シュペーの戦いの後、晴風は予定通り、空母信濃が座礁している地点へとたどり着き、補給修理のためやってくる明石と間宮が到着するのを待っていた。
ハルカの提案で急遽、鍋パーティーをすることになった晴風メンバー。
美甘や杵崎姉妹が鍋の準備をしている中・・・・
「そうか…捕虜の子は空軍のスパイとはな・・・」
「はい。ナチも一枚岩じゃないことが分かりました」
信濃艦内で守と山口少将が話し合っていた。
「まあ、ナチ親衛隊にも穏健派がいるとは噂聞いていた‥‥全員が悪魔に魂を売ったというわけではないか・・・・しかもあの少女はクロイツェル大佐の回し者とはな・・・・」
「その人物を知っているのですか?」
「ああ・・・・クロイツェル家は代々軍人の家系であり、特に空軍の名門家だ。ティア・クロイツェルもその一人であり『空軍のロンメル将軍』と言われるほどの人道的で頭の切れる知将だ」
「そんな人物がなぜナチに?」
「噂では。ss空軍のエミリア・ハルトマン大尉と無二の親友であり、第4帝国総統とは幼馴染だという話がある。彼女がナチに入ったのは何か彼女に考えがあってのことだろう。もしかしたら彼女なりに内部に入りナチの暴走を止めようとしていたのかもしれん」
「なるほど・・・・」
どうやらナチスの内部もいろいろと複雑なのだろうと守は思った
「ところで先ほど、ブルーマーメイドの宗谷真霜君から連絡があった・・・・・・」
「例の『パーシアス作戦』ですね?」
提督の言葉に守は真剣な表情をする。そして山口は煙草に火をつけ
「・・・・で、少尉。君はこの作戦をどう見る?」
「十中八九・・・・・この作戦は失敗するでしょう」
「ほう?根拠は?」
「ブルマーの持つ艦艇は電子機器を満載した現代艦。武蔵は大戦時の戦艦。一見数で押し、噴進魚雷攻撃をありったけ行えば航行不能にし、その隙に上陸が可能・・・・・だが、今回の武蔵は電子機器を狂わせるRatビールスに感染している。以前の武蔵戦での東舞校の二の舞ですよ」
「やはりそう思うか・・・・・これを真霜君に話したかね?」
「ええ・・・・だが、『大丈夫』の一言で終わってしまいました。よほど自信があるのでしょう。まあそれが真霜姉らしいんですが・・・・・やはり保険は打つべきです」
「君は、出撃禁止と言われたんじゃないのかね?」
と山口に言われる。そうこの海域に着き、守はブルーマーメイドの臨時隊員としての連絡を真霜に伝える。
そして真霜は彼にパーシアス作戦が近々決行されることを伝えるのと同時に彼に出撃停止命令を出していた。理由は比叡、シュペーでの戦いで負傷し、そして今回の作戦でまた彼が無理をするんじゃ否かと心配してのことであった
流石に守も姉であり上司でもある真霜の命令にしたがざるを得ず、今回は半ば謹慎扱いとなっている
「それは
「そうか・・・・・それで少尉。少し聞きたいことがある」
「ん?なんですか?」
「君はましろ君のことが好きなのかね?」
「ぶふっ!!」
真剣な話からいきなり恋愛話となり守は吹いた
「な、何言っているんですか提督!?姉さんとはただの姉弟で・・・・」
「だが、義理であろう。それに二人を見るに姉弟以上の感じも見たが?」
「う・・・・」
「それで少尉はどうなのかね?正直に言いたまえ。これは上官命令だ」
「卑怯ですよ提督・・・・はぁ・・・」
そう呆れつつも守は話した
「そうですね・・・・姉としてそして異性として姉さんのことは好きです。ですが姉さんはどう思っているかわかりません。それに俺は軍人ですいつ死ぬかわからない・・・いや、元の世界で人を殺しといて幸せになろうと思うと、死んだ戦友に申し訳なくて」
「何を言っているのかね君は。人一人が幸せになろうとするのが、悪いわけがなかろう。死んだ連中もそう思っているのではないのかね?」
「そうでしょうか・・・・・」
そんな守を提督はじっと見る。そして煙を少しはいた後
「ま、人の恋愛事情はそれぞれだ。進むか留まるかは君次第だよ」
と、そう言いタバコの火を消した。
「・・・・・・」
その言葉に守は黙っているのであった。
一方、ましろの方も
「守・・・・・」
自室で、レポートを書きながらましろは守のことを考えていた。
9年前にできた初めての弟・・・・・だがそれと同時にましろは
「はぁ・・・・」
軽くため息をつく。そう自分は彼のことが異性として好きなのだと。
始めは弟と思っていた。だが段々に恋心が芽生え、そしてましろは幼いときに彼にロケットペンダントを送った。彼には伝わらない自分の愛の告白を・・・
「守は・・・・私のことをどう思っているのだろう・・・・」
守は自分のことを慕っている・・・それは姉としてなのだろうか・・・・
そんな複雑な気持ちに駆られるましろ
それに少なからず守のことを好いている人がこの晴風にいる。
機関長の柳原麻侖、炊事の杵崎姉妹や美甘など・・・
でもこの気持ちは誰にも譲れない・・・・・一人の少年に恋をする少女として・・・・
「はぁ・・・何を考えているんだ私は・・・」
恋悩みをするときではないと思いつつ、守のことを考えてしまうましろであった
そして夕食の時間。待ちに待った鍋パーティーが始まった。
「へ~ハルカさんが鍋パーティーの提案したんだ~」
「でも、いいかもね鍋!どんな鍋かな?」
と、みんなウキウキしながら鍋が来るのを待っていた
「しかしいいのかね?私もお邪魔して?」
その席には山口提督もいた
「うん!山口さんも一緒に食べようよ。みんなで食べると美味しいよ」
と明乃が元気いっぱいにそう言う。そう山口は明乃の招待で来たのだ
「お鍋出来ましたよ~~」
と美甘や、杵崎姉妹が鍋料理を持ってくる。それにみんなは嬉しそうな表情をする。そして三人は持ってきた鍋を電気プレートに乗せる。
そしてみんなが美味しそうに鍋料理を堪能していた
「美味しい!」
「本当だ美味しいね!」
「特に御出汁が美味しいぞな!」
「でもちょっと独特な匂いもするね~」
そう言いつつ、みんなは鍋料理を楽しむ中
「確かにおいしい・・・・でもこの匂いどっかで・・・ねえ、美甘さんこれ何のだしを使っているんだ?」
守が美甘に訊くと
「あ、これハルカさんが、持ってきた干し肉を出しにしたの。おい強いて言ってたから」
「干し肉?」
守はハルカを見ると
「そや、南方戦線にいたころ地元の人から貰ったもんやさかい。出汁にすると美味しゅうなると言われてな~」
「ちなみに何の肉だ?」
「それが分からへんのや~滋養がつくとか言われたけど・・・・まあ、何かの小動物みたいやったわ」
「(・・・ん?南方戦線で地元の人が鍋の出汁にする動物の肉・・・・・これどこかで体験が・・・・)なあ、ハルカ・・・・もしかして地元の人に『男女二人きりで食べなきゃダメ』とか言われなかったか?」
「そや?なんや森少尉。なんか知っているのか?」
「っ!?」
その瞬間、守の表情が強張る。そう・・・彼は知っていた彼女が渡した肉の正体を・・・・
「おい!メルダース!それ・・・・ラッコの肉だぞ!?」
「ラッコ?ラッコってあの海面にぷかぷか浮かぶ可愛らしい生き物のことか?なんかまずいんか?」
「まずいどころではない・・・・いろいろカオスなことになるぞ!」
「カオス?」
守の言葉に意味が分からず、ハルカは首をかしげる中、晴風メンバーは
「あ・・・・あれ?」
急に芽衣が目をこすりタマを見る
「どうしたの芽衣ちゃん?」
明乃が訊くと
「いや・・・なんか・・・どう見てもタマが……色っぽい……」
「うぃ~~~」
芽衣の目には立石がとても色っぽく見えていた。
「大丈夫かね?西崎さん」
西崎の様子がおかしいことに山口提督が訊いた瞬間
プチプチ~プッチ~ン!
「おっと・・・・ボタンが外れるとは」
急に山口提督のボタンが外れ胸元が開き大きな谷間が見れる
「この提督・・・・・エロすぎます!」
その様子を見た幸子も顔を高揚させる。すると・・・・
「う~なんだかくらくらする」
ラッコ鍋の匂いのせいか留奈がふらふらし始めると
「大丈夫留奈!?」
「大変だわ!」
「横になれすぐに!!」
「ええ!急いで!」
留奈を見た桜良と空と麗緒と洋美は留奈を床に寝かせ
「む、胸元も開けて楽にさせた方がいいわ!」
「下も脱がせるっす!嫌この際全部っす!!」
「そうでい!そうでい!!」
媛萌や百々も彼女の服を脱がせようとし、麻侖も目を爛々させていた。
「まリこーもちょっと見ないうちに可愛い女になっちゃたね~」
「そうだね~バキュンと来るよ~~」
「いやですわ~~・・・」
そしてこの光景は機関科だけではなく他のみんなにも同じようなことが起きてまさに百合の花が咲き誇っていた
「ま・・・まずいなこれは・・・・」
「ある意味Ratビールスより厄介かもしれへん・・・」
守とメルダースはハンカチで鼻を塞ぎ匂いをかがないようにしていた。そう、このラッコ肉はとても美味しいのだが、鍋で煮ると、その匂いで欲情を刺激し、集団で密室にいると性欲を持て余してしまうという副作用があるのだ。
過去に守はラバウルでこれと似た恐怖を味わったことがある。
その時は一目散にジャングルに逃げ込み事なきを得たらしいが今度はそうはいかない
「これ換気した方がいいな・・・・確か換気扇のスイッチって・・・」
守が換気扇のスイッチを探そうとすると
「あ~、マ~君だ~」
「本当だ~男の子がいる~~~~」
果代子と理都子が守を見つけそう言うと、その言葉に反応しみんなの視線が一気に守に向けられた
「あ、ほんとだ~可愛い男の子がいる~~」
「どんな味かな~~~」
「じゅるり・・・・・」
「あんなところに子羊がいるぞ~~~」
「オスがいるぞ~~食べちゃえ~~」
ラッコ肉の鍋の匂いのせいなのか、皆の目はまるで子羊を見つけた獰猛な狼のごとく爛々と輝いていた
「あ…あの・・・皆さん。なんでそんな目をするんですか?ちょっと怖いんですけど」
本能的に何かを感じた守は後ずさり、そしてみんなはじりじりと寄ってくる
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、みんな落ち着いてって。あ、明乃艦長も何か・・・・・」
そう言い明乃を見るのだが
「ふふ~~~マー君可愛いね~~美味しそう・・・・じゅるり」
「(あんたもかー!!!!)」
目がハートになりとろ~んとした表情をした明乃を見て守はもはや絶体絶命の状態となっていた。そして守は壁に追い詰められる
「(あ・・・・これはまずい)」
絶体絶命・・・・そう思った時
「守!!」
「うわっ!!」
誰かに腕を掴まれ、食堂を飛び出す。
「ね、姉さん!?」
「ここは危ない!逃げるぞ!!」
守を助けたのはましろであった。そしてましろは守を連れ自分の部屋へと連れ込み鍵をかけた。
「ここなら、安全だな守・・・・・」
「ね、姉さん・・・ありがとう」
守はましろに礼を言うがましろは
「そうだな・・・・ここなら邪魔が入らない」
「・・・・え?」
ましろの言葉に守は一瞬固まった瞬間、ましろは守の両腕を掴み、そしてベッドに押し倒す
「ちょ?ね、姉さん?」
「守・・・・・なぜ油断したんだ?」
「え?」
「私が真冬姉さんや真霜姉さんみたいにセクハラしないと思っただろ・・・・まじめな私が・・・・でも守忘れてないか?」
そう言いましろは守の顔を見る。その瞬間彼女の髪留めが外れ。はらりと彼女の黒髪が落ちる
「私もあの二人の・・・・妹なんだぞ?」
顔を赤くし息をはぁはぁと荒くして守の顔をじっと見る。
その目は真霜同様の妖艶な目をし、瞳が怪しく光っていた。どうやら彼女もラッコ肉の匂いにやられていたようだ
だが・・・
「守…私は・・・お前のことが好きだ・・・弟としてではないい異性としてお前のことが好きなんだ・・・・だから・・・・」
「姉さん・・・・・」
まさかの告白に守は驚く
「それとも・・・・私とじゃ・・・・嫌か?」
目を輝かせ少し心配そうに言うましろに対し守は
「姉さん・・・・・俺も姉さんのことが好きだ・・・・もちろん姉じゃなくて一人の女の子として姉さんのことが好きだよ・・・・・でも、姉さん・・・・俺は別世界の人間だ・・・・それに俺は元の世界で多くの命を奪った軍人だ。それと同時に俺は飛行機乗り…いつ死んでもおかしくない・・・・・そんな人間を好きになっていいの?」
守がそう言うと
「それでも私はお前のことが好きだ・・・・この気持ちは絶対に変わらない・・・・だからもう一度言う…守・・・好きだ」
「姉さん・・・・・俺も姉さんのことが・・・・宗谷ましろが好きだ」
「守・・・・・・愛してる」
二人の顔が近づき、そして二人は口付けをした。
お互いに長い口付けをし、口を離すと、またしてもお互いの口から唾液が糸となって、2人の唇の間に引かれていた。
そして服を脱ぎ、お互いに見つめ
「ねえさん・・・・」
「あ…来い守」
そう言い二人は暑い夜を過ごしたのだった
その後、2人は、生まれたままの姿でベッドの上で抱き合っていた。
「姉さん・・・・」
「何だ守?」
「さっき異性として好きって言っていたけど…いつから?」
守が訊くとましろは少し笑い
「9年前からだ」
と微笑むのであった。
その後晴風のメンバーたちはハルカ曰く
『山口提督の提案で相撲大会で何とかなった』
とのことだった
「おっ!晴風だ」
「それとあれが例の巨大船ね・・・・・」
深夜、補給、修理に来た間宮と明石が、集合地点に到着し晴風と信濃を発見したのだが
「あれ?みんな何をしてるんだろう?」
間宮艦長、藤田優衣が双眼鏡で見ると・・・・・・
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
晴風メンバーが全員甲板に出て、遠い目で明後日の方角を見てぼ~としていたのた
「‥‥‥誰にも言っちゃだめだからね?」
明乃の言葉に、晴風乗員全員が頷くのであった
こうして後に晴風内で『ラッコ鍋事件』という語り継がれる事件が終わるのと同時に二人の男女の絆がさらに深まるのであった