トラック諸島沖で偵察飛行に出た守は霧の中、行方不明となっていた戦艦・・・・いや大型直接教育艦比叡と遭遇した。
しかし、守の乗る二式水上戦闘機は比叡艦橋に設置された九二式七粍七機銃の銃弾を浴び被弾し、守自身も被弾する。
三時間の飛行末、守は晴風のもとへ帰ることができたが、比叡に撃たれた際の傷があまりにも深く、艦内で倒れる。
だが、晴風の衛生長及び保健委員である鏑木美波の治療とましろの輸血のおかげで命を取り留める
だが、安心したのもつかの間、晴風の前にゾル大佐らナチスによって操られ晴風を亡き者にせんと、比叡がその姿を晴風の前に表したのであった・・・・・
(ナレーター・納沙幸子(仁義のないナレーション風))
「遠くから見ると武蔵そっくりですね・・・でも大きさが全然違いますし・・・野間さんもそのせいで距離感が狂ったのでしょう。」
幸子は、タブレットで武蔵と比叡の艦データを見比べていた。確かにマチコが見間違えるのもしょうがない。
戦艦比叡は、金剛型2番艦にして、改装時、大和型のテストとして似た艦橋を設置され遠目で見れば、武蔵と比叡を見間違えるのは、当たり前だ。
「行方不明になっていた比叡がこんな所に居たとは・・・」
ましろは、西之島新島で消息を絶っていた比叡がこんな南の海域に居た事に驚いていた。そして・・・・
「(守は…あの船に・・・・)
ウィルスに感染されてたとはいえ、可愛がっている弟を撃ち怪我させた相手に怒りがこみ上げそうになる…だが、ましろはいたって冷静だった。なぜなら先ほども言った通り。あの船は例のラットによって感染している。いわば事故に近い物だ。心の底ではわかってはいるが何とも複雑な思いだった。
「ミャン~」
「あっ!?」
複雑な感情を抱く中、突然、後ろから鳴き声が聞こえてきて、ましろは、後ろを向く。
「ミャン・・・・」
すると、其処には、多聞丸が皿の横に座り、餌をくれとおねだりしていた。
「あぁ・・・分かった、分かった。」
ましろは、慌てて餌を揚げる。
「比叡の位置と進路を学校に連絡して」
明乃は、直ぐに比叡の位置と進路を横須賀女子海洋学校に連絡するよう指示する。
だが次の瞬間
『比叡発砲!! 』
「何だと!? 」
「うっ!?」
突然、比叡が晴風目掛けて、砲撃してきた。
「緊急回避!!最大船速!!取舵一杯!!」
「取舵いっぱ~い!!」
晴風は、急いで左に舵を切り、砲撃を回避する。だが、比叡は容赦なく砲撃を続ける。
「学校からの指示は? 」
「ブルーマーメイドの派遣要請をしてくれました・・・到着は4時間後、それまで可能な限り比叡を捕捉し続けよ・・・但し、晴風の安全を最優先にとの事です。」
横須賀女子海洋学校からは、比叡に対して、ブルーマーメイドに応援を要請しているが、到着は、4時間も掛かるので、それまで晴風は、比叡を見失わない様に捕捉し続けよと指示を受ける。
「補足・・・・・」
明乃は小さく呟く。相手は36センチ砲を積んだ戦艦。晴風みたいな駆逐艦などは、一撃で撃沈出来る。逆に晴風の手法では比叡に傷すらつけることは出来にくい
その為、比叡の捕捉は、命がけである。
皆が深刻そうな顔をする中・・・・
「ん?・・・・あっ!!」
隣のましろがある事に気づく。それは、多聞丸が今度は、艦橋で便を出そうとしていからだ。
「ああ!?トイレは其処じゃない!? 」
ましろは、急いで多聞丸を便所へと連れて行く。
「・・・リンちゃん、距離をとって大きく回り込んで比叡の後ろについて・・・」
「はい! 」
鈴は、明乃の指示に従い比叡との距離を離し回り込む。
「撃ってきたという事は、比叡も例のウィルスに・・・」
「うん、感染してるんだと思う・・・・武蔵と同じ様に・・・」
比叡の行動を見て、2人は、比叡が例のウィルスに感染していると推測した。
そんな時
「待ってください!!」
隣で周辺の海域情報を調べていた幸子がある事に気づく。
「比叡がこのままの進路、速度で航行すると・・・3時間後には、トラック諸島に到達します!! 」
『えっ!?』
何と比叡が向かう場所には、最大の要所、トラック諸島があった。
「トラックって・・・確か?」
「はい、居留人口1万を超えます・・・おまけに海上交通の要所なので1日平均千隻の船が出入りします。」
「ブルマーの到着は4時間後。間に合う可能性は低い」
ミーナがブルーマーメイドが間に合わない事を示唆する。
「もし、比叡がトラックへ入り、そこからウィルスが拡散したら‥‥」
鈴が最悪の事態を想像する。
「トラックの船舶利用から予測すると、世界中にこのウィルスが広がる‥‥私達で比叡を止めないと」
「具体的にはどうするつもりじゃ?」
ミーナが明乃に比叡の対処を尋ねる。
「晴風に引きつけてトラックへの航路から逸らせば・・・」
明乃は、自ら晴風に比叡を引き付けて、トラックへの航路から逸らす・・・つまり晴風が囮になると言う事だった。
「追尾と比べると被弾の危険性が格段に上がりますが、それでもやりますか?」
ましろの問いに明乃は
「うん・・・・それにシロちゃんも答えは出ているんでしょ?」
明乃の言葉にましろは静かに頷き
「はい・・・・守が命を懸けて偵察して見つけてくれた・・・・守の行動を無駄にしたくない」
「うん。それに足はこっちの方が早いし何とか、なると思う。」
明乃も同意する。
「ですが、これは追尾と比べると被弾の危険性が格段に上がる。次に砲撃戦で比叡を航行不能にするしかありませんが・・・・最悪沈没させることになっても・・・・」
何と晴風で比叡の足を止めるしかないと言ってきた。例え沈めても
『えっ? 』
ましろの言葉に艦橋にいる全員が唖然とする。
「・・・比叡の舷側装甲は、武蔵のおよそ半分・・・砲戦では、無理ですが、雷撃なら可能です。」
幸子がタブレットで比叡の装甲強度を調べ、砲撃では、無理だが、魚雷なら沈める事が可能だと言う。
「よっしゃきたぁー!!来たよー私の時代!西崎、慎んで沈めさせていただきま~す!あ~待ってました・・この時を、撃って撃って撃ちまくるぞ~!」
雷撃と聞いて、芽衣が自分の出番だと興奮するがましろはこう付け加えた
「ただ。それは最悪の事態になった時ですし、誰も沈めろとは言ってません・・・」
ましろは沈めるとは言ったもののそれは、あくまでも過程の話であって足を止める方法がないと言うだけの話であった。
皆はてっきり、弟である守を怪我させられた怨みで言ったのかと思っていたが、彼女はいたって冷静であり、自分を見失っていなかった
そのため仮定の話だったことに皆は少し安堵するのだったが
「え~~・・・・・」
雷撃戦はないと聞いた芽衣のテンションは下がる
「ですが、このままでは、距離を取りながらの追尾しかありませんが。ですがそれだと最悪晴風にも被害が出る可能性があります・・・・」
「・・・何とかして、沈めずに比叡の足を止めよう。」
「シュペーの時と同じ事を? しかしあの時ですら無理だったんだぞ!!」
明乃は、先のアドミラル・グラフ・シュペー戦と同じ作戦で比叡を止めようとするが、それにましろが無理だと反対する。あの時逃げられたのは黒煙を煙幕代わりにしたのと守の急降下爆撃があって逃げることができた。だが、守は負傷し医務室にいまだに目が覚めないままだ。仮に目が覚めていても今の守に飛行機の操縦は自殺行為であり何より二式水戦には爆装はもちろんエンジンが故障しているため不可能だ
「両舷に副砲7門ずつ・・・此方の射程まで乗せる前に蜂の巣ですね・・・」
幸子の言葉に艦橋にいる皆はどうすればいいか考える。そんな時
『あも〜邪魔ぞな!!』
突然、下の海図室から聡子の騒ぎ声が聞こえて来て、下を見ると
「ミ~ミャン!?」
艦橋と海図室を繋ぐパイプから多聞丸が出てきた。
「お前も邪魔!!!」
「ぬう・・・う・・・う・・・」
続いて五十六も出てくるが、見事にその出たお腹がパイプに引っ掛かっりじたばたする
「はっ!? 」
明乃はパイプに引っ掛かった五十六の姿を見って
「比叡を・・・止められるかも!」
明乃は、比叡を止められる案を思い付く。
「えっ!?如何やって?」
果たして、どんな案か、明乃は、ましろに説明するのだった。そして明乃は、直ぐに横須賀女子海洋学校に連絡する。
一方、ブルマー本部ではいまだに消火作業が行われる中、無事だった部屋の中にいた真霜と校長である真雪。すると部屋からブルマーの隊員が入ってきて
「すみません!宗谷校長!たった今横須賀女子にいる教頭からお電話が!!」
それを聞いた真雪は隊員から電話を受け取ると
『校長、晴風より通信です。』
『あっ!?』
『繋ぎます。』
晴風からの通信だと聞いて、真雪は、直ぐに電話をスピーカーモードにする。そして真霜も部屋にあるモニターにつなげると
「此方航洋艦晴風艦長の岬明乃です・・・現在、比叡監視の任務に就いていますが、比叡もさるしまや武蔵と同じ状態になっていると思われます・・・このままだと2時間以内にトラック諸島に到達する見通しなので、比叡の足を止める作戦実行の許可を下さい。』
明乃は自身が思いついた作戦の実行許可を真雪に要請する。
「晴風一隻で比叡を?しかも昼間に・・・・無理よ!・・直ちに退避を・・・」
一緒に電話を聞いていた真霜は、反対する。
夜戦ならば速力と機動性が有利な駆逐艦でも勝機はあるが、昼間の戦闘は視界もよく戦艦など砲戦が得意な艦が有利だ。
その時
「あっ!?」
モニターに晴風から作戦の概要が送られてきた。
「・・・・・・よく考えられてるわ・・・これなら実行可能ね!」
送られてきた作戦の概要を見て、真雪は、可能だと判断する。
「そんな、危険すぎるわ!・・・それにまたあの連中が乗艦している危険性も・・・・ブルーマーメイドはまだ来ないの!?」
真霜は比叡にゾル大佐ら武装親衛隊の兵士が乗っている可能性があるため、危険視し、ブルーマーメイドの到着を待つように言うのだが
『残念ながら、間に合いません・・・その為、今この海域に居るのは、私達だけです・・・やらせて下さい! 』
「・・・燃料は足りる?故障個所はない?」
『はい、大丈夫です。』
「クラスの子達の体調は?」
『問題ありません。燃料、弾薬は問題ありません。乗員については、ブルーマーメイド臨時隊員の森守さんが飛行機での偵察飛行中、比叡と遭遇し、機銃で撃たれ負傷しています』
「(マー君が撃たれた!?)」
真霜は守が撃たれて怪我を負ったことに驚く
「それで、その人は大丈夫なの!?」
『はい!衛生長の治療に一命はとりとめましたが、いまだに目が覚めていません・・・・・』
「(マーちゃん・・・・)」
明乃の言葉に真霜は不安になる中、真雪は
「・・・・・・わかりました。作戦実行を許可します。但しクラス全員と話し合ってからにして」
「わかりました。ありがとうございます! 」
学校側の作戦許可を得た明乃は真雪との電話をきる。
「いいの?お母さん。」
「作戦概要を見た限り決して無謀なものではなかったわ。それにほら‥‥」
真雪はパソコンにある物を映した。
「えっ?猫?」
パソコンの画面には五十六と多聞丸の姿が映し出される
「晴風の報告でね・・・RATを捕らえた猫にはウィルスは、感染しなかったのよ。」
「あっ・・」
「良い風が吹いているのかも知れないわね・・あの艦には・・・」
「でもお母さん・・・・マーちゃんが」
「分かってるわ。すぐに晴風のところに向かっているブルーマーメイドの船に一命負傷者がいることをすぐに伝えて頂戴。ことは一刻も争うわ」
「分かったわ」
そう言うと真霜は部屋を出る。そして真雪は
「無事を祈るわ・・・・・」
小さく呟き彼女らの健闘を祈るのであった