剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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余裕をもって話を書こうと思いジムチャレンジ開催までの日数を増やしたらネタがなくなってきたのでここいらで頭のおかしいカレー狂の一日を書こうと思います。

思い付きで『ジムチャレンジ開催まであと〇日!』とか書いたりするもんじゃないですね。


12、カレーなる1日

皆さんは『カレーライス』を知っているだろうか?

まあもちろんカレーライスを知らない人間がこの世に存在するとは思えませんが一応の確認です。人間が自己を覚知し始めたころから既にカレーは思考の中に存在するといっても過言ではありません。

『カレーライス』とはその名の通り『カレー』を『ライス』にかけて食べる食品です。もちろんライス以外にもパンで食べたり本場といわれるどこか遠い国では『ナン』といわれるパンの一種のようなもので食べるのが一般的だと言われています。

しかし、ここガラル地方はもとより多くの地方では『カレー』は『ライス』にかけて食べるものだということがもはや常識です。

もちろん『カレースープ』のようにサラサラとしたものや『カレーうどん』や『カレー蕎麦』、ひいては『カレーラーメン』のように食べ合わせる主食に合わせて形を変えることができるのもカレーの魅力の一つです。

しかし!やはり『カレー』は『ライス』にかけて食べてこそ輝くもの!!!

この世にカレー食品が数多に存在すれど『カレーライス』を超えるカレーの食べ方は存在しないと今!ここで!!断言しよう!!!

あぁ、『カレーパン』はまた別枠でお願いしますね。歩いているとき、片手で作業しているとき、ポケモンバトルをしているとき。どんな状況に陥ったとしてもカレーが食べられる『カレーパン』も至高の食べ方の一つと言えます。カリカリに上げたパンを噛み締めるとジュワっと溢れるカレーソース、甘く作られたパンが辛めのカレーに合う合う。揚げたて、作り立ての美味しさでは『カレーライス』に勝るとも劣らぬと言えよう。

 

……話が脱線しましたが『カレーライス』とはこの世に存在するあらゆる食品の最上位、いや頂点といっても過言ではありません。

知らない人間などいない、嫌いな人間などいない、食べたことのない人間などいない。

そう、『カレーライス』を食したことのない人間なんてこの世界には存在しないんです。

 

 

「アタシ『カレーライス』生まれてこん方食べたこと無か」

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

 

 

そう、そんな人間がこの世界に存在することなどありえなかったはずなのだ。

 

事の発端は少し前、エール団騒動の終わった次の日の朝だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ホテルでの快適な一夜を過ごし昨日の騒動で溜まった疲れも吹き飛んだ。

朝食に顔を出すと既に席を確保していたいつもの二人、そしてユウリに捕まったらしきマリィと三人でテーブルを囲む。なんとこのホテル宿泊費のみならず食事代も大会運営が支払ってくれるという、太っ腹すぎる運営に感謝しながらホップと大量の料理を注文してやった。

 

「…すごい量やね」

「あんた達朝からよくそんなに食べれるわね」

「まあ成長期だしね」

「タダより旨いものはないぞ」

 

さすがは一流ホテル、食事のレベルも一流だ。まあ他にホテルに泊まったことなんて数えるほどしかないんだけど。

ホップと二人で食べ進めていくと、ついに俺の待ち望んでいた一品がやってきた。

 

「お待たせいたしましたこちら、30種のスパイスを使ったビーフカレーでございます」

来タァァァァァァァ(ありがとうございます)

「アカツキ、逆だぞ」

 

昨日泊まっているときに調べてみて見つけたこのホテルの名物カレー。

30種類にも及ぶきのみをスパイスにし、じっくり一日かけて作っているらしいそのカレーは謳い文句に恥じない芳醇な香りとスパイシーな香りを醸し出している。

カレーがソースポットからライスの上にかけられた瞬間、これは『カレーライス』として完成する。スパイシーな香りと感動で目に涙が浮かんでくる。また一つ素晴らしいカレーライスの誕生に立ち会えたのだ。

 

「それじゃあ、頂きます」

 

目と耳で楽しんだ、ならば次はその味を確かめるために一口分のカレーとライスを均等にスプーンの上にのせて口へと運ぶ。何者も邪魔することのできない至福の時間、そのはずだった。

 

 

「そういえばアタシ『カレーライス』生まれてこん方食べたこと無かね」

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

 

 

耳がおかしくなったのかとその時は思った。事実口の中に運んだはずのカレーライスの味がいつまで経っても感じられない。鼻から抜ける芳醇な香りを捉えることはできたのだが、そこから生み出されるカレーとライスによる天井のハーモニーがいつまでたってもやってこないのだ。

俺はカレーとライスの味を感じとることができないままゴクリと嚥下した。

 

「…マリィ、今なんて?」

 

スプーンを一度テーブルの上に置く。きっと何かの聞き間違いだろう、それを確認するためカレーから一度意識を離しマリィへと意識を向ける。

 

「え、いや生まれてこん方『カレー』って食べたことないなーっt「キェェェェェェ!!!」えぇっ!?なんと!?」

 

わけがわからなかった。カレーを、食べたことが、無い?そんなことはあり得ない、生物としての理に反しているんじゃないか!?

俺の中の常識がガラガラと音を立てて崩れていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

まさかこの世界にカレーを食べたことのない生命体が存在しているなんて思いもしなかった。

今は朝食を終えて俺の部屋にみんなが集まっている。ショックでまともに立ち上がれなかった俺をみんなで運んでくれたらしいが記憶にない。

 

「えっと、ようわからんけどごめんね?」

「い、いや。気にしないでいいよ、マリィが悪いわけじゃないから」

「そうよ、マリィちゃんは気にしなくていいのよ」

 

少しおびえた様子のマリィをユウリがヨシヨシと撫でている。一緒にご飯を食べていた男が突然奇声を上げたうえに放心状態と化していたのだ、俺だって怯えるし交流を真剣に考える。ちなみにホップは頼んだ料理を一人で処理したらしくベッドの上で死体と化している。

宇宙開闢の瞬間から存在していたといわれるカレーを食べたことがないことに驚きはしたがさすがにもう落ち着いた。ならば俺にできることはないのかと考えた、答えはすぐに出た。

 

「よし、決めた。マリィ」

「な、なんと…?」

 

まだ少しその瞳には怯えが見え隠れしているが俺の言葉にちゃんと返してくれたようで安心する。そして彼女にいらぬ心配と恐怖を与えてしまった俺ができることなんて決まっている。

 

「俺の、オレの作ったカレーを食べてくれ!!!」

 

カレーの頂を目指す男…いや『漢』としての意地とプライドをかけてマリィに最高の思い出とカレーをプレゼントして見せる!!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カレーの道は一日にしてならず。

マリィに自分史上最高のカレーライスを作り、最高の思い出をプレゼントすることこそ俺にできる唯一の償いだ。マリィに猶予を貰った俺はさっそくカレー作りのために街の食材売り場に足を運んだ。

 

「さすがはエンジンシティ、品ぞろえが段違いだ」

 

街の食品売り場はブラッシータウンとは比べ物にならないほど品ぞろえが豊富だ。あれこれと目移りしてしまうが今日はマリィのためのカレーだと頭を振り思考を戻す。

 

「具材はオーソドックスにニンジン玉ねぎジャガイモでいいとして、肉はミルタンクかケンタロスあたりが無難かな」

 

マリィはカレー初心者、であれば変化球を狙う必要などない。王道の食材をカゴに入れた後、肉の種類を選ぶ。代表的なミルタンク肉とケンタロス肉のどちらを選ぶか。

ミルタンク肉はケンタロス肉と比べて柔らかく、同じくミルタンクの乳から作られるモーモーチーズ辺りとの相性は抜群だ。反してケンタロス肉は筋が多くて硬いがいいエキスが出てカレー全体のレベルを引き上げてくれる。

 

「…今日はミルタンク肉にしておこう」

 

チーズとの相性も考え食べやすいミルタンク肉にしておく。もちろんモーモーチーズも忘れずにカゴに放り込んだ。

あとはスパイスとなるきのみの選別だ。今から作るとなればそれほど多くのきのみを調理する時間はない、恐らく10種類が限界だ。きのみの品ぞろえも申し分ないがやはり鮮度ではブラッシータウンのきのみ売り場に軍配が上がる。

 

「良い辛み成分のあるフィラのみ、水分と酸味が特徴のイアのみ、ミルタンク肉では物足りないうまみ成分を足すためのネコブのみ辺りかな」

 

ここいらのきのみはよく使われる定番の食材。特にフィラのみとネコブのみは外せない。

 

「辛さを引き上げるマトマのみ…これは数欠片もあれば十分かな。シュカのみの香ばしさも捨てがたいし、ッ!…あれはタンガのみ!あんまりきのみを炒る時間がないからスパイシーなきのみがあって助かった!」

 

激辛料理にも使われる赤いトゲが特徴のマトマのみ、炒ることで香ばしさが倍増するシュカのみと少しの量でも刺激的な味にしてしまうタンガのみがあれば使えるきのみの少なさを緩和できる。

 

「あとは…」

 

目を見据えてきのみ売り場の最奥を睨む。

鎮座しているのはその希少性とバトルでも活躍する場の多いとされる高級きのみ売り場だ。売り手をしているおじいさんの目も鋭い、盗みなどすれば一発で見破られそうだ。

足を踏み入れてその品ぞろえと値段に目を見開いた。

 

「あ、あれはチイラのみ!?それに辛さではマトマのみにも引けを取らないとされているヤタピのみも!!?」

 

今まで本でしかその存在を見たこともなかった高級きのみが鎮座している中で、売り場の中央、ガラスケースの中に飾られているあるきのみに目が止まる。

 

「ア、アッキのみ…」

 

地獄のような辛さに猛烈な渋みを兼ね備えたアッキのみ、カレーを奉ずるものとして一度は使ってみたいと思っていた伝説のきのみだ。値段を見ると目が飛び出そうだ、とてもではないが俺のお小遣いの手が届くものではない。

おとなしく普通のきのみ売り場に戻ろうとすると視界の端にあるものを捉える。

 

「『ワイルドエリアのきのみ分布図鑑』?」

 

高級きのみ売り場の端っこに置かれている一冊の本に目が付いた。どうやら売り物ではないようで鎖につながれている。

ページをめくってみると広大なワイルドエリアに自生するきのみが生る樹やヨクバリスやホシガリスの住む樹の情報が記載されている。ヨクバリスといえば一番道路で戦ったあの存在を想起させるが、彼らの本職はきのみ集めのスペシャリスト。交渉次第で貴重なきのみを手に入れることも可能だという。

俺は本の内容を隅から隅まで頭に叩きこむと、本を閉じ覚悟を決める。

俺が再度きのみ売り場から出ていこうとすると売り手のおじいさんが口を開く。

 

「…坊主、行くのかい?」

 

その言葉に振り返ってみるとおじいさんがこちらを見据えている。

 

「やめときなされ。ワイルドエリアは自然とポケモンの織り成す危険区域でもあるんだ。坊主みたいな若者にあの気候と立ちふさがる守護者(ヨクバリス)たちをどうにかすることなどできんさ」

 

カタカタと入れ歯らしき歯を打ち合わせて笑う。その言葉にはきのみを採取して数十年、という重みらしきものを感じた。まあ、きのみ売り場の入り口にそう書いてあっただけなんだけど。

 

「無理かどうかは問題じゃないんです」

「ならば、何故挑む?無理だとわかっていて、なお」

 

「美味しいカレーを食べさせてあげたい人がいるんです。そのために俺は行きます」

 

おじいさんに背を向け俺はきのみ売り場を後にする。

買った食材をホテルに預けるとワイルドエリアを巡るための足を準備する。レンタル自転車とウェアを借りエンジンシティの入り口を抜ける。

二日ぶりのワイルドエリアは依然として広大だ。遠目にはところどころに雲も見える、天気もいいとは言えないだろう。

不安な気持ちを押し込め頬を強く叩いて気合を入れる。自転車にまたがりグリップを握り、今草原を駆け抜ける!

 

「ワイルドエリアがなんぼのもんじゃい!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

前言撤回、ワイルドエリアの天候変化恐ろしすぎます。

 

「ぐぁぁぁぁ、雨が痛い!雷怖い!」

 

エンジンシティの入り口があるキバ湖東といわれる平原を抜けその先の坂を下ると橋が見えてくる。橋の前に立っていたバックパッカーの男の話ではここから先はポケモンの強さも段違いになるという。

橋を抜けると突然の嵐にさいなまれた。雨と雷雲で前がよく見えなかったが幸いこの天気のおかげか出歩いているポケモンがあまりいなかったのは幸運だった。そのまま嵐のエンジンリバーサイド、ハシノマ原っぱを駆け抜けると次は砂嵐が吹き荒れていた。ストーンズ原野、巨人の帽子ですれ違うポケモンに精神を削られながらも何とか切り抜けることに成功したが正直もう一度同じ道を通って帰れる自信がない。

げきりんの湖といわれる湖に到着すると自転車のパーツを取り換え水上を走れるように変形させる。湖の上を自転車で走り抜けるなんて正気の沙汰ではないがなんとかヤタピのみが自生しているという小島にたどり着いた。

 

「ここが」

 

なるべく音を立てずに上陸する。ここにも強力なポケモンが住んでいると本には書いてあった。

それほど大きくない島なので樹はすぐに見つかった。しかし不幸にもその樹にはポケモンが巣を張っているではないか。

 

「ウォーグルにワシボン、今の俺じゃあとても…」

 

ここまでかと諦めかけていると親ウォーグルと思われるポケモン達が声を荒げて巣を離れていく。巣には眠りについたワシボン達だけとなった。

 

「(これはチャンス!)」

 

静かに、そして素早く樹に接近しココガラをボールから呼び出す。ココガラは樹に生っているヤタピのみを二つも採集して戻ってくる。

 

「(お手柄だぞ、ありがとう)」

「(ガァガァ)」

 

ヤタピのみとココガラをカバンとボールに戻しすぐさま樹から離れる。親ウォーグルたちが戻ってきたのだ。俺は池に放置していた水上自転車にまたがり全速力で駆け抜けた。途中ギャラドスとかが追ってきたような気もするが覚えていない。

げきりんの湖をなんとか離脱しその勢いのまま砂嵐吹き荒れるワイルドエリアを抜けハシノマ原っぱまで帰ってくる。天気は相変わらず嵐のままだが今のままの方が都合がいい、雨と雷の音が自転車の音をかき消してくれるからだ。

次のターゲットはハシノマ原っぱに存在するというチイラのみ、通り抜けた時は気が付かなかったが小さな池の中の小島に生えているそうだ。嵐で氾濫する池を抜けるのは至難の業であったが途中現れたランターンが自転車の電気エネルギーを強化してくれたおかげでなんとかなった。凶暴で好戦的なポケモンばかりではないことを神に感謝した。

 

嵐の中、小島に佇む一体のポケモン。図鑑で確認してみた。

 

「エルレイド、礼儀正しく武人としての誇りを持つポケモン…」

 

さきほどのランターンと同じく優しいポケモンなのかもしれない、勇気を振り絞り一歩を踏み出した瞬間地面に一筋の亀裂が走る。エルレイドの腕から発せられた空気の刃だ。

 

『なんのようだ』

 

「ッ!テレパシー?」

 

『この離れ小島にわざわざ来るとは、それにこのような悪天候。このきのみが狙いだな?』

 

エルレイドは格闘・エスパータイプを併せ持つ珍しいポケモン。エスパータイプの持ちうるテレパシーという相手と心で会話できる力を持っているようだ。

少しどころではなく驚いたが話の通じる相手ということで気が楽になった、もしかすると話し合いでどうにかなるかもしれない。

 

「そうです、俺はどうしてもそのチイラのみが欲しくてここに来ました」

 

『己が実力の足りないことを知ってか?』

 

「そうです」

 

エルレイドは暫し考えた後チイラのみをこちらに放り投げる、しかも二つも。慌てて受け取るとエルレイドは踵を返して樹の下へ戻る。

 

『お前が腕を上げ、力をつけた時またここに来るがいい』

 

エルレイドはこちらへの興味を無くすと瞑想に入る。良くはわからないがただできのみをくれたことに頭を下げて礼を示す。帰りはなぜか湖が荒れておらず楽に帰ることができた。

あとはアッキのみだがこればかりはさすがに本にも入手場所は書いていなかったので諦めるしかない。

帰り道のエンジンリバーサイドでカムラのみを手に入れようとしてドラピオンに遭遇した。ヤバい。

 

「ドゥラララァァァ!!!」

 

鋏を勝ち合わせ威嚇してくるドラピオン、エルレイドの紳士さとは比べるべくもない。カムラのみは既に手に入れた、ならば後は逃げるだけだと自転車を漕ぐが進まない。

 

「あ、パンクしてる!」

 

自転車には『どくばり』が刺さっている。周りを見渡すとドラピオンの配下らしきスコルピが待機していた。どうやら奴らの仕業のようだ。

覚悟を決めて俺はすべてのポケモンを出す。

 

「メッソン!ウールー!ココガラ!」

 

「メッソ!」

「ンメェェ!」

「ガァガァ!」

 

襲い掛かるスコルピ達は一匹一匹が俺達と同じくらいの強さをしている。

しっぽの鋏をウールーが受け止めると体毛が切り裂かれる。ココガラの『つつく』は効果は抜群だが敵の数が多すぎて手が足りていない。嵐による雨のおかげでパワーアップしたメッソンとドラピオンが対峙する、『みずのはどう』を受け止めたドラピオンの『ミサイルばり』が襲う。メッソンは『みずでっぽう』で迎撃するが接近したドラピオンの『どくどくのキバ』を食らい猛毒状態になってしまう。俺が治療のために近づこうとすれば四方から『どくばり』が邪魔をする。

絶体絶命のピンチ、この嵐の中で俺の冒険は終わってしまうのかと諦めかけた次の瞬間、

 

「アーマーガア、『きりばらい』じゃ!」

 

「アァァァ、ガァァァ!!!」

 

突如突風が吹き荒れスコルピが吹き飛ばされドラピオンがターゲットを変える。

風の吹いた方向を向いてみると今の突風で雲の一部が晴れたのか光の中に黒く大きなポケモンが現れる、ガラル地方の空の覇者アーマーガアだった。

 

「お、おじいさん?」

「カカカ!坊主のここまでの冒険見せてもらったぞ。最近の若い者にしては度胸あるじゃねぇか」

 

カタカタと入れ歯を鳴らし現れたのはきのみ売り場のおじいさんがアーマーガアの背中から現れた。

 

「どれ、ちょいと揉んでやるわい」

 

「ドゥラァァァ!!!」

 

突如現れたアーマーガアにドラピオンは一歩も怯まず『ミサイルばり』を飛ばす。

 

「アーマーガア、『てっぺき』」

 

しかし瞬時に鋼鉄と化したアーマーガアの表皮はそんな針など受けつけない。それを見て悟ったドラピオンは飛び道具でダメならばと伸縮自在の腕を伸ばしてアーマーガアを捉えると『どくどくのキバ』を突き立てる。腕が伸びることを見たおじいさんは既に地面に降りている。

しかし鋼の体はキバすら通さず、逆にドラピオンのキバを砕いて終わる。

 

「ドゥラァ!?」

 

「終わりじゃ、『ブレイブバード』」

 

「アァァァァァ!!!」

 

自慢のキバをへし折られ驚愕しているドラピオンを無視しアーマーガアの体が青く燃え上がる。不死鳥のように燃え上がったアーマーガアの『ブレイブバード』を食らったドラピオンはたまらず戦闘不能に、嵐で氾濫する池へと落ちていった。ボスがやられスコルピ達も姿を散らしていく。ウールーは体毛を切り取られ、ココガラとメッソンも毒を食らっている。急いで『どくけし』を使い治療しボールに戻すとおじいさんが近づいてきていた。

 

「ありがとうございましたおじいさん」

「なに、わしが勝手にやったことよ」

「…もしかしてウォーグルが突然巣から離れだしたのはおじいさんの仕業ですか?」

「さて、あそこのウォーグルたちは気性が荒いからの。大型の鳥ポケモンの接近に気づいたのかもしれんの」

 

そういってアーマーガアに目線を向けるとアーマーガアがそっぽを向く、そうだと言っているようなものだ。

もう一度、深く頭を下げる。

 

「大変な状況を二回も助けてもらって、ありがとうございました」

「カカカ、まあいいってことよ。乗ってけ、自転車もう使えねえだろ」

「ッ!ありがとうございます!」

 

その後アーマーガァの背中に乗せてもらった。既に日が傾き、空は夕日に染まっている。ワイルドエリアの広大な自然と夕日に染まった空の光景は絶景の一言だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あんたほんと馬鹿じゃないの!どうしてカレーの材料買いに行ったら全身ずぶ濡れポケモンも瀕死に近くなってるのよ!」

「ごごご、ごめんなさい」

 

エンジンシティのホテルに帰るとユウリに怒られた、頭が揺らされて気持ち悪い。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて」

「うるさいわよ!どこの世界にカレーの材料とるために嵐と砂嵐突っ切る馬鹿がいんのよ!」

 

待って、本当に気持ち悪くなってきた。今日は朝ごはんしかまともに食べてないけどなんかせりあがって…

 

「…う」

「う?」

「う"お"ろ"ろ"ろ"ろ"ろ"ろ"」

「キャー!ちょっとこんなところで吐くんじゃないわよ!」

 

ロビーで吐いた。このあと滅茶苦茶(ホテルの人に)謝った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

場所は変わってまたもやワイルドエリア、ここは過去にホップも家族ときたという安全なキャンプエリアだ。

 

「で、なんでここに来たわけ?」

「オレもなんにも聞いてないぞ」

「…アタシも聞いとらん」

「ふっふっふ、それはこのためだよ!」

 

キャンプエリアで借りた大きな鍋とかまどを見せる。そう、最高のカレーをごちそうするのも大事だが今回の本当の目的は何だったか。そう、マリィの最初に食べるカレーを最高の思い出にすることだ。ならばみんなで作って食べたほうが美味しいに決まっている。最高に美味しいカレーを目指していて忘れそうになっていたが帰りにあの夕日の光景を見て思い出したのだ、そこに至るまでも大切だってことを。

 

「えっと、ここまでせんでもよかな?」

「マリィはそう言ってるけどモルペコはどう?」

 

「うららぁ!」

 

「だってさ!」

「いまのわかるのマリィちゃん?」

「えっと、『やりたい!』って」

「なんでアカツキがわかるのよ…」

 

事前にモルペコはきのみで買収済み、計画通り。ニヤ

 

「よし!みんなで美味しいカレーを作ろう!オー!」

「「オー!!!」」

「お、オー…」

 

「うららぁ!」

 

野菜類は手先の器用なユウリに任せて俺は今日手に入れたきのみを潰して炒っていく。うん、シュカのみとタンガのみの香りはやっぱり素晴らしいね。

 

「アカツキ、お肉はどれくらいに切ればよか?」

「一口大に。切ったらフライパンでさっと表面を焼いてうまみを閉じ込めるんだ」

「わ、わかった」

「おーい、アカツキ。水汲んできたぞ」

「ありがとうホップ、じゃあご飯を炊いておいてくれる?」

「了解だぞ!」

「ちょっと!玉ねぎが目に染みるんだけど!」

「ココガラ、野菜が飛ばないくらいに風を起こしてあげて。そうすればあんまり染みないから」

 

「ガァ!」

 

「あら、染みなくなったわ」

「なんか切った時に出る飛沫とかを飛ばせば染みづらくなるんでだって」

「よし!染みないならこっちのもんよ!」

 

みんなが指示通りに動いてくれたおかげでカレー作りはスムーズに進む。チラリとマリィを見てみればモルペコと一緒にミルタンク肉を切っている、心なしか嬉しそうに見える。

全ての材料の準備が整ったら大鍋に野菜を入れ火を通し、一度焼いたお肉を投入する。水はそこそこに大鍋にイアのみ数個ぶち込む。

 

「これは炒らなくていいのか?」

「イアのみは水分が多くてちょっと酸っぱいからね、水分の半分はこれから出すんだ」

 

その後、炒った8種類のきのみを鍋に入れる。しばらくすると色が濁りカレー特有の茶色に変化していく。

 

「はい、ここでみんなも一緒に混ぜて」

「よしきた!」

「あたしの腕を見せてあげるわ!」

「が、頑張るけん!」

 

「うららぁ!」

 

四人と一匹、五つの木べらで大鍋を囲み混ぜていく。

 

「ホップちょっと強いよ!ユウリは速すぎ!マリィはもうちょっと速めに、モルペコは最高!ちょうどいいよ!」

「なんかモルペコにだけ甘くない!」

 

「うららぁ!」

 

ユウリにどや顔を向けるモルペコ、それを見たユウリの手が一瞬木べらをへし折りそうになったが何とか自制してくれた。このカレーに木べらなんて入ったら台無しなので助かった。

順調にカレーをかき混ぜていくと色も濃くなり木べらも重くなってくる、水分が減ってきた証拠だ。あとは最後の難関、ズバリ

 

「よし、じゃあみんなで愛を入れるよ!」

「任せろ!俺のハートが一番だぞ!」

「あたしの愛が一番に決まってるでしょ!」

「え?え?愛?愛ってなんか?」

「愛だよ!カレーに対する愛情を込めるんだ!」

「「「せーの!」」」

「も、もうどうにでもなんね!」

 

「うららぁ!」

 

みんなで木べらを取り出しカレーに向かって愛を送るとみんなの胸から出た黄色いハートがカレーに吸い込まれていく。

 

「あー!今回もアカツキのが断然大きかったぞ」

「まああたしたちじゃアカツキのカレー愛には勝てないか」

「ふふん、もっと褒めてもいいよ」

「なんや…もう、わからん」

 

「うららぁ!」

 

ハートを取り込んだカレーが一層輝くと今まで見たこともなかった光の柱が上がる。こんなことは初めてだ!

 

「いつもよりすごいぞ!」

「これは期待できそうね!」

 

光が収まり、カレーが完成する。みんなで作った、マリィに贈る初めてのカレーの完成だ。

出来上がったカレーを炊きあがりのご飯に寄そう。いつもよりカレーの光沢もご飯も輝いて見える、自他ともに認める最高の出来だと確信する。

 

「どうぞ、マリィ」

「ありがとう」

「モルペコも」

 

「うららぁ!」

 

まずはやっぱりこの二人に食べてもらおうということで二人分をテーブルに用意する。見られて食べるのは恥ずかしかとマリィが言ったがもうガン見である、特にユウリはもう開かんばかりに開いている。

 

「ほらほらマリィちゃん、じゅる、早く食べてくれ、じゅる、ないとあたしたちが食べられないじゅるよ」

「うう、ユウリは目がえずかばい」

 

既にモルペコは夢中になってカレーを食べている。それを横目で見たマリィは目を閉じ、大きなひと口を運ぶ。ひと口を噛み締めている時間がとても長いように感じる。本当にマリィを満足させられる一品になっているのか不安な気持ちが湧いてくる。そしてマリィが目を開けるとスプーンを持っている手とは反対の手を口に当て小さく呟いた。

 

「…美味しか」

「…本当?」

「うん、こんな美味しかもん初めて食べたばい」

 

心底美味しかったと感想を残しすぐにマリィは二口目を口に運ぶ。一口目より素早く飲み込みすぐさま三口目に突入した。

 

「……はぁ~、よかったー!」

 

その顔を見ればわかる、本心からの言葉だということが。力が抜けて倒れそうになるが両隣にいたホップとユウリが体を支えてくれる。

 

「ありがと」

「さ、オレ達もはやく食べるぞ!」

「あたしもお腹ペコペコよ!」

 

「うららぁ!」

 

「あ、モルペコがもう一杯完食してる」

「早すぎるぞ!オレも負けてられないな!」

「ちょっとホップつぎすぎよ!あたしの分が減るじゃない!」

 

モルペコとホップとユウリが自分の分のカレーを我先にと争いあっている。みんながついでから俺もつごうかなと思っているとマリィに声をかけられた。

 

「ねぇアカツキ…」

「ん、なに?」

 

 

「最高の一杯やったよ、もう忘れられんたい」

 

花のように咲いたマリィの笑顔に少し吹き出しそうになるのをこらえる。

 

「マリィ…」

「うん?」

 

「口の周りにカレー付いてる」

「? /////ッッ!!!こ、こっちみんね!」

 

 

その後カレーをふき取り顔を真っ赤にしたマリィに死ぬほど追い掛け回された。今日一日でとんでもない体力を使ったがマリィの笑顔は忘れられそうにない。

 

 

 

『ジムチャレンジ』開催まで、あと2日。

 

 

 

 

 

「モルペコ!//『オーラぐるま』//!!!」

 

「うららぁ!!!」

 

「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ア、アカツキぃぃぃ!」もぐもぐ

「死んだかしら」もぐもぐ




祝!初一万字超え!
…おかしい、どうしてカレー作るだけの話が一万字超えに?後半のモチベ上昇がすごかったけどマリィの方言大丈夫だろうか…

あと作者はバーモンドのカレーくらいしか作ったことありませんのでカレー作りが雑なのは目を瞑ってくださいm(_ _)m
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