都内某所、城東大学に程近い場所に位置するステーキ店橘は昼時ともなると腹を空かせた書生らが大人気の鯨ステーキを食べるべく大変に込み合うのだ
そんな中我らがショッカーライダーことミコトもバンダナとエプロンを締めて厨房に接客にと大忙しである
「はいよぉ!鯨ステーキ3ポンドおまちどう!はぁいご注文お伺い致しまあす!」
女給のモヨ子と一緒にてんてこ舞いになりながら働く二人の楽しみは店の親父の焼く賄いのステーキなのは言うまでも無く午後も二時を過ぎればぼちぼち一旦店を閉めて休憩と言った格好だ
「親父さん!そろそろお客さんの来店も止まったぜ!」
「おぅ、ご苦労さん」
「親父さん、今日の賄いは私ラムチョップが良いわ!」
「おいおい、まだ仕事は終わってないぜモヨ子ちゃん?親父さん、俺は鯨ステーキ10ポンドね」
「へーへーわかったわかった食いしん坊どもめら、わかったから持ち場に戻れいってんだ」
目元だけで頬笑む店の親父は「やったー!」と声を上げて嬉しそうに持ち場に帰って行く若者を見送るととびきり旨いのをこさえてやろうと肉塊に向かうのだった
「ありがとうございましたぁ!またのご来店をお待ちしております!」
「ありがとうございました!」
程なくして最後の客が帰るのを二人で見送るともうヘトヘトと言った風情で椅子に腰かけてテーブルに突っ伏す
「お、終わったぁ」
「あー、お腹空いたぁ」
「あいよ、二人ともご苦労さん」
頃合いを見計らって店の親父が二人への賄いを持ってくる
モヨ子は焼きたての香ばしい香りの漂うライ麦のバゲットにプチトマトとレタスのコンソメスープ、ラムチョップにアップルソースがかけられ人参のグラッセが添えられている
ミコトには鉄板の上でじゅうじゅうと音を立てる特大の鯨のステーキ、上にはバターが乗せられ付け合わせは茄子と馬鈴薯、丼に山盛りによそわれた白飯はホカホカと湯気がたっていて味噌汁と二切れの沢庵も付いている
水をグラスに注ぐピッチャーの中にはクラッシュされた氷と櫛切りにされた檸檬とライムが浮かべられていた
「わぁい、美味しそう!いただきまぁす!」
「いただきます!」
二人が合掌してさてさてと言った表情で目の前の食事に手を付けようとしたちょうどその時であった
ショッカー参謀本部よる指令をミコトが受信したのは
『ショッカー参謀本部ヨリ指令ショッカーライダーへ、現在〇〇ニテ暴徒ニヨッテ動物園ガ襲撃サレ動物ガ逃ゲ出シ周囲ニ被害ヲ与エル事ガ懸念サレル、直チニ現場へ急行シ逃ゲ出シタ動物及ビ暴徒ヲ殲滅セヨ』
途端に眉間に皺を寄せて険しい表情になったミコトは親の敵でも見るような視線を目の前のステーキに向けながらすっくと立ち上がってエプロンとバンダナを外しにかかる
「あら、どうしたのミコトさん?食べないの?」
「…ショッカーからの指令さ、ちょっと出てくるから残しておいてくれよな!」
未練がましくステーキの方をチラチラと見やるミコトを尻目にモヨ子は我関せずとばかりに唇にソースを付けながら美味しそうに目の前の食事を楽しんでいる
ミコトは帽子掛から帽子を外して被るといつもの五割増しの怒りの表情で店を飛び出して行った
「おのれぇ…何処の何者か知らんが許さあぁぁぁぁぁぁぁぁん」
所変わって都内某所、年中人が行き交う閑静な町並みは今や混乱と悲鳴に包まれていた
「た、助けてぇ!」
「お母さぁん!」
動物園から逃げ出したと思われる数頭の鹿、それが威嚇の為かはたまた気性が荒い個体なのか偶々近くに居た親子連れに角を向けてきたのだ
まだ小さい男の子が母親を守ろうと鹿の前に出るが鹿は止まる気配を見せない、だが
「とぉう!ショッカー変身!」
その親子の背後から駆けつけたミコトが大きく跳躍し空中で回転しながら変身、その落下の勢いに乗せて角で突こうとしてくる鹿の角を拳で叩き折った
「良くお母さんを守ったな坊や、さぁお母さん早くお逃げなさい!」
親子をに逃がすとショッカーライダーは角を叩き折られた衝撃で動けずにいる鹿に向けて変身と同じポーズを取り気合いを入れる
「畜生如きがぁ…ショッカーの人的資源に害を成そうとは断じて許さん!!」
怒りの怒号と共に飛び上がってショッカー踏で頭をアスファルトの染みにすると見れば辺りには逃げ出した動物が我が物顔で闊歩していた
「おのれぇ……許さん!!!」
まずは数が多いインパラの群を見つけて殲滅しようとするも高い機動力と数でそれを振り切ろうとしてくる
「畜生如きがショッカーから逃げられると思うなよ!まずはその足を止めてやる!!」
ショッカーライダーが拳を大きく掲げるとそのまま地面に打ち込むや否や周囲に凄まじい地震が発生するこれぞ
「ショッカーアースクエイク!」
恐怖と混乱に足のすくんだインパラに周囲の建造物や樹木が倒れて下敷きにするとその血の臭いに誘われてか獰悪な肉食性の高い生き物が集まってくる
「多いな…だが集まって来たというのは好都合!一匹たりとも生かして帰さん!!」
ショッカーライダーはまずその体を沈めて大きく飛び上がると空中に集まっていた鳥の集団に全ての指を向ける格好になると指先から放たれるフィンガーミサイルでこれを次々と撃墜してゆく
「ホキョキョキョキョー!!」
その落下の勢いを込めたショッカー肘鉄でインパラの死骸を喰おうとしていたジャガーの背骨を粉砕するとショッカーライダー目掛けて突進してきた猪を真っ向から受け止める
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぁらあぁ!!!」
それを体を大きく反らせて上空に放り投げると落ちてくる猪目掛けてジャンプの勢いを乗せてアッパー気味に放つショッカー殴、題して
「ショッカー昇竜殴!」
今度は業を煮やしたハイエナがショッカーからに集団で噛みついてくるがショッカーライダーはこれに些かの痛痒も感じる事はなく逆にハイエナどもを纏めて抱え込んで変則型のショッカー締でこれらを圧殺する
その隙を突く形で今度は羆が両腕を振り上げて襲い掛かるもショッカーライダーはこれと手四つに組み合うとショッカー握でその手を破壊、頭突きを鼻っ面に浴びせるとたまらず怯む羆のがら空きになった胴体にショッカー殴の連打を叩き込む
「ショッカー連打殴!」
ショッカーライダーが全身に浴びた返り血の臭いに引き付けられて今度は虎が現れる、ショッカーライダーは構えを取って対峙するが背後から近づいてくるオセロットをショッカー蹴で振り向き様に吹き飛ばすとその瞬間を狙ってショッカーライダーに飛び掛かる
しかしそこはショッカーライダー、ショッカー体かましで迎撃すると前脚を掴んではショッカー投でアスファルトに沈めた
「集まってきた動物は全て始末したがまだ全てでは無いか…だが既にショッカー戦闘員が配備され住人の避難は完了している!ならば!」
ショッカーライダーはその優れた感覚とショッカーから送られてくる情報を元に俯瞰するとショッカーホーンより信号を発する
「ウォークリケット!!!」
格納されているショッカーのガレージから信号を受けて発進する超重量級戦車ウォークリケットは自立稼働で道中見かけた動物をその履帯で轢きながらショッカーライダーの元へと駆けつけた
「とぉう!」
一跳びで搭乗したショッカーライダーは街路樹の葉を引きちぎるキリンを見つけるとまずこれを徹甲弾で粉砕
するとこれに驚いたのかサイが突っ込んでくる
「このウォークリケット!その程度では傷一つつかん!」
逆に主砲を大きく引いて力を溜めると尖端に尖った杭のような蓋を被せてパイルとして逆に突っ込んできたサイが中に舞う
次に見つけたバッファローの群れには榴弾による砲撃と側面の八連装ミサイルを浴びせて爆散させる、これに驚いてかニシキヘビやワニが用水路に逃げ込むのを見るとウォークリケットから飛び出したショッカーライダーは自律稼働で動物を駆除するウォークリケットを他所に用水路の縁にたつとショッカーボムを放り投げる
「ショッカーボム!」
爆雷なだけあって水中でもまるで威力を損なわない爆発力に大きな水柱が上がると先程逃げ込んだ生き物や魚が腹を見せて浮かんできた
「イー!ショッカーライダー!これでこの近辺の動物は殲滅できた、後は件の動物園だ!」
血みどろになりながらも駆除を行うショッカー戦闘員の話をきくとショッカーライダーは返礼をする
「イー!ありがとう戦闘員君!この後の事は頼んだぞ!」
「任せておいてくれ!武運を祈る!」
既にショッカー清掃員の姿も見える
再度ウォークリケットに乗り込んだショッカーライダーは変身を解き動物園へと急行した