横須賀ブルーマーメイド安全監督室情報調査局
ここはブルーマーメイドのすべての情報が保管されている。言わばブルーマーメイドの本部でもある
その場所に一台の車が止まる。そして車のドアが開きそこから現ブルーマーメイドの責任者である宗谷真霜と外国人らしきブルーマーメイドの隊員が降りた。そして二人は入り口まで歩くと
「あっ!宗谷一等監督官。ご苦労様です!」
「ええ・・・・ご苦労様」
入り口を警備する隊員が真霜に挨拶すると彼女も返事をした
「それよりどうされたのですか?確か先ほど横須賀女子海洋学校の方へ行かれたと思ったのですが・・・・?」
「ああ・・・・・いえ、少しばかり急用を思い出してね。海上安全整備局 のお偉いさん方たちが例の海賊の詳細と例の事件で分かったことをすぐに報告しろと言ってきてね・・・・それで資料を受け取るのとその捕虜を私自ら聞こうと思ってね・・・・・」
「そうだったんですか…上もなかなか無茶を言いますね?」
「ええ・・・・」
そして隊員は真霜の後ろにいる女性に気づく
「ところで・・・・・そちらの人は?」
「ああ・・・・彼女はドイツのブルーマーメイドの方よ。今回の事件でドイツの軍か・・・・大型教習艦が行方不明と聞いてわざわざ来てくれたのよ。そして例の海賊もドイツ人と聞いて様子を・・・・」
「そうですか・・・・・わざわざ日本までご苦労様です!」
隊員が敬礼するとドイツの隊員も無言で敬礼した
「ところで・・・・・例の捕虜は何処に?」
「あ!はい!この施設の取り調べ室にて拘束しています…ただ」
「・・・どうしたの?」
「はい。実はその三人のうち二人が奥歯に毒薬を隠していたみたいでここに運ぶ途中に船内で・・・・」
「そうですか・・・・残りの一人はまだ?」
「はい。健在です」
「そうですか・・・・では私たちはその場に行きます・・・それと晴風から渡された報告書は・・・・」
「あ、はい。そのデータなら確か宗谷一等監察官の部屋のパソコンに入っていると思いますが・・・・?」
「・・・・・・ああ…そう言えばそうだったわね・・・・」
そう言うと真霜はドイツ隊員を連れ施設の中に入るのだった。そして・・・・
「上手く入れましたね・・・・・大佐殿」
「当たり前だ。宗谷真霜が今この場にいないことは調べ済みだ。さて…私は取り調べ室に・・・お前はこれで全部掃除しろ・・・・わかったな?」
「了解しました」
小声で話した後二人は別々に分かれるのであった
一方、場所は変わり横須賀女子海洋学校では、本物の宗谷真霜が校長室のドアをノックし、
「どうぞ」
中から自分の母であり、横須賀女子海洋高校校長の真雪の返答を聞き、校長室の中へと入る。
「失礼します」
「真霜‥‥あなたがここに来るということは余程のことね」
「ええ」
真霜は早速、真雪に今日此処へ来た要件を話した。真霜はカバンの中から一冊の報告書を真雪に見せた。
その報告書の表紙には、
『密閉環境における生命維持及び低酸素環境に適応するための遺伝子導入実験』
と、書かれていた。
それは紛れもなく、文部科学省海洋科学技術機構、海上安全整備局装備技術部、国立海洋医科大学先端医療研究所がRAT(ラット)を使用して行った実験の報告書であった。
真雪はこの実験の報告書に目を通した。
「実験艦は深度1500mまで沈降。制御不能。サルベージは不可能‥‥」
「‥‥のはずが海底火山の影響で押し上げられて浮上してしまった」
「西之島新島。ここは今年の海洋実習の集合地点よ‥‥あっ、そう言えば‥‥」
真雪は今回の実習の際、ある事を思い出した。
「何かあったの?」
「実習直前に教官艦猿島に研究員を乗せる手配をしたわ。西之島新島付近で海洋生物の生態を研究したいという依頼があって‥‥」
「でも、その研究員達の目的は実験艦からデータを回収してその後自沈させるためだった‥‥」
「貴女の話を聞くとそのようね‥‥」
「‥‥」
真霜は先日、古庄の見舞いと聴取を取りに至った時のことを思い出した。
古庄の聴取と見舞いを終え、病院の通路を歩いていると、ある病室から話し声が聞こえてきた。
『予想をはるかに超える感染力。猿島だけでは済まないかもしれないな』
『うちの研究員全員が入院…こんなことになるとは…上にどう報告すればいいんだ!我々の責任問題になるぞ!』
『し、知るか!それにあの研究は主任があるところから盗んだ物じゃないか!!』
そこは、猿島に便乗していた研究員が入院している病室だった。
そして、先程の会話‥‥
真霜は研究員達が何らかの事情を知っていると判断し、その部屋へと入った。
「随分と、面白そうな話をしていますね」
「「っ!?」」
突然の真霜の登場に狼狽える研究員。
「さっきの話詳しく聞かせてもらえるかしら?」
ダークオーラを纏い、研究員へと詰め寄る真霜。やがて、研究員達は今回の騒動の発端となった実験の事を喋った。
「それで私が独自に調査したんです」
「RAT‥‥」
「海中プラントで偶然生まれた生物に彼らがつけた名称です。この生物が媒介するウィルスは生体電流に影響を及ぼします。そのため感染者同士は一つの意思に従い行動する」
「一つの意思…まるで群体ね。蟻やミツバチみたいな」
「ええ。だから記憶があるのに行動が説明できない‥‥古庄先輩の記憶があいまいなのはこのためだった‥それに付近の電子機器が狂う原因もこの生体電流の影響です」
「付近の電子機器が狂う‥‥じゃあ、東舞校の教官艦が電子機器と誘導弾が全て機能不全を起こしたのって‥‥」
「このRATのせいかもしれないわね」
「でも、手は残されているわ」
「えっ?」
「晴風から報告書が届いたわ。この生物が媒介するウィルスあり。試作した抗体を送るので増産されたし、と」
「抗体を学生が?」
「晴風には鏑木美波が乗っているのよ」
「え?あの海洋医大始まって以来の天才?」
「飛び級でまだ海洋実習をしてなかったから今年済ませたいと言われてね」
「変わり者とは聞いていたけど…でも助かりましたね」
「感染後の経過時間が短ければ海水がウィルスに対し有効と推測される。しかし時間経過と共にウィルスが全身に行き渡った場合抗体の投与のみが効果的と思われる」
「それと、もう一つ厄介なことが・・・・」
「例の集団のことね?」
「ええ・・・・実はそのウィルスはもともと連中が開発していたことが分かったのよ。それを研究主任が盗み・・・・」
「今回の事件に発展・・・・それでその集団の正体って・・・・」
そう言うと真霜はもう一つの資料を私は
「これはマーちゃんが渡してくれたものよ・・・・」
「守君が?・・・・」
そう言い真雪はその資料を見る。それは今回の事件の黒幕についての資料だった・・・・
「『アーネンエルベ』・・・・かつて守君のいた世界で世界大戦を引き起こしたナチスの研究機関・・・・・」
真雪は資料を読み続けた。ナチスの歴史、そしてアーネンエルベの歴史・・・そして守のいた世界での第二次、第三次大戦のナチスドイツの行動など事細やかに書かれていた・・・・
「まさかそんな集団が存在していたなんて・・・しかもその集団がこの世界に・・・」
「ええ…私も驚きだけど。確かな情報だわ…現にその工作員を拘束しているわけだし・・・・」
「その人物から何か聞き出せたの?」
「いいえ・・・何もしゃべらないわ・・・・ただわかることはその連中がこの世界で何かを引き起こそうとしていることは確かよ」
「・・・とにかく今は例のウィルスを何とかしないとね」
「急いで抗体の量産を始めます」
「そうね、そうして頂戴」
真雪は急ぎ、抗体の量産を依頼した。すると真霜の携帯から電話が鳴る。真霜がそれに出るとそれは先ほど偽真霜と話していたブルーマーメイドの隊員からだった
「どうしたの?」
『あっ!宗谷一等監察官!先ほど言い忘れたことが・・・・実はドイツから来た人についてと例の報告書についてですけど・・・・』
「言い忘れたこと?・・・・それにドイツって・・・・何の話?」
『え?だって先ほど、ここにドイツからやってきたブルーマーメイドの隊員と一緒に本部に入ったじゃないですか?』
「あなた何を言っているの?私は今、横須賀女子に・・・・・・」
真霜が言いかけたとき、真霜と真雪は
「「(まさか・・・・っ!!)」」
すぐに状況を把握した
『あの・・・』
「いえ、なんでもないわ。すぐにそっちに行くからあなたはそのドイツの隊員を客間へ連れて来て」
『わ、分かりました・・・・』
隊員の返事に真霜は電話を切る
「お母さん!!」
「ええ!!」
そう言い二人は部屋を出るのであった。
場所は戻りブルーマーメイド本部では・・・・
取調室
「いい加減話してください・・・・」
取調室では一人のブルマーが捕虜にした例の工作員を尋問していたが相手は一切喋らずほとほと困り果てていた。するとドアからノックがし
「監督官の宗谷です」
そう言い真霜が入ってきた
「私もそこの人から話を聞きたいのだけど少しいいかしら?」
「はい。ご苦労様です」
真霜は、工作員から話を聞く為、しばらく2人だけにして欲しいと頼み、ブルーマーメイド隊員もそれを受け入れ、退出する。そして二人だけになると偽真霜は
『・・・・ずいぶん情けない姿をさらしてくれたな・・・・』
ドイツ語で工作員に言うと工作員は目を見開き冷や汗を流した
『そ…その声は大佐殿・・・・・・』
震える声でそう言う工作員に偽真霜は彼女に近づき、鞭を取り出し顎に軽く当てる
『間抜けっ!!・・・・・本来はお前を消す所だが、ヴェアヴォルフ作戦には一人でも人員が必要だ・・・・・今回だけは助けてやる・・・わかったか!!』
そう言うと偽真霜は彼女の拘束具を鞭で破壊した
「来い・・・・それとこれに着替えろ」
そう言い偽真霜は工作員にブルーマーメイドの服に着替えさせ。部屋を出るのだった。そして例のドイツのブルマー・・・・大尉と合流した
「・・・爆弾は設置したか?」
「はっ!例のことについて書かれたデータとウィルスの抗体のデータがまとめられた資料室にて設置完了です。それで・・・宗谷真霜の部屋にあるというデータは」
「ふん…すでに消去してある。お前たちは先に戻っていろ・・・・」
「「はっ!」」
そう言い二人は先に車に乗りその場を去るのだった。そして残った偽宗谷真霜は
「ふっ・・・・データを処理すれば・・・・我々の計画は万事うまくいく・・・・・」
そう笑うと・・・・・
「そんなにうまくいくかしら?」
「っ!?」
背後から声がし、振り向くとそこには真雪が立っていた
「お母さん!!」
「もうお芝居は止めた方がいいわよ真霜・・・・いいえ。アーネンエルベの工作員と言った方がいいかしらね?」
「わ、わたしは・・・・」
少し驚きながらも真雪の言葉に答えようとする偽真霜だが
「もうネタはばれているのよ・・・・・見なさい」
と、指をさす方向に偽真霜は見ると
「なるほどね・・・・これなら他の隊員が騙されるわけね・・・・・気味悪いほど似ているわ」
そこから本物の宗谷真霜が現れた
「・・・・貴様どうやってここに」
「さっきあなたが入り口の前で話した隊員がいたでしょ?言い忘れたことがあったからと私に電話をかけてきたのよ・・・・詰めが甘かったみたいね」
真霜の言葉に偽真霜は
「ふふ・・・・・ははははは!!!」
と、大きな笑い声を出す。そして彼女らを見て
「ばれた以上、こんな顔は御用済みだ!!」
そう言い偽真霜が制服を脱ぎ捨てるとそこには親衛隊服を着た眼帯の女性が立っていた
「なっ!あなたは・・・!?」
「ふふ・・・・改めて自己紹介させていただこう・・・・・ドイツ第四帝国武装親衛隊にて研究機関『アーネンエルベ』の武装部隊「SHOCKER」指揮官・・・・・親衛隊大佐のハイルヴィヒ・イイノデビッチ・ゾル。人は私を『ゾル大佐』と呼ぶ・・・・」
「あなたが例の事件の!!」
「その通りだ・・・・まあ、あの研究員が盗み出さなければここまで大きくはならなかったがおかげでこちらの実験ができる・・・・・」
「実験ですって?」
「そうだ・・・・この際だから教えてやろう。我々の目的は我々の世界の大戦にて開発中の生物兵器・・・・それらに出されるウィルスや音波によって人間を戦闘人間として操ることだ・・・・人間は必ずしも心がある・・・・そして戦闘の中、死の恐怖を感じれば恐れ戦えなくなる。だがそれを除けばどうなる?」
「…あなたまさか!!」
真雪が何か気づくとゾルは笑い
「お察しの通りだ。それさえ取り除き、そしてとある命令を出せば感染者は命令通りに動く・・ただ何も感じず罪悪感もない一人一人がただの兵器となる・・・それがヴェアヴォルフ作戦だ!!」
「狂っている…あなた人間じゃないわ!!」
「ふふ…それはこの私にとっては誉め言葉だ・・・それと狂ってると言ったが、世の中は常に狂った連中が国を・・・世界を作り続けているというのをお忘れかな?君たちの乗っている船。そして学生たちが乗っているのも元をただせば戦争の道具・・・・狂った者たちが作った産物であり、そして今いる海洋女子学生もいわば、いざ戦争になったときの兵士として育成する産物だ・・・・」
「私たちはそんなつもりはないわ!!」
「君個人はそうでも世界情勢がそれを許さないだろう…現に我がヴェアヴォルフ作戦で感染した。海洋学校の生徒たちは実にいい実験材料だ・・・・兵器として申し分ない」
「黙りなさい!!絶対にあなたを止めて見せるわ!!!」
真霜がそう言うとゾルは
「では訊こう。宗谷一等監察官。君は我々を探るためにブルーマーメイドの隊員を送ったが…なぜ彼女らは一人として戻ってこない?」
「・・・・・まさか!!」
「そう・・・お察しの通り、我々がすべて始末し海の底に散ったからだ。戦争を知らない、たかが警備隊ごときが戦争を経験し激戦を潜り抜けた精鋭部隊に勝てるわけがないだろう…愚かな」
「・・・・この!!」
そう言い真霜はゾルを捕まえるべく向かうが
「ふふ…私の名を聞き・・・素顔を見たものは必ず死ぬ!!」
ゾルはそう言うと持っていた鞭で真霜の顔を思いっきり叩き、真霜は倒れる
「きゃあ!!」
「真霜!!あなた!!」
真雪はゾルを睨むが、ゾルは手に何かのスイッチを持ちそれを押すと、建物から爆発音が聞こえた
「っ!?」
そのことに二人は驚く。すると中からブルマーの慌てた声とホースで水が出て消火作業をしているのが見えた
「ふふ・・・・これで例の資料やウィルスの抗体についての資料は消えた・・・・・今回はあいさつに来ただけのためここらへんでお暇しよう・・・・・ああ、それとだ我々の秘密を知った晴風とその乗員には近々消えてもらう」
「何ですって!?」
「では・・・・・auf nimmer Wiedersehen」
そう言うとゾルは再びスイッチを押し、また建物から爆発が起きる。そしてゾルは爆発の混乱の中、隠し持っていたジープに乗り込み逃げ出すのだった。
そして消火作業の中、真霜と真雪は
「それで真霜・・・データの方は・・・・」
「抗体の一部の資料は海洋研究の方に残っているわ・・・・でも残りは」
「そう・・・・・それにしても恐ろしい組織ね・・・・簡単にはいかなそうね」
「ええ・・・・それよりお母さん。ましろやマーちゃんの乗る晴風が・・・・」
「分かっているわ・・・・・無事だといいんだけど」
二人はゾルの言ったことに不安を抱えるのであった。そしてその不安は的中することになるのだった