「(・・・・墜ちる・・・・・機体がどんどん墜ちていく・・・・それに目の前が真っ赤だ・・・・俺は…ここまでなのか・・・・)」
俺はもはやこれまでかと思い死を覚悟した。そして目の前は蒼空から一転、水の中に変わった。
激しい水しぶきの音・・・・そして気泡・・・・氷のように冷たい水の感触・・・・
「(沈む・・・・・冷たい海底へ・・・・)」
機体とともに海底へと沈む守・・・・すると誰かが自分を抱きかかえ、海上へと運ぶ感じがした
「(温かい・・・・それになぜか心が落ち着く…この懐かしい感じは何だ?それに誰が俺を持ち上げようとしているんだ・・・誰なんだ?)」
守はうっすらと目を開き、上を見上げ自分を抱きかかえる人物を見る。
それは海面の太陽の光で良く見えなかったが女性に見えた・・・・だがその女性の下半身は人間の足ではなく・・・・魚のような尾ひれがあった
「人・・・魚?」
それは神話やお伽話に出てくる人魚であった。そして自分を持ち上げる人魚と目が合う。海面の逆光で顔はよく見えないが微笑んでいるように見えた。そして影が差しその人魚の顔が見えた。その人魚の顔は守がよく知る人物の顔だった
「(ましろ・・・・・姉さん!?)」
「っ!?」
不意に俺は目を覚ました。空気が肌に触れる感触。体に伝わる自分自身の重み。そして見た事のあるような天井が目に入った
「俺……生きて・・・? いてっ!」
全身に走る鈍い痛み。体が鉛のように重い。だが、その感触こそが、自分がまだ生きている事の証明となった。どうやら自分はベッドに寝かされているようだ
「(どうやら、まだ死んではいないようだな……。にしても)」
「ここは……、確か医務室・・・そうか・・・俺は確か比叡に撃たれて・・・・・」
満身創痍で晴風の元に戻ったまでは覚えている。だがその後の記憶がない。だからこそ守は状況を確認する為に、体を少し起こそうとすると
ガバッ!
「うわっ!?」
急に視界が真っ暗になる。目に、もとい顔全体に何かが押し付けられ、息が苦しい
後頭部にまでも腕が回されており、頭の上にも手が置かれている
力強く抱きしめられている
自分が誰かに頭を抱きしめられ、顔が胸に埋もれていると把握するのには、少し時間がかかった
(や、柔らか・・・っじゃなくて! く、苦し・・・息が……)
「―――! ―――!」 グラグラ
軋む体を何とか動かして、抱きしめている相手に意志を伝えるすぐに相手は理解し、放してくれた
「プハッ! ハァ……ハァ……」
呼吸を整えて、相手が誰かを見る。そこにいたのは
「・・・・・」
涙を流し、守の顔を見るましろの姿だった。
「ね・・・姉さん・・・・・」
守の言葉に、しかし彼女は俺の呼びかけには応えず
ギュッ
「あっ……」
すぐにまた、ましろは守に抱きついて来た
今度は両腕を背中に回され、ギュッと、体全体を押し付けるように抱きしめられた
ましろはそのまま更に力を込めて、体を押し付けるように抱きしめてくる
「いだだだだっ!!姉さん!痛い!痛いって!!」
思った以上に力が強かったのか守はそう言うのだが、ましろには聞こえていないのか、力は若干緩んだが、彼女は離れず、更に体を密着させてくる
「姉さん・・・痛いって・・・・」
「・・・良かった」
「・・・・・え?」
「死なないで……、目を覚ましてくれて……、本当に良かった・・・」
「………………」
守は軋む右腕を何とか動かして、ましろの背中に手を回して力無く抱き返す
「姉さん…………ごめん」
「全くだ……! 本当に・・・、全く・・・心配をさせて……、全く・・・」
「(本当に、心配させちゃったんだな・・・)」
守はましろを心配さえたことに若干の後悔を感じた
「姉さん・・・・それより比叡はどうなったんだ?」
守はましろに比叡はどうなったのか訊いた
「安心しろ。比叡は晴風のみんなで何とか座礁させて動きを止めた・・・・」
「そうか・・・・良かった」
守は安心して幾をつくとましろは
「守・・・・ごめん」
「え?なんで姉さんが謝るんだよ?」
「私たちが飛行機で偵察に行かせなければ守は怪我をしなかったのに…私の責任だ。あの時私が無理を言ってでもお前を止めていれば・・・・」
ましろは嫌な予感を感じていたのにもかかわらず守に偵察に出させたことを謝ると
「マー君!!」
そこへ明乃や晴風のみんなが一斉にやってくる
「よかった~目を覚ましたんだ!!」
「モモちゃんやヒメちゃんが、慌ててたから、死んじゃったと思ったんだよ!!」
「大丈夫!どこか痛くない?」
「うぃ・・・・・」
とみんなが心配そうに言う中、明乃は
「マー君!ごめんね!!マー君を危険な目に…私が飛行機で出てなんて言わなければ…本当にごめんね!!」
明乃も守に謝るが守は首を横に振り
「あれは艦長や姉さんたちのせいじゃないよ・・・・飛行機での偵察は俺が志願して進言したことだし‥‥何よりこの怪我は・・・俺の慢心から生まれたものだよ」
守はそう言い真剣な顔をしこう続けた
「俺はこの世界は後期とは無縁の世界。だから対空戦闘の概念がないから問題ないと高をくくっていた・・・・・その代償がこれだ・・・油断しまんした瞬間がこれだ・・・・俺は航空兵として…戦場で戦う軍人として忘れてゃいけないことをすっかり忘れていました・・・・逆にこの怪我で済んでよかったと思っています」
そう、この怪我の代償は自身の油断であり慢心が原因で起きたものだと守は思っている。戦闘気乗りとして常に慢心はするなと杉田曹長に教えられてきたが、この世界では対空戦闘の概念がないと油断をしていた。
その結果がこの負傷だ。逆にこれで済んだことをよしと思っていた
「それよりも謝らなければいけないのはこっちの方です。みんなに心配させて本当にごめん!!」
と深々と頭を下げるとましろは守の頭を撫で
「もういいよ・・・・お前が無事で・・・ただ・・・もう無茶なことはするな・・・・お前が危険な目に合うのは見て耐えられないから・・・」
「ああ…分かった…気を付けるよ」
そう二人は笑い合う。それを見た他のみんなは
「(羨ましい・・・・)」
二人の仲の良さを羨ましがるのであった。その後守は美波さんのサイド体の診察を受けたのだが・・・・
「なぜが…どうしてこうなってる?」
と、首を傾げられた。なぜなら守の傷は思いのほか回復が早く。ふつうにあるいてもだいじょうぶだそうだ。ただ。やっぱり無理に激しい運動をすれば傷口が開くためNG。もちろん飛行機やスキッパーに乗るのも禁止された。
そして、ブルーマーメイドの到着を待つ中、晴風乗員は座礁した比叡を見ていた
「私達が助けたんだよね…」
「トラックと比叡と両方とも…」
「やっぱり、うちの艦長っていけるクチなのかも」
「いや、その誉め方おかしいから…」
「でも…マー君も無事でよかった…」
「あとでお見舞いに行こう」
比叡、そしてトラック諸島、ひいては世界を救った事に晴風の乗員達は歓喜した。
そして、それは彼女達にも今後の大きな自信にもつながった。そして守もましろに支えられながら座礁した比叡を見て、再度、比叡がトラック諸島襲撃をすることを阻止できて安堵していた
そんな時
『ん?』
向こうから黒い塗装をしたインディペンデンス級がやってきた。
「姉さん・・・・あれって」
「ああ・・・・・まさかと思うが・・・・」
ふたりは黒いインディペンデンス級を見て、雅かと不味い表情をする。
その艦は、ブルーマーメイド所属の弁天だった。
そして、弁天が晴風の横に泊まると黒いマントを着たブルマー隊員が宙返りしながら晴風に着地した。
「ブルーマーメイドの宗谷真冬だ・・・後は任せろ・・・」
それは、正しく、宗谷家の次女であり、ましろ、守の姉である宗谷真冬だった。
「おっ!?」
突然、真冬は、何かに気づく。すると
「シロ!じゃねぇか!?」
真冬は、明乃の後ろに居た妹のましろに気づく。
「久しぶりだな、おい!」
真冬は、ましろの肩を無理やり抱きながら、再会を祝う。
「ちょ、止めてよ姉さん!?」
だが、ましろは、嫌がる。
「成る程、名字が同じですしね!」
「なんだ縮こまりやがって、久しぶりに姉ちゃんが根性注入してやろうか?」
「根性・・注入?」
そして、明乃は根性注入に反応する。
「要らないわよ!」
ましろは、要らないと言うが
「あの!お願いしても良いですか?」
明乃は、真冬に根性を注入してくれとお願いする。
「えっ!?」
それを聞いたましろは、驚き。
「ば、馬鹿やめ・・・!!」
ましろも止めるが
「おう!任せとけ!」
真冬は、笑顔で任せろと言い。
「覚悟は、良いな?」
拳を鳴らす。
「はい!お願いします!」
「よ~し、先ずは、回れ右だ!!」
真冬は、明乃に回れ右と命令する。
「はい!」
明乃は、回れ右をする。真冬は、明乃に構え
「行くぜ!!・・・・・根性・・・注入・・・・・・!!」
明乃に根性を注入しようとするのだが
「やめなさいっちゅうの!!」
「ぎゃぁぁぁぁー!!ギブギブ!!って、守じゃねえかよ!!」
守がすかさず真冬にコブラツイストをかけ阻止した。
「お前確か撃たれたはずだよな!元気じゃないかよ!?」
「ええ・・・・機銃で撃たれて怪我するのは向こうでよくあったので・・・・それで真冬姉・・・・横須賀の約束忘れたの?」
「え?・・・・」
守が言った約束とは。9年ぶりに再会した時、もう関原をしないという約束だった
「あ…あはは…でもこれは私の愛情であり、根性注入と言った鍛え方であって決してセクハラじゃ・・・・」
「・・・・・」
「いででっ!!わかった!悪かった姉ちゃんが悪かったから解いてくれ!!腕が取れる!!」
涙目でタップする真冬に守は技を解いた
「いてて・・・・お~いった~~お前は本当に容赦ないな・・・・姉ちゃん悲しいぞ」
「だったら今後は控えてください」
「悪かった…悪かったって・・・・あっ!そうだ守。お前に手紙預かっていたんだ」
「・・・・・・手紙?」
真冬はそう言って守に手紙の入った封筒を手渡す。守は受け取り宛名を見ると
そこには『山口章香』と書かれていた
「っ!?」
その名を見た守の顔色が変わった一瞬固まって細かく震え出したのだ
そして守は封を切り手紙の内容を見た
晴風という駆逐艦に乗る航空兵へ
私に接触してきた、ブルーマーメイドという組織から、この世界にはないという飛行機に乗る日本人がいると聞きこの書を認める。私は日本国防海軍少将の山口章香である。南方のニューアイルランド諸島付近の岩礁にいる。当方は大破擱座した航空母艦「信濃」とともにいる。
もしも、貴官に当方と会いたいという意思があれば下記に返信されたし
「どうしたのマー君?」
「守?」
手紙を読み固まる守に対し皆は心配そうにすると
「ふふふ・・・・・・あははははっ!!!」
急に笑い出す守に皆は驚く中、守は
「生きてた・・・・・生きていたんですか!!多聞丸三世めっ!!!」
と笑いながら空へと叫ぶのだった