My Reverie   作:ユウ/伽藍堂(本舗)

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最終話「不倶戴天」

 「ついに始まったわね」

 

 消滅に巻き込まれる前にさっさとあのクソ野郎を仕留めるわよ、そう言ってベリーは奥へ進む。翔魔と葵の活躍によってトニーが倒されたことで術者を失った幻影の旧紅魔館の崩落が始まったのだ。

 どんどん進んでいくベリーの背中をザクロ、茨、リルポが追う。リルポが能力で崩壊、もとい館の消滅を遅らせているためすぐさま消滅することはないがあと数十分も持たないだろう。しかし廊下の奥は未だに暗闇に包まれており、部屋はおろかドアすら見えない。

 

 「さすがに暗闇も見飽きてきたな」

 

 走りながらザクロがぼやく、ザクロもそれに同意するがリルポはただ黙りこんでいた。不意にベリーが立ち止まる。とっさにリルポを守る形で臨戦態勢をとるザクロと茨だがベリーが振り向くことなく出したハンドサインに従ってゆっくりと歩を進める。

 数歩進んだところで再びベリーが立ち止まる、そして拳を振り上げ虚空を殴りつける。すると何もないはずの空間にひびが入り、ガシャンと派手な音を立てながら崩れ落ちた。

 

 「鏡ですね」

 

 何が起きたかを即座に理解したザクロが口に出す。ベリーは歩きながらリボルバーにきちんと弾丸が装填されているかを確認しつつ、ええ、何かおかしいと思ったのよ、と返事をする。

 鏡が割られたことで現れた非常用の出口のドア、そのノブをゆっくりと捻りながら中の様子をうかがう。するとかすかに足音がする。

 

 「やっぱり気づいたわね、追うわよ」

 

 ここまで来て逃がしましたじゃ先に死んでいったメンバーに示しがつかないわ、必ず仕留めるわよ。そういってドアを勢いよく開き、蝶番を数個向こう側へ飛ばしながらエルグの後を追う。

 

 「見えた! 階段よ」

 

 銃口を向けながらそう言うがまたすぐに走り出す。エルグが器用に障害物の後ろになるように逃げるせいで引き金を引けず、鬼ごっこに付き合わされる一向。

 

 「構造がいじられていないならここから先は直線よ、そこでブチ殺す」

 

 もはや殺気を隠そうともせずに歩を進めるベリー、その言葉通り何もない直線の通路に出る。

 

 ――形状変化 鳥籠

 

 ザクロが能力によってエルグの足を封じる、リルポ、ベリー、茨が逃がさないように散開しつつ距離を詰める。

 

 「観念しな」

 

 その言葉を聞いたエルグは必死の形相で脱出を図っていたにも関わらず、その動きを止める。さらに警戒を強めながら接近する三人。

 次の瞬間、エルグが光球を放つ。光球は茨に向けて一直線に突き進んでくる、正体がわからない以上不用意に迎撃するのは得策ではないと判断した茨は直線上から逸れるように跳躍する。

 直後、光球がガクンと勢いを保ったまま方向を変える。着地するより早く光球が曲がったせいで反応が間に合わない茨、直撃するそう思った瞬間に後ろから誰かに突き飛ばされる茨。

 

 ――ベリーは見た。茨をザクロが突き飛ばし、代わりに光球に飲み込まれ、跡形もなく消滅する瞬間を。

 

 「貴様! どれだけやれば!」

 

 茨よりも早くザクロの死に激怒するベリー。その怒りもどこ吹く風、エルグはすでに逃走を始めていた。

 その態度に怒りのギアをもう一段階上げたベリーは叫ぼうとするがそれよりも早く鬼の形相の茨がベリーを追い抜いて凄まじい勢いでエルグを追いかけていく。

 瞬く間にエルグに追いつき、拘束する茨。エルグは再び光球を放とうとするが放つよりも早く首の骨を握られ、粉砕される。

 

 「早く殺せ、俺はこれ以上コイツの存在を許せねえ」

 

 追いついたベリーに向かって茨がそう言い放つ。

 

 「もとよりそのつもりよ」

 

 ベリーはリボルバーの銃口をエルグの頭に押し付け、引き金に指をかける。

 

 「待て! 待ってくれ!」

 

 粉砕された首の骨の再生を終えたエルグがベリーを制止する。

 

 「あんたは一時の怒りに任せて一生罪を背負う気か!?」

 

 「黙れ、今度は脳漿をぶちまけてやろうか!?」

 

 そういってエルグの頭を締め上げる茨、ベリーは悲鳴を上げるエルグに向かって何かから逃げようするのは罪を犯したから。身を隠そうとするのは罪を認めたから。そして罪を認めた者は何をするでしょう? と問いかける。

 エルグの返答を遮るようにベリーは問いかけに対する答えを示す。

 

 「罪を認めた者は言い訳を始めるのよ、あなたのように」

 

 なおも喚き散らすエルグに向けてベリーはもう二度と、お前とともに天を戴くことがないと思うと清々するわ、と吐き捨てるように言う。

 

 「待て! 早まるな! 復讐は何も生まないんだぞ! やめてくれ!」

 

 「あら? もう生まれているわよ」

 

 憎しみがね、そう言ってベリーは引き金を引く。乾いた発砲音が辺りに響く。

 

 「脱出しましょうか」

 

 ベリーは淡々と次の行動に移る。

 

 「ええ、もう数分で消滅するわ、さっさと出ましょう」

 

 リルポはそう言って能力によって出口を生み出す。リルポ、茨、ベリーの順に出口をくぐり、外へ出る。

 先に脱出していたのだろう、外ではユウたちがベリーたちを待っていた、そして一番にユウが発した質問に対してベリーはええ、全て、と返す。

 そして沙羅から翔魔と葵が死亡したことを、茨の口からザクロの消滅を報告された直後、ぐらりとめまいのような感覚とともに幻の旧紅魔館が消滅する。あとに残ったまっさらな大地を見てベリーは明日から宿無しね、まいったわと言って肩を竦める。

 

 「残ったのは八人ね、良く生き残ってくれたわ」

 

 状況が状況なだけにたとえ冥界へ行こうとも死んでいったやつに会うことは叶わないわ、それぞれ思うところがあるだろうけど、そう言ってベリーは一度言葉を切る。

 

 「だから生き残った私たちが彼らの犠牲に意味を作っていくのよ」

 

 「ええ、そうですね。それが生き残った私たちに課された義務です」

 

 「そしてSD機関はどうなるのか、そもそも幻想郷に留まるのか、疑問は尽きないでしょう」

 

 けど先に汗を流しましょう? そう言ってベリーは向かってくる霊夢たちへ視線を向ける。

 

 「そうだな、俺も気持ちの整理をつけたい」

 

 茨がそう、ベリーに賛成する。

 それ以外のメンバーも賛成の意を示し、レミリアの好意という形で紅魔館できずを癒した。

 その夜、異変に関わったメンバー全員が集まり今後について話合った。

 

 「全てを話す前にまずはそこの二人、紙縒とグレイウルフの処遇ね」

 

 ベリーはあなたたちはどうしたいと問いかける。グレイウルフは問いかけに対してワシはさらなる強者とド突き合いたいから放浪生活する気やけどあんたはどうする? そう言ってグレイウルフは紙縒に話を振る。

 

 「私はあなたについていくわ、もう能力に煩わされることもないから」

 

 だそうだ、とユウはベリーの方へ向く。

 

 「分かったわ、リルポ、拘束を解いてあげなさい」

 

 リルポは二人を拘束していた魔法を解く、それを確認したベリーは視線を扉へ向けた後、好きにしなさいと言って説明の続きへと戻る。

 

 「さて、私たちが知るすべてを話すわ」

 

 「ええ」

 

 霊夢は短くそう返す。そしてベリーはややこしいから一度説明したことでももう一度話すわねと前置きをした後、紫たちの動向について説明を始めた。

 

 「一部を除く幻想郷の有力者は全員MDWCの本部よ、私も詳しい内容は知らないのだけれどね」

 

 私たちは紫たちが留守にする間の防衛を任されていたわ、まさか本命であるエルグが過去の異変の主犯を引き連れて攻めてくるとは思わなかったけどと言ってベリーは肩を竦めてやれやれといった意思を示す。

 

 「なるほどね」

 

 感づいていた霊夢の反応は薄い。ベリーは内心、その反応の薄さに肩透かしを食らった気分だったが表情には出さずに話を続ける。

 

 「これが一つ目、二つ目はエルグについてよ」

 

 しっかり話したことは今まで一度もなかったんじゃないかしらと言って記憶をたどるそぶりを見せるベリー、だが思い出せなったのか軽く首を傾けたのちに説明へ戻る。

 

 「といっても詳しい話は長くなるから端的に済ませるけどね」

 

 Malice、悪意を表すこの名は簡単に言うと「不和を撒く才能」があるの、集団というシステムの癌ともいえる存在でどういうことを行うかは私たちの過去を知っていれば分かるわよね、そこまで言ったベリーは嫌な記憶を思い出したのだろう、渋い顔を作る。

 同じようにユウたちもその名に対して露骨な嫌悪感を示す、一つため息をついたベリーは説明を続ける。いわく大罪の器とMaliceは密接な関係にあると

 

 「これは私たちの今後にも関わってくるわ」

 

 そう言ってふー、と大きく息を吐き、話を続ける。

 

 「私たちは悲劇の元凶であるMaliceについて知りたい」

 

 そして大罪の器との関係についても、つまりこの二つについて調査する、それが当面の私たちの目的よ、ここで理解を得られたかリルポたちの方へ向く。

 

 「......俺はお嬢に従う」

 

 ユウはそう言ったきり、押し黙る。ベリーはユウの発言に対して反対の意見が出ないことから了承されたと考え、ほっと胸をなでおろす。そしてこれは私たちのような輩を新たなに生まないためでもあるわ、とさらりと付け加える。

 

 「以上が私が知るすべてとこれからについてよ」

 

 もしわからないことがあるなら私に聞いてちょうだい、そういって説明を終えるベリー。するとバトンタッチするようにユウが話し始める。

 

 「ならよ、新たな門出を祝した何かがあってもいいんじゃねえか?」

 

 ユウはそうしてワインのボトルを指さす。一瞬、ベリーは怪訝な顔をするがリルポに肘でつつかれて意図を理解する。

 

 「なるほど、そうね」

 

 そうしましょうと言ってベリーはワインをグラスに注ぐ、そしてユウがグラスを手に取ったことでその場にいる全員が残りのグラスを手に取る。

 

 「では、犠牲への追悼と因縁の決着に乾杯!」

 

 その言葉とともにチンッとガラス同士が軽くぶつかる音が部屋に響く。

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