突如現れた機雷により動きを封じられた晴風。そして夜が明けると、朝靄で周辺海域はまるで雲海の様な光景となった。
「うわぁ・・・・綺麗・・・!!」
「まるで雲の上見たい・・・!!」
「凄いね・・・」
「でも、周りに機雷が有るんだよね・・・」
皆が景色に浮かれている頃、主計科の美甘、杵崎姉妹は、竹棒で機雷を晴風から遠ざける作業をしていた。
「つっついて大丈夫なの?」
美甘が長い竹棒で近くの機雷をつっついて晴風から遠ざける。
「古い触発機雷だから突起を押さなければ問題ないよ」
「全部爆破すればいいんじゃない?」
「霧が晴れないと周辺にどれだけあるかわからないし一つ爆発させてそれが連鎖したら怖いから‥‥」
「「大変だね~」」
そして、朝食の時間、食堂で朝食を食べながら艦橋メンバーは楓の測定結果を元に今後の方針を決めていた。
「夜のうちにソナーで周辺探索行いました。」
「範囲はどれくらい?」
「おそらく航路阻止を目的としているので比較的狭い範囲です。機雷の種類は不明ですが水深を考えると係維機雷・短係止機雷・沈底機雷だと思われます」
「‥‥」
楓が周辺海域の機雷について話している横でミーナは納豆を箸でつっついて顔を歪めていた。
「係維機雷って何?」
「ほらあれでしょ。ワイヤーで繋がってぶつかるとどかー!っていくやつ」
「進むには掃海する必要がありますね‥‥」
「掃海手順は?」
「説明させていただきます!」
幸子が自信満々の様子で機雷の掃海手順の説明に入る。
「まずは各掃海具を掃海柵で繋ぎ、展開器を水中に落とします。船が進むにつれ展開器は左右へ広がって沈降具が艦尾から引っ張られていき掃海柵に機雷が引っかかると、動いていって切断機でちょきんと切れるのです。後は浮いてきた機雷を機銃でどっかーん!」
「おお!!私の出番だ!早く撃たせて!」
「うぃ」
機銃掃射が出来ると知って西崎と立石は目を輝かせる。
「今は、周囲を機雷で囲まれている艦を動かすのは無理だ。」
確かにましろの言う通り通常の掃海手順では、晴風を動かさなきゃならないが、周囲を機雷で囲まれている現在、艦を動かす事は出来ない。
「き・・く・・ま・・い」
志摩も危険だと判断する。
「うん、本格的な掃海機具は、積んでないけど・・・出来る事はしないと・・・」
現在、晴風には、本格的な掃海機具は、積んでない。
それでも明乃は、出来る限りをする。
「人力での水中処分は、危険だ!!」
それに対して、ましろは、人力での水中処分は、危険だと反対すると、
「なら、スキッパーはどうかな?あれなら小回りが利くし?」
「ああ、確かにあれなら小さいので音響、水圧、磁器の各種の機雷に非掛かる可能性は、低いです」
「あ、ん、ぜ、ん・・・・・」
明乃の提案に幸子が同意し志摩も頷く、「スキッパー乗員には、通常装置に加えて重安全具の装着を・・」
2人の賛同を得て、明乃は、行き良いに自分が出ようとするが
「艦長は、出ないでくださいね!」
ましろがそれを止める。
「は・・・はい・・・」
ましろに行くなと言われて、明乃は縮こまる。
「それと守。お前もだ」
「ギクッ・・・・・」
ましろが守を見てそう言う。守は心情を読まれたのか
「な…なんのことかな姉さん?」
「お前のことだ。すぐに飛び出すに決まっている」
「あはは・・・・・」
幼いころから、無茶をしていた守のことを知っていたましろはそう釘をさすと守は思わず苦笑いしてしまった。実際に守はスキッパーに乗って掃海作業をしようと思っていたからだ
今は居候の身。ただ船でじっとしていられない守はいろんなところで人の仕事を取らない程度に作業の手伝いをし足りしていた。それを知っていたましろはきっと守も今回の掃海作業の手伝いをすると感じ、守が危ない目に合わないように釘を刺したのだ。
血は繋がってはいないが、ましろはそれほど守を大切に思っていたのだ
「‥‥うぇぇぇ~」
幸子が掃海手順の説明し、ミーティングが終わろうとしている中、ミーナは納豆のネバネバに吐き気を催していた。
「あれ?ミーナさん、納豆口に合わなかった?」
「いや、そういう事はないじょ」
「あっ、噛んだ」
「噛んだ」
「噛んだね」
「もしかして、ミーナさん、日本食が口に合わないんじゃないですか?」
お盆の上のほとんど手つかずの朝食と納豆を見てのミーナの反応から隣の席にいる守はミーナと日本食が相性が悪いのではないかと尋ねた。
「い、いや、そんな事は‥‥」
居候の身で贅沢は言えないと思ったのか、ミーナは否定するが、
「ここ最近、見ていたけど、ミーナさん、サラダと飲み物しか食べていないでしょう。パンの時はパンを食べていけど、米の時はほとんど残していたし‥‥」
守がそう訊くとミーナは
「・・・・・実はお主の言う通りなんじゃ‥‥実は日本料理が口に合わなくて‥‥」
ミーナは気まずそうに言う。
「ああ・・なるほど…特に納豆は外国の人にはなかなか受け入れられないからな・・・・・」
守はラバウルにいたころを思い出す。ラバウル基地では日本軍だけじゃなくアメリカ海兵隊やドイツ連邦空軍の基地もあり、たまに食事会をした時はやはり日本の納豆は不評だったのを思い出していた
「(匂いはゴマ油やオリーブオイルで消せるけど…ねばねばに関しては火を通せば問題ないと思うんだけど…やっぱりあれかな・・・・)」
守はミーナの姿を見て何か気づくと
「えぇ・・そうなの?・・・気がつかなくて御免ね!・・・じゃあ今日はドイツ料理を作ろうか?」
ミーナの本音を聞いて、美甘がミーナの為にドイツ料理を作るとミーナに言う。
「え!?ああいやいや!」
それに対して、ミーナは、居候の身なのに態々そこまで、して貰わなくてもと恐縮してしまうが
「折角、作ってくれるって言うんだから、此処は伊良子さんの行為に甘えてはどうかな?たまには故郷の料理を食べて英気を養わないと。それにミーナさんは国を離れて長いだろ?久しぶりに祖国の料理を食べるのも悪くはないんじゃないかな?」
「そうだよ!それに私ドイツ料理得意だから!」
守の提案に美甘も頷いて言う
「う、うむ‥‥じゃあありがたく頂く」
「任せて!それじゃあ、今日はドイツ料理祭りに決定!!」
こうして今日の夕食はドイツ料理となった。
今日の夕食はドイツ料理と言う事で、炊事委員の三人は早速夕食に向けての下拵えを始め、みかんもタブレットでドイツ料理のレシピを見ながら調理を始めるのだった
「さて・・・・機雷か…厄介なことになったな・・・」
ミーティングも終わり各自解散となった今。守は艦内を歩きながら海面いっぱいに広がっている機雷のことを考えていた
「まさかこの世界で機雷に悩まされるとは・・・・」
機雷については守は空母瑞鶴に乗っていたころに経験している。ラバウルから転属になり空母瑞鶴の戦闘機の搭乗員になって三日ぐらいのことだ。航海中にナチスの放った機雷原にはまって機動艦隊が動けなかったことがあり、掃海作業中に何人の工兵が機雷の爆発に巻き込まれ戦死するという事態を経験したことがある
「本当に機雷は嫌いだな・・・・」
どうしようもない洒落を言いため息をついていると
「あ、いたいた。お~いマー君!!」
「ん?」
声をかけられ振り向くとそこには芽衣と志摩がいた
「あれ?西崎さんに志摩さん?どうかしたんですか?」
守が首をかしげると
「ほら、タマ・・・」
「うぃ・・・・」
芽衣に軽く背中を押され志摩は一歩前に出ると守に対し頭を下げて
「マー君・・・・あの時はごめん」
「え?」
急に謝られ少し驚く守に、芽衣は
「タマ。以前にマー君の腕に噛みついたことを謝りたかったんだって」
「腕に?・・・・あ」
芽衣の言葉に守は思い出した。確かに明石、間宮がやってきたその日、志摩は暴走し、それを止めようとした守の腕に噛みついたことを
そのことに守は
「ああ…それなら俺は気にしていないよ。あの時は志摩さんパニックになってたんだし。俺は大丈夫だよ」
と、ニッコリ笑ってそう返答した。正直守は腕に噛みつかれたことは木にもしていなかったからだ。そして守は
「これからもよろしくね。志摩さん」
「うぃ・・・・」
手を差し伸べると、志摩は顔を若干赤くし彼の手を握り握手をするのだった
「よかったねタマ」
「うぃ・・・・」
芽衣の言葉に志摩は嬉しそうに頷くのだった。そしてその後、晴風は危険な掃海作業を始めるのだった