ハイスクールフリート~鋼鉄の鳥~   作:疾風海軍陸戦隊

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焔を抱く若鷲その1

機雷事件から翌日の夜・・・・

 

「うぅ・・・・・」

 

守は倉庫の奥の方でまたも悪夢にうなされていた

その悪夢はいつも見る大戦のあの夢だ。

ラバウル戦線で乗っていた零戦22型。その操縦席で守は戦闘を見ていた

激しい空での銃撃戦、そして炎に包まれる敵と味方の戦闘機や爆撃機。

そしてコックピットの中では炎に包まれながら最後の断末魔を上げる搭乗員の姿であった。そして耳の中に響き渡る怨念の声。その声は決して消えることのない自分自身が犯した罪の声。

 

「・・・・・・」

 

何度忘れようも忘れられないこの地獄の光景。だが他人事ではない。守自身もラバウル戦線からソロモン諸島までの間、守は幾多の空中戦で敵を打ち落としその命を奪ってきた。

その時、風防からベタ!ベタ!と、何かが張り付くような音が聞こえる

 

「っ!?」

 

音に驚き外を見る守。そこには血にまみれた敵航空兵が窓ガラスに張り付き憎悪の目で守を睨み恨みの言葉を叫んでいた。

ホラーともいえる光景に守は恐怖に駆られる

そして、守の乗る零戦は突如エンジンが爆発し黒煙が吹き上がる

 

「っ!?」

 

突然のことに守は風防を開け脱出しようとしたが、窓がなかなか開かない

機内が炎に包まれていく。そのとき不意に守の脳裏に自分を待つあの世界・・・そう、ましろたちの姿が思い浮かんだ

 

「死ねない!!俺はまだ死ねない!!」

 

守はそう言い必死に窓を無理やりこじ開けようとするがびくともしないそして守の乗る零戦は炎に包まれる。そして守の周りには先ほどの航空兵の怨霊の腕が守の腕をつかみそして炎に包まれた守を暗い闇へと引きずり込むのだった・・・・・

 

 

 

 

「はっ!!」

 

眼を見開く。そこは見慣れた晴風の倉庫だった。

 

「はぁ・・・・」

 

先ほど見たものが夢だったことに少し軽く息を吐く。額は冷や汗をかいていて顔色も悪かった。この世界に戻ってからずっとあの悪夢を見る。

だが、それはしかないことだ。それほど自分が元居た世界でしてしまったことは本当に取り返しのつかない事なのだから・・・・・

 

 

 

 

 

 

「守の様子が?」

 

「そうなのよ」

 

その後、皆が朝食をとる中、ましろが麻侖と黒木から守の様子がこの頃おかしいと聞いた。守はいつも晴風の中をふらついているわけじゃない。晴風の乗員の手伝いをしたりして、特に麻侖の機関科の手伝いをしていた。

麻侖は入学式前からの仲であり、守にとってこの世界に来ての初めてできた友人でもある。そして麻侖と黒木は守の姉であるましろに守の様子がおかしいと報告していたのだ

 

「なんつーか。このごろ守の奴、上の空というか・・・・何か思い詰めている感じなんでい」

 

「私たちが訊いても『大丈夫』の一言で、でもそのようには見えないのよ。他のみんなも心配しているみたいで・・・・宗谷さん何か知っている?」

 

洋美も守とは仲がいいため、彼に何かあったのかましろに訊くのだが・・・

 

「いいや…守からは特に聞いていないな」

 

ましろはそう答える。機雷事件以来、守るとましろは若干気まずい雰囲気となっているためあれ以降、なかなか話す機会がなかった。

だが、確かにこの頃、守の元気がなさそうに見えた。

 

「でもありがとう。教えてくれて。後で守と話してみる」

 

「おう、その方がきっといいと思うぞ?」

 

「ええ。宗谷さん頑張ってね」

 

そう二人に言うとましろは席を立ち守を探しに行った

ましろにとって守は大切な家族であり弟であるため、弟が何か思い詰めていると二人から聞いて放っておくわけにはいかなかった。たとえ血がつながっていなくてもましろにとっては大切な人だから

 

「(守・・・・お前に一体何があった。空白の9年間でいったい何があったんだ?)」

 

別世界から来た弟・・・・たった一か月間であったが大切な弟であり、そして大切な人。そんな守が何か思い悩んでいる。

それは恐らく守が元の世界で何かあったのだとすぐに感づいた。守のいなかった9年間。いったい守の世界で何か起きたのか。

守は元の世界ではこの世界とは違い日本列島は地盤沈下していない事、そして航空機が存在すること、そして日露戦争後にいくつか戦争があったことなどは話したが、守は最後に起きている第三次大戦のことは語っていなかった。

 

「(守・・・・お前はいったい何を背負っているんだ・・・・)」

 

直接聞けば早いのだが、もし彼を傷つけたらどうしよう。辛い話だったら自分はどう接すればいい・・・・何度も聞こうとしたがそのことが頭をよぎりなかなか話せずにいた。声をかけても『大丈夫』と作り笑いをされてその場を去ってしまい、きちんと話せなかった

どうすればいいのか悩んでいると

 

「ん?ましろどうしたんだ?」

 

「ミーナさん・・・・」

 

そこへミーナが通りかかり、何か悩んでいるように見えたのか、ましろに声をかけた

 

「ふ~ん・・・・・お主の弟がの~?」

 

ましろが守が悩んでいるということを聞いたミーナは

 

「弟のことが心配か?」

 

ミーナの言葉にましろは小さく頷くと

 

「話そうとは思わんのか?」

 

「しようと思っているんだけど・・・・どう話せばいいのかわからなくて、それにあの機雷の事件の時少し言い争ったからちょっと気まずくて・・・・」

 

悩むましろにミーナは

 

「ましろ・・・・・実はワシにも弟がいての・・・・」

 

「ミーナさんにも?」

 

「そうだ。まあ、ましろや守のように仲がいいとはいえんがそれなりに仲良くやっている・・・・・昔はよくケンカとかしていたんじゃけどな」

 

「けんか?」

 

「ああ、些細な喧嘩だった。小さいとき弟が儂の船の模型を壊して喧嘩になって思わず、弟をひっぱたいてしまったのじゃ。その後、弟がワシを避けるようになっての…わしもあの後どう話せばいいのかわからないままの状態じゃったのじゃが、その時、母が出て来ての・・・・」

 

そう言いミーナは懐かしむようにあの日の出来事を思い出した。

それは弟と喧嘩した後のことだった

 

 

 

 

 

『・・・・・・何で謝らないの?』

 

母の優しい言葉に当時幼かったミーナは弟に壊された船の模型を涙目で見て

 

『だって…私のお船・・・・』

 

『ふ~ん・・・弟よりお船がいいんだ~そんなことしていたら一生話せなくなっちゃうけどあなたはそれでいいの?』

 

『ヤダ!それはヤダ!!』

 

『じゃ!やることは一つね!』

 

 

 

 

「結局その後、弟のところまで走り寄って行って二人で泣きながら謝ったんじゃ・・・・・」

 

「ミーナさんにそんなことが・・・・」

 

「まあ、ワシが言いたいのはちゃんと話し合わないと深い溝ができて永遠に話せなくなって後悔するぞということじゃ」

 

と、ぽんとましろの肩に手を置くミーナにましろは

 

「・・・・ありがとう。守と話してみる」

 

「うん。それがいい。姉弟は仲がいいのが一番じゃ」

 

ましろはミーナに礼を言い、その場を後にし守を探した。だが、どこを探しても見つからず、最後によった場所は守が寝泊まりしている倉庫だった。

 

「・・・・・守。居るのか?」

 

ノックをするが返事がないだが、鍵は開いていたため、ましろは中へと入る。そして守がいる倉庫の隅の方へ行くと、そこには守がいた。壁に寄りかかり目をつむっている。どうやら眠っているようだった。

 

「寝ているのか・・・・そう言えば朝早くからいろんなところでみんなの手伝いをしていたって聞いていたな‥‥まったく無理しすぎだな」

 

軽くため息をつきましろは守の傍による

 

「ほら、風邪をひくぞ」

 

そう言い落ちていたタオルを手に取り守にかけようとすると

 

「うぅ・・・・」

 

守の顔が歪み、額には汗が流れていた

 

「(・・・・うなされている?)」

 

守の表情を見て、ましろは守が悪夢を見ていることに気づく。苦しそうでつらい表情の守は何かうわ言を言うに呟く、なんて言っているかはわからないがそれを見たましろは

 

「守・・・・」

 

ましろはハンカチを取り出し、額に流れる汗をぬぐう。なぜ守がこんなにも苦しんでいるのか?ましろは知りたかった。だがましろは今までの守の行動。

そして最初に晴風のみんなに自己紹介した時に名乗った『日本国海軍少尉』。そして武蔵の時に言った『戦闘の専門家』『三年以上、戦争をしてきたわけじゃない』という言葉と美波が言った守の体にある銃創。そして機雷事件の時に言った言葉それを考えて出た結論は守は戦争に参加していたかもしれないという推測だった

 

「守・・・・お前は・・・・」

 

ましろがそう呟いた時、守が目を覚ます。

 

「あ・・・れ?ね、姉さん?」

 

目が覚めて最初に見た光景が自分を心配そうに見つめるましろの姿だったため守は少し驚く

 

「なんでここに?」

 

守がそう訊くとましろは

 

「お前を探して、ここに入ったらお前がうなされているのを見つけてな・・・・・それより守。訊きたいことがあるんだ」

 

「訊きたいこと?」

 

守は嫌な予感がした。だがましろは続けた

 

「守・・・・お前は・・・お前は」

 

ましろは言おうか戸惑ったが、だがいつか聞かなければいけないと思い守に問うた

 

「お前は・・・・・戦争を経験・・・したのか?」

 

「っ!?」

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