唖然としながら聞く。
そして守も姉であるましろの言葉を聞いてただ黙っていた
「・・・此処は・・・守るべき家じゃないのか?」
ましろは、必死に止める。ましろ自身も明乃の気持ちはよくわかっているつもりだった。もし守が武蔵にいたらきっと同じことをしていたかもしれない・・・・だが、今の自分は副長。そして明乃は艦長。晴風のトップだ。トップがいきなり仲間を置いて飛び出す。それは他の仲間にも不安が出るし、何より指揮が混乱する行為だ。だからましろは明乃にそのことを言うのだが、明乃はゆっくりと後ずさり・・・・
「モカちゃんが…私の幼馴染があそこに居るの・・・・大事な親友なの・・・・」
そう言った瞬間、艦橋は静まり変える。
「・・・・・ごめん、シロちゃん・・・晴風は速やかに武蔵の射程外に出て!!」
そう言うと明乃は艦橋を飛び出ていくのだった。
「・・・岬さん」
鈴が小さく呟き。艦橋の皆が飛び出した明乃に注目していると守は
「はぁ・・・・全くしょうがないな!」
「ま、守!?どこに行くんだ!」
明乃を追い艦橋を出ようとする守にましろは肩を掴みそう訊くと
「何って艦長さんを追いかけるんですよ」
「馬鹿を言うな!お前まで行ってどうする!お前にもしも何かあったら!!」
「だからと言って彼女一人だけ行かせるわけにはいかないだろ姉さん。それに武蔵に何が起きているか近くで確認して報告する必要があるしな。」
「だが、もし流れ弾にでも当たったら・・・・」
ましろは心配そうに守にそう言うと守は
「大丈夫だよ。こう見えて俺は戦闘の専門家だ。伊達に向こうの世界で3年以上太平洋の…ソロモン諸島で戦争をしてきたわけじゃないよ」
「・・・・え?戦争って?どういう・・・」
「その件は落ち着いたら話すよ・・・・・じゃあ、行ってくる」
そう言うと守は明乃の後を追うかの様に艦橋を飛び出して行った。
そして前部甲板で武蔵へ向かおうとスキッパーに飛び乗ろうとする明乃に守がやってきた
「明乃艦長!」
「マー君!?」
「艦長。今、自分が何をしようとしているのかわかっていますか?どれだけ危険な行為をしようとしているのかわかっていますか?」
守の言葉に明乃は
「お願いマー君!行かせて!私はいかなきゃいけないの!!私の親友が武蔵にいるの!」
と必死にそう言うが守は
「行ってどうするんですか?それにどうやって武蔵に乗り込む気ですか?」
「それは・・・・・」
守の言葉に明乃は黙る。確かにスキッパーで行っても水面から武蔵の甲板まで高すぎるため乗り込むことは出来ない。いや、それ以前に先ほどましろが言ったように艦長が自分の船を離れるのは一番やってはいけないことを守は明乃に注意しようとしたのだが・・・・
「でも・・・・私・・・行きたいの!行って確かめたいの!だからお願い!」
と必死に言う明乃。こういう人物は絶対に引かない。守は元の世界で似たような人物と何度もあっていた。そのためか守は軽く呆れたようにため息をつき・・・・
「はぁ…そう言う頑固なところは、姉さんか杉さんだけだと思っていましたがここにもいましたか・・・・」
明乃の必死なお願いに根負けしたのか少し困ったように頭を掻く守
「え?」
「明乃艦長の気持ちはわかりました・・・・・艦長。発光信号は出来ますか?」
「え?・・・・うん」
明乃は頷くと、守は明乃にあるものを渡した。それは飛行機乗りが使用する携帯式の回光通信機だった
「そうですか・・・じゃあ、俺が運転するので、艦長はそれで艦橋にいる武蔵の艦長と連絡してください。武蔵に何が起きたのか艦橋にいる武蔵の艦長と連絡してください。ただし俺が出来るのはそれまでですよ」
と、守がそう言う。自分ができるのは明乃を武蔵の近くまで連れて行くこと。だがそれは武蔵の艦長と発光信号で何が起きたか確認するため、もしそれが出来なければすぐに引き返すことを守は明乃に提案した
「マー君・・・・いいの?」
「行くんでしょ?友達のために。ただしこういう無茶を引き受けるのは今回だけですよ」
「あ・・・・・・うん!」
守の言葉に明乃は頷くとスキッパーの操縦席に守が、そして後ろに明乃が座り、守の運転の元、2人は、武蔵へと向かうのだった