ハイスクールフリート~鋼鉄の鳥~   作:疾風海軍陸戦隊

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イレギュラーの処遇

「……これね。マーちゃんの乗っていた航空機って……」

 

あれから翌日、横須賀の倉庫で真霜は硫黄島から引き揚げられた二式水戦を見てそう呟く。

 

「これが本当に飛ぶのかしら?」

 

真霜は二式水戦を見ながらそう言う。弟である守の言葉を疑うわけではないが、航空機のない世界に生まれた真霜にとってはどう見たってこの鉄の塊が空を飛ぶとは想像しにくい。そして真霜は二式水戦をぐるりぐるりと回りその機体をよく見る。すると、あることに気づく

 

「これって……弾痕?」

 

二式水戦の機体にはあっちこっちに弾丸によってあけられた穴が開いており戦闘の痛々しさを物語っていた。真霜はその穴の開いたところにそっと手を置く。そして昨日、守が見せたあの悲しい表情を思い出す

 

『姉さん……俺は人を殺したんだ……』

 

あんな悲しい顔をした弟の表情を始めてみた真霜は彼が戦争でこの機体に乗ってどんな思いをしながら戦ったのか想像もできなかった。その気持ちを分かってあげられない自分の無力さに少し苛立っていた

 

「(マーちゃん……)」

 

深刻そうな顔をすると

 

「あれ?来ていたんですか宗谷監察官?」

 

と、そこへつなぎ服を着たポニーテイルの女性がやって来た

 

「夕張整備長?」

 

真霜が彼女の名前を言う。彼女の名は夕張。ブルーマーメイドの技術者でありすきっぱーや飛行船などの整備を担当する整備長である。すると夕張は

 

「それにしてもこれはすごいわね。いろいろ見ていたけど、ねじ一本まで軽量化されてしかも骨組みまで穴をあけて軽量化されていたわ。それにこれに取り付けられていた武装もなかなかだわ特に20ミリ機関砲。通常のエリコン20ミリよりも軽いし、使われている20ミリ弾も徹甲弾だけじゃなくて榴弾みたいなものまであったわ」

 

夕張は二式水戦を興味津々で触り真霜にそう言う。

 

「それにこの真下にあるフロートのようなものに燃料が入っていてその燃料の管はあの黒いところの中にあるエンジンに繋いであったわ。なんか翼みたいなのがあるし、もしかしたらこれ空を飛んだりしてね。もしそうだったら飛行船を・・・・いいやヘリウムや水素を使った飛行する乗り物を凌ぐ世紀の大発明だわ。いったい誰が作ったんでしょうね?」

 

「そ、そうね・・・・」

 

流石に異世界の乗り物とは言えず真霜は苦笑いすると

 

「それで監察官。例の保護された子は今どうしているの?何かわかった?」

 

「マ・・・・・彼は今は横須賀の病院で入院中よ。しばらくすれば退院できるみたいよ」

 

「そうなんですか・・・・・ん?彼?保護された子って女の子じゃないんですか?」

 

「ええ、見た目は女の子みたいなんだけどちゃんとした男の子よ」

 

「そ、そうなんですか…写真を見る限り女の子だと思いましたよ」

 

「アハハハ……(まあ、マーちゃんて確かに女の子寄りの顔だから……)それでこれはどうなの?」

 

「銃弾で傷はついているものの。エンジンみたいなのは無傷みたいだし、計器や操縦席みたいなところはあっちこっち壊れたところもあるけど部品を取り換えれば、そうね・・・・だいたい一週間で直るわね」

 

「そう……じゃあ、修理はお願いね」

 

「ええ、任せて頂戴。未知の物を直す。これは気合が入るわね~」

 

ウキウキしながら言う夕張に真霜は

 

「それじゃあ私はそろそろ」

 

「あれ?この後ご予定でも?」

 

「これから例のこれと彼の処遇について海上安全整備局の各部署の局長や室長クラスの幹部を集めて会議をするのよ」

 

「あ~あの堅物連中たちとですか。大変ですね監察官も」

 

「ええ。正直言ってやりにくいわ」

 

と軽くため息をつき倉庫を後にした。そしてその後、真霜は本部の会議室で幹部たちと会議を開いたのだが、報告書を読んだ幹部たちは

 

『そんな意味不明なものにいちいち付き合ってられん』とか『どうせ水上スキッパーの出来損ないだろ?』『空を飛ぶ?ばかばかしい。妄想も大概にしたまえ』だとかそんなに二式水戦については興味を示さなかった。そして中には興味を示したものもいたが

『もし、それが本当だとしたら、その技術は我々にとって宝石が詰め込まれた宝箱を見つけたのと同じだ。ならその技術を我々のものにすればいい。ん?その機体の所有者のこと?そんな奴は知らん。死のうが生きようがどっちでもいい。もし邪魔な存在であれば口をつぐませればいい。入院中に体の具合が悪化して亡くなることも珍しくない』

 

と、興味を示さなかった者よりも悪質なことを言いニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる男性幹部達に真霜は冷ややかな目で見ていた。そして先ほど二式水戦の操縦者を技術独占のため口を封じ暗殺しろと言った幹部に真霜は殺気を含んだ眼で見た

 

「(この下衆ども・・・・・マーちゃんになにかしたら絶対に許さない)」

 

殴りかかりそうな衝動を何とか抑える真霜。血はつながってはいないが実の弟のようにかわいがっている守の命を狙おうものなら真霜は彼を守るためなら射殺しても構わないと思っていた。そして真霜は

 

「お言葉ですが、今回の件案はブルーマーメイドの管轄であり、不明物と保護された人物の関しては私に全権があります。今回皆さんにお集まりいただいたのは報告と処遇についてだけです」

 

と、そう言うと一人の幹部。しかも今いる中でも最高位の人物が

 

「ならば、引き続き君が面倒見たまえ。宗谷一等監察官」

 

「本部長!何を言っておられるのですか!こんな小娘に!!」

 

納得のいかない幹部は声を上げると本部長は

 

「この件は確かにブルーマーメイドの管轄下で起きたものだ。ならばその最高責任者である宗谷一等監察官に任せるのが筋というものだ。我々がいたずらに土足で入り込むことではない。それにだ。その保護された少年の命を軽んじる輩もこの中にいるみたいだしな。そんな者たちに任せるより保護をした彼女に任せるべきだと私は思うのだが?」

 

と、先ほどの幹部をじろりと見る本部長に幹部たちは黙り込んでしまう。そして本部長は真霜を見て

 

「宗谷一等監察官。君の言い分はわかった。全責任を君が持つというのなら、この件、君に任せよう。それでいいかな?」

 

「はい。ありがとうございます山本本部長」

 

「よし。ならば話は決まりだ。この件はブルーマーメイド、及び宗谷一等監察官に任せることにする。本日の会議はこれまでとする」

 

そう言い、会議は終了となるのであった

 

 

 

 

「ふう・・・・・」

 

会議が終わり。一息つく真霜。何とか守の命だけは守ることはできたという安心感のものだった。すると急に着信が入り確認すると自身の妹であり、宗谷家の次女、宗谷真冬からであった。

 

「どうしたの?真冬」

 

『ああ、姉さん。なんでもつい最近、硫黄島で変なものを見つけたらしいな?』

 

「あなたどこでそれを?」

 

『私にもそれなりの情報筋があるんだよ』

 

真冬は真霜たちと同じブルーマーメイドであるため、どこからかその情報を得たのだと真霜は察した

 

「そう……でもそのことはあまり言いふらさない方が身のためよ真冬」

 

『それは重々承知しているよ。だからこうして姉ちゃんに訊いているんだよ。それにさ。保護された子っていうのも少し気になってな。なんかロケットペンダントを持っていたって聞いたからさ』

 

「それが何なの?」

 

『いや……その保護された子ってもしかしたら守じゃないかって思ってさ』

 

「あなた。守・・・・マーちゃんのこと覚えているの?」

 

『当たり前だろ?一時たりとも忘れたことなんて一度もないよ。なんだって弟なんだからさ。ずっと探しても見つからないしさ。それで今回その話を聞いてまさかと思ってさ』

 

「そう……それで真冬はその子がマーちゃんだったらどうするの?」

 

『それはもう決まっているだろ?9年間心配させた罰にたっぷりと根性を注入した後、思いっきり抱きしめてやるさ『何処に行っていたんだ心配したんだぞっ!』ってな。シロもきっとそう思うぜ』

 

「そう……あ、あのね真冬。実は……」

 

真霜はその保護された子が守だと言いたかったが、病院で守が自分のことを姉の真冬やましろに秘密にしてほしいという言葉を思い出す。

 

『ん?どうしたんだ姉さん?』

 

「え?ああ……ごめん真冬。そのことについてもノーコメントなのよ」

 

『そうか……それは残念だ。守じゃないかと少し期待していたんだけどな』

 

残念そうに言う真冬。守自身も本当は会いたいと思ている。ただ彼には少し時間が必要なのだ。だから真霜は彼の頼み通り、守のことは伏せておいた。

真冬との通信を終えた真霜はその場を後にし、守の入院する病院へと向かうのであった。そして真霜は先ほどの真冬とした会話を思い出し

 

「……ごめんなさい真冬。ましろ」

 

とポツリと呟くのであった。

 

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