ハイスクールフリート~鋼鉄の鳥~   作:疾風海軍陸戦隊

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赤道祭でハッピー(準備編)

あのラッコ鍋事件から翌日、明石と間宮の邂逅地点まで無事に到着し、そこで早速補修と補給作業に入った。特に明石は、晴風の他信濃の修復もしていた。とはいっても修復するのは艦底と外装だけで、あとは二隻で信濃を岩礁から引っ張って海に戻すだけであった。

特に明石艦長の珊瑚さんは航空母艦というこの世界にはない艦艇に興味を示し、挙句の果てには航空機も修理しようとしていたのだが、さすがに山口提督が断り、代わりにブルマーの夕張さんら整備部隊が来ることになった

 

作業中は特にすることも無かったので、みんなはそれぞれの時間を持て余していた。ラッコ鍋事件以来、少し気まずい状況になってしまったが、それと同時に互いの絆も深まって、今では何もなかったかのようにそれぞれ作業をしていた。

 

一方、その事件の原因を作ったハルカはというと、彼女自身悪気はなかったことからお咎めなしなのだが、本人が

 

「きっちりけじめ付ける!」

 

と言い、償いに甲板や船体の掃除をしていた。

そんな中、艦橋に、

 

「てーへんだてーへんだ!てーへんでーい!」

 

背中に「大漁」と書かれた浅葱色の半被を来た麻侖が飛び込んできた。

 

「マロンちゃん、どうしたの?」

 

「機関部でどこか問題でもあった?」

 

「違う!!」

 

麻侖が慌てて飛び込んできたので、機関部で問題があったのかと思ったが、違う様だ。

 

「じゃあ、機関科の誰が体調悪いの?」

 

「みんな元気でぇい!」

 

次に機関科の誰かが病気にでもなったのかと思ったが、どうやらそれも違うらしい。

 

「だったら何!?」

 

西崎が麻侖に何をそんなに騒いでいるのかを尋ねると、

 

「もう晴風は赤道を越えているじゃねぇか!!」

 

明石との邂逅点が既に赤道を超えている事に麻侖は目を輝かせて言う。

 

「赤道?」

 

「確かに…そうですね」

 

幸子がタブレットで晴風の現在位置を確認すると、確かに麻侖の言う通り、晴風は赤道を越えていた。その言葉を聞いた守は

 

「おっ!…ということは?」

 

何かを悟ったのか守が麻侖を見ると麻侖は目をきらりと光らせ

 

「お~わかってるじゃねえか守!そうだ!赤道際だぁー!!」

 

『赤道祭?』

 

赤道祭の言葉に何なのか、明乃達は首をかしげる

 

「祭りだ!!祭りだ・・・!!」

 

こうして、麻侖の主張で赤道祭の企画が持ち上がった。

その後、明乃は晴風の生徒全員を教室に集め、赤道祭について協議した。

 

「本艦は補修中でもありますし、赤道祭を行いたいと思います。」

 

「赤道祭?」

 

「また適当に名前つけたッスね!」

 

百々は、赤道祭が安直なネーミングセンスな祭りだと言う。

 

「なにいってぇでい!赤道祭は、由緒正しい祭りだい!」

 

麻侖は決して安直なネーミングセンスの祭りではないと反論する。

 

「何処が由緒正しいのですか?」

 

其処へ、楓が赤道祭について麻侖に質問する。

 

「それはな…クロちゃん説明してくれい!」

 

麻侖は隣に立っていた洋美に赤道祭の由来の説明をする様に促す。

 

「風が吹かないと航海できなかった大航海時代に赤道近くの無風地帯を無事に通過できるように海の神に祈りを捧げたのが始まりだったそうよ・・・赤道通過の時に乗員が仮装をしたり寸劇を演じたりと雅にお祭り騒ぎをした記録が残っているわ!!」

 

洋美は、皆に赤道祭の由来を説明する。

 

「(懐かしいな~瑞鶴に乗ってた時皆で騒いだな~)」

 

守は母艦時代に赤道際で艦内のみんなと、わいわいお祭り騒ぎしたのを懐かしんでいた

 

「ふーん」

 

「へー」

 

「そうなんだ」

 

日置、武田、小笠原の砲術科三人娘は赤道祭の由来を知っても「そんなのどうでもいい」と興味なさげな様子。

いや、砲術科三人娘の他、大半のクラスメイト達も興味無さそうな様子だった。

 

「実行委員長には機関長の柳原さんが立候補してくれました」

 

「やっぱり‥‥」

 

「まじか‥‥」

 

同じ機関科の若狭と留奈は恐らく機関制御室で麻侖が赤道祭をやりたいと聞いていたのだろう。

反応は、「マジでやるのかよ!?コイツ」と言った感じだった。

 

「皆の衆盛り上がっていくからな!それぞれ出し物を考えておいてくれよな!祭は明日の明日だからな!」

 

(ちょっと準備期間が短すぎないか?)

 

明日に赤道祭をやると言って準備期間が今日と明日の二日だけで大丈夫かとちょっと心配する守。

 

「めんどくさいっす…」

 

青木は赤道祭についてストレートで口にする。

彼女以外にもやはり赤道祭に対して大半のクラスメイトはやはり、やる気がない様子だった。

ただ、青木の隣に居る和住は口には出さないが、何かを決意した様子で、彼女は赤道祭には積極的な様子だった。

 

赤道祭の旨を伝えた後、解散となり、明乃は補修と補給作業を指揮している杉本と藤田の二人から作業の様子を聞きに行った。

 

「どうです?」

 

「必要な物は、補充しといたわ!」

 

「主砲の換装はあと2日ぐらい掛かるけど・・・」

 

必要な物資の補給は終わり、損壊していた射撃指揮所も新しく備え付けられ、後は主砲の換装だけであった。

 

「ありがとう・・・また手間かけさせちゃったね。」

 

「うんうん・・・晴風の奮闘ぶりは私達も聞いてるから、比叡を座礁させたり、シュペーへの乗り込み作戦を成功させたり‥‥」

 

「変わり者を寄せ集めたって印象だけど凄いね・・・」

 

優衣と珊瑚は、寄せ集めた晴風の生徒が比叡とアドミラル・グラフ・シュペーを制圧した事に凄いと感心する。

 

「ハハ‥ありがとう‥‥」

 

それに対して、明乃は苦笑いしながら、ありがとうと言う。2人から作業の状況を聞いた後、明乃は艦橋に戻って見ると

 

「出し物、何やります!?」

 

「えっ!?」

 

幸子がましろに赤道祭での出し物は何が良いかを尋ねていた。如何やら幸子は、赤道祭に出る気満々の様だ。

 

「やんなきゃいけないの・・・?」

 

「うぃ・・・」

 

しかし、芽衣や志摩達はあまり赤道祭には積極的な様子ではなく、むしろめんどくさいと言う印象が強かった。

それでも幸子は、やる気だった。

 

「私考えても良いですか?」

 

出し物について自分が考えで決めようとしたが

 

「駄目だ!!」

 

「え・・・!!」

 

ましろにあっさり拒否された。

 

「ココちゃんの考える事に私達きっとついていけない気が…」

 

鈴もましろと同様の意見だった。確かに2人の言う通り、幸子がやる物は、どうせ任侠映画に関するものだろうと察していたのだ。

 

「じゃあ、シロちゃんも一緒に考えてくださ~い!!」

 

そう言って幸子はましろに抱き付く。

 

「離せ!」

 

ましろは何とか引き離そうとするが

 

「離さんよ~~~!」

 

幸子は離れず

 

「離さんかい!」

 

「離さんよ~~~!」

 

何度も同じ事が続き

 

「離せゆうとるんじゃい!」

 

「離しませんよ~~~~!」

 

「ワァーもう・・・!!」

 

結局、離れじまいだった。

 

「いつの間にか凄く懐いてるね!」

 

「何、このうっとしい距離感!」

 

「うぃ・・・」

 

「あれ、いっきぴったり!」

 

「うん!」

 

2人の仲良さそうなところを隣で見てた3人は、2人の距離感がうっとしく見えるし、いっきぴったりだと見えた。

 

「仲がいいですね?」

 

「あ、マー君」

 

そこへ守がやってきた。そしてましろと目が合うとラッコ鍋事件を思い出したのか少し顔を赤くし互いに目をそらす。その後あの二人はどうなったかというと、あの夜、二人の仲はそのままであった。

理由はあの時はラッコ鍋のせいという形で二人はその時の夜のことを秘密にすることにしたのだ。

 

「マー君も参加するの?」

 

「そのつもりだよ?」

 

「じゃあ、マー君も一緒に考えてくださ~い!!」

 

そう言い幸子は今度は守に抱き着く、どうやらシュペー以来幸子はこの姉弟に懐いてしまったようだ

 

「なっ!」

 

守に抱き着く幸子を見てましろは驚いた表情をし少し、焼きもちを焼いたのか頬を少し膨らませるのであった

 

 

 

 

 

 

その頃、ゾル大佐の襲撃で使えなくなったブルーマーメイドの本部の代わりに使用している横須賀のブルーマーメイド庁舎の会議室各艦の艦長、副長クラスのメンバーが集まり、現段階までの調査報告が行われていた。

 

「検査の結果・・・ウィルスに感染した生徒は正常に戻ったわ。晴風がシュペーに行った作戦は成功よ」

 

「すごいですね!」

 

「表彰ものです」

 

スクリーンには晴風が行ったシュペーへの強襲作戦の映像が流されていた。

これはゼーアドラー基地に戻ったシュペーからブルーマーメイドに提出されたモノだった。

 

「あの飛行機もやはり今後のブルーマーメイドの活動において必要ですね?」

 

平賀は飛行機の必要性をあげる

 

「ええ、私もそう思うわ!!・・・今回の事態が終息したら、今度こそ、この議題を上に認めさせるつもりよ!」

 

それに対して、真霜も今回の事件が落着した後に今度こそ、国土保全委員会の幹部達に飛行機の実用性を認めさせるつもりであった

 

「さぁ!私たちも少年と学生達に負けていられないわよ。我々、ブルーマーメイドもこれからパーシアス作戦を展開するわ。抗体の増産は現在急ピッチで進んでいる。完了と共に一斉に行動開始よ」

 

ゾル大佐らの破壊工作で一度は失った抗体の報告書ではあったが、美波さんの所の大学にも同じのが送られていたため現在急ピッチで量産していた

 

「鳥海、摩耶、五十鈴、ビスマルクは真冬部隊によって制圧済みで残るのは涼風、天津風、磯風、時津風それから‥武蔵」

 

武蔵の写真が映し出されると、皆は緊張した面持ちになる。

 

巡洋艦、駆逐艦クラスならば、ブルーマーメイドのインディペンデンス級沿海域戦闘艦でも十分に対処可能であるが、46cm砲搭載の超弩級戦艦相手では、インディペンデンス級沿海域戦闘艦は少々頼りない。

 

しかし、他の46cm砲搭載の戦艦がドックと近海に居らず、しかも他の戦艦もドック中と言うまさに最悪のタイミングの中、現状の戦闘力でやるしかない。

 

武蔵相手にインディペンデンス級沿海域戦闘艦が少々頼りなくても数ではブルーマーメイドの方が勝っている。

 

数の力で押し切るしかなかった。

 

「真冬部隊によると武蔵最終確認地点はウルシー南方。進路は西。おそらくフィリピン方面に向かったと思われるわ。ただし現在位置は不明よ」

 

現在武蔵の行方は知れずのままだった

 

「そして・・・今回の事件の主犯であるゾル大佐率いる武装親衛隊「ショッカー」の居場所がシュペーの艦長の証言で分かったわ。奴らの潜伏している場所はここ・・・ビキニ環礁近くの無人島であることが分かったわ。パーシアス作戦と同時に彼らを制圧する『シルバーバレッド作戦』も開始することになるわ」

 

シルバーバレッド作戦とは先ほど真霜が言ったように、今回の主犯であるゾル大佐らを制圧するための強襲作戦である。名前の由来は『銀の弾丸』ゾルらが実行している『ヴェアヴォルフ作戦』を止めるための名。

つまり、狼人間を止めるのは銀の弾丸だとという意味を付けた作戦であった

 

「それで・・・・制圧部隊は宗谷真冬二等保安監督官ら強制執行課 保安即応艦隊が対処するのですか?」

 

席の奥にいた隊員が質問をすると

 

「ええ。相手がテロリストや海賊と違って実戦経験のある精鋭部隊という情報をもとに彼女らが対策することになったわ。しかも今回はテーザーガンでなく実弾を使用することになったわ」

 

その言葉に、会議室にいた隊員たちはざわめく。

今まで何人もブルーマーメイドの隊員が奴らに倒されたため真霜たちも本格的に彼女らと一戦交える覚悟を決め、今まで相手を捕らえるためのテーザーガンではなく実弾のライフルを使用することが決定したのだ

そう今回の戦いでブルーマーメイドは海賊以上の強敵と戦争をする前代未聞の戦いをすることになったのだ

 

「・・・・・・」

 

「他に質問はあるかしら?」

 

「いいえ・・・・在りません」

 

真霜の言葉にその隊員は返事をし、その場は解散となった

皆が別々の場所に向かう中・・・・

 

「あれ?・・・・」

 

「どうしたの倫子?」

 

急に立ち止まる平賀に同僚の典子が訊くと

 

「さっき宗谷室長に質問してた人・・・・・今回の会議に集められた隊員にいたかしら?」

 

「そう言えばそうね・・・・・・」

 

と、福内の先ほどの人物のことを思い出す。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

一方、その隊員は庁舎から出て人気のないところにつくと

 

「・・・・・・ふ」

 

そう言い制服をバット脱ぎ捨てると、そこには例の隊員の姿ではなくゾル大佐がいたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、真霜は自室に戻ろうとすると・・・・

 

「宗谷室長」

 

「え?・・・・・っ!?」

 

声をかけられ振り向くとそこには、

 

「浦賀さん!?」

 

そこには、服は少し汚れ度武装ssの調査中に行方不明となっていた浦賀鈴留の姿があった

 

「あなた大丈夫だったの!」

 

心配そうに言う彼女に

 

「ええ・・・・彼女らに助けてもらいました」

 

「彼女?」

 

浦賀が後ろを見て真霜がその場を見ると、ひとりの女性が立っていた。見た感じ外国人だが、その腕にはゾルと同じく鍵十字の刺繡がされていた

 

「あなたは・・・・」

 

真霜がその腕章を見て警戒した目で見る中、彼女は一歩前に出て

 

「初めまして宗谷真霜一等保安監督官殿。私はドイツ第4帝国海軍、第3潜水艦隊所属のバイオレット・ヴォルフ・クラーケン中佐と申します。以後お見知りおきを・・・・」

 

と、流暢な日本語であいさつするのであった

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