書きたいこと足していくと切り所ががが……。
感想有難うございます。 全て目を通しています。
返そうとすると長考したり設定吐き出しかけるので
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雄英高校から徒歩で三分。 最寄りの駅とは反対にある、最高級住宅地の中に砂藤力道達が目指す建物はあった。
数多くのヒーローが巣立ち、現役のヒーローが教鞭を振るい、非常時にはヒーローが出動する拠点となる雄英高校。 その近くに住んでいる、もしくは別荘を持っているということは金持ちにとって一種のステータスとなっている。
最新の設備で建てられ、幾つものセンサーや監視カメラの厳重なセキュリティで守れた地区。 さらには近くにヒーローの巨大な拠点とも言うべき雄英高校が近くにあるという、ヴィランとは無縁である街の一角。 大きな豪邸にマンションが立ち並ぶ中、世界線がずれたような古い建物『東北じゅん狐堂』があった。
パッと見て古びた民家に見える外観。 周りとは違う雰囲気の建物に瀬呂範太が不思議そうに首を傾げ、その隣で葉隠透は携帯電話で瓦屋根の写真をパシャパシャと撮っている。
「ここら辺でも一番古そうな店……店? だな」
「瓦屋根とか実物を初めて見たぞー!」
その二人の後ろでは八百万百と耳郎響香も見慣れない建物を見上げていた。 百もまた瓦屋根に注視しているが、葉隠とは違って構造の方を心配しているようだ。
「瓦屋根は雪の重みで破損したり。裏に雪水が染み込んで雨漏りしてしまうのですが……大丈夫でしょうか」
「確かにここら辺は雪降るけど、東北って書いてあるし……雪の降る地域から来てるなら対処しているんじゃない?」
各々立ち止まって物珍しい建築物を眺めている四人を置いて、そわそわと落ち着かない砂藤力道が入り口でクラスメイトを急かす。
「なあ、早く入ろうぜ」
「あ、すみません。 今行きますわ。 ……扉が開きませんね?」
「自動ドアじゃないぞ」
百が入り口の前に立つが扉は開かない。 動かない扉を見上げる百に代わって砂藤は入り口の取っ手らしき枝豆の装飾を掴んで横に押す。 入り口はカラカラと戸車の音を立てながら開いた。
最高級住宅地での商売は稀であり、想定する相手はその場所に住むセレブ。 高所得者相手を想定していない商売の仕方に瀬呂は感心してた。
「こんなセレブな土地に建ってるのに手動とか
「たのもー!」
「いや道場じゃないから。 失礼しまーす……わ、すごっ」
ぞろぞろと入店する一行。 中に入ると、そこはタイムスリップしたかのような風景が広がっていた。
壁は和室に用いられる、白い壁に格子のように柱が露出している
現代では中々お目にかかれない部屋の奥には、身近な筈なのに周りから浮いて見える平型のショーケースが置いてあった。 中に緑色の見本商品がいくつも並んでいるガラス板の上に、レジスターといくつかのパンフレットが並んでいる。
そのショーケースの後ろには白い和服と赤く透ける羽衣を身に纏い、白髪に狐の耳を生やした女性が鼻歌を奏でてた。
「~♪ ……あらぁ、お客様ですかぁ?」
「おおー、狐巫女さんだー!」
「はぁ~い、いらっしゃいませ~。 東北じゅん
売り子の女性は軽く頭を下げる。 おっとりとした仕草に大人の色香が漂い、間延びした声が背筋をくすぐるような感覚に瀬呂が頬を赤らめて顔を背け、そっと視線を女性に戻した。 砂藤も口をへの字にしてにやけないよう顔を強張らせた。
「峰田がいなくて良かったな。 俺でも常連になっちまいそうだぞ」
「前に来た時は緑髪の美人さんだったが……どっちでも峰田は来るだろうなぁ。 あ、東北じゅん狐堂特製ずんだ餅六個入をください」
「はぁい、東北じゅん狐堂特製ずんだ餅六個入ですねぇ。 少々お待ちくださいませぇ~」
砂藤が学生証を見せて注文すると、女性はお辞儀をして奥に引っ込む。 一方、女子三人はそれぞれ興味の引かれる物に視線を向かわせていた。
葉隠がパンフレットを手に取り読み始め、百はきょろきょろと店内を見回している中、響香がショーケースをのぞき込んで目を見開く。
「ちょっと砂藤!? 高いんだけど!?」
「うん? 手ごろなのは一つ七十円くらいのあるから、そっち買うといいぞ」
「いや違うし! そっちじゃなくてアンタが買おうとしてる奴! 東北じゅん狐堂特製ずんだ餅、六個で五万円て!?」
値段を聞いて瀬呂と葉隠が同時に振り向き、「五万円!?」 と異口同音で声を上げた。 逆に全く驚いていない百は妙に出来のいい商品を見て手を合わせ微笑む。
「まあ、とても美味しそうですね」
「そうじゃな……ああ、そういえば百はセレブだった! 砂藤、コレ本当に買うの!?」
「へへ、まあ見てなって」
砂藤が不敵に笑うのとほぼ同時、売り子の女性が戻ってきた。 彼女の持つお盆には、綺麗なガラス細工の皿一つずつに載ったずんだ餅が並べられている。
女性は冷蔵ショーケースの上にお盆を置きいてから両手の人差し指を立て、たどたどしくレジスターのスイッチを押していく。
「えーっと。 東北じゅん狐堂特製ずんだ餅六個入、五万円。 そこから学生の合格記念キャンペーンで半額、異性同伴で半額。 店内で……ええと、いーといん? されますかぁ?」
「お願いします」
「はぁい。 では、もひとつ半額でぇ……。 三つ以上のサービスが該当しましたので二割引きましてぇ、五千円ですわ」
「九割オフだと……」
唖然とした響香が砂藤を見ると、手早く支払いを終えた彼は涙を湛えながら拳を握る。
「今週で合格記念サービス、明後日に異性同伴サービスが終わるところだったんだ。 どうしても食いたくて」
「お食事は向こうの囲炉裏ですわ。 お茶をお持ちしますので、どうぞごゆっくり~」
「よし、皆。 向こうに行くぞ」
「砂藤君、まだ私たちは注文してないよー!」
「いいって、いいって。 席に着こうぜ」
砂藤がお盆を持って全員を囲炉裏の方へ誘導する。
店員に指し示された先には木材で四角に囲われ、枠の中にはほのかに熱を放つ木炭と五徳に乗った鉄瓶が灰の上で鎮座していた。 木枠の周りに木製の長椅子が置かれており、砂藤達が座ってみれば程よい暖かさで体を癒してくれる。
これまた普段でも見なれない設備での食事にそわそわと落ち着かない様子の百。 砂藤が各々にずんだ餅と先端がフォークのように尖っているナイフの乗ったガラス皿を配ると、全員が砂藤を不思議な物を見る目を向ける。
その視線にも構わず、手を合わせて笑顔で砂藤はいった。
「よーし皆、食うぞ!」
「ちょい待ち砂藤! 何か流れで貰っちゃったけどいいのかよ!? これ高いだろ!?」
「いいの砂藤君!? 本当に食べちゃうよ!? お腹の中に入ったらクーリングオフできないよ!?」
瀬呂が突っ込み葉隠がわたわたしていると、砂藤は恥ずかしそうに頬を掻いて言った。
「ついて来てくれて嬉しくてさ、おすすめの店を友達と行きたかったし。 何より敵連合の襲撃、次いで体育祭だろ? ちょっとは休んでも罰は当たらないだろう。 これから二週間、体育祭に向けて頑張ろうぜ。 つーわけで、いただきます!」
「かーっ! そう言われちゃ断れないだろ! ゴチになりまーす!」
「砂藤君、ありがとう! いっただっきまーす!」
「遠慮なくもらうよ、ありがとね」
「はい! 砂藤さん、いただきます!」
各々が感謝を述べてずんだ餅を切り分け口に放り込んだ。
静かに咀嚼する音。 誰も言葉を発さず、ゆっくりとずんだ餅を噛んで味わっている。
ごくりと喉を喉を鳴らして一口目を食べ終えると、響香がぼそりと呟く。
「美味しい……え、美味しいって言葉で片づけちゃいけない味なんだけど、てか美味しいって言葉以外に出てこないんだけど!?」
響香の発声を皮切りに葉隠が皿に残っていたずんだ餅を一気に頬張り、瀬呂は震える手で自分のずんだ餅を切り分け、砂藤は涙を流しながら頷き、百はその美味しさに頬に手を当て味を楽しんでいる。
「ふぉひひぃふぉー!」
「くそ、葉隠みたいに一気に頬張りたいけど絶対に後悔する! 耐えろ俺、一口ずつ食べるんだ!」
「新鮮な豆の香りが口の中にいっぱいに広がる……しかし青臭くなく甘すぎず、枝豆の高級素材であるだだちゃ豆の上品な風味を引き出している。 さらには餅も特上物……過不足の無い跳ねるような弾力の食感が食べる楽しみを促進させ、同時にずんだを噛むことで意図せずに最高の食感と爽やかな緑が口の中で弾けるのはまさに絶品という他なし……」
「とても上品ですわ。 ティータイムの一品に頼んでみようかしら」
堪能している瀬呂の後ろから、にゅっと緑髪の女性が顔を出しお茶を差し出した。
「ずんだを
「え、あがめ……?」
「はい、ずんだは崇め
「はぁ~い、ずんちゃ~ん? お仕事に戻りましょうね~」
早口でまくし立てるずんちゃんと呼ばれた女性に圧倒されていると、売り子の女性がいつの間にか首根っこを掴んでいだ。
「ああ、まだずんだの素晴らしさが一パーセントも伝えられて……」
「だぁ~め」
「イタコ姉さま、そんなご無体な~!」
全員が呆気にとられている中、ずんだ~と叫ぶ女性をイタコと呼ばれた店員が引きずっていく。
そんな一幕の後、一つ余ったずんだ餅をじゃんけんで取り合いつつも一行はお茶を飲んで一息つく。
勝ち取った百がずんだ餅を三等分にして響香と葉隠に配っている。 それを男子は羨ましそうに眺めつつ、砂藤達が寛いでいると店の入り口が開いて背広を着たリスのような愛嬌ある顔の男性が入ってきた。
「ごめんくださーい……おや、雄英の学生さんっスか。 青春っスねー。 ずんだロール二切れお願いしまーす」
「はぁい、宮下様。 毎度、ありがとうございます。 二百六十円になりますわぁ」
「お釣りは丁度でっと、ごちそうになります。 さーて、帰って仏壇にお供えしてから一杯やるぞー!」
男性が注文している間にも執事をやっていそうな老紳士、恰幅のいい貴婦人、ヒーロービルボードチャートで二桁のヒーローなど続々と買い物客がやってきた。
段々と人が増え、時間もいつの間にか午後六時に迫っているのを見て砂藤が慌てだす。
「っと、そろそろ帰らないとな。 食器片づけてくる」
「おう。 じゃあ俺は湯飲み持ってくわ」
食べ終わった皿を重ねる砂藤。瀬呂が湯飲みをお盆に集めて返却しに行く。
鞄を抱えていつでも帰れる百に響香が声をかけた。
「あのさ、八百万」
「はい、なんでしょうか?」
「呼ぶ時、さ。 苗字だとちょっと長いし、名前で呼んでいい?」
僅かに目をそらしながら響香の突然の申し出。 百は目を瞬かせ、そして手を合わせて笑顔を向けた。
「…………まぁ! でしたらぜひ、"アダナ"というので呼んでほしいですわ!」
「あだ名……ああ、八百万はそういうのと無縁っぽいよね」
百の提案に今度は響香が目を丸くする。 礼儀や形式を重んじる上流階級の為にあだ名をつけられたことの無いだろう彼女は、友好の形の一つである愛称をつけてもらいたいらしい。
そこに葉隠が見えない手を上げて大きく振って自己アピールをした。
「はいはーい! ツクモちゃんはどうかな?」
「合ってるのが"も"だけじゃん。 何処かにいそうなゆるキャラっぽいし却下」
「えー? じゃあ耳郎ちゃん考えてね、よろしく! 無かったらツクモちゃんで!」
反射的に反論してしまい、葉隠にあだ名付けを任された響香。 響香が葉隠を見れば、彼女は見えない両手を胸の前で合わせているようだ。 見た事の無い顔が隣にいる百と同じキラキラした表情で見つめているだろう響香は、故意か偶然か逃げ道を封じられ小さく呻いた。
「ぐっ……うーん。 やおよろずもも……よろもも……ず……やおよろ……やおもも。 ヤオモモでいい?」
「はい! では、私も耳郎さんのあだ名を」
喜びの勢いで響香のあだ名をつけようとする百。 その提案に響香は手を振って断った。
「いや、名前でいいよ。 名前で呼びたいってのも短かくなるからだし」
「いいねーいいねー、じゃあ私も透って呼んで!」
「はい、透さん!」
和気あいあいと戯れる女子の雰囲気に、少し離れたところで砂藤と瀬呂は踏み込めずに立ち止まっている。
「ものすごく声がかけにくいな、この空気」
「しっ。 砂藤、こういうのは突っ込まないほうがいいぞ。 女の友情に男が割って入るのは野暮ってもんよ。 それに八百万ちゃんは敵連合が襲ってきた後から暗い顔が多かったからな。 どうにか調子が戻ったみたいで良かったぜ」
「よく見てんなお前」
感嘆の声を上げる砂藤に、瀬呂が片目をつぶって笑う。
「お前だって解ってて誘ったんだろ? タダで誘うなら麗日ちゃんが諸手を上げてで来るだろうし、二人だけならずんだ餅を山分けだ。 まあ、ついでに緑谷や飯田も付いてくるだろうけど。 どうなんだ? ん?」
「……ノーコメントだ」
男同士、女同士で会話に花を咲かせる雄英生徒達。 結局、古時計が午後六時を知らせる鐘が鳴るまでの短い時間、男子二人は女子のやり取りを見守っていた。
誤字脱字報告、そして感想を有難うございます
以下、独自設定
・雄英高校周辺
ヴィランが高校を襲撃しない理由+原作で描写の少ない周辺を追加。
本文に書いてある通り、プロがすぐ駆け付ける+富豪資金による山盛り最新設備によって小物ヴィランは寄ってこない上、極悪ヴィランも突破が難しく時間を少しでもかけるとヒーローが確実にやってくるので襲うリターンが薄いってことに。
ヴィラン蔓延るこの世界で安全性は地価が高くなり、富豪が集まる地区があるんじゃないかなーと。 なお黒霧。
転移個性は原作に出ている数だけなくらい、本当に希少なんでしょうね。対策が難しすぎる。日本じゃセントリーガン(無人砲台)とか許可されないでしょうし。 弾が非殺傷なら配置できるのかな?