「え?・・・・・会えないって。どういうことなのマーちゃん!?」
守の言葉に姉さんは驚愕し、守にそう訊く。きっと守のことだから絶対に会いたがるはずだと思っていた。しかし守は覇気のない顔色で
「ごめん・・・・・姉さん」
「謝ってちゃ、わからないわマーちゃん。マーちゃんは真冬やましろに会いたくないの!?」
「会いたいよ・・・・真冬姉さんやましろ姉さんには会いたい・・・・でもダメなんだ。俺は姉さんに会う資格はないんだ」
「マーちゃん・・・・」
虚ろな目でそう言う。その顔を見た真霜は
「(おかしい。私の知っているマーちゃんじゃない。それにマーちゃん。なんでそんな悲しい顔をしているの?)」
真霜は守るのその表情を見て疑問に思う。いつも無邪気で元気な彼じゃない。昔と違ってどこか悲しい顔をする彼の顔を見て真霜は
「ねえ、マーちゃん。なんで二人に会えないか話してくれる?」
優しく促すように言うと守は
「姉さん・・・・・俺は・・・・・俺は人を殺しているんだ」
「「「っ!?」」」
守の言葉に真霜やその場にいた平賀や福内は驚く
「姉さん。俺の世界で戦争があったっていうのは話したよね?」
「え、ええ・・・・マーちゃんも兵隊として従軍したって・・・・・まさか」
「ああ。その時に俺は数多の人の命を奪った。戦争とはいえ俺はたくさんの人を殺したんだ。つまり俺は血で汚れた殺人者なんだよ。姉さんも見ただろ?俺の乗っていた機体に武器が積んでいたのを・・・・つまりそう言うことなんだよ」
そう、守が会いたがらない理由はそれだった。子供だった昔とは違い今の自分は軍人。国を守り、そしてそれを害する人を殺す立場だ。そして守は戦時中にたくさんの敵戦闘機を落とした。そして上官に撃墜数を誉められ、ある時は国から勲章をもらったこともあったが、自身はそれがあまり嬉しくなかった。なぜなら撃墜した数だけ……いやそれ以上の人の命を奪っての勲章なんか貰っても嬉しくなかったのだ。
「姉さん。だから俺は真冬姉やましろ姉さんには会えない。こんな人殺しの俺が姉さんたちにどの面で会えばいいのか・・・・」
「・・・・・」
苦しみながら、守はそう言う。姉たちに会いたい。でも会えない。血で汚れた自分が敬愛する姉のもとに堂々と会いに行けるはずがない。これは今まで人を殺してきた自分自身への罰だ。自分の犯した罪なのだ。守はそう思っているのだ
それを聞いた平賀たちは何も言えなかった。自分たちも海の平和を守るブルーマーメイドの仕事についているがまだ本格的な戦闘もましては人を殺したことなど一度もなかった。だが他人事ではない。現在使用している武器はテロリストたちを捕獲するためにスタンガンや麻酔弾を使用しているが、もし自分たちも守のいた世界のようにどこかの国と戦争になり実弾の武器を取っって相手を殺すことになったらと考えると自分たちはその引き金を躊躇なく引くことができるのか思うとゾッとした。
そして守は光のない目で
「・・・だから真霜姉さん。俺は真冬姉たちには会えない・・・・」
「じゃあ、マーちゃんは一人これからどうするの?」
真霜が心配そうに聞くと
「・・・わからない。ただ、これ以上迷惑はかけられないし。いっそのこと自決して・・・・」
このまま苦しく生き、姉さんたちに迷惑をかけるくらいなら自決した方がいいかもしれないそう思い言葉を漏らす。そう言った瞬間、乾いた音が鳴り響く
「「っ!?」」
その音に平賀は驚く。そして守の頬は赤く腫れ、そして真霜は手を挙げていた。そう先ほどの音は真霜が守の頬を平手打ちしたのだ。そして真霜は
「マーちゃん・・・・・命を粗末にしちゃダメよ!!」
「ね・・・姉さん・・・・・」
頬を押さえ驚く守に真霜は
「マーちゃん。そんな簡単に命を捨てちゃだめよ!軍人ならなおさら命の重みを知っているはずでしょ!?」
「でも、姉さん!俺は・・・・俺は!!もう昔の俺じゃないんだ!今の俺は殺して奪ってきた命を糧に生きている人間なんだ。そんな俺が・・・・」
涙を流しそう訴える守。そう言うと真霜は険しい顔で守に近づく。また平手打ちをするのかと思い平賀たちは止めに入ろうとすると
「マーちゃん・・・・」
そう言った瞬間。真霜は守を抱きしめた
「よく頑張ったねマーちゃん・・・・・苦しかったね。辛かったね・・・・・でも。大丈夫よマーちゃん。私がいるから・・・・真冬やましろや母さんもいるから・・・・・」
まるで子供をあやすかのように頭をなでながらそう優しく言う
「姉さん・・・でも俺と姉さんたちは本当の・・・」
「本当の姉弟じゃないわ・・・・・でも、それが何だっていうのよ。たとえ血がつながらなくってもあなたは私たちの可愛い弟なのよ・・・・だから・・だから死ぬなんて…殺人者なんて、そんな悲しいこと言わないで」
「真霜姉さん・・・・・」
真霜のその言葉に守は大粒の涙を流し
「う‥うわぁぁぁぁー!!」
真霜に抱き着き大声で泣いた。今まで心に無理やり押し込めていたつらい思いを全部吐き出すように涙を流しながら泣いた。
二人の様子を見ていた福内と平賀は涙ぐみながらその様子を見ていた。
そして守はしばらく泣いた後
「真霜姉さん。ごめん見苦しいところを見せちゃて……」
「いいのよ。マーちゃんの可愛い泣き顔を見れたからそれで良しにするわ」
ニコッと笑う真霜に守は
「ねえ、姉ちゃん。そのマーちゃんていうのは……」
「え?もしかして嫌だった?」
「いや、いやじゃないけど、なんか恥ずかしい……」
「いいじゃない。私は気に入っているんだから。気にしない。気にしない」
と、笑顔で言う真霜。その時、守は『ああ、これは絶対に言い方変えない顔だな』と悟った。
「ところでマーちゃん。真冬たちのことなんだけど、本当に会う気はないの?」
真霜がそう言うと守は頷き
「ああ……やっぱり心の整理ができない。もう少し自分の心に整理ができたら会おうと思っているんだ。だから真霜姉さん……」
「わかったわ。マーちゃん。二人には言わないでおくわ。でもなるべく早く会いに来てね。あの二人。マーちゃんがいなくなってすごく心配していたんだから。特にましろなんかはしばらくご飯も食べずにずっとあなたを探していたのよ」
「ましろ姉さんが・・・・・」
守はそのことを訊き、自分がどれだけこの家族に心配させてしまったことを悔やんだ
「ごめん。心配かけて……」
「マーちゃんのせいじゃないわ。意図的じゃなくていきなり元の世界に帰っちゃったんでしょ?」
「ああ。いきなり頭痛がして気を失って、目が覚めたら元の世界に戻っていたんだ」
「そう……」
真霜がそう言うと、看護師さんが入ってきて
「お話し中、申し訳ありませんが、そろそろ面会終了の時間です」
看護師さんがそう言い外を見るといつの間にか日が落ちて暗くなっていた
「ああ、すみません。宗谷一等監察官。そろそろ・・・」
「そうね。名残惜しいけど・・・・・・マー君。また来るからね」
「うん。ありがとう真霜姉さん」
守がそう言い真霜たちは部屋を出た。そして部屋で一人になった守は先ほど叩かれた頬をさすり
「まだ痛い……どうやら夢じゃないな……俺は……俺はまたあの世界に戻ってこれたんだな」
守は窓の外を見て横須賀の海を眺める。
「俺は再びあの世界に戻ってこれたんだな。第二の故郷であるこの世界に……ましろ姉さんのいる世界に……」
守はそう呟く。守は正直言ってましろに会いたかった。だが、やはり自分には会う勇気がなかったのだ。だが、いずれは合わなければいけない。その時、ましろはどう思うのだろうか・・・・・今となってはわからない。ただわかるのは自分は再びこの世界で生きなければいけないということだ
「さて・・・・・俺はこの後どうなるのかな・・・・・」
小さくそう呟くのであった