突如、幸子から救難信号を受信したと連絡が入り、
その連絡を聞いた4人は着替えて、急いで艦橋へと向かう。
「救難信号って何所から?」
「新橋商店街船です・・・全長135m、総トン数14000、現在、左に傾斜中し船内に浸水している模様!」
SOSを送信していたのは、排水量14000トンの汎用貨物艦で嵐で暗礁に乗り上げ座礁した様だ。
現在、左舷に傾斜し、船内は、浸水中とのことだった
「乗員は?」
「全乗員552名、現在避難中だとの事です。」
「近くに他の船は?」
「我々が一番近いみたいです。」
如何やら近くで一番早く現場に向かえるのは、晴風のみだった。
「ブルマー本隊に連絡して学校にも!」
『はい!!』
明乃は、直ぐにブルーマーメイドと横須賀女子海洋学校に連絡した。そして明乃は座礁した新橋の船長にも連絡を入れた
「此方航洋艦晴風、艦長の岬明乃です。」
『此方は、新橋・・・ファラロップ南東13マイル地点・・・航行中に暗礁に乗り上げました・・・座礁時刻は15分前・・・現在も船体中央部がしょくていしています・・・』
「負傷者は?」
『軽傷者が10名』
「浸水はありますか?」
『左舷側は、あると思われます。』
「火災は、発生していますか?」
『まだ確認しておりません。』
「了解しました・・・其方までの到達時間は約50分掛かります・・・それまで船長は、避難誘導を続けてください!!」
明乃が新橋艦長と通信を終える。
「鈴ちゃん。現場に急いで!!」
「りょ、了解!!」
晴風は、急いで現場へと向かう。
『達っすーる!!・・・ウルシー環礁で座礁船発生!!・・・本艦は、これより当該船舶の救助に向かいます・・・海難救助よーい!・・・砲雷科と航海科で手の空いてる人は、準備を急いで!!』
明乃は、艦内放送で新橋の救助に向かう事を伝える。
「大変!!大変!!」
「ビビるッス!!」
放送を聞いた生徒は、慌てながら救助準備をする。 新橋救助の為、救助に向かう生徒は、ダイバースーツに着替えるが
「キツイ・・・」
「太った?」
「太ちゃったかな?」
『うう・・・』
体重が増えた事でダイバースーツがキツクなってしまい、生徒達は、思い悩む。
救助準備をしながら50分後
「天気晴朗なれども波高し」
晴風は、新橋座礁地点に到着し、新橋が肉眼で視認できる距離まで接近する。
「晴れたな・・・・」
「低気圧は、西に移動した模様です。」
幸いな事に先まで猛威を奮っていた低気圧は、西へと過ぎ去った模様。
「傾きは40度くらいか・・・」
「50度を超えると転覆する危険が高まるぞ」
「確かに持ってせいぜい1時間ってところか…急いだ方がいい」
ましろとミーナと守は、双眼鏡で新橋の現状を確認する。たしかに新橋は、左舷に大きく傾斜したまま、いつ転覆しても可笑しくない状況だった。
「新橋の船内図です・・・3階吹き抜けて商店・・・4階が居住区・・・中央がブリッジになっています。」
幸子がタブレットで新橋の船内図を開き、船内の説明をする。
船内の説明を聞いた明乃は
『救助準備は完了した?』
甲板にいる救助員に救助準備は、完了したか確認をする。
「準備OKでーす!」
既に救助に向かう生徒が酸素ボンベやカッターの準備をしていた。
そして明乃の言葉を聞いた媛萌は、準備完了の合図を艦橋に示す。
「それと私もスキッパー・・・」
それを聞いた明乃は、またスキッパーで出ようと思ったが
『またっ!艦長が持ち場を離れる気か!!』
その時、この前、ましろに言われた事が頭に浮かび、一瞬、静止し、ましろを見る。
「・・・何ですか?」
明乃が見ているのに気づき、何かと問う。
「・・・・こういう時、艦長って如何したら良いのかな?」
明乃がましろに如何したら良いのかと聞く
「私に聞かないでください。」
「分かんなくなっちゃって・・・」
「艦長は艦に居て下さい!!」
「救助隊の指揮は?」
明乃は、艦に残るとして、救助隊の指揮は、誰がするのかと問うと
「んん・・・!私がやります!!」
ましろが自分が行くと宣言する。
「ワシも行こう!」
するとミーナがポージングしながら自分も救助に行こうと言うと・・・
「自分も行きます。救助隊は多い方がいいので、岬艦長は救助中、外で何かあった時の指示をお願いします。海賊が出ないとも限りませんので」
守も志願し、明乃に指示を出した。確かに守の言うとおり救助隊が新橋内部にいるときや救助中に外で何かトラブルがあった時、指示を出す人が必要。だから救助には副長をそして外の指揮は艦長がすることを提案した
「わかった。私はここで指示を出すね」
こうして、明乃は、晴風に残って、救助隊に指示を出し、守とましろ、ミーナは、救助隊と共に新橋へと向かう事となった。
だが、ましろは、浮かない顔をしていた。
そして救助隊は内火艇に乗り、座礁した新橋へと向かう
「私とミーナさん、砲雷科3名で艦内に入る・・・ダイバー隊は海に潜って船体の損傷の確認・・・航海科と応急員は救命ボートに乗ってる乗員を晴風に誘導・・・」
『はい!』
「救命訓練は中学で散々とやったけど、実戦は、初めてぞな・・・」
「ちゃんと出来るかな?」
「大丈夫だ!」
「ヘキヘキ」
と、不安そうに言う聡子と鶫に対しミーナと果代子は元気づけるのだが・・・・
「私は運が悪いのだが大丈夫だろうか?」
『うう・・・・』
ましろの一言により全員の顔が暗くなった。
「空気を読め・・・・」
「うっ・・・すまない」
ミーナは指摘するが
「大丈夫大丈夫。そう言うところは俺がフォローするから」
「守・・・ありがとう」
守の言葉にましろがそう言うと
「そう言えばマー君。拳銃と刀はもってくる必要あった?」
鶫がそう訊く。守の腰には拳銃と刀が差してあった。それは美波三から預かっていたのを持ってきたものだった
「万が一ってこともあるだろ?」
「万が一って・・・・・」
守の言葉に皆は苦笑するのだった。そして現場に到着し
「探照灯、照射始め!」
果代子と理都子が手持ちの探照灯を新橋を照らす。
照らした先には、甲板に避難をし、救助を待つ人や海に飛び込んで浮遊物に捕まる人で溢れていた。
それを見たましろは、驚愕してしまうが
「副長!」
「姉さん!」
「はっ!?・・・現場に到着しました!!」
守とミーナに言われ、ましろは、気づいて、直ぐに無線で晴風に状況を伝える。
『甲板は、人で溢れています!』
「甲板は、応急員に任せって、船内の生存者を確認して・・・救助・・開始!!」
明乃の指示により晴風の生徒による新橋の救助作業が開始された。
守、ましろ、ミーナ、光、美千留、順子の6人が船内に入り、楓、理都子、果代子の3人は、潜水具を付けて、船体の破損状況を調査、聡子は救助ボートで待機し、媛萌、百々、鶫の3人は、甲板で救助者の対応する事になった。
「救助は如何なっているんだよ!!」
甲板では、救助を待っている乗員が救助は、まだかと慌てふためいていた。
「ま、先ずは、人数の確認よね!」
「リストバンド!リストバンド!」
慌てふためく乗員に気を取られながら、媛萌と百々は、人数の確認をしようとすが
「先に怪我人の確認じゃない?」
負傷者の確認が先じゃないかと鶫に言われる。
「うあ・・!?マニュアル持ってくれば良かった!!」
初めての救助で慌てて、救助マニュアルを持って来なかった事に媛萌は、悔む。
一方、ましろ、ミーナと守は、ブリッジで船長に状況を聞いていた。
「晴風副長、宗谷ましろです・・・只今から船内確認に入ります!」
「居住区はまだ乗員が残っている模様です。よろしくお願いします」
ましろはミーナと守、砲術委員の小笠原、武田、日置の三人で船内捜索を行う
船内は、座礁した時の衝撃のせいか、窓ガラスが割れていたり、物が散乱している有様でましろ達は、懐中電灯を照らしながら、辺りを捜索する。
「スプリンクラーが作動していない‥‥」
辺りを捜索していると守は非常時にも関わらずスプリンクラーが作動していない事に気づく。
「非常用システムがやられちゃったって事!?」
「て、事は・・・」
「この船って・・・」
非常用システムがやられている事に5人は、疑問を感じる。
「船体は、第4区画前120mに渡って亀裂が入っていおり、前方の3区画は浸水している模様ですわ!」
外の内火艇では船体の破損状況を調査していた楓の報告から船体の破損状況は、深刻でしかも浸水がかなり進んでいるようだった
『此方宗谷!・・・新橋の非常用システムが動作不良を起こしている。』
晴風ではましろから新橋の非常用システムが動作不良を起こしている報告が入る。
「えっ!?」
「何か遭ったんですか?」
『分からない、でも・・・』
『恐らく衝撃で壊れたんだと思います・・・このままだと、恐らく・・・』
守からもこのままだと災厄な状況になる恐れが有ると報告が入り
「新橋に接舷する!急いで!!」
明乃は、直ぐ新橋に接舷するよう命じる。
「りょ、了解!!」
「岩礁に気を付けて、急いで中の人達を甲板へ・・・」
晴風は、急いで新橋に接近する。
「早く上へ・・・急げ!!」
新橋船内では、ましろ達が乗員を甲板へと避難誘導をしていた。
「乗員まもなく避難が終えます。」
乗員の避難が有る程度済んだ時だった。
「あの…多聞丸がいないんです!」
「気が付いたら傍に居なくて…」
一組の夫婦が自分達の子供(?)がいないと言って来た。
「まだ小さい子ですか!?」
「はい」
「姉さん。捜索していないのは第五区画、飲食店地区だ」
「よし、行こう」
「ああ」
「多聞丸くんは任せて!お二人は避難を!」
ましろは、順子に任せて、ミーナと守と共に多聞丸を探しに行った。
「乗員の避難は終了しました!」
「中に入った救助隊、船底を調べていたダイバー隊も船から出てきたそうです!」
全員の避難が終了した報告が入り、晴風の艦橋にホッとした安堵感が出始める。
ただ、次の報告でその空気は一転した。
「でも副長とミーナさんとマー君が船尾方向の捜索に向かったとの報告が…」
「えっ?」
「小さいお子さんが1人、行方不明だそうです・・・」
3人がまだ捜索に残っている事を聞いて、明乃は、不安になる。
「私はこっちを探して見る!!」
「じゃあ、ワシはあっちを!!」
「じゃあ、俺はあっちを探してみる」
新橋の飲食店街地区へと入ったましろとミーナと守は三手に分かれて捜索する事にした。
船が沈んでいく中、3人で探すよりも分かれて探した方が、時間短縮になる。
「多聞丸!!」
こんな暗闇の、まして沈んでいく船の中、一刻も早く両親の下へと連れ戻さなければ
ましろは、そんな思いを抱いて新橋の中を走る。
そんな時
「ニャ~!!」
突然、何かの鳴き声が何処からか聴こえて来た。
ましろは、辺りを見回すと
右側にあるコンビニの中の出入り口の前に子猫がちょこんと座っていた。
「‥‥小さい子って…子猫の事か…」
ましろは電源が落ち開かなくなった自動ドアをこじ開けて目の前の子猫を見る。すると・・・
「姉さん!」
「守・・・・」
そこへ守が駆けてやってきた
「探している際、遠くから猫の声が聞こえたから来てみたんだけど・・・・まさかこの子が多聞丸?」
「ああ…そうみたいだ」
「ニャ~!!」
子猫が付けている首輪には確かに「TAMONMARU」と文字が彫られていた。
人間の子供ではなかったが、子猫だって生きている。
「とにかく救助しよう」
「そうだな」
兎に角、子猫を保護しようとしたその時
「!?」
大きな揺れが起き、破孔から海水が流れ出てきた。
「はっ!?」
「まずい!!」
それを見たましろと守は、驚愕する。そして外では新橋は、船体が2つに割れ、左舷から沈み始めた。
「ヤバ過ぎる!?」
「大変どころじゃ・・・」
内火艇でその光景を見ていた救助隊は、驚愕する。その光景は晴風でも確認できた
「艦長!新橋が!!」
「もやいを解いて!!・・・全速離脱!!」
「真っ二つじゃん!?」
「うう・・・・」
「うわぁ・・・・!?」
内火艇の救助隊と同じ様に艦橋もその光景を見て驚愕していが、明乃は、巻き添いを防ぐ為、急いで新橋から離脱するよう命じる。
「艦長!まだ中に副長とミーナさんが居るそうです!!」
「えっ!?マー君は?」
「マー君もまだ中に!!」
何とまだ新橋には、ましろとミーナ、守の3人が残っていた。
「えらいこっちゃ!えらいこっちゃ!」
その時、先に上甲板に避難したミーナが船の縁を走って逃げていた。
「居た!?あそこ!!」
「ミーナちゃん!!こっちよ!!」
内火艇に避難していた救助隊が船の縁を走って逃げているミーナに気づき探照灯で照らす。
「ミーナ、早く逃げて!!」
「逃げとるんじゃい!!」
「宜しいですから飛び込んでください!!」
「グッ!」
ミーナは、海に飛び込み、内火艇まで泳ぎ、無事に救助された。
ミーナは、無事救助されたがまだましろと守の2人が艦内に残っていた。
『副長!!・・・マー君!!聞こえる?』
「は、はい」
『船体の中央部分で裂けたの!このままだと沈没する!早く脱出を!!』
「りょ、了解!!」
「わかった!」
通信越しにましろは多聞丸を抱き上げ、上甲板に避難しようとしその時、
突然の浸水がましろと多聞丸を襲う
「っ!?」
「姉さん!」
その時、守はましろを庇うように立った。
『ミーナさんは脱出されました。』
「副長とマー君はは?」
『まだ確認できていません・・・・その‥‥連絡が‥‥切れましたわ‥‥』
「えっ!?」
楓の報告を聞いて2人との連絡が途切れたと聞いた明乃は、恐怖に陥る。
一方、突然の浸水に襲われたましろと多聞丸と守は、何とかコンビニの商品棚の上に避難していた。
だが、先程の浸水の時、無線機を落としてしまった。そして・・・・
「守・・・・すまない・・・私を庇ったせいで・・・」
棚の上ではましろは泣きそうな顔で守を見る
「大丈夫だよ・・・こんな怪我くらい」
そう言い、足を押さえる守。あの時の浸水で守はましろを庇った時水に紛れていた。瓦礫で足を怪我して身動きが取れない状態であった
すると多聞丸は不安そうに鳴くと・・・ましろは
「怖いよな…私も怖い・・・何しろ私は・・・運が悪いし・・・」
ましろは、恐怖のあまり泣きそうになるが
「まだ、希望はあるよ・・・姉さん」
「え?」
守の言葉にましろは守を見ると守はある方を指さした
「あそこの通風口を行けば外に出られるかもしれない。姉さんは多聞丸を連れて、出てくれ・・・・」
「でも守・・・お前はどうするんだ?身動きの取れないお前を置いて行くわけにはいかないだろ!!」
「だからってここに残って死ぬよりはマシだろ!姉さん行ってくれ!!」
「ダメだ!ダメだ!お前を置いて行くなんて!!せっかく会えたのに!!ここで別れたら・・・・!!」
もしかしたら最悪な事態になるかもしれないと思ったましろは泣きながらそう言うましろだったが
「姉さんっ!!」
「っ!?」
守の怒声にましろは固まる
「今ここにいても溺死するだけだ!だが姉さんが先に脱出し、救助隊に知らせてくれれば、俺が救助される可能性が少しは上がる!!」
「でも・・・・」
「それに姉さんはその子猫・・・多聞丸を救出する任務があるだろ!!一つの小さな命守らないでなにがブルーマーメイドの卵だ!!今はその子の救助を優先しろ!!」
「っ!?」
守の言葉にましろは思い出した。そう今はこの子猫の救助が先、それに先に脱出して救助隊に知らせれば少なくとも守を助けられるかもしれない
「だから頼む姉さん・・・・行ってくれ」
「守・・・・わかった」
ましろは涙を拭いて頷き、多聞丸を抱え上げ、通風口の蓋を開けようとしたがびくともしなかった
「ダメだ・・・開かない」
ましろはそう言うと
「姉さん・・・ちょっとどいて」
そう言うと守はホルスターからM1911A1を取り出すと、通風口に向けて発砲。弾丸は通風口の蓋を固定しているボルトに当たり、ボルトは壊れ、通風口の蓋は落ちた
「これで行けるよ・・・・さっ!早く!!」
守の言葉にましろは頷き通風口に入ると
「守!!必ず助けるから!!だから!絶対に死ぬな!!」
本当は一緒にいたい。だが彼女は子猫多聞丸を救出するため、そして救助隊を呼ぶため通風口に入り守にそう言うと守は静かに頷いた。
その時の守の表情は柔和な笑顔だった。そしてましろが言って、一人になった守は
「さて・・・・姉さんにはああは言ったが・・・」
そう言いちらっと下の水面を見ると浸水により水かさが増えてい行った
「これは時間がなさそうだな・・・・」
と、小さく呟くのだった