侵攻する妖精、燃え盛る大地、ーー楽園は
***
「あー、気持ち悪いぜ......」
「あら、えらく酔いが回るのが早いわね? 魔理沙」
グラスを傾けながらベリーが魔理沙の言葉に反応する、普段はもっと飲めるんだがなぁ、なんでだろうなぁ......と首を捻る魔理沙。
「だがもう少しで式が始まるんだろう? 余興の時点でダウンするわけにはいかないぜ」
「そうこうしているうちに始まるみたいよ。司会らしき人物は......居ないわね」
霊夢らしいと言えば霊夢らしいな、と快活に笑う魔理沙とこんなときくらいきちんとやればいいのに、と溜め息をつくベリー。そこへ警備を担当していたユウが自分たちも中に入って式を見てもいいか、とベリーに尋ねにやってきた。
「そうね......、まあ構わないわよ」
お疲れ様、とねぎらいの言葉を続けながらユウたちに許可を出すベリー、しかしユウと入れ替わりにアリスがやってきて本当に大丈夫なの、と不安げに尋ねる。それに対して魔理沙が中にいるか外にいるかの差なんだから気にすることないぜ、と返す。それを聞いてそれもそうね、と自分の席へ戻るアリス。
そして霊夢とウィンテラが舞台に上がる、時を同じくしてユウたちが適当な席を見つけて座る。全員が席に着くのを見届けてウィンテラが話し始める。
***
――転移魔法陣 起動。
式の最中、突如として発動した巨大な転移魔法陣にベリーは目を丸くした。脳裏に浮かぶ無数の疑問を振り払い、指示を出す。
「沙羅! リルポ! 魔法陣の解除を!」
「すでにやってます!」
ベリーは魔理沙が気分を悪くしていた理由がお酒ではなくこの巨大な魔法陣を隠すために周辺のマナが大量に消費され、軽度の魔力欠乏を起こしたからだと気づく。しかし、いくら巨大といえど所詮は転移魔法陣、沙羅は
しかし......
「消えない、これは多重魔法陣!? なぜそんなものが......」
沙羅の次の言葉を待つことなく魔法陣は作動し、沙羅たちは転移させられる。彼女たちは発動と共に白く染まる視界の中で屋根を突き破り、室内へ侵入したグレイウルフとそのあとに続くエルグたちの姿をとらえた。
――エルグたち、
***
「ここは......どこだ?」
白一色となっていた視界に色が戻ったとき、ユウは見慣れぬ場所にいた。周りを見渡し、ユウは目を覚ましたベリーに駆け寄り場所を尋ねる。
ベリーは恐らく外の世界でしょうね、と答える。ほどなくして全員が目を覚まし、現在の状況を把握しようとベリーの周りへと集まった。
「マナが極端に少ないのでベリーさんの言う通り、外の世界で間違いないと思います」
「そうですか、霊夢さんたちは大丈夫でしょうか?」
「とりあえずは平気だろう、飛ばされる直前に俺があいつらを紅魔館へ転移させたからな」
ウィンテラの不安に対して翔魔が答える。
「霊夢たちはとりあえずのところは大丈夫よ、けど過信はできないわ」
ベリーの言葉に全員がうなずく。ベリーはそれを受けて言葉を続ける。
「一刻も早く幻想郷へ戻りましょう、幸い結界のすぐそばへ転移させられたようだから」
――幻想郷と外の世界を隔てる結界は二つある、幻と実体の境界と博麗大結界だ。ベリーたちはエルグらが仕掛けた転移魔法陣によって博麗大結界の外の世界側、結界の近辺へ飛ばされていた。
博麗大結界だけなら抜け道も多く、彼女らほどの力をもってすれば容易く中へと戻れるだろう。しかし幻と実体の境界の方はそうはいかない。幻と実体の境界を超えるのは現実の存在ならざる彼女らでも至難の業だ、事実ベリーはこれをどう突破するか頭を悩ませている。
「ねえ、幻と実体の結界を解読して通過できるようにできないかしら?」
「やってみるわ」
「頼むわ、リルポ」
ベリーの問いにリルポが反応し、そのまま結界の解読を試みる。だがリルポは結界をいじくってすぐにある問題に気づく。
「ねえ、解読して消すことはできるけど消すのはマズくないかしら」
「そうだな、壊すのマズいぜお嬢」
「失念してたわ......」
幻と実体の結界を破壊するわけにはいかず、ベリーは次の案を考える。強行突破という四文字が頭に浮かぶがエルグたちと戦う前にそんなことをして消耗はしたくない、しかし強行突破を行えば消耗と引き換えに中へ入ることができる......二つの問題に板挟みにされるベリー。ユウはそんな様子を見てあることを思いつく。