晴風、艦橋
「副長、マー君!副長、マー君!シロちゃん!!マー君!!」
明乃が無線機で何度もましろと守に向けて呼び続けるが、全く応答がなく、明乃は受話器を置いて艦橋の窓から新橋を見た。その状況に明乃は今までましろが感じていたことを理解した
「待ってるってこんなに辛いんだね…でもシロちゃんと約束したから・・・」
明乃は、小さく拳を握り。
「救助した人に毛布をそれに食べ物と暖かい飲み物を用意して!」
『はい!』
明乃は、守とましろの無事を祈りながら、救助した乗員の面倒を見る。そして教室では杵崎姉妹や美甘が温かいおかゆ、お汁粉、生姜湯を提供し、医務室では美波さんが怪我した乗員の手当てをしていた
一方その頃、救助隊を乗せた内火艇は、新橋から晴風に戻ろうとしていた。
「皆、居るよね?」
不安そうに新橋を見ながら、全員居るのを確認する光。
「航海科の子達は?」
「救助した人と一緒に艦に戻ったよ!」
ましろと守以外は、殆んど晴風に収容された。ミーナは、防寒ポンチョを着て、非常食をかじっている。
「後は副長とマー君だけ?」
「副長、守‥‥」
ましろと守の安否を気にしているその時だった。
「ん!?」
突如、空から光が差し、皆が上を見ると、そこには内火艇を照らす無人飛行船が現れた。
『ブルーマーメイドだ!!』
そう、新橋の救助に来たブルーマーメイド隊の無人飛行船だった。それを見た救助隊は、直ぐに新橋に戻ろうと内火艇を戻す
それからすぐにブルーマーメイド隊員が乗ったスキッパーが次々と新橋へと向かって行く。
そんな中、一艇のスキッパーが内火艇へと接近する。
「ブルーマーメイド保安観測部隊の岸間です」
「晴風!砲雷科、小笠原光以下救助隊です!」
「ご苦労様!・・・後は任せて・・」
「まだ船内に2人、学生と男の子が・・・」
「了解!」
岸間は光に応える様にハンドサインを返した。
「要救助者2名!」
岸間達はスキッパーを全速で新橋に向かう。
そして一方、通気口を通るましろは
「(早く…速く脱出しないと守が・・・)」
自分一人では守を運び出すことは出来ない。だからこそ急いで脱出し、弟が取り残されていることを言わなければならない。だが一向に出口にたどり着けないその時
「あっ!?」
ましろのスカートが通風口の金具に引っかかってしまった。
ましろは、何とか放そうと引っ張るが、外れそうもなく。
「仕方ない・・・」
ましろは、止む無くスカートを脱ぎ捨て(下が水着姿になった)、先に進む
一方、守は
「これは、ますますまずいな・・・・・」
足を負傷し、身動きが取れず、商品棚の上にいたが、だんだんと水位が上がり、この部屋が水没するのは時間の問題だった
「這うことは出来ても通気口までは届かないか・・・・ははっ。海軍軍人であり航空兵の俺が溺死か。情けないな・・・せめて死ぬなら空の上か姉さんの膝の上で死にたいよ」
その言葉は全て諦めている様子でもなくいたって平然とした口調だった
「さて・・・・この状況的には非常にまずい状況・・・・どうやって打破するか・・・・」
周りを見る守。破孔から入ってくる海水にどんどん水位が上がってくる。かといって守自身は動けない。
「これは、杉さんたちより先に死んだ仲間たちのところに行きそうだな・・・・」
そう言い守は目をつぶる。閉じた瞼の裏に死んだ戦友たちが浮かんだ・・・・だが
《森准尉!生きることを諦めるな!!》
「っ!?」
脳裏に上司であり、空戦で生き残るための戦術や空戦技を教えてくれた杉田曹長の声が響いた
それはいつも曹長が守に言っていた言葉だ。戦争で一番大切なこと・・・それは生き残ることだ。生き残ればまた戦える。死んだらそれでおしまいだ何より・・・・・
「まだ、死ぬわけにはいかねえよな・・・・ましろ姉に約束したし」
そう言い胸に下げているロケットをぎゅっと握る守
「何か、救助が来るまで使えそうなものは・・・・・・」
そう言い再びきょろきょろと周りを見ると、あるものを見つけ出した
「・・・・・あれは」
その頃、ましろは多聞丸とともに通気口を進んでいた
そんな時
「はっ!?」
持っていた懐中電灯の電源が切れてしまった。
「ははっ・・・やっぱり・・・付いてない・・・うっ・・・クソッ!!」
ましろは、絶望し、堆懐中電灯で通風口の天井を叩く。
「はっ!?」
一方外では転覆した新橋の船底の上では、岸間以下、ブルーマーメイドの救助隊員がましろと守の捜索をしていた。そして岸間の持つセンサーが何かしらの反応をした
「こっちは、どう……」
「駄目、見当たらないわ・・・」
「ハンマーもってきて!!」
他の隊員が捜索する中、岸間はハンマーを持ってくるように言う。
晴風艦橋では
「艦長…救援艦より連絡。現在、ブルーマーメイド隊が副長とマー君の捜索活動に当たっているみたいですけど・・・・」
幸子が連絡を聞き、明乃たちにそう言う。みんな不安そうな顔をしていた
「(シロちゃん・・・・マー君・・・・)」
明乃は、守とましろの無事を祈りつつ知らせを待つ。
一方、ましろは通気口の中で仰向けになっていた。もう疲れ果て動けない状態だった
「守・・・・・」
ましろはそう呟くと外から何か叩く音が聞こえた。それは外でブルーマーメイドの隊員たちがハンマーで船底を叩いていたのだ。
それを聞いたましろはもっていた懐中電灯の柄で壁を叩く。すると
『要救助者、確認よし!!』
『周辺確認よし!!』
外で声がするのと同時に何かの機材で穴を開ける音がした
『聞こえる!?そのまま動かないで、じっとしてて!!』
外で力強い声が聞こえると同時にましろは救助が来たことを理解した
「助かったんだ・・・・」
そう言い涙を少し流す。そして穴が開き、ましろは救助されたが・・・
「あ、あの!弟がまだ中に取り残されているんです!!」
「何ですって!?」
「足を怪我して…私一人じゃ運べなくて・・・・・・」
涙を流しながら、ましろは必死に隊員たちに守が取り残されていることを報告する
「分かりました。すぐに救助に向かいます!!」
そう言い岸間達は頷き、そして救助隊がましろの通った通路を進んだ。するとしばらくして、ましろが入った通気口の入り口に到着したがそこは水であふれていた。到底生きているとは思えない状態だった
「・・・・」
それを見た隊員は無線で
『ただいま例の少年がいる場所へ着きましたが、その地点は水没しています・・・・・もしかしたら・・・・』
「そんな・・・・」
無線越しで聞いたましろは顔を青ざめへたり込む。そして自分の不甲斐なさを攻めた。もし力づくでも彼を運んでいたら・・・・
「守・・・・守」
ましろは涙を流した。すると・・・
『待ってください!」
と再び、無線から隊員の声がした。そしてその現場にいる隊員は水没した部屋の中で気泡を見つけた。そして隊員は小型酸素マスクを口に咥え中に入る。中は案の定、水で浸っており、中は散乱し空気の溜まっている場所はなかった。これは絶望的だった。そしてその中に人影を見つけた
隊員はその人影の傍に行くとそこには守がうつ伏せになっていた。眼も閉じているその状況を見た隊員は
『(間に合わなかったの・・・・)』
最悪の状況を覚悟し彼の手を握ると、その手がぎゅっとしまった、
「っ!?」
それを見た隊員は彼の顔をライトで照らすと・・・
「・・・・・」
「っ!?」
ゆっくりと守の目が開いた、そしてその口にはダイバー用の酸素マスクをしていた。そうあの時守はスキューバダイビング用の酸素ボンベとマスクを発見し、水没した中それで救助を待っていたのだ。
そして隊員は無線で
「生きてる・・・・・生きてます!!スキューバーダイビング用の酸素マスクで呼吸を確保しています!!」
その連絡を聞いた岸間は安心し、そしてましろも
「生きてる・・・・・・」
守が生きていることに再び涙を流すのだった
その後、無事救助された二人は新橋、転覆した船底上にまで運ばれた。守の足の容体も幸いなことに脱臼で済んでいた
『副長、マー君!!』
やがて、引き返してきた晴風の救助隊が救助された守とましろに駆け寄る。
「怪我は、無い?」
光は、怪我が無いか問う。
「大丈夫・・・」
ましろは、岸間におぶられた状態で大丈夫だと答え。
「マー君は?」
「大丈夫。俺は、足を挫いただけで大丈夫よ。危機一髪だったけどな」
守も救助してくれた隊員の肩を借りて、立ちながら、大丈夫だと答える。
「よう生きとったの、我・・・」
「ニャ~」
「助かったにゃ~、良かったにゃ~」
『ええ・・!?』
「な、何で、ネコ言葉になっとる‥‥?」
つい出してしまった言葉にミーナ達は困惑していた。
そして、晴風へと戻ったましろは多聞丸の飼い主夫婦に多聞丸を無事に救助出来た事を報告する。
「多聞丸無事救助しました!」
「ありがとうございます。多聞丸」
奥さんがましろから多聞丸受け取ろうしたら多聞丸は逃げ出し、ましろの足元にすり寄り、そこから離れない。
「多聞丸、行かないと‥‥」
ましろは、引き離そうとするが、何故か離れない。
「随分懐いてるな・・・!?」
「ええっ・・・!?」
ましろに懐く多聞丸を見て、八百屋の夫婦は、驚いていた。
「ほら、多聞丸・・・」
ましろは、何とか多聞丸を離し、今度こそ八百屋の夫婦に渡そうとした時
「あの‥‥」
ましろと多聞丸の様子を見ていた八百屋の奥さんが・・・
「良かったら・・・」
「面倒・・・見てもらいますか?」
何と八百屋の夫婦がましろに多聞丸を譲ると言い出したのだ。
「ご迷惑でなければ・・・」
突然の多聞丸を譲ると言われましろは、驚きながら
「で、でも‥自分、猫嫌いで‥‥」
ましろは、断ろうとするが
「何を言うとる!!・・・沈みゆく船で生死を共にした仲じゃろうが・・・」
ミーナは、八百屋の夫婦の折角の行為なのだから、受け取ってやれと言われ。
「大丈夫だよ。だって姉さん猫好きだったじゃん」
と守も頷いてそう言うと、ましろは
「ん・・・・分かった・・・・多聞丸・・・謹んで引き取らせて頂きます!!」
「うむ、そう来なきゃな・・・」
こうして、猫嫌いにも関わらず、ましろは、多聞丸を引き取る事になった。
「お手数ですがそれを横須賀女子海洋学校まで届けてください」
美波は岸間に例のハムスターに似たあの小動物をケースごと手渡した。
「了解しました」
「それと、これも‥‥」
美波は更に大きめの茶封筒も岸間に手渡した。
「これは?」
「抗体と私の報告書です」
「わかりました」
そう言い、岸間はその茶封筒も受け取ろうとした瞬間、何者かが数名飛び出て・・・・
「動くなっ!動くとこの娘の命ないわよ!彼女の命が欲しければその生物と報告書の書かれた茶封筒を渡しなさい」
そう言い美波を人質にし、そう言う人物は先ほど、守を救助した隊員と、そして、STG44を持った二名のブルーマーメイドの制服を着た隊員が岸間達にそう言うのだった