エンジンシティに着いた直後に初のダイマックスバトルをおこなった俺とメッソン、そのあまりの迫力と強大さを実感した俺はさらにトレーナーとして強くなることを心に決めるのだった。
そしてバトルで捕まえたマメパトについてどうしようか考えた結果マグノリア博士に預けてみることにした。
「……はい、というわけでダイマックスしたマメパトを捕まえたんですが預かっていただけませんかね?」
『ええ、こちらとしても野生ポケモンのダイマックスは未だに不明なことが多いです。そのダイマックスしたというマメパトでしたらこちらで預かり存分に調査をしてみます』
「よろしくお願いします」
「というわけだ、マメパト。博士のところに行ってもあんまり無茶しないようにね」
「ポロッポー♪」
ポケモンセンターで一日しっかり安静にしたマメパトはもう元気いっぱいだ。昨日の戦いでかなりの負傷していただろうに、さすがポケモンセンターだ。
マメパトをモンスターボールに戻し、みんなの元へ戻ってからポケモン転送装置の場所へと赴いた。転送装置はとても奇怪な形をしていた。
「これは…なんだこれ」
「ロトム・インフォメーション、通称ロトミよ。ポケモンの通信や、主にポケモンリーグカードの編集に使われるわね」
「ポケモンリーグカード?」
「これよ、まあトレーナーの名刺?みたいなものかな」
そういってソニアさんから手渡されたのは一枚のブロマイドのようなもの、写っているのはダンデさんだ。
「アニキのリーグカードだな、俺も持ってるぞ」
「あたし持ってないわ、ダンデさんもう街には着いてるみたいだから会ったら貰っときましょ」
「まあ、こんな感じの自分の写真を加工したカードのことね。有名人のものほどレアなのよね」
「じゃあソニアさんのはどんなのなんですか?」
「わたしのはね……これよ」
ドドン!という効果音が聞こえてきそうなほど自信満々に出してきたリーグカードはラメなどの入ったおしゃれなものだった。
「さすが、ソニアさんのリーグカードはオシャレにできてますね」
「まあね、女の子としてはやっぱり自分の写真は綺麗に魅せたいし」
「でもアニキの方がかっこいいぞ」
「あんたはダンデさんのカードくらいしか知らないんでしょ」
「ふふ、まあこれは一般用。もっと力を入れたレアリーグカードも用意してるからいつかあんた達にも渡してあげるわ」
そうしてソニアさんから計二枚のリーグカードを受け取った。どちらもポーズや効果、ラメ加工など力が入っている。お洒落なリーグカード、俺も作ってみようかな。
さて、ひとまずリーグカードのことは置いておきロトミを起動させる。
『こんにちロ~、なにをしますロミ?』
「じゃあポケモンの転送をよろしく、場所はブラッシータウンのポケモン研究所ね」
『了解しましたロ~』
ロトミの中には文字通りロトムが入っていた。ロトムは電気タイプのなかでも特に珍しい電子機器に入り込むことができるポケモンだ。
最近のスマホもただのスマホではなくロトムを搭載したロトムスマホがノーマルだ。スマホの数だけロトムが?とかはあまり考えてはいけない。
俺は起動した転送装置にモンスターボールをセットし転送させる。これで博士の元に届いたはずだ。
「よし、アカツキの用事も済んだしさっそくスタジアムに行って登録してくるか」
「そうと決まれば即出発、一番乗りはあたしのものよ!」
「な、いつの間にかまた『くろいてっきゅう』が足に」
「これ取るの大変なんだぞ!」
「そのための『くろいてっきゅう』だも~ん!あ、ソニアさんはあたしと行きましょ」
「終わったらブティックとか一緒に巡ってみる?」
「賛成!都会のファッションも気になってたのよね!」
そういって俺達を置いてさっさと行ってしまった女子組を恨みがましく見つめながら、俺とホップは『くろいてっきゅう』をなんとか外しスタジアムに急ぐのだった。
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エンジンシティはその名の通りエンジンでまわる街。
街のいたるところに蒸気を逃がす通風孔が設置されている、街そのものがエネルギーを生み出す発電所のような街だ。そして当然エネルギーで出来た街ならではの移動手段が存在する。
「これがその昇降機、街の下から上までを楽に行き来できるんだぞ」
「大きいね」
人が一度に十数人ほど乗れそうな大きな昇降機がむき出しのまま街の中央に設置されている。錆や劣化もあまり見られないところからしっかり手入れされていることがわかる。
「ユウリが見たら喜びそうだよね」
「ああ、あいつこういう機械いじるの好きだからな」
「多分もうこれに乗って上に行ってるだろうし俺達も行こうか」
「だな」
「リザァァァ!」
さっそく昇降機に乗ろうとした俺たちのところに一匹のリザードンが飛んでくる。周りの人たちもリザードンに驚いているが、すぐさまそのさらに向こう側からやってくる人へと視線が釘付けになる。
「あれはダンデさんだね」
「アニキ!」
「ようホップにアカツキ、少し見ない間に推薦状に相応しいトレーナーになったんじゃないか?」
「おう、ワイルドエリアを見て回った!ダイマックスも間近でみた!今の俺は一昨日までの俺じゃないぞ!」
「ハハハ、頼もしい弟だな!アカツキもこの調子で弟と高めあってくれよ」
「はい、頑張ります」
ダンデさんは嵐のように訪れ、嵐のように去っていった。本当に何時会ってもエネルギーに満ち溢れている人だ。
昇降機に乗り、街の上手まで一気に登る。昇降機から降りると目の前には大きなスタジアムが建っていた。
「これがエンジンシティスタジアム、ジムチャレンジの開会式が行われる建物だぞ」
まだ開会式まで三日あるというのに既にスタジアム周辺には沢山の人や出店が建っている。これが当日ではないというのが驚きだ。
この巨大なスタジアムに三日後、俺も足を踏み入れると考えただけで高揚してくる。
「ほんと、ハロンタウンもブラッシータウンも田舎だったんだんね」
「だな、でも当日はこの何倍も人が来るんだ。開会式の中継はそれこそ世界中の人が見る、考えただけでも感動で震えてくるぞ!」
「ビシッと行くぞ!世界が俺達を知るんだ!」
「うん!行こう!」
「んん~?君達も盛り上がってるボルね~?」
スタジアムまで走っていこうとした俺達に何者かが話しかけてくる。
くるりとそちらの方を向いてみれば目に入ってくるのはボールだった。しかもただのボールではない。頭にモンスターボールの被り物をした筋肉の塊、妙にガタイのいい謎の生命体が存在していた。
「…ホップ、知り合い?」
「おれ、こんな生命体知らないぞ」
二人で顔を見合わせるとスタジアムへと一気に駆け抜けた。
「酷いボルね~?あ、そこの君。モンスターボールあげるボルよ!」
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「おっそい!なにとろとろしてたのよ!」
「お前の仕掛けた『くろいてっきゅう』のせいだろ!」
スタジアムに着くと既に到着していたユウリとソニアさんと合流する。再開して早々元気な二人だ。
見渡すと俺達と同じ歳くらいの少年少女もいればそこそこ歳を重ねた人もいる。誰もかれもこのジムチャレンジへの参加資格を手にしている猛者ばかりなのだろうと思った。
まあ、トレーナー歴5日目の俺の目には誰が強そうかなんてのは全くわからないけど。
「とにかく、ちゃちゃっとエントリーするわよ。受付はあっちよ」
ユウリに急かされ俺たちは受付へと向かった。受付では俺達とそう変わらないくらいの少年がエントリーをしている最中だった。
しかし、派手だ。後ろ姿だけで派手なのがわかる。髪はウールーほどではないにせよもこもことしており、ショッキングピンクの服が目に痛い。腕を見ると高そうな腕時計に、さらにはダイマックスバンドまで装着している。一度見かけたらもう忘れられそうにない。
少年はエントリーが終わるとこちらに歩いてきた。俺とホップとユウリの顔を見てふっと笑うとそのまま通り過ぎて行った。
「なんだよアイツ…」
「なんかヤな感じ」
「ジムチャレンジ参加の方はこちらの方でお願いします」
ホップとユウリは少し怪訝な顔をしたが受付に急かされたのですぐに意識を戻す。
受付にダンデさんから推薦状を提示すると受付の人の目が見開かれる。
「おお!これはチャンピオンからの推薦状ですね」
「俺もだぞ!」
「あたしもよ!」
「なんと、ダンデさんが三人も認めたのですか!?」
チャンピオンの推薦状という言葉に周囲の視線が一気に向かってくる。それほどチャンピオンに認められるということはそれほど名誉なことなのだろう。
「貴方達は一体…」
「俺はホップ!ダンデの弟、そして未来のチャンピオンだぞ!」
「あたしはユウリ!名乗るほどの者ではないわ!」
「あ、アカツキです…」
「えっ、あっ、はい」
そんな周りの視線を気にすることもなく二人は声高々に自分の名前を叫ぶ。俺にそんな勇気はない。
受付の人がしばらく推薦状の確認を行ったあと、登録が完了した。
「お三方、全員のエントリーが終了しました。それではお好きな番号をお選びください」
「番号?」
「ええ、選んだ番号はジムチャレンジで使われるユニフォームの背番号として使われます」
なるほど、たしかに以前テレビで見たジムチャレンジでは選手のユニフォームに番号が振られていた。あれはこうやって決められていたのか。
「はいはい、じゃあオレは『189』だ!」
「じゃあアタシは『001』よ!」
「えっと、じゃあ俺は『114』でお願いします」
「はい、『189』『001』『114』ですね。登録完了しました」
その後ジムチャレンジ参加証の役目もあるチャレンジバンドを貰い、ホテルの案内状を貰った。どうやら参加者は無料でそのホテルに泊まれるらしい、太っ腹な大会運営だ。
「これからどうしよっか」
「あたしはソニアさんとブティック巡りでもしてくるわ」
「オレはもう一回ワイルドエリアで修行してくるぞ!」
「俺は街巡りでもしてくるよ、都会にはあんまり来たことなかったからね」
三人と別れた俺はとりあえずスタジアムをぐるりと見て回ることにした。
大きい、外から見ても大きなスタジアムだったが中はさらに広い、一部には入ることができなかったが観客席には入ることができた。当日にはこの何万人も入れそうな観客席がすべて埋まるのだろうと考えたが俺の想像力ではまだ不可能だった。
見るところも見たので受付のロビーで腰を落ち着けていると、一匹のポケモンがこちらめがけて走ってきた。
「うわ、なんだ」
「うららぁ!」
黄色と茶色と黒、なんとも不思議な色をしたポケモンだ。今はソファーに座っていた俺の足にしがみついている。
「ちょっとモルペコ、困らせちゃだめだよ」
どうすればいいかわからず右往左往していた俺のところに一人の女の子がやってきた。声からしてこの子がこのポケモンのトレーナーなのだろう。
俺はその子の格好を見て驚愕する。
なんてお洒落な恰好なんだ!
黒い髪をツインテールのように纏め、前髪を片方は下ろし片方をそり上げている。服もピンクのワンピースの上に黒のジャケット、靴はスパイク状のハイヒールときたものだ。
俺のようなひよっこオシャレかぶれの太刀打ちできる相手ではない。
「え!ちょ、ちょっとあんたいきなり地面に伏してどうしたん?」
女の子のあまりのおしゃれ力に圧された俺は地面にひれ伏してしまう。
そんな俺を心配してくれるあたりこのパンクな恰好とは裏腹に良い娘だなと直感する。
「い、いや、何でもないよ。ちょっと君のおしゃれ力に圧されただけだから」
「おしゃれりょく…?ようわからんけどとりあえず立ちあがり」
手を差し伸べてくれるあたりでさらに良い娘なのがわかる。さすがに地面に触れた手で汚すわけにもいかないので遠慮させてもらった。
膝に着いた汚れと手に着いた汚れをハンカチでふき取り、今度はこちらから手を差し出した。
「俺はアカツキ、よろしく」
「アタシはマリィ、よろしく」
マリィもそれに応えて手を出してくれた。トレーナー同士の礼儀、握手は大事だ。
「さっそくだけどこのこは君のポケモン?」
「うん、モルペコっていうの」
「うらら♪」
モルペコというポケモンは俺から離れるとマリィの足にヒシっとしがみつく。
「でもなんで俺のところに?」
「うちのモルペコ、強い人によう懐く傾向があるけん。アカツキの強さ、感じ取ったんやと思う」
強い人によく懐く、そういうポケモンもいるのかとまた一つ知ることができた。
とりあえずお近づきのしるしに乾燥モモンの実を上げるとすごい勢いで食べていった。
「すごい食いつきだね」
「モルペコ、食べるの好きやけん。空腹になると手が付けられんよ」
図鑑を確認してみるとどうやら電気・悪タイプのポケモンのようだ。時と場合によってフォルムチェンジという変身もおこなうというのには驚きだ。
しばらくマリィと立ち話をしていたが見た目とは裏腹にやはり普通の娘だということがわかってきた。モルペコの懐き様も見てとれる。
そろそろ街巡りを再開しようと思ったところでマリィにもお誘いをかけてみることにした。
「俺これから街巡りしてこようと思うんだけど、マリィも一緒にどう?」
少し考えたマリィだが答えはすぐに出た。
「遠慮しとく、アタシも行くとこあるし、それに…」
「それに?」
「チャンピオンに推薦されたトレーナーに弱みは見せたくないけんね」
そういってモルペコとマリィはスタジアムを出て行った。
どうやら既にチャンピオンに推薦されたという俺たちの顔と名前が流れているようだ、嬉しい反面緊張で少しお腹が痛くなってきた。
「さてと、じゃあ俺も行こうかな」
そうして俺はエンジンシティ巡りに繰り出すのであった。
『ジムチャレンジ』開催まで、あと3日
マリィの口調難しい。
博多弁の時もあれば、標準語と博多弁が混ざった時のようなときもあるし、初対面の時とか完全に標準語だったし。
こんなのどうすればいいんだ!(博多弁翻訳サイトで四苦八苦しながら)
変更点
モルペコの鳴き声をゲーム本編と同じ「うらら」に変更しました。