現在晴風は、シュペーが発見されたという海域に向かっていた。
無論、その船には守もいた。ここでじっとしていられないのが彼の性分なんだろう。
晴風が信濃を後にする際、山口少将は
『私は信濃と一緒にいる。時期に補給と修理で、間宮と明石がここに来ることになっていてな。シュペーが肩着いたら再びここに来ると良い』
煙草を片手にそう、明乃にそう言っていた。
場所は晴風に戻り、アドミラル・グラフ・シュペーの報告を聞いた晴風の生徒は、唖然としながら朝食をとる。
ミーナも報告を聞いてから浮かない顔をしていた。
それもその筈、アドミラル・グラフ・シュペーには、ミーナの仲間の生徒が乗艦している。
そして、その中でも特に心配しているのが、自分に退艦を命じた艦長テアの安否だ。
ミーナは、テアの事が心配で仕方なかった。
「今度はシュペーか‥‥」
再び晴風の前に立ちはだかるアドミラル・グラフ・シュペーにましろは呟く。
「ミーナさんが乗ってた艦ッスよね・・・?」
「あの時大変だったな・・・」
「そうスッよね・・・!」
アドミラル・グラフ・シュペーと戦闘した時の事を思い出したのか、媛萌と百々は、あの時の事を話題にしていた。
「艦長如何します?」
ましろが明乃にアドミラル・グラフ・シュペーにどう対処するか問う。
「・・・作戦は・・えっと・・・」
それに明乃が答えようとすると・・・
突然、教室に幸子や楓、美海、理都子、果代子、美甘、ほまれ、あかね、美波の9人が入って来て
「カチコミです!」
『おお・・・!!』
「助けに行きましょう!」
アドミラル・グラフ・シュペーの救出を進言してきた。
幸子がそう言うと楓が自前の薙刀を出して構え、美甘とほまれ、あかねが戦闘糧食を見せ、続いて美海と理都子、果代子が竹筒水鉄砲を構え、美波が白衣の裏に大量の注射器を備えてるのを自慢気に見せ、何時でもアドミラル・グラフ・シュペーの救出に向かえる構えを見せる。
「皆さんやる気ですね…まあかく言う俺もそうですが」
皆の頼もしさに守も頷く
「ワシの為に・・・」
彼女らの頼もしさにミーナは、申し訳なさそうに言う。
朝食を終えた後、明乃達は、教室でアドミラル・グラフ・シュペー制圧救出作戦を練る。
「具体的な、手順は?」
「ミーちゃん!・・・前に聞いたシュペーの足止めする方法教えてもらえます?」
「本気なのか?ド本気なのか?」
ミーナは、自分1人の為に晴風の生徒を危険に晒す様な作戦に気が進まなかったが
「当然です!」
「此処まで来たら、やるしかないでしょ、ミーナさん!!」
既に晴風の生徒達は、覚悟を決めていた。幸子がタブレットでプロジェクターを操作して、ミーナが映し出されたアドミラル・グラフ・シュペーの図面を元に足を止める方法を説明する
「燃料中間タンクを加熱する為の蒸気パイプが甲板上に露出しておる・・・其処なら晴風でも破壊可能じゃ、それを壊せば足止めできる筈じゃ‥‥」
「そう言えばマー君が飛行機で爆弾を落としたのって・・・・」
「ああ・・・・その蒸気パイプだ。ただ60キロ爆弾じゃ致命的にはなってないだろうな。あの後修理もされていると思うし・・・・」
守はそう言う。守がシュペーと会敵した際、晴風を守るため主翼につるしていた60キロ爆弾をそこに命中されていた。だが、60キロ爆弾では駆逐艦ならまだしもポケット戦艦じゃ致命傷にはならない。そしてあの先頭から結構日がたっているためすでに修理されていると推測する
「確かに・・だがシュペーは比叡に比べて砲力も装甲も速力も下だ。晴風の主砲なら・・・・」
「楽勝ぽいの・・・」
ましろの言葉に聡子が楽勝だと浮かれるが
「だが、巡洋艦並みの小さな体に晴風では、抜けない装甲と晴風を一撃で沈める強力な28㎝砲を搭載している・・・その上、小さいと言う事は、小回りが利くと言う事だ。危険は、大きい!」
ましろは、アドミラル・グラフ・シュペーは、比叡よりは、小さいが巡洋艦並みの防御力と戦艦並みの攻撃力を搭載している事を説明し、皆に危険は、大きいと言う
「マー君。また飛行機でできない?」
幸子が訊くと守は首を横に振り
「いいや、俺の二式水戦は比叡の時に被弾してエンジンが故障して動かないし爆装もない」
「それじゃ、さっき山口さんの乗っていた空母にある飛行機は?爆弾とか魚雷があったけど?」
留奈が訊く。確かに信濃にはいくつかの艦載機。しかも攻撃機や急降下爆撃機もあり、さらには800キロ爆弾などの対艦爆弾や航空魚雷などがいくつか残っていたが・・・・
「無理だな。信濃にあったのは皆、損傷機。無事な部品をかき集めて取り付けて修理しても時間が掛かりすぎる、その際にシュペーが遠くに行ってしまったら元もこうもない」
「ああ、そうか・・・・」
守の言葉に留奈は頷く。信濃にある航空機はすべて被弾時に破損した損傷機。仮に無事なのがあったとしても、ちゃんと無事に飛べるか不安だった
それを聞いたミーナは、浮かない顔をする。もう手段はないのかと・・・
「で如何します、艦長?」
如何するのかましろは、明乃に問うが
「・・・ミーちゃんは如何したい?」
明乃は、ミーナに如何したいかを尋ねる。
「・・ワシは‥‥」
ミーナの言葉に皆がミーナに注目する。それに対して、ミーナは
「我が艦アドミラルシュペーの乗員の皆を…そして艦長を、テアを助けてほしい!・・・晴風の皆を危険に晒す事になってしまう‥‥」
と言って、ミーナは、危険を承知でアドミラル・グラフ・シュペーの乗員と艦長のテアの救出を頭を下げて頼みこむ。
だが
「大丈夫!!」
「や、やってみましょう!!」
「やろう!!やろう!!」
「うぃ!!」
既に覚悟を決めている彼らに危険など恐れずアドミラル・グラフ・シュペーの乗員と艦長の救出しようと士気が上がっていた。
「一度なめられたら終生取り返しがつかんのが、この世間よのぉう・・・時には命張ってでもっちゅう性根がなけりゃあ・・・女が廃るんだわ!」
更に幸子がどんな危険な目に遭おうとも、友達の為なら助けると積極的に救出を決意する。
「俺もです。友人が困っているのに何もしなければ、海軍航空隊の名が廃りますよ」
「皆・・・・・ド感謝する」
こうして、晴風によるアドミラル・グラフ・シュペー制圧救出作戦が開始された。
一方、別の場所では
「大佐殿」
「どうした?」
「例のシュペーが晴風に接触するそうです」
「そうか・・・・」
全ての事件の黒幕であるゾル大佐は部下から、シュペーがもうじき晴風と接触するとの報告をしていた。
「それで大佐殿・・・本当に晴風の乗員を洗脳し我が軍の兵とするのですか?情報によれば奴らは落ちこぼれと言われていますが?」
「ああ・・・・だが奴らはこの事件の原因を突き止め、さらには死角として送った比叡を足止めさせた…ただの落ちこぼれとは思えない。それに逆に考えれば、マニュアルにとらわれない臨機応変に動くまさに戦場に必要な人材だ。殺すのは簡単だが、兵…特に優秀な兵の育成補給はそうそうできない。ウィルス洗脳させて、わが軍の駒として扱いたい・・・無論所属は外人部隊だがな」
鞭を手にパンパンと叩きながらそう言うゾル大佐。すると部下は
「それとですが大佐殿。例の我が兵器・・・・ratウィルスを盗んだ連中の研究員と、我々に探りを入れて捕らえたブルーマーメイドノ隊員はどうするのですか?」
「ああ・・・・あいつらか・・・・奴らは釈放する」
「え?釈放するのですか?」
「ああ・・・・釈放だ・・・・ただし。私のやり方でな・・・・」
と、にやりと笑うゾル大佐だった。一方基地の地下にある牢獄の中では研究者やブルーマーメイドの隊員が捕らわれていた。
『科学者、そしてブルーマーメイドの諸君!君たちはゾル大佐の寛大なお心により全員釈放することになった!』
「なんですって!」
「釈放だと!?」
スピーカーからの声を聴いた科学者やブルマーの隊員たちは喜んだ表情をする
「家に帰れる!妻や子供の顔が見られるんだ!」
「ああ、てっきり処刑されると諦めてたのに」
「本当に私たちを釈放するのね!!」
『そうだ!ゾル大佐は嘘は言わない!!今から10分後に大型水上バスに乗せ近くのメガフロートまで送る。直ちに出発の準備せよ!』
その声に皆は喜ぶのだが、一人だけ疑う者がいた。それはブルーマーメイドの設備研究課 主任研究員の 浦賀鈴留だった。
彼女は湖の事件の調査チームに同行していたのだが、他の隊員は殺されたが彼女だけショッカーに捕まっていたのだ。そして彼女は腕を組み
「(信じられないわ・・・・奴らの秘密を知る私たちを簡単に釈放するだなんて・・・・・)」
そう思い彼女は、懐から、小さな酸素マスクを取り出し
「(万が一の時が役に立つかもしれない・・・・)」
そう思うのだった。そして科学者やブルーマーメイドの隊員は大型の水上バスに乗せられ、メガフロートまで送られていった
「まさか、太陽を見られるとは思わなかったよ。もう一生みられないと思ったのにな?」
「ええ・・・青い空・・・海の色が目に染みるわ」
「本当にそうね・・・・」
みんな安心した表情をする中、浦賀は
「(本当にこのまま送り出すだけかしら・・・・)」
そう思う中、水上バスは突然止まりだす
「おい・・・こんなところに止めてどうした?」
「エンジンの故障か?」
「機械には強い。故障なら手伝うが?」
科学者たちは運転手に言うが・・・・
「故障ではない・・・・ここで実験を行うのだ」
「実験?・・・・・何のだ?」
「黙れ!!我がアーネンエルベは…日本の東京全都民を抹殺するための殺人作戦を行う!その前にお前たちで実験するのだ!」
運転手の言葉に科学者たちは
「違う!約束が違う!!」
「そうだ!ゾル大佐は私たちを釈放すると言った!」
科学者やブルーマーメイドの隊員たちがそう言うが、運転手は笑い
「確かに釈放すると言ったが、生きたまま釈放するとは言っていない!!」
「クッソ!!このまま殺されたたまるか!!」
そう言い運転手につかみかかろうとしたが目の前に壁がおりてきた
「っ!?」
皆が驚く中、バスの中に内蔵されているスピーカから運転手の声が響く
「この水上バスの中には一瞬にして空気中の酸素を消す酸欠ガスが内蔵されている…今から実験を開始する!!」
「「「っ!?」」」
その言葉を聞いた研究者やブルマーの隊員たちは顔を青ざめ
「や、やめろ!やめてくれ!!」
「出して!ここから出して!!!」
と大慌てで、窓やドアを開けようとするがビクともせず開かなかった。その瞬間内部に白いガスが勢いよく、噴出され中に充満する。
研究者や隊員は悲鳴を上げ次々と倒れていく中、浦賀は酸素マスクを取り口にはめた。そして運転手は、次々と死んでいく研究者や大尉を見て確認し無線を取り
「ゾル大佐。実験は成功。かつて第三帝国が開発していた毒ガスの改良型は、恐るべき威力です。これを東京に打ち込めばありとあらゆる生物が死滅するでしょう」
と、連絡すると
『くどいぞ・・・・お前の報告を待たずともすでに計算済みだ。既に武蔵の砲弾に例のガスを入れた特別砲弾を秘密裏に積ませている。後は武蔵が東京に向かい艦砲射撃をするだけだ!それよりも実験用の人間を確認したうえで処理しろ!』
「はっ!」
そう言い運転手は無線を切る。そしてしばらくしてナチスのボートがやってきて、兵たちが中に入り、死体をボートの上に乗せる
「・・・・あと一人か」
運転手がそう呟くと、兵の一人がやってきて
「いません!これで全部です!」
「馬鹿な!あと一人足りないぞ!」
「ですが、中には誰もいません」
「逃げ出せるはずがない!探せ!!」
「はっ!!」
そう言い兵士も運転手もバスの中を探し回るが見つからなかった
「まだ近くにいるはずだ!ここは流れが速い!おい!念のためメガフロート付近まで探しに行け!!」
「はっ!」
そう言い数名のボートが付近を探し回る中、一隻だけメガフロートまで向かうのだった。だがそのボートの下で浦賀はしがみついていた
「(死ねない…私はまだ死ぬわけにはいかない…このことを…この恐ろしい計画を知らせるまでは!!)」
そう言い彼女は必死にしがみつくのであった