剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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13、嵐の中で

カレーなる一日を送った先日、雨風吹き付ける中自転車を漕いで走り回ったことによる当然の帰結というべきか俺は風邪を引いた。おかしい、カレーを食べたのだから風邪などひくはずがないというのに。

 

「そういうわけだからアカツキ、今日は寝とくんだぞ」

「…うーん、できればマリィ辺りに看病してほしかったよ」

「アホ、明後日にはジムチャレンジ開会式があるんだぞ。飲み物置いとくからちゃんと寝ておけよ」

 

そういってペットボトル入りの水を置いてホップが出ていく。まあ当然と言えば当然だ、明後日には世界中の人が待ち望む『ジムチャレンジ』が始まる。その直前に看病をして風邪を貰ったり、ましてや風邪にかかるなんてもってのほかだ。

幸いただの風邪らしく今日明日ゆっくり休んでおけば治ると医者は言っていたのでおとなしく休んでおこうと思い毛布に包まり眠りについた。

 

 

 

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深い深い眠りの中、少しばかり誰かの夢を見た。

 

 

ボクの周りには沢山の仲間がいる、この広い広い草原で沢山の仲間と暮らしているのだ。仲間に囲まれ毎日草原を駆け回りご飯を食べる、そんな充実した毎日を送っている。

しかし気象の変化が激しいこの辺りではそんな毎日が長くは続かない。日輪に照らされる心地のいい天気かと思えば、少し時間が経つと雨や雪に見舞われるなんていうことも珍しくはない。この広い自然ではその天候の変化を感じ取り生き延びる力が必要不可欠である。

幸いボクたちの種族はその力が他の生物よりもずっと優れている、人間たちの言葉を借りれば『じんつうりき』とでもいう不思議な力だ。仲間の中でも強い神通力を持つものが天気の変化を察知することで安全に別の場所へと移動ができる、そうやってボクたちの群れは特に危険にさらされることもなく生きてきた。

 

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「んぅ…」

 

そんなところで目を覚ます、夢を見ていたようだ。寝て起きたばかりだからなのか鮮明に覚えている。沢山のポケモンに囲まれている夢だ。

 

「あれは…ワイルドエリア?」

 

夢の中に出てきた広い広い草原、そして移り変わりの激しい天候には思いあたりがある。ちょうど昨日その洗礼を自力で抜けてきたばかりなのだからすぐに当ては着いた。

ボーっと今見ていた夢のことを考えているとガチャリと扉の開く音が聞こえた。

 

「あら、アカツキ起きてたのね」

「ユウリ、お見舞いに来てくれたの?」

「まあそんなところよ。はいこれ、お腹すいたでしょ」

 

そういってユウリは小さめの土鍋を出してきた。中身はおかゆ、どうやらホテルの人に頼んで作ってもらったらしい。こんな個人的なオーダーにも対応してくれるなんてさすが一流ホテルだなとこのホテルの評価が二段階近く上がった。

 

「それ食べて薬飲んで、ちゃんと寝ときなさい」

「食べさせてくれないの?」

「あんたね……まあいいいわ、あんただけジムチャレンジ不参加なんて認めないもの。ちゃんと良くなるのよ」

「はーい」

 

同年代の女の子に看病してもらうなんて夢のようだ。本当ならこんなことを頼む勇気も無いのだがおそらくこの時は風邪でおかしくなっていたのだろう、後で死ぬほど恥ずかしくなるのが目に見える。

おかゆがお腹に入るとじんわりと少しずつ体を温めてくれる。食べおわると薬を飲んでもう一度毛布に包まった。

 

「じゃ、あたしは部屋に戻っとくわね。ちゃんと寝ときなさいよ」

「ありがと、おかゆ美味しかったよ」

「恥ずかしいから誰にも話すんじゃないわよ!!///」

 

バタンと大きな音を立ててユウリは扉から出て行った。満腹感とちょうどいい眠気が体を襲い、俺はもう一度夢の中へと落ちていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

また同じような夢を見ている。

 

 

群れのリーダーであるボスのしっぽはいつも艶々していてボク達子どもの憧れだ。

 

『ねえリーダー、ボク達のしっぽもリーダーみたいに綺麗になれるの?』

 

『ああ、なれるともさ』

 

『どうすればリーダーみたいに強くて綺麗になれるんですか!』

 

仲間の中でも特にやんちゃな子がリーダーに質問する、それはボクも含めたみんなも知りたかったことなので目を輝かせてリーダーを見つめる。

 

『そうですね…まずやはり神通力をうまく使えるようにならなければいけませんね』

 

『オレうまく神通力使えないんだよー!』

 

『アタシは最近石とか浮かせられるようになりました!』

 

『それは素晴らしいですね。もしかしたら君が次のリーダーになるのかもしれません』

 

『やったー!リーダーに褒められた!』

 

『ずるいぞ!オレだってなぁ…』

 

神通力をうまく使えるようになること、やはりそれが進化への近道なんだとみんなで語り合う。リーダーに褒められた子は嬉しそうにしっぽを右に左に震わしている、羨ましい。

 

『あとはそうですね…一番大切なことがあります』

 

『一番大切なこと?』

 

『はい、それは熱き炎の力を宿した石を手に入れることです』

 

石?皆一様に顔をかしげた。確かに自分たちは火を出したり炎を吐ける、だがそれは他の種族も同じこと。進化に石が必要など聞いたことがない。

 

『ワタシも昔、あるトレーナーに頂いたのですよ。このスカーフもその時に頂いたものです』

 

そういってリーダーのトレードマークである赤いスカーフを自慢げに見せつける。リーダーのスカーフはとてもオシャレなのでみんな次のリーダーに選ばれたときに欲しいと言いあっている。

 

『すげー!オレもその石とスカーフ欲しい!』

 

『とはいえワタシも長らく長を務めてきましたが石を見たのも数えるほど。進化したものは群れを分けて別れるのが常識ですからね』

 

強くなったもの達は群れを分けて新しい群れのリーダーになるのだという。それならば他にリーダーのような進化体を見たことがないのもうなずける。

 

『オイリーダー、天気が怪しくなってきたぞ』

 

『わかりました今行きます。…ではみなさんも頑張ってくださいね』

 

『『『はーい!』』』

 

 

群れを率いたリーダーの背中を見つめる、風でしっぽとスカーフがはためく。ボクもいつかあんな風に強くて格好いい存在になりたいなと思いながら。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そこまで見たところでまた目が覚める、まさか同じような夢を連続して見るとは思わなかった。

リーダーといわれていたポケモンには見覚えがある、黄色い体毛に大きくて立派な九本の尾が特徴のポケモンといえばただ一匹。

 

「キュウコン、それにその進化前のロコンか」

「なに調べとーと」

「ああ、今見てた夢に出てきたポケモンでさ……ってうわマリィ!?」

 

ビックリした。図鑑でポケモンを調べていると横からズイっとマリィが顔を出してきたのだ。あまりに自然に質問してきたので最初全く気が付かなかった、ちなみにモルペコはきのみを食べている。

 

「い、いつから?」

「ちょっと前。アカツキが起きて早々図鑑当たり始めたけん気になってしもうた」

「ああ、そう。って、俺今風邪ひいてるから早く出て行った方がいいよ?」

 

マリィに風邪を移してしまったりすれば俺はどう責任をとればいいのかわからない。結婚したのか?俺以外の奴と?

 

「大丈夫、お見舞いの品持ってきただけやけん」

 

「うららぁ♪」

 

「これって、ラムのみ?」

「そ、風邪の時はこれが一番効くけんね」

 

ラムのみは万能きのみとしても有名だ。バランスの取れた栄養素とすっきりした味で食べやすく、ポケモンの状態異常回復にも用いられるきのみだ。もちろんカレーにも使える。

マリィは少し危なっかしい手際でラムのみを剥いていく。俺が代わろうか、と質問すると「自分でやるけん!」と強く断られた。

しばらくして少し不揃いながら皮をむいたラムのみが出てきた。ちゃんとフォークも添えてくれている。

 

「うん、美味しい」

「よかった…」

 

ラムのみのすっきりとした甘さと渋みと辛みと苦みのする何とも言えない味がたまらない。すぐに最後の一個まで食べてしまい、最後の一個にフォークを伸ばした時モルペコが手を伸ばしている姿が見えた。

 

「…食べる?」

 

「うらら!」

 

最後の一つはモルペコと半分こした。きのみ一つ分を丸ごと食べたのでさすがにお腹が膨れ眠気もやってきた。

 

「じゃあ、アタシも戻るけん。お大事に」

 

「うららぁ♪」

 

「うん、ありがとうね」

 

マリィとモルペコが部屋から出ていき、またしても部屋に一人きりになる。特にやることもないので眠気に身を任せもう一度眠ることにした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

今度は見覚えのある光景を夢に見た。場所はエンジンリバーサイド、昨日散々通り抜けそしてドラピオンの群れに襲われた場所だ。

俺の記憶と同じく嵐が吹いている。雨と風に翻弄されながらロコンの群れをリーダーのキュウコンが先導している。

 

『みなさん、この先にある橋を抜ければ嵐を抜けますよ、頑張ってください』

 

リーダーの指示に従いロコンたちは嵐を抜ける、炎タイプの彼らにこの嵐はきついだろうとみているとそんな彼らを狙う刺客が現れる。

 

『スコルピ!ということは…!』

 

『ドゥラァァァ!』

 

「あれは昨日俺たちを襲ったドラピオン」

 

そう夢に出てきたドラピオンは昨日俺たちを追い詰めたドラピオン率いるスコルピ達の群れ、強力な毒で敵を追い詰める厄介な連中だ。

 

『くっ、嵐の中でさえなければ!』

 

『リーダー!この嵐では炎が弱まってスコルピ達にも対応しきれません!』

 

『みなさん!不得手でも構いません、炎ではなく神通力を使って対応してください』

 

毒タイプにはエスパータイプの技が効果は抜群、この悪天候の中でもリーダーのキュウコンは的確な指示をもってスコルピ達の群れに対処している。

 

『アタシの神通力を食らいなさい!』

 

あの神通力が得意と言っていたロコンがスコルピ達を薙ぎ払っていく、今更だがロコンの見分けがつくのは何故なのだろうか?

 

『おら!オレの神通力くらえ!』

 

『スコォ!』

 

『くそ、オレの神通力じゃ倒しきれねぇ!』

 

『ボクがフォローするよ!』

 

未熟なロコンの神通力ではスコルピを倒しきれていない。

その視点が高速に動く、恐らくこの視点の持ち主による『でんこうせっか』だろう。『でんこうせっか』を受けたスコルピはそれで目を回してしまう。

 

『助かった!』

 

『ボクたち二人で戦おう!』

 

『わかったぜ!』

 

神通力が得意なものはスコルピをなぎ払い、不得手な者たちは二人三人でスコルピに対応している。神通力で指示を出しているキュウコンやロコンならではのコンビネーションだ。

 

『ドゥラァ!!!』

 

しかしそんな状況に腹を立てたドラピオンがついに前線に姿を現した。

 

『あれが敵のボスです!一斉にいきましょう!』

 

『アタシの神通力をくらえ!』

 

神通力が得意な個体による連続の神通力攻撃を食らったドラピオン。しかし、

 

『ドゥララァァァ!』

 

『効いていない!?』

 

『そんな!?』

 

無傷で神通力を受け切ったドラピオンの『ミサイルばり』がロコンたちを襲う。神通力を得意とする個体が一度に吹き飛ばされたことでスコルピ達は勢いを増し、さらに『どくばり』を吐き出した。多数の『ミサイルばり』『どくばり』を食らい、ついにはロコンの群れが瓦解する。

後方でスコルピ達の相手をしていた幼いロコン達はなんとか『ミサイルばり』を食らわなかったが群れは既に瓦解寸前、視界は恐怖で震え切っている。ロコンの群れに一歩、また一歩とドラピオン達が近づいてくる。

 

『もう駄目だよ、おしまいだ…』

 

『そんな、リーダー達でさえ敵わないなんて』

 

それは違う、ロコン達の神通力は確かに強力だった。ただ、スコルピは虫・毒タイプなのに対してドラピオンは悪・毒タイプ。炎技を嵐で封じられ、ドラピオンには神通力が通用しないこの最悪の状況に陥ったことこそが敗因だったのだ。

それがわからないのは彼らがまだ幼かったことに加え、今まで自分達に適した天候・環境でばかり戦闘をしていたからだろう。天候が嵐でなければこの状況も変わったはずだ。

 

『みなさん…お逃げなさい』

 

『ッ!リーダー!』

 

なんとか立ち上がったリーダーのキュウコンが前に出る。既に多くの攻撃を食らったその体はボロボロでそこかしこに毒の針が刺さっている。もはや時間の問題だということが見てわかる。

 

『ワタシが時間を稼ぎます、みなさんは橋の向こう側に』

 

『そんな!リーダーがいないとボク達はこれからどうすればいいんですか!』

 

多くのロコンがキュウコンの言葉に声を上げる。群れをまとめる頼れるリーダーの存在は彼らの支えだったのだ。

キュウコンは顔を歪めるがすぐにドラピオン達に向き合い大声を上げる。

 

『走りなさい!!奴らがもう来ないところにまで!!!』

 

瞬間ロコン達の体が浮き上がり後方に吹き飛ばされる、キュウコンの神通力によりドラピオン達の射程圏外にまで飛ばされたのだ。

 

『ドゥララァァア!!!』

 

獲物が一気に減り激昂したドラピオンがキュウコンに襲い掛かる姿がみえた。

ロコン達は後ろを振り返らずにただただ走り抜けた。嵐の中を駆け、橋を越えた時、もはや群れは散り散りになってしまっていた。

 

 

『ぐぁぁぁぁ、雨が痛い!雷怖い!』

 

 

仲間を見失ったロコンが少しの間放心していると嵐の中に突っ込んでいく人間の姿が最後に見えた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「俺じゃん」

 

夢から覚める、最後に出てきたの俺では?

なんとも後味の悪い夢だった。ロコン達の群れは壊滅し、残った子供たちも嵐の中で散り散りになり視点となっていたロコンは一人ぼっちになってしまった。

今の夢には現実味があった、もしかすれば昨日本当にあったことなのかもしれない。ということはあのロコン達は……

 

「…行かなくちゃ」

 

ベッドから抜け服を着替える。たとえ本当にただの夢だったとしても今は寝ざめが悪い、もう一度眠ることなどできないだろうと思った俺は真実を確かめにホテルを抜けた。

昨日自転車を借りた場所に赴きもう一度自転車を借りた、まだ少し頭が痛むが行動に問題はないだろう。

 

「よし、行くか」

 

エンジンシティから出て、ワイルドエリアを突き進む。

坂を駆け下り、エンジンリバーサイドへと進む橋のところまでやってきた。

 

「やっぱり、跡がある」

 

夢で見たロコンが座っていた場所には何か焦げたような跡が残っている。俺の夢はあそこで終わったがその後に何かあったのかもしれない。

橋を抜け、ドラピオンとキュウコンが戦った場所にまで行くことにした。昨日俺が襲われた場所にも近い、正直怖いが俺の目で見なければ気が収まらなかったのだ。

 

「…あ」

 

既に一日が経っている。嵐で痕跡も何も残っていないかもと思っていたが確かにそれは残っていた。

 

「リーダーのスカーフ…」

 

キュウコンが首に巻いていたリーダーの証。それがひときわ高い木の枝に引っかかっていた。ココガラを飛ばしてそのスカーフを回収する、手触りのいい赤いスカーフだ。

俺がスカーフを握り締めていると突然火の塊が飛んでくる、ココガラが俺を突き飛ばしたことで回避できた。

 

「なん……」

 

なんだと言いそうになり火が飛んできた方向を向くと一匹のロコンが俺を睨み付けていた。

 

「コン!コン!!!」

 

顔を大きく歪め、俺に敵意を向けてくるロコン。その姿には見覚えがない、夢の中で出てきたロコン達とは別のロコンなのだろうか?しかしどうみてもスカーフを握っている俺に敵意を向けているのは明白だ、つまり……

 

「お前が、あの夢を見せていたロコン?」

 

「コン、コン!!」

 

返答の代わりにロコンは火の塊を投げつける。不思議な火の塊、『おにび』という技だろう、以前テレビで見たことがある。

当たればやけど必至の火の塊を避ける。対話は不可能、おそらく怒りでこちらの声が届いていない、ならば。

 

「いけるか!?ココガラ!」

 

「ガァガァ!」

 

バトルしかない。

 

「ココガラ、『つめとぎ』から『つつく』」

 

ココガラが爪を打ち合わせ攻撃力を上昇させると高所から一気に急加速をしてロコンを捉える。

一撃を与えたココガラが空に逃げるが追撃がやってこない、ロコンをみると今の一撃ですでに膝をついている。

 

「おまえ…もしかして昨日から休んでいないのか?」

 

昨日の戦闘での傷がまだ癒えていないにも関わらず探していたらしい、既に体力は限界、立っていることさえやっとのようだ。

 

「コォォォォン!」

 

しかしそれでも倒れない、再びココガラではなく俺に『おにび』を打ってくる。バックステップで躱すが危険というほかない。だがココガラがフリーになるなら好都合だ。

 

「ココガラ、『みだれづき』」

 

ロコンの大きなしっぽを鷲掴みにしてココガラが何度もくちばしを叩きつける。それでもロコンは俺への攻撃をやめない。

 

「ッ?」

 

そしてここまでの無理が祟ったのか足がよろけ倒れる、地面が冷たくて気持ちがいい。

 

「ってそんな場合じゃない!」

 

風邪の熱と知恵熱によりそんなことを思ってしまうがなんとか起き上がる。

 

「なん…?」

 

しかし動けない、体が硬直したように動かなくなる。かろうじて動かせる眼球でロコンを見つめるとロコンの目が青白く光っている。

 

「『かなしばり』……?」

 

ロコン達の持つ神通力の一種、対象の動きを止める『かなしばり』だ。ココガラではなく俺に使ってくるあたり本当に俺だけしか見えていないらしい。

くそ、こうなったら!

 

「コン!?」

 

まだ昨日の嵐を引き起こした雲と風が残っている。俺が握りしめていた手を緩めるとスルリとスカーフが抜け落ち風に乗って空をかける。

ロコンは『かなしばり』を解いてスカーフへと一目散に走っていく。これでロコンの気も済むだろうと思っていると奴が姿を現した、ロコンは空に浮かぶスカーフを追いかけていてその出現に気づいていない。

 

「危ない!ココガラ、『つつく』!」

 

「ドゥラァァァ!」

「コン!?」

 

ドラピオンだ、ロコンを襲おうとしていたが間一髪ココガラの『つつく』がその腕をはじく。しかし全く応えていないのか、腕を振り上げるとココガラごと地面へと叩きつけた。

 

「ココガラ!」

 

今の一撃でココガラは戦闘不能に、なんて強烈な『はたきおとす』だ。

ロコンは恐怖で動けずにいる、昨日のトラウマがよみがえってしまったのだろう。そのロコンめがけてドラピオンの口から『どくばり』が放たれるがなんとか体を滑り込ませロコンを腕の中に回収する。よし、ちゃんとスカーフは回収しているな。

ロコンを腕の中から解放し、ドラピオンを見据える。近くで見てみれば全身傷だらけでキバも折れたまま、こいつも昨日アーマーガアにやられた傷が治っていないのだ。

 

「ロコン逃げろ!こいつは今、ここで倒す!」

 

そう決めるとメッソンとウールーを繰り出す。また熱が上がってきている感覚がするがメッソンの『みずでっぽう』で無理やり冷やす。

相手は手負い、自慢のキバも折れている。今が絶好のチャンスなのだ。

 

「メッソンは『みずのはどう』、ウールーは『たいあたり』」

 

メッソンの作った『みずのはどう』とウールーによる全身を使った『たいあたり』をくらいドラピオンもよろけるが腕の射程に入ったウールーに『はたきおとす』を繰り出してくる。

 

「ウールー、『まるくなる』」

 

しかしこちらのウールーもただでは受けない、丸めた体と体毛が『はたきおとす』の衝撃を完全に吸収し最小限のダメージに抑える。

 

「ウールー、『にどげり』!」

 

前足で地面をけり、後ろ足で強烈な『にどげり』を当てる。上体が吹き飛ばされたドラピオンだがその鋭い目は完璧にウールーを捉えている。

 

「不味い、避けろ!」

 

「ドゥラァァァ!」

 

後から知ったことだがドラピオンはキバの他に両腕のやしっぽのハサミからも毒を分泌させることができるらしい。

両ハサミを毒に染めたドラピオンの『どくどくのキバ』がウールーを捉えようとしたその瞬間、突然上体が動きを止める。ウールーはすぐさまドラピオンから距離を取る。

 

「『かなしばり』ロコンお前がやったのか」

 

ロコンを見てみれば目を青白く光らせドラピオンの動きを封じている。絶好の機会を逃したドラピオンが言葉にならない声を上げている。

 

「これで決める!『みずのはどう』!『まねっこ』!」

 

メッソンが作り出した水球と、そのメッソンを『まねっこ』して作りだされた水球を一つに合体させる。『かなしばり』で動けなくなっているドラピオンの体が特大の水球に飲み込まれる。

巨大な水しぶきが収まるとドラピオンは目を回していた。

 

「やった!倒し……た」

 

緊張がとけると同時に俺も倒れる。体が熱い、頭が回らない、少しずつ閉じていくまぶたの隙間からこちらに走ってくるメッソンとウールーと大きなしっぽが見えた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目を覚ますとホテルの自室にいました。

起き上がるとユウリにボコボコにされました。

口の中に『ばんのうごな』を突っ込まれました。

口の中に『ちからのこな』をぶちまけられました。

口の中に『ちからのねっこ』をすりつぶしたものを放り込まれました。

それら全てを『ふっかつそう』から煎じたお茶で流し込まれました。

死にました。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目を覚ますと口の中が地獄だった。たまらず寝台に置かれていた水で口を洗い流す。

 

「…っぷは」

 

水を飲み終え今は何時だと思いスマホを確認すると既に次の日のお昼になっている、たしか昨日ホテルを飛び出したのが昼の三時くらいだったはずなので丸一日近くたったことになる。

スマホを確認しているとガチャと扉が開く。

 

「おーい、アカツキ早く目を覚ませーって起きてたか」

「おはようホップ」

「その様子だと熱は下がったみたいだな」

「うん、なんか風邪ひく前より調子がいい気がするよ」

 

ベッドから降りて体を動かすが本当に体が軽い、背中に翼でも生えたようだ、今なら空も飛べそうだ。

 

ホップから話を聞くと昨日の夕方辺りに俺の部屋に入るともぬけの殻になっており、全員で捜索していると俺のスマホから連絡が入ったらしい。スマホからはメッソンとウールーの鳴き声だけが聞こえてきてどうしようかと考えていると突然全員の頭の中にエンジンリバーサイドの風景が頭に浮かんできたので行ってみると見事に俺が倒れていたらしい。ロコンの神通力の仕業かな?

大会運営に連絡を取り迎えを呼ぶという大事態にまで発展したらしい、寝ててよかったと思った。

その後一度目を覚ました俺に激昂したユウリが手当たり次第の漢方薬を突っ込んだというが記憶にない、口の中の苦みはそれが原因だったか。

 

「で、なんであんなことした」

 

話を終えるとホップの声色が突然変わる、いつぞやまどろみの森でダンデさんに叱られた時のような変化だ。俺もみんなに迷惑をかけたので素直にすべてを話す、夢のこと、ロコンのこと、ドラピオンとの戦闘のこと。すべてを聞き終わるとホップも溜息を吐いて呆れた目を向けてくる。

 

「つまり夢で見た光景のことが気になってワイルドエリアにまで行ったってことだな」

「そうです」

「……はぁー、こんな時はどうやって怒ればいいかわかんないぞ!教えてくれアニキ!」

 

ゴロンと横になったホップがダンデさんに縋るがここにダンデさんはいないので返答はない。

ホップはしばらくウンウン唸っていたが足をばねにして起き上がるとニカっと笑ってこういった。

 

「よし、難しく考えるのやめた!アカツキ!」

「なに?」

「お前はキュウコンの敵も取った!風邪も治った!結果的に良いことをした!」

「うーん、自分事だけどそれでいいのかな?」

「それでいい!オレが決めた!」

 

そういうとホップはスマホを取り出して二人に連絡を取る、話からして二人ともここに来るようだ。

 

「ならオレの説教は終わり、後はユウリとマリィから説教受けてくるといいぞ」

 

特大の爆弾を言い残してホップはさっさと部屋を出て行った。

え?こういう時は親友として一緒に怒られてくれるとかそういうのはないの?頭の中のイマジナリーホップが「そんなのないぞ」と言った気がした。

 

二人が来るまで気が重いなと思っているとカバンが動いているのが見えた。不審に思いカバンのファスナーを開けると大きな尻尾が出てくる、これは…

 

「ロコン!」

 

「コン!」

 

赤いスカーフを口にくわえたロコンがカバンから出てきた、どうやらカバンに入ってここまでついてきたようなのだ。

 

「でも、なんでこんなところに」

 

ロコンは少し悩んだ後口のスカーフをこちらに着きつけてくる、受け取れということなのだろうか。スカーフを受け取るとカバンの中にもう一度顔を突っ込む。その中からモンスターボールを取り出すとそのしっぽで上に打ち上げ自分に当てる、え?

ボールがロコンを吸い込むとベッドの上に落ちカチ、カチ、と動いた後ポン☆となり止まった。

 

「え? え?」

 

未だに事態が飲み込めないがどうやらロコンが仲間になったらしい。

その後部屋の扉を突き破ってきたユウリとマリィに真剣に怒られたが仲間になったロコンを出すとその可愛さにやられたのかしっぽをもふもふし始めた。計画通り。ニヤ

もふもふを堪能した後もう一回怒られた、なんでさ。

 

 

 

『ジムチャレンジ』開催まで、あと0日。

 




ネタがロコン捕獲しかなくなったので「じゃあアカツキ寝込ませればいいじゃん!」と思ってこうしました。
アカツキが夢を見たのは夢の最後でロコンとすれ違った時にパスがつながって勝手に神通力が発動して見せたものです、神通力は「何事も自由自在になしうる力」だし問題はないですよね!ね!

長かったエンジンシティの期間が終わりました、やっとジムチャレンジ開催ですね。
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