機関室
「え?守君の飛行機を直していたのマロン?」
機関室で洋美は麻侖に訊いた。訊くところによると麻侖が守とともに二式水戦を修理していたみたいだ
「ああ。信濃にあった飛行機の部品と工具を山口提督から貰ってな、で、シュペーに会敵するまでの間、守と修理してたんでい」
「道理で姿が見えないと思ったら、そう言うことだったのね?」
「いや~飛行機って船とかスキッパーと違ってなかなか面白い構造だったから楽しかったよ~」
とウキウキした表情でそう言う。どうやら信濃にあった航空機の部品と、整備道具を山口少将に無理って持ってきてたらしい。そして戦闘海域につくまでの間、飛べるくらいまで守と一緒に修理をしていたらしい
「それよりもさっきの揺れは何だったのかしら?」
「うんシュペーは艦長たちが助けたんでしょ?」
留奈たちが首をひねると
『報告!守君が飛行機で出撃しました!!』
と、伝声管からまゆみの声が聞こえた
「何でマー君が飛行機に?マー君ってお腹怪我して飛ぶのはダメだって美波さんに言われているはずだよね?」
「なんかあったのかな?」
「とりあえず行ってみよ!!」
そう言い、機関科の子ら全員が階段を上って甲板へと向かうのであった
「いい加減にしろよ・・・・ナチ公!!」
晴風を襲撃するナチスの水上戦闘機の背後に守の二式水上戦闘機がいた
その操縦席にいる守の目は鷹のように鋭く殺気立っていた
守は怒っていた。姉やその船に乗る仲間を攻撃した奴に!
元居た世界ならいざ知らず、ここは平和な時代。しかも今回の事件を引き起こした連中の一味にその平和を踏みにじられることに
「なっ!いつの間に!!」
ナチスのパイロットは驚く。そして操縦桿を横に向け相手の射線に入らないように回避行動に出る。だが守も逃がさないとばかりに追いかける
「くそっ!こいつ!水上機にしては早い!!・・・・・だが!!」
悪態つきながらも回避行動をとるナチのパイロット。だが、ナチのパイロットは急降下する。そして右旋回すると守の背後を取った。それを見た守は
「水偵だと思ったが違う。あれは・・・・」
守は目を凝らしてその機体をよく見ると、複座と思っていたその水上機は単座だったしかも見たことのある機体だった
「アラドだと思ってたが・・・・こいつはヴィルガーかっ!?」
守は相手はドイツ。しかも水上機なら、アラド水上偵察機かと思っていたが、明らかに機影は単座の戦闘機しかも機種を見るとそれはfw190戦闘機だった。どうやらナチがフォッケウルフを水上戦闘機に改造したんだろう。零戦にフロートを付けて二式水戦を作ったように
「(だとすると厄介だ。武装は向こうが上、速度はこちらの最高速度に及ばないが、大体500半は出てる・・・・・)」
相手の武装は20ミリ機関砲4門に機首に13ミリ機銃を付けた重戦闘機だ。
そのうえ
両者の軽快な動きと、無駄撃ちしない行動。明らかに素人の動きではないことに二人は
「「(こいつ・・・・・ベテランだ!!)」」
両者が熟練のエース級だと知る。そしてナチスのパイロットは守の乗る二式水戦の尾翼に書かれているパーソナルマークを見た瞬間、目を丸くした
「(このマーク!まさかシーウルフ!!)」
パイロットはそのマークに見覚えがあった。それは別の戦地に行くため爆撃機に乗り、その地に向かっていたところ、数機の水上機に襲われた。その中で他の水上機が深緑色に対し一機だけ白い水上機がいた。数機の爆撃機の銃火による弾幕で他の水上機が近づけない中その白い水上機は高度を上げその爆撃機の真上に来たと思えば反転して急降下し、前方にいた仲間の爆撃機を銃撃して撃ち落とした。
そして次々と仲間の爆撃機が撃ち落とされ、さらには自身の乗る爆撃機も撃ち落とされた、幸い自分の乗っていた機体は味方陣地へ不時着し助かったが、他の機体は海の底へ没した。それ以来そのパイロットはあの二式水戦のことをよく覚えていた
「(この世界にも来ていやがったのか・・・・まあいい!ここに来てから空戦が出来ずに不満があったから丁度いい!!」
そう言い、パイロットは操縦悍を弾き、急旋回をする。それは戦闘機同士の一騎打ちの合図であった
「一騎打ちとは・・・・ずいぶん腕に自信があるみたいだな・・・・・よし!!)」
守も操縦桿を引き、急旋回する。そして二機はたがいをぐるぐると回り出す
そう、「巴戦」。海外ではドッグファイトと呼ばれる奴だ。だが、これは高速での急旋回をすることにより強いGがかかり、二人の体に大きな圧力をかけた。まるで心臓や内臓が締め付けられ目玉が飛び出しそうな激しい激痛が二人を襲う。しかも守は比叡での戦闘で腹の傷が癒えてなかったためその圧力で傷が少し開き服が血で滲んでいた
だが守は辞める気はなかった。それは相手に隙を与えてしまう危険があったからだ。それは相手も同じなのか一向に巴戦を辞める気配はなかった
そんな激しい空中戦を晴風のみんなやシュペーにいる明乃たちも見ていた。
「すごい・・・・・」
「これが飛行機の・・・・・空の戦い」
と、空の上での未知の戦いにみんな唖然とする。
「守・・・・・」
そんな中、守の姉であるましろは心配そうな表情をする。
「あっ!マー君の飛行機がぐるぐる回るのをやめたよ!!」
芽衣がそう言ったその瞬間、守の二式水戦が急上昇した。そしてそれを追いかけるヴィルガー。だが守は急上昇する際に急激な左旋回をし、相手の背後を取り守を追いかけていたヴィルガーは逆に追われる形になった。
それは旧海軍の戦闘機乗りから代々伝わる技「左捻りこみ」であった。
そして守の照準器には相手のパイロットをしっかりと捉えていた
これで勝敗が決した。
「ううっ!!くそっ!!!」
「・・・・・・」
鷹のように鋭い目で相手を捕らえた守は機銃レバーのスイッチを20ミリに切り替え、よーく相手を狙う
《ダメだっ!!守!!》
「(っ!?)」
咄嗟に脳内にましろの声が響き、守は驚いた瞬間、引き金を引いた。二式水戦の翼内から激しい銃音。20ミリ機関砲特有の爆音が響いた。そして20ミリ弾はヴィルガーのフロートに命中した。20ミリの破壊力にフロート部分は完全にへし折られ、ヴィルガーはバランスを崩す
「くそっ!!バランスがっ!!」
パイロットは焦って操縦桿をひくが目の前の海に突っ込み不時着したパイロットはキャノピーを開け、体を出すと目の前に二式水戦が迫ってきた
それを見た晴風の乗員たちは
「え!?まさか、あの人、撃っちゃうの!!」
「そ、そんな!」
守が不時着した敵のパイロットを撃ち殺すのかと思ったみんなは驚き
「守!!ダメだ!!やめろっ!!!」
ましろもそう叫ぶのだったが、守はそのパイロットを撃たずに素通りした
「なぜ・・・・・殺さない」
その行動にパイロットは唖然とする中、守は
「殺さねえよ・・・・お前には聞きたいことがあるしな・・・それに」
と、小さく呟いた。ここは戦争‥・人殺しとは無縁の世界。だからもう人は殺さない。守はそう決意していた。
だが守も照準を相手のパイロットに合わせた時本当に撃ち殺そうとした。
だがそれをしなかった。なぜか?頭の脳裏に姉であるましろが悲しむ顔が浮かんだからだ。もし殺しても姉さんたちはそれを望んでいない。それどころか自分も人として元には戻れなかったかもしれない
「(姉さんが俺を戻してくれたんだよな・・・・・)」
守はそう呟いた。そして守は無線を取り
「こちら守。今回の事件に関係する人物が漂流中の上保護を求む」
と無線で晴風に知らせた。そしてその後、シュペー艦内でもRATを全て捕まえ生徒の救出と艦も制圧され、作戦は、無事に終了するのだった