ポケモン剣をプレイしていたらゲームでの旅を小説にしたくなる衝動と欲求に駆られ筆を執らせていただきました。
基本はゲームの流れに逆らわないつもりですがオリジナル要素も入れていきたいと思ってます。
『ポケットモンスター』縮めて『ポケモン』。
この世界に住む不思議な生き物。
空に、海に、大地に、森の中に、街の路地に、あの娘のスカートの中には流石にいないだろう。
ここはガラル地方、ハロンタウン。
広大な畑と沢山のウールーが暮らす牧場の町。
町はずれの森の近く、草木に囲まれた一軒家のリビングには一人の少年。その視線はテレビに映るスタジアムに注がれている。
『それではこれよりチャンピオンダンデとジムリーダーキバナによるエキシビションマッチを行います!』
『ウオオオオオオオオ!!!!』
テレビからあふれるばかりの歓声。
チャンピオンとジムリーダーによるエキシビションマッチ。ガラル地方中の人々の心をつかんで離さないその大勝負は当然少年の心もつかんで離さない。
『リザードン、『だいもんじ』』
『ジュラルドン、『ストーンエッジ』』
火の竜が空気の刃を放てばそれをものともせずに鋼鉄の竜は押し進む。鋼鉄の竜が自慢の硬さを誇る頭で突撃すれば火の竜は原子の力を呼び起こしその巨石を盾として突撃を防ぐ。
一進一退の攻防に一喜一憂させられる。少年も観客もその熱気に取り込まれていく。
そして会場の熱気が最高潮に高まったとき、
『いくぜリザードン!』
『荒れ狂えジュラルドン!』
『『ダイマックス!!!』』
『リザアアアアアア!!!!!』
『ジュラアアアアア!!!!!』
「ッ!!!」
歓声はすでに聞こえていない。少年はこぶしを握り締めその戦い、その雄姿を眼に焼き付ける。
【ダイマックス】、選ばれたトレーナーのみが使うことを許された強者の証。特殊なエネルギーによってポケモンを別次元の強さにまで引き上げるそれはまさしく奥の手。巨大化したポケモン同士によるバトルは迫力、緊張感、興奮、すべてが通常のポケモンバトルの比ではない。
『焼き尽くせ、『キョダイゴクエン』』
『踏みつぶせ、『キョダイゲンスイ』』
真のバトルはここからだといわんばかりにダイマックスしたポケモン同士による大技がぶつかり合う。
戦いはさらにその熱気を増していく。
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♪ピンポーン♪
「おじゃましまーす!」
呼び鈴の音とともにドアの開く音と元気のいい声が聞こえてくる。少年がスマートフォンから顔を上げ振り返るとちょうど声の主が入ってきた。
「お、アカツキ。それおニューのスマホか?」
「うん、この前発売したばかりの最新型。噂ではローブシンのパンチにも耐えられるらしいよ」
「なんだそれ、すごすぎるぞ!」
この少年の名前はアカツキ。数年前にこのハロンタウンに引っ越してきた12歳の少年だ。
そして入ってきた少年の名前はホップ。このハロンタウンに住む元気に手足の生えたような少年、年齢は同じく12歳。相棒のウールーと町を駆け回る姿は住民の笑顔の源である。
「というか、アニキのエキシビションマッチ観てたか?アニキの応援にはビシッとリザードンポーズを決めるんだぞ!」
そういってホップは左腕を掲げ人差し指と中指を離しながら親指を立てる。これがリザードンポーズ。人差し指と中指がその強靭な口を、立てられた親指がリザードンの立派な角を表している。現在ガラルの頂点に君臨するチャンピオンのリザードンを模した応援ポーズである。
二人が他愛もない話をしているとキッチンの方より眼鏡をかけた女性がやってくる。
「あらホップ君。今日は大事な日じゃないの?」
彼女はミズキ、アカツキの母親である。趣味のガーデニングは近所でも評判の腕前であり咲かせた花は数知れないカリスマガーデニング職人である。
「はい。だから走ってアカツキを呼びに来たんです」
「あれ、それって今日だっけ?」
「まったく…たまに抜けてるよなアカツキは。外で待ってるぞ、きっとアニキがプレゼントくれるからカバンは忘れるなよ」
お邪魔しましたー、と言ってホップは玄関から出ていく。
アカツキはスマホをポケットに戻すと自分の部屋に戻り素早く外出の支度をすすめる。
赤いポロシャツに白のニット帽子、少し古いがいい造りのカバン。カバンは父親が旅をしていた時に使っていたものである。
「…うん、今日もイケてるな」
鏡に映る自分の姿に納得の表情。この少年最近おしゃれに気を使いだした現代ボーイである。
家を出るとホップは庭でスボミーと戯れていた。このスボミーはミズキのポケモンであり庭の草木のお世話を任されている。
「おぉ、来たなアカツキ」
「おまたせ、構うのもほどほどにね。スボミーを怒らせないでよ」
「うっ、毒のトゲはもう勘弁だぞ」
このスボミーの特性は『毒のトゲ』、触れた相手を毒状態にする強力な特性である。以前ホップはスボミーが珍しいからと構いすぎた結果トゲにやられ毒を食らった過去がある。モモンの実大事。
それ以来しっかり距離の取り方を覚えたのか今はジョーロで水をあげている。気持ちよさそうに水を浴びるスボミーを見るとこっちまで気持ちよくなるなとアカツキは思った。
「それにしてもカバンデカすぎだぞ」
「父さんが使ってたんだこのカバン、これならどんなポケモンもらっても安心だよ」
「それもそうだな、じゃあ行くか」
支度を済ませた二人はダンデを迎えるために隣町のブラッシータウンへ歩き出した。
「ちょっと待ったぁ!」
しかしその瞬間二人を呼び止める声がする。何事かと二人が視線を向けるとそこには腕を組み仁王立ちで立ちふさがる一人の少女が。自信満々、威風堂々といったその表情の少女をこの町に住む住民で知らない者はいない。
「あたしを置いて何か楽しそうなこと考えてるわね。混ぜなさい」
「あ、ユウリじゃん。やっほー」
「しまった、ユウリを呼ぶの忘れてたんだぞ」
「ホップのアホ、ブラコン、ダンデさんの腰巾着」
「ぐっ、アニキの腰巾着…」
彼女の名前はユウリ、ホップの幼馴染でアカツキの家の隣に住んでいる。強気な性格と大胆な行動力でホップを引きずりまわす
「それでこれから何しにいくの。ブラッシータウンに行くってことは電車でどこかに行くの?」
「今日はなんとアニキが帰ってくるんだ!それにポケモンを貰う約束してるんだぞ」
「え、それほんと!?ダンデさん帰ってくるんだ、嬉しいな~」
アカツキはまだダンデと会ったことはないがユウリは生まれた時から今までハロンタウン生まれハロンタウン育ち、当然ダンデとの面識もある。
ユウリも加えた三人は改めてブラッシータウンに向けて足を進めようとする。しかし、すぐ近くから何かをぶつけるような音と柵のきしむ音が聞こえてくる。
「ウールーだ、どうしたんだろ」
視線を向けるとそこには森への侵入を妨げる柵にむかって一心不乱に『たいあたり』をするウールーの姿が。
「おいおい、ウールーの奴柵に『たいあたり』をかましてるぞ。大丈夫か?」
「心配ないんじゃない?あそこの柵はかなり頑丈にできてるからちょっとやそっとじゃ壊れないわよ」
「あはは、ユウリならあの柵も壊せちゃいそうだね」
「二年前に半壊させた時は、ママに半殺しにされたわ」
「「えぇ…」」
行動力の化身ユウリ。僅か12歳ではあるがそのたぐいまれなるセンスと大人たちの目を掻い潜る周到性で大人たちを翻弄する悪ガキでもある。
「まあ心配しなくても大丈夫でしょ。それよりはやくダンデさんを迎えに行きましょ」
「それもそうだな。よし、ユウリにアカツキも隣町まで競争だ。そのデカいカバンでついてこれるか!」
「ホップには負けない!」
走りだそうと足を動かした二人だがあまりの重さに脚が持ち上がらなかった。走ろうとした反動でたまらず二人は地面に転んでしまう。何事かと二人が足に目を向けるとそこには鎖につながれた黒い球と足枷が。
「甘いわね、勝負は始まる前からすでに始まっているのよ」
「な、足に『くろいてっきゅう』が!」
「いつの間に着けたんだぞ!」
「あはははは、ダンデさんを迎えるのはあたしが一番になりそうね。二人仲良く地面に転がってなさい!」
高笑いをしながら少女は二人を置いて先に行ってしまう。とんでもない速さで小さくなっていく背中を見つめながら二人は溜息を漏らす。
「…相変わらず凄いねユウリは」
「ユウリの奴忘れられてたからその腹いせだな」
「あ、やっぱり?」
「あんなのに子供の頃から付き合わされてるんだ、いい加減わかるぞ」
ホップはあきれ気味に笑う。二人はなんとか足枷を外すとようやくブラッシータウンに向かい始めた。
二人がいなくなってからもウールーがたいあたりをする音は消えなかった。
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「科学の力ってスゲー」
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二人がブラッシータウンに到着する頃には既に駅前には人だかりができていた。その人の多さにアカツキが驚いていると既に到着していたユウリが声をかけてくる。
「あら遅かったわね二人とも、このまま来ないかと思ってたわ」
「ユウリィ!今日という今日はもう頭に来たぞ!おばさんに言いつけてやる」
「へ~、やれるものならやってみなさい。この前ホップが勝手に二番道路まで遠出してボコボコにやられてたのを助けてあげたのは誰だったかしら」
「ぐっ、それは言わない約束のはず」
「悔しかったら私より強くなることね」
食って掛かるホップを華麗に躱し逆に手痛い反撃をされる。なんだかんだでいいコンビだな、とアカツキは苦笑しながらそのやり取りを眺める。そろそろ二人を止めようかとアカツキが思案していると人だかりがワッと騒がしくなる。
「きゃあああ、ダンデさんこっち向いてください!」
「ダンデー、サイン頂戴!」
「お前はガラルの誇りだ!」
「ふふ、あいつも大きくなったもんだな」
駅からチャンピオンダンデが出てくる。常勝無敗、最強無敵、その経歴に黒星無し、公式戦無敗の男がついにその姿を現した。
初めて見るチャンピオンの姿にアカツキは言葉を失う。オーラが違う、そんな陳腐な言葉しか浮かばないほどにその男からは溢れんばかりのエネルギーが迸っていたのだった。
「すごい…これがチャンピオン」
アカツキが実物の迫力に言葉を失っているとホップが自信満々に声をかける。
「へへ、すごいだろうちのアニキは。」
「うん、すごいね。ほんとすごい。よくわからないけどとにかくすごいのだけはわかる」
「だろだろ!アニキはすごいんだぞ。お前やっぱり見る目があるんだな」
「はいはい、ダンデさん自慢は聞き飽きたから早く行きましょ。このままだとおばさんたちを待たせちゃうわ」
そうして三人は人だかりに近づく。するとダンデの声も聞こえてくる。
「ブラッシータウンの皆さん、チャンピオンのダンデです。これからも俺は皆さんのために最高の勝負をします」
「みんなもポケモンを育ててどんどんバトルしてください。そしてチャンピオンである俺に挑戦してくれ」
「俺の願いはガラル地方中のポケモントレーナーみんなで強くなることだからね!」
「リザアアアア!!!」
『わああああああああああ!!!!』
「生ダンデだー!」
「リザードンつよすぎぃいい!?」
「ダンデさんに憧れてポケモン勝負はじめました!」
「ありがとう!いつか戦えることを楽しみにしてるぜ!」
そう言ってダンデは自慢のリザードンポーズをとる。もはや興奮は最高潮、これがガラル最高のポケモントレーナーのなせるファンサービスである。言葉の一つ、動作の一つが人々を湧き立たせるのはダンデの持つ肩書きと人徳のなせる業だろう。
「アニキー!」
「ダンデさーん!」
「おぉ、ホップ!それにユウリちゃんも。世界一のチャンピオンファンたちがわざわざ迎えに来てくれたか」
ダンデが近づいてくると人の波がさっと引いていく。ホップとユウリは慣れたものだがアカツキはそうもいかない、ガラルで頂点のトレーナーが近づいてくるのだから緊張で喉は枯れ、手足はピンと伸び、瞬きさえできなくなってしまう。
「ホップ、お前背が伸びたな!ズバリ三センチ!」
「正解!さすがアニキ。無敵の観察眼だな」
「ユウリちゃんも大きくなったね。相変わらずやんちゃしてるのかな」
「先月ついにダンデさんの部屋に隠されていた本を入手しました」
「なに!?あの本を見つけたのかい。か、母さんには内緒に…」
チャンピオンダンデに一歩も引かない二人とは対照的にアカツキは借りてきた猫のように縮こまってしまう。しかしそんなアカツキをダンデが見逃すはずもなく声をかける。
「その瞳に髪の色…君がアカツキ君かい?」
「は、はいホップとユウリの友達をさせてもらってるアカツキです」
緊張に声が震えるアカツキ。頭はうまく働かず手足はこわばり目が回る、事前に考えていたことなどすべて吹き飛んでしまっていた。しかしそこはチャンピオン、そんなことには慣れっこなのか眉一つ動かさず手を差し出す。
「弟からあれこれ聞いてるぜ、カレーを作らせたらガラルで一番なんだってな」
「ホップ!?」
「ガラルで一番のトレーナーとガラルで一番のカレーのスペシャリスト。なら俺たちは対等さ」
差し出された手にアカツキの手は自然と伸びていく。繋がれた手は大きく、力強く、温かく、アカツキの緊張を解きほぐしていく。
「俺はガラル地方で最強にしてリザードン大好きな無敵のチャンピオン、人呼んで無敵のダンデだ。よろしくな!」
誰もが尊敬と羨望のまなざしを向けるチャンピオンはどこまでも底抜けに明るくまぶしい存在であった。
主な改変点は、
エキシビションマッチはスマホではなくテレビで見ている
ホップの自宅に向かわず直接ブラッシータウンへ行く
ユウリの存在
くらいですかね。
主人公
名前 アカツキ
最近はファッションに興味が出てきている。カレー狂い。
主人公については現在これくらいしか考えてません。