ゾル大佐の操るシュペーを見事、救出した晴風。シュペーから飛び立ったナチスの水上戦闘機の襲撃があったものの、守の乗る二式水戦の活躍により、見事敵機を撃墜し、そのパイロットを捕虜にすることに成功した
空は夕焼けにより茜色に染まる時刻。
「美波さん、もう抗体の接種、終わった?」
シュペー甲板で明乃は、美波に殆んどの生徒の抗体接種は、終わったか確認する。
「これで最後・・・」
美波は、これで最後だと言って、自分に注射する。
如何やら、抗体接種が終わっていなかったのは、美波だけだった様だ。
「明乃!ましろ!守!」
「あっ!ミーちゃん!」
ミーナが守と明乃、ましろの前に意識を取り戻したテアを連れてきた。
「ミーちゃん?」
ミーナの事をミーちゃんと呼んでいる事にテアは、不思議に思った。
「紹介する・・此方が…」
ミーナが前へと手を出すとテアは一歩前に出て。
「艦長のテア・クロイツェルだ・・・話は聞いた我々を救ってくれて感謝する。」
そう言ってテアは、明乃に手を出して明乃もそれに応えると
「晴風艦長の岬 明乃です・・・此方が」
明乃も自己紹介をし
「副長の宗谷 ましろです。」
「そして、此方が」
「森守です」
ましろと守も自己紹介をして、お互いに手を交わす。そしてテアは
「そうか・・・・君が例の飛行機械の操縦士か」
と、興味深そうな表情で守を見る
「全員無事でしたか?」
「現状は‥これからゼーアドラー基地に戻って補給と補修だ」
シュペーは現在、左舷のスクリューと第一主砲が破損している状況だ。
それに乗員がウィルスに感染した後、補給が一切されていない状況なので、補修と補給は急務であった。
「それじゃあ、ミーちゃんも‥‥」
「ああ。当然我々と行く」
「えっ!?」
テアのこの言葉に一番のショックを受けたのはましろと守の後ろにいた幸子だった。
幸子はそのまま夕食会に参加することなく、目に涙を浮かべて人知れず自室へ籠ってしまった。
「基地に戻ったら、念の為、精密検査を受けて欲しい。」
美波は、テアにゼーアドラー基地に寄港したら、後遺症がないか精密検査を受けるよう頼む。
「分かった。」
テアは、それを受けると約束する。するとミーナは
「ん?そう言えば守?頬が少し腫れているがどうした?」
「アハハ・・・・まあちょっとね」
守は頬を掻いて困った表情をし、隣にいるましろは後ろめたそうに眼をそむける
その理由は少し前に遡る
それは敵機を撃墜し、晴風のもとへ着水した時のことだ
バシンッ!!
晴風に戻るや否や、守はましろに右頬をビンタされた。その光景に皆が驚く中、ましろは
「守!これ以上心配かけさせないでくれ!!もしお前が死んだら・・・・!!」
涙を流しながら守にそう言った。実際守は美波さんから飛行禁止と言われたのにもかかわらず空を飛び、挙句の果てには傷口が開き出血していた
そのことにましろは守を叱った
「まあまあ、シロちゃんも落ち着いてください。実際マー君のおかげで飛行機の襲撃から助かったわけですし」
幸子がなだめるが
「だがっ!もしも万が一のことがあったら・・・・」
ましろはぽろぽろと涙を流しそう言うと守は
「姉さん・・・ほんとごめん!!」
と深く頭を下げた。守自身も悪いと思っている。だがもし出なければあの水上戦闘機に晴風は撃沈されていたかもしれないと思うと、黙ってはいられなかった。するとましろは守をぎゅっと抱きしめ
「本当だ・・・・昔からお前は本当に無茶ばっかりするんだから」
と、思いっきり抱きしめる。ましろ自身も守が出撃した気持ちを少なからず理解はできていた。だが、怪我が治っていないにもかかわらず、出撃してもし傷口が開いたら、もしも撃墜されたら・・・・そう思うと心配でたまらなかったからだ
「(俺って幸せ者だな・・・・)」
守も姉がそんなに心配してくれて、少し嬉しかった。血のつながりはなく。ましては違う世界の出身である自分をこんなに心配してくれるなんて自分は恵まれているそう感じた
「姉さん・・・・そろそろ放してくれる?」
「やだ・・・・」
「でもみんなが見てるし・・・・・」
「関係ない・・・・・」
といつまでもぎゅーと抱きしめてるましろの姿を見て皆は微笑ましく見ている。幸子に至ってはタブレットで写真を撮り記録していた
「まあ、守も姉ちゃんに心配かけた罰ってことで納得しろよな!」
と、麻侖がそう言うのだが
「それはそれでいいんだけど・・・・・・・姉さんの抱きしめた衝撃で傷口完全に開いちゃって痛いんだけど・・・・・」
「「「「「え?」」」」」
守の言葉にましろは愚か皆が目を丸くすると守の脇腹がどんどん赤く染まっていた。どうやらましろが強く抱きしめたせいで開きかかっていた傷口が完全に開いちゃったようだ
「うわっ!ほんとだっ!!」
「うわぁー守!!ごめん!!」
「ちょっと美波さん何処ッ!!・・・て、あー!シュペーにいたんだった!」
「救急箱と包帯、急いで持ってこないと!!、
と、シュペーに乗り込んだみんなが戻るまで晴風艦内は大パニック状態になるのだった
時は戻って
「まあ・・・いろいろとな?」
「「「「?」」」」
守はそう笑い誤魔化し、事情を知らないミーナや明乃たちは首をかしげるのだった
「ご飯できました・・・」
「できました・・・!!」
杵﨑姉妹がパーティーの準備が出来た事を知らせてきた。
初めての海洋実習でお互い色々あったが、改めて、お互いに交流しようと、交流パーティーをする事になった。
「これは、ラックスフィレだな!」
「そうです艦長!寿司とも言います。」
様々な料理の中でテアは、中央に置いてあった寿司に注目する。
『我々も手伝いました!!』
この寿司作りには、レオナとアウレリアも手伝った様だ。
「・・・・」
寿司に注目していると
「クネーデルやマチェスも乗せてみました。」
とレオナがそう言って、クネーデルやマチェスを乗せた寿司を出す。
「ああ、スシ、サシミ、カロウシってやつか?」
「最後のは、何か違う。」
テアの最後のカロウシと言う言葉に、あかねが何か違うと思う。
「これはアイントプフだな?」
続いてテアはおでんに興味を持った。
「そうです艦長。おでんともいいます」
「お、おでん?」
「ん?」
レオナとアウレリアはおでんを初めて見た様子でおでんをジッと見ていた
「艦長、挨拶を」
「うむ」
ミーナに挨拶をする様に促され、テアは皆の前に立つ。
「我々の不断の努力により、艦と自らの制御を取り戻した・・・このめでたい日に感謝して晴風艦長から乾杯の音頭を頂きたい。」
「えっ!?・・私・・が?」
「はい!」
テアに乾杯の音頭を任せると言われ明乃は、皆の前に立つ。
「じゃあ‥‥皆さん‥乾杯!!」
『乾杯ー!!』
『プロースト!!』
明乃の乾杯の音頭を機に守と生徒達は、一斉にそれぞれ乾杯し、交流パーティーを始める。
パーティーの中で山盛りのザワークラウトを見た美波は、ドン引きしたが、その山盛りのザワークラウトをテアが代わりに貰い、美波は、ホッとする。
如何やら美波は、お子様なのか、野菜の料理が嫌いの様だ。
その他、さっきレオナとアウレリアが作ったクネーデルやマチェスを乗せた寿司を洋美と百々、麗緒、桜良、留奈の5人が試食したが、口に合わなかったようで不味い様な顔をする。
そして、今回の作戦で勇敢に戦った美海にローザから賞状を送られた。
マチコの方は、アドミラル・グラフ・シュペーの生徒に囲まれ注目の的になっていた。そして守もテアから飛行機についていろいろと聞かれた。どうやら未知の機械である航空機に興味を持ったようだ
そしてその後皆それぞれ食事を楽しむ
「はい、艦長あーん」
テアは満面の笑みをしながら口を開き、ミーナからブルストを食べる。
「それソーセージ?」
「あぁ、我が艦特製のブルストじゃ!これがずっと食べたくてな・・・」
「はむっ、モグモグ‥‥なかなかいけますね・・・」
皿に残った2本のヴルストの内一本を食べた楓はうっとりしながらヴルストを食べる。
それを見て、ましろもブルストを取ろうとした時
「うむ!」
「あっ!?」
横から五十六にがめ捕られてしまった。
五十六にブルストをがめ捕られましろは、落ち込む。その光景を見て、周りは、笑ってしまう。
「姉さん。俺のあげるから元気出せよ」
落ち込むましろに守が代わりに自分のブルストを上げる事でましろに救いの手を差し伸べる。
そして、その中でミーナは
「艦長・・・ずっと預かっていた・・・これ…」
そう言って、ずっと預かっていた艦長帽を脱ぎ、テアに返そうとしたが
「被せてくれ!」
テアは、被せてくれと言って、せがみ、後ろを向く。
ミーナは、テアの後ろから艦長帽をテアの頭に被せる。
その瞬間、テアの目から涙が出てきた。
「艦長さん・・・」
「私は泣いてない! 」
テアは、そう言って、手で涙を拭う。
「しかし、其方の艦は相当酷い状態だな・・・」
テアは、晴風の損傷個所を見ながらそう呟く。
「誰のせいかな・・・・でもナイスパンチだったよ!・・・私達を倒すにはちょっと足りなかったけど・・・」
芽衣がテアに健闘を称える言葉を言うとテアは顔を上げ。
「我々と共にゼーアドラーに行って修理を受けたらどうだ?」
テアは、自分達と共にゼーアドラー基地に寄港しないか、明乃に提案するが
「いえ、私達は明石と合流する様に連絡を受けています。」
明乃はこの後、明石と合流する様、学校から連絡を受けていた。その場所は信濃がいるところであった
「そうか・・・では此処でお別れだな!」
「はい」
明乃はテアと再び握手を交わした。
「あっ‥‥」
そして、ミーナは此処で幸子が居ない事に気づいた。
その幸子は部屋で毛布にくるまって仁義のない映画を布団を被って、寂しそうに見ていた。
「盃はかえしますけん・・・以降わしを晴風の者と思わんでつかい・・・・帰るゆうても・・・帰えれんぞ!」
台詞を言いながら、ミーナとの別れを悲しむ幸子。
いつかは、別れる日が来るのは、分かっていたが、いざ別れる日が来ると悲しくて、本当は、別れたくない気持ちで一杯だった。
交流会が終わり、そしてシュペーは出航の準備が整い、いつでも出せる状態となる。
シュペーのメインマストには国際信号旗の『U』 『W』 『1』 の旗が翻っており、意味は『協力に感謝する。御安航を』という意味で、反対に晴風のメインマストには国際信号旗の『U』 『W』 の旗が翻っており、意味は『御安航を祈る』となっていた。
「八木さん」
「何?マー君」
「シュペーが出航したら、見送りにこの曲を流してもらえるかな?」
守は鶫に一枚のCDを差し出す。
「いいけど、何の曲?」
「ドイツの民謡で、再会を胸に別れゆく友を想う歌だよ。別れは辛い‥でも、人は再び出会う‥それを込めてね‥‥」
「わかった」
守の頼みを聞き、鶫はCDをセットする。
シュペーの左舷甲板にはミーナとテアがいた。
「どうした?」
「ココ…いえ、なんでもありません」
そしてシュペーはゆっくりと前に進みだす。
「楽しかったぞ!」
ミーナがそう叫ぶと明乃も、
「私達もです! 良い航海を!」
ミーナとテアに航海の安全を祈った。
「Gute Reisen!!」
シュペーがボォ―!!と汽笛を上げると、幸子は急ぎ部屋から飛び出て甲板に出る。
やはり、このままミーナと顔を合わせずに別れるのはこの先、ずっと後悔すると思い、その思いが彼女を突き動かしたのだ。
甲板から幸子の姿を見つけたミーナは、
「わしゃあ旅行ってくるけん!」
ミーナに別れの言葉を投げかける。
「体を厭えよ~!」
すると、幸子もミーナに返答する。
「ありがと!!」
ミーナは幸子に手を振る。すると晴風から一曲の歌が流れ始めた
「~~♪~~♪」
「これは、『Muss i denn』‥‥」
ドイツ出身のテアは瞬時にこの音楽が何の曲なのか分かった。
Muss i dennを聞き思わず口ずさむシュペーの乗員も居た
そしてシュペーは晴風と離れ旅立っていった
幸子がミーナを見送っていると、後ろからましろが肩に手を掛けて
「間尺に合わん仕事をしたのう」
と言って、珍しくましろが仁義のない映画の台詞を幸子に言った。
「…もう一文無しや」
と台詞で返すとましろの傍にいた守も
「‥‥そうか‥‥でも、出会いがあれば必ず別れは訪れる。でもその別れは永遠ではない筈‥‥別れが永遠になるか一時になるか‥‥それは全てこの後どう動くか‥だ‥‥納沙さんが、またミーナさんと会いたいと思えば、必ず会えるよ」
「マー君・・・・そうですね」
守の言葉に幸子は頷いた。Muss i dennが流れる海原で遠ざかるシュペーの姿を宗谷姉弟は幸子と共に見つめていた
そして、数時間後、守はある部屋にいた。その部屋には一人のドイツ人。明乃と大して年齢の変わらない少女が縛り付けられ、見張りに百々と和住がいた
そしてその少女は守を見て日本語で
「なんや・・・・やっと事情聴取かいな?」
と、なぜか関西弁で言うのだった
シュペー艦橋では
「また会おう・・・・晴風。この恩は必ず返す」
とそう言いどこかへ行こうとするとミーナは
「艦長?どこへ?」
「ブルーマーメイドに報告することがあってな」
「報告?」
ミーナが首をかしげるとテアは
「ああ・・・・今回の事件の発端である。異世界から来たドイツのテロリスト軍団・・・・「アーネンエルベ」特殊武装部隊『ショッカー』の指揮官・・・・・
ゾル大佐が潜伏している島の場所だ」