My Reverie   作:ユウ/伽藍堂(本舗)

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第6話 「銀氷の弾丸」

 ここは霧の湖の側、紅魔館内の一室。旧紅魔館から撤退したベリーたちがそこに居た。

 

 「まずはよく持ち堪えてくれたわね、ありがとう」

 

 ベリーが霊夢たちに礼を述べる。魔理沙はギリギリだったけどな、とボヤく。

 

 「そんなことよりあんたらが私を助けたのが解せないわ。どういう風の吹き回しよ? 」

 

 女苑と紫苑は我関せずといった素振りで正邪へ視線を送る。正邪は女苑たちから視線を送られしぶしぶ説明を始めた。

 

 「どういう風もクソもねえ、私が動く理由なんて()()()()()()()()以外にないだろ?」

 

 「最初、お前らは強者だったが()()側に回ったからな。私はいつだって強者の敵さ」

 

 「私たちもそこの天邪鬼と似たような理由よ、幻想郷を滅ぼされちゃ疫病神生命あがったりだからね」

 

 そういえば、とレミリアが口を開く。

 

 「何であんたたちは能力が使えるわけ?」

 

 「そういえばそうね、なんで使えんのよ」

 

 「あいつがペラペラ喋ってただろうが、指定した対象がどうたらぺらぺらと」

 

 「おいおい、ちょっと待てよ。確かにそう言ってたがなんでお前らが知ってるんだ?」

 

 魔理沙の問いに正邪はフンッ、と鼻を鳴らす。

 

 「虫だよ虫、蛍の妖怪が居たろ?」

 

 「ちょっと待ちなさいよ、それは私の問いの答えにはなってないわよ」

 

 「吸血鬼様ともあろうもんが察しが悪ィなァ......私たちはあのデカブツの対象になってないんだよ」

 

 だから能力が使える。おおかた私たち有象無象は強者様の眼中にねえってことだろ、と言う正邪。レミリアはそれを聞いてなるほどね、と納得した様子で頷く。

 

 「謎は解けたようね、さてここからが本題よ」

 

 正邪たちが霊夢を助けた理由、そして能力が使える理由を理解した霊夢たちに黙っていたベリーがこれからのことを話そうとする。そこに女苑が割り込む。

 

 「そこから先に興味はないわ、帰らせてもらうわよ」

 

 「そうだな、私も帰らせてもらうぜ」

 

 「そう、分かったわ。ありがとうね」

 

 「礼なんかいらねえよ、私たちは私たちの矜恃を貫いただけだからな」

 

 そう言って正邪たちは宵闇へ姿を消した。その背中を少しの間眺めたのち、ベリーたちは本題へ移った。

 

 「色々話すことがあるけれどまずこの異変、解決を私たちに一任してほしいわ」

 

 「......理由は?」

 

 「あいつらは私を目的にやってきた、なら狙われている私たちが責任を持つのが道理、そうでしょ?」

 

 「まあ、そうね」

 

 「もう一つの理由はわかるわよね?」

 

 「わかりたくはないところだけど分かるわよ」

 

 「あんたらに任せること自体は構わないわ、けどあんたらが負けたらどうするの?」

 

 霊夢が淡々と最悪の事態について質問する。

 

 べリーは一拍おいて一言、私たちは負けないわよと返す。

 

 「何はともあれ、まずはシャングリラをどうにかしないといけないわね」

 

 「自分たちに解決を一任してほしいといったそばから私たちに聞くのね」

 

 「あら、別にいいじゃない。捨てるプライドももう無いわ」

 

 失礼、とウィンテラが部屋に入ってくる。ベリーがどう? と尋ねる。

 

 「かなり消耗してますね、もう一度覇竜に変身するのは難しいと思われます」

 

 「当然でしょうね、博麗大結界を強行突破したなら」

 

 「加えてニルヴァーナの砲撃から私達を庇ったから予想はしていたけれど」

 

 「霊夢さんの言う通り結界を無理に突破したのが堪えてるようです、どうします?」

 

 「沙羅、何か案はある?」

 

 「現状、お二方の言われた通り能力は使えません。吸血鬼の霧化と同じ要領で変身できるユウさんも運用は難しいです」

 

 冷静に沙羅が状況を分析する。そこにウィンテラが先の一件で相手も相当頭に来てると思われます、作戦会議にもあまり時間は使えないかと......と付け加える。

 

 「そのうえガードも固めてくるだろうから奇襲も通用しないんじゃない?」

 

 つくづくめんどくさいわね、とリルポが毒づく。その後、いくつかの案が提案されるも却下され、いよいよベリーたちは頭を抱えることとなる。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 会議がいったんお開きとなり、みなが部屋に戻る中でウィンテラはチルノに光の三妖精の居場所を聞いていた。

 

 「スターたちの居場所か?」

 

 「ええ、知っていますか?」

 

 「あたいはさいきょーだからな、呼べば来るぞ!」

 

 えっへん、とチルノが胸を張る。

 

 「では私の部屋に来てくれるように伝えてもらえますか?」

 

 ウィンテラが視線を合わせて頼むとお安いごよーってやつだ、任せろ! とチルノは元気よく返事をする。

 

 「では私は部屋へ戻るのでよろしくお願いしますね」

 

 そうしてウィンテラがチルノに三妖精を自室へ来るように頼んだ数時間後、ウィンテラの部屋で三妖精とウィンテラは作戦会議を行っていた。

 

 「まず簡単に現状を説明しますね、いいですか?」

 

 おー、と少しずれた返事が返ってくる。返事を受けてウィンテラは事細かに事情を説明し始めた。

 

 「まず、幻想郷はやばい状況です。それは理解してますよね?」

 

 「ええ、知ってるわ」

 

 「そして私たちは能力を封じられています、種族的な変身は問題なかったり、指定された対象以外は平気だったりと穴はありますがとにかく能力が使えません」

 

 「うんうん、よくわからないけどそうなんだ」

 

 「しっかりしなさいよ、サニー」

 

 「とりあえずここまで理解できましたか?」

 

 「うん、幻想郷がエルグとかいう吸血鬼に襲われてて、能力も封印されてるのね」

 

 「そうです、そこで私たちは能力が封印されている原因を破壊しようと話し合いました」

 

 しかし良い答えは見つからずに会議はお開きとなってしまいました、そう言って大げさにウィンテラは肩を落とす仕草をする。

 

 「だが! まだ方法はあるのです。それを実行するためにあなたたちに来てもらいました」

 

 「つまり......いたずらをするってことよ、きっと」

 

 さすがスターね! とほかの二人から歓声が上がる。

 

 「いたずらですか......まあそんなところです。協力してくれますか?」

 

 「もちろんよ、何すればいいの?」

 

 「今回の作戦の目標は能力を使えるようにするためにシャングリラを破壊することです」

 

 「けど私たちじゃあんなでかいの壊せないよ?」

 

 「破壊は私が担当します。三人には能力で私の姿を隠してほしいのです、できますか?」

 

 「わかったわ! じゃあサニーとルナがウィンテラさんの姿を消して私が案内するわ」

 

 「さすがスターね、それでいきましょう? サニー」

 

 「じゃあ早速作戦開始よ!」

 

 おー! と歓声が上がる。そうして四人はウィンテラが昼間に確認したシャングリラがある場所へとやってきた。

 

 「では頼みますね」

 

 任せなさい! とサニーとルナが能力を発動する、見る見るうちにウィンテラの姿は見えなくなる。

 

 「じゃあ私が案内するわね、ドア付近までは誰もいないわ」

 

 ウィンテラは指示に従ってドアの側へ進む。ウィンテラがドアの側へたどり着いたのを能力で確認したスターは次の指示を出す。

 

 「ドアの向こうには何もいないわ、階段まで進んで」

 

 「ついたわね、えっと次は......」

 

 地図とにらめっこしながらスターが唸る。

 

 「ねえ、ルナ。これって下に進めばいいのよね?」

 

 「たぶんそうよ、()()()()()()は地下にあるんだから」

 

 「そうよね、えっと......見張りはいないから進んでいいわ」

 

 ウィンテラは指示に従って階段を下りる。そして次の指示を促す。

 

 「えーっと、今いる場所の反対側が目的地だから廊下をぐるっと回ればいいわ」

 

 けどドアの前に誰かいるから注意して、と指示を出す。

 

 「確かに見張りがいます、あれは翳理ですね」

 

 「ねえ、どうするサニー」

 

 「どうって何よ」

 

 「このままじゃドアを開けれないわよ、バレちゃうわ」

 

 サニー、スターは草むらの中で騒ぐ。

 

 「二人とも静かにしなさいよ、誰か来たらどうするのよ」

 

 ルナが二人を宥める。結局二人を宥めようとするルナも加わって三人は草むらの中で大騒ぎする。

 

 「二人とも静かにして! 誰かが近寄ってくるわ」

 

 「これでばれても私のせいじゃないからね」

 

 「ちょっと静かにしなさいよ、サニー」

 

 そうして三妖精は足音が通り過ぎるのを息を潜めて待つ。

 

 徐々に足音が遠ざかる、完全に聞こえなくなってから三人はふー、と大きく息をつく。

 

 「......行った?」

 

 「ええ、通り過ぎたわ」

 

 「ところで私たち何してたんだっけ」

 

 「なんだっけ?」

 

 「もう、ウィンテラさんのいたずらの手伝いでしょ」

 

 「そうだったわね、えっとドアの前にいる()()()をどうにかすればいいのよね」

 

 「適当に壁でも叩けばどくんじゃない?」

 

 「それもそうね。ウィンテラさん、適当に壁でも叩いておびき寄せて」

 

 「やってみます、ドアの向こうには誰もいませんか?」

 

 「ええ、いないわ」

 

 それを聞いたウィンテラは適当な場所を叩く。鈍い音が地下に反響する。

 

 「誰かいるの!?」

 

 叩いた場所へ翳理が走ってくる。ウィンテラはぐるりと廊下を回って入れ違う形でドアの向こうへ滑り込む。

 

 思った以上に響きましたね......、見張りの彼女が中に入ってくるかもしれませんし手早くやりましょう、そう言ってウィンテラは三妖精たちにそこからできる限り離れるように指示する。

 

 「さて、やりますか」

 

 そうしてウィンテラはシャングリラを爆破する準備を手際よく進める。

 

 「よし、無事に出来ましたね」

 

 あとは爆破を待つのみです、とウィンテラは呟いてシャングリラにもたれ、大きく息をつく。

 

 

 

 * * * 

 

 

 

 「ねぇー! 誰かいないのー」

 

 「霊夢か、どうした?」

 

 「あら、ユウじゃない。もう歩けるの?」

 

 「なんとかな、それよりどうしたんだ?」

 

 それが、と霊夢はウィンテラが部屋にいないことをユウに伝える。それを聞いたユウは顔をしかめる。

 

 「そりゃ不自然だな、あいつがお嬢の指示に従わねえのは」

 

 部屋の中は見たのか、とユウは尋ねる。見てないわと返す霊夢。

 

 「別途の指示があったのかもしれない。見に行けば何かしらあるだろう」

 

 「けど勝手に入るのはよくないんじゃない?」

 

 「何のために口がついてんだよ、行こうぜ」

 

 渋る霊夢を連れてユウは壁伝いにウィンテラの部屋まで歩く。

 

 「おい、ウィンテラ! 居るか!?」

 

 ドアをノックするが返事がない。ユウは一瞬悩んだ後ドアノブを捻って部屋の中へ足を踏み入れた。

 

 「この独特の香りは妖精か、けどなんで妖精がアイツの部屋に......」

 

 ユウはそうして部屋の中を見渡す、すると机の上に置かれた紙を見つける。

 

 「手紙かしら?」

 

 「そうっぽいな、開いて読んでみるか?」

 

 「そうね、読みましょう」

 

 霊夢に促され、ユウは三つ折りの手紙を開き上から目を通す、霊夢はユウの横に移動し覗き込む形で手紙を読む。

 

 『シャングリラを破壊するために自爆コードを直接私が入力します。私の命が幻想郷にとっての銀の弾丸とならんことを。【追伸】 この手紙は燃やしてください。』

 

 「あの野郎......! 自分の命と引き換えにシャングリラを自爆させるつもりか」

 

 ユウが手紙を握りしめ、苦々しく呟く。

 

 「けど自爆させるだけなら死ぬこともないんじゃないの?」

 

 「いや、入力してから逃げても間に合わない。確実に自爆に巻き込まれて死ぬ」

 

 誰かが死ぬことになるからその案は出なかったんだろうが、歯を食いしばりながらそうユウは絞り出す。

 

 「何でそんなことを、アイツが先に死んだら私との約束はどうなるのよ!?」

 

 「知らねえよ! こっちが問いただしたいくらいだ」

 

 なんでそう自分が傷つく方にだけ思い切りがいいんだよ、と虚空に向かって投げやりに問いかけるユウ、我慢できずその場に泣き崩れる霊夢。

 

 霊夢の嗚咽とユウの投げる返事のない問いが部屋の中を満たす。

 

 「ただ一緒に居られれば、私はそれで良かったのに......」

 

 霊夢は再び涙を流す。

 

 「......ありえねえ、あいつは残るお前(霊夢)を一人にするようなやつじゃねぇ......」

 

 絶対に何かあるはずだと部屋中の引き出しを漁るユウ、霊夢はそれをぼんやりと目で追う。

 

 「ない、ない、ない、けど絶対に何かあるはずだ。俺の知ってるウィンテラはそういうやつだ」

 

 髪を掻きむしって自分に言い聞かせるように言葉を繰り返しながらもう一度手紙を読むユウ、せわしなく文字を追うその目はある一点で動くことをやめる。

 

 「待てよ、なぜ手紙を燃やす必要があるんだ? 機密情報が書かれているわけでもあるまいし」

 

 ふとユウはあることに思い当たる。茫然自失の霊夢を強引に立たせ、手紙を机のろうそくで炙るユウ。

 

 「あたりだ」

 

 不自然に空いた余白に文字が浮かぶ。全ての文字を炙り出す。

 

 「『霊夢さん、私はあなたとの約束を忘れたわけではありません。人はいつか死にます。結ばれる場所が現世じゃなくなるだけです。』だとよ」

 

 あいつは約束を破ったわけでも忘れたわけでもない、先延ばしにしただけだ。とユウは泣きじゃくる霊夢に言い聞かせる。

 

 手紙が徐々に黒くなってゆく。

 

 手紙が燃え尽きた瞬間、轟音が鳴り響く。

 

 窓から音のした方角を見ると旧紅魔館が瓦解していく様子が立ちのぼる炎によってありありと映し出される。

 

 「......分かったわ、式はもう少しだけ待ってあげる」

 

 霊夢はゆるした、瞳に燃える炎を映しながら。

 

 ――夜が明けた。

 

 

 

 

  

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