先に14話を見ることを推奨します。
ジムチャレンジ開会式を終え、ついにジムチャレンジがスタートを切った。
エンジンシティを出れば俺達もライバル同士、街を出る前にホップとバトルをしようと話していたのだがユウリと戦うことになった。
『アカツキと戦うのはオレだぞ!』
『いいえ、あたしよ!あんたはもう二回戦ってるでしょ?』
『じゃあその後にオレとだ!』
『あんたアホね、他のチャレンジャーもいるんだし手早くしなきゃ離されちゃうでしょ?ならどちらか一人だけよ、はい論破』
『ムキー!』
というわけで三番道路前のすぐ前でユウリとバトルをすることにした。最初のジムがあるターフタウンまで続く三番道路前には既に人だかりができている。
「はいはーい!これからジムチャレンジャー同士でバトルをするので場所を開けてくださーい!」
ユウリはその人だかりを裂いてバトルをするだけのスペースを作っていく、すごい胆力だ真似できそうにない。
「さあ、あたしたちの勝負を始めましょう!」
「チャレンジャー同士のバトルだってよ!」
「見に行こ!」
「さっそく面白いことするな!」
なんだかどんどんギャラリーが増えてきて俺達の周りには押し退けた人だかり以上の人だかりができている。
「ギャラリー多くない!?」
「いいでしょ!どうせポケモンジムではこんなの屁みたいなギャラリーの中で戦うんだから」
それもそうだ、この程度さっきの会場にいた観客と比べれば全然少ない。頬を叩いて気合を入れる、見据えるのは目の前のユウリだけだ。
「それじゃあオレが審判をするぞ!」
「おねがい!」
「頼んだ!」
「よし!勝負は三対三のシングルバトルだ!」
ホップの開始の合図に合わせて俺は最初の一匹を繰り出した。
「行け!ロコン!」
「コン!」
仲間になったばかりだがロコンの強さは理解している、頼んだ!
「あたしはこの子よ!いって、ヤミちゃん!」
「ヤミヤミ!」
ユウリが繰り出したのはヤミラミ、ロコンと同じく絡め手を得意とする厄介な相手だ。
「こっちからいくよ、『おにび』」
ロコンが念じると不思議な火の塊がいくつも生まれヤミラミの周りを取り囲み一斉に襲い掛かる、これは避けられない!
「ヤミちゃん、『かげうち』」
しかしそんな俺の戦略をあざ笑うかのように自身の影にもぐりこんだヤミラミが包囲を抜けだす。そのまま影ごと移動したヤミラミの爪がロコンに襲い掛かった。
『かげうち』をくらったロコンだが傷は浅く助かった、やはり油断ならない。
「ロコン、『でんこうせっか』」
ロコンが高速で移動しヤミラミへと迫る、ユウリはゴーストタイプにノーマルタイプの技を?と不思議がった様子だ。
案の定『でんこうせっか』はヤミラミの体をすり抜け不発に終わる。
「何がしたかったのかわからないけどチャンス!『ひっかく』」
体をすり抜け、背中をさらしたロコンにヤミラミの鋭い爪が迫る、そこだ!
「ロコン、しっぽで受け止めろ!」
「コン!」
ヤミラミの爪がロコンの六本あるしっぽの内、四本を使って『ひっかく』を受け止める。咄嗟に引こうとしたヤミラミだが残った二本のしっぽが腕に絡みつきもう逃げられない。
「ヤミちゃん!」
「ロコン!『おにび』!」
「コォォン!」
「ヤミィ!」
近距離で炸裂した『おにび』を食らいヤミラミは吹き飛ばされる、かなりの痛手になったはずだ。そしてダメージの他にもあったもう一つの狙い、
「ヤミィィィ!」メラメラ
「よし、『やけど』したぞ!」
『おにび』の真の狙い、相手をやけど状態にするのだ。発火した熱がヤミラミの体力を奪っていく。
「やるわね」
「狙い通りだよ!」
「じゃあこれを避けられるかしら、『あやしいひかり』!」
ヤミラミの真骨頂、『いたずらごころ』からの『あやしいひかり』だ。どんなに素早いポケモンよりもこの攻撃は早く発動する。
『あやしいひかり』をくらったロコンが目を回し、わけもわからず自分を攻撃し始める。
「くっ、戻れ」
正直まだこの極悪コンボをどうにかする手段は思いついていない、ダメージが増える前に一度ロコンをボールに戻す。
「あら、冷静ね」
「そうだよ、いけココガラ!」
「ガァ!」
新たにボールから出したのはココガラ、空を飛んでいるココガラにはヤミラミの爪もそうは届かない。
「ココガラ、『つつく』」
こちらの出方を待つヤミラミにココガラの『つつく』が直撃するが、なんとヤミラミは体を半分影に鎮めることで転倒を防いでいる。
「ヤミちゃん、『ナイトヘッド』!」
空へと逃げだしたココガラの背中めがけてヤミラミの『ナイトヘッド』が炸裂する。たまらずココガラが地面に墜落すると影に埋まったままのヤミラミがココガラの着地点を陣取っている。
「ヤミちゃん、『かげうち』!」
「ココガラ避けろ!」
オレの声は虚しくもココガラに届かず、ヤミラミの『かげうち』をくらったココガラは大きなダメージを食らってしまう。なんとか立ち上がるがもう羽根はボロボロになり飛び立てないほどに弱っている。
「決めるわ!『ひっかく』!」
「『つつく』で迎え撃て!」
既に飛び立つ力はない、ヤミラミを迎え撃つように指示するがココガラの短いくちばしよりもあちらの腕を含めた爪の方が射程は長い。先に攻撃が当たるのはココガラの方だと悟った瞬間、ココガラの短いくちばしが急激に伸び始める。オーラで作られた長いくちばしはヤミラミの爪よりも先にヤミラミに到達しその体を突き返した。
「今のは…」
「今のは『ついばむ』だな!この土壇場で『つつく』を『ついばむ』に進化させたのか!」
ホップの言葉通り図鑑で確認してみるとココガラの『つつく』が『ついばむ』に変化している。本当にこの土壇場で新しい技を覚えたらしい。
「いけ!『ついばむ』だ!」
「ヤミちゃん!『ナイトヘッド』!」
伸ばしたままのくちばしでヤミラミに追撃を仕掛ける。ヤミラミの目から出た『ナイトヘッド』とココガラの『ついばむ』が超至近距離でぶつかり合う。
二つの攻撃によって起こった爆発に巻き込まれたココガラとヤミラミがそれぞれの前まで吹き飛ばされてきた。
「ココガラ、ヤミラミ。共に戦闘不能!」
「ありがとう、休んでくれ」
「良い勝負だったわ」
それぞれポケモンを戻して次に出すポケモンを構える。
「驚いたわよ、あそこから巻き返すなんて」
「ココガラのおかげだよ、俺なんかよりもっとすごい」
「でもこの子はそうはいかないわよ、行ってウパちゃん!」
「ウパ!」
「いけ!メッソン!」
「メソ!」
互いに出したのは同じ水タイプ、同じ水棲のポケモンだ。だがウパーは水タイプの他に地面タイプも持っている、水技勝負ではこちらに分があるはずだ。
「メッソン、『みずでっぽう』!」
メッソンが口から勢いよく水を吐き出す、ウパーはその水を正面から受け止めたが全く応えていない。
「ウパちゃんの特性は『ちょすい』、地面タイプも入ってるから水技が効くなんて思ったら大間違いよ!」
「ウ~パ~」
『みずでっぽう』を無効にしたどころか元気の良さまで上がっている、これはかなりの出しミスであることを悟る。
「ウパちゃん、『マッドショット』」
その動揺を見逃さずウパーの口から泥の塊がいくつも発射される。泥の塊はメッソンに着弾すると高速で固まり始め動きを鈍らせる。
「なら『しめつける』だ!」
ウパーの動きを止めようとメッソンがしっぽを伸ばそうとするが固まった泥がそれを邪魔してしまう、なんて厄介な技だ!
「またチャンス!『マッドショット』」
「ウパー!」
メッソンは放たれる泥の弾幕を何とか躱すが体に張り付いた泥の重さでかなりスレスレだ。
「あっちの女の子の方が上手だな」
「いいぞ嬢ちゃん!もっとやっちまえ!」
「ウパーも頑張れー!」
「よしよしいいわね、このまま追い詰めるわよ!」
歓声に気を好くしたユウリがさらに畳み掛けるため技を止める。正直助かったが何をするつもりなのだろうか。
「ってこれは!」
「気づいたわね、『マッドショット』は攻撃であると同時にウパちゃんにとって都合のいいフィールドを作るための布石でもあったのよ!」
辺りはウパーの泥だらけと化している。
「『みずでっぽう』!」
さらに泥に水を追加することで辺りは一面泥沼状態、ウパーにとってはとても動きやすい環境になってしまった。
「『たたきつける』!」
動きやすさを取り戻したウパーが接近し大きなヒレをメッソンに叩きつけた。吹き飛ばされたメッソンが泥にうずまりその顔を泥で汚す。
「メッソン、ペッしなさい!ペッ!」
「メッメッ!」
顔に着いた泥を水で洗い流し、口に入った泥を吐き出させる。チラリとメッソンの口からでた長い舌が目についた。
「(メッソンの舌ってあんなに長かったんだ)」
俺が新しい発見に感心しているとパシャパシャと泥を駆けてウパーが迫ってきている。ウパーと向きなおし対策を考える。
水技は効かない、『しめつける』も泥でしっぽが伸ばせない。どうすれば勝てるんだ、と考えていると今見つけたメッソンの長い舌が頭をよぎる。…本当にいけるのか?
「これで終わりよ!『たたきつける』!」
「ええい、迷ってる暇はない!メッソン、『しめつける』!」
「『しめつける』はもう使えないわよ!判断を誤ったわね!」
「舌で『しめつける』だ!」
「なんですって!」
「メーソーーー!!!」
「ウパ!?」
予想以上に長かったメッソンの舌がウパーのヒレを絡めとる。今までしっぽばかりで『しめつける』をしてなくて気が付かなかったが舌でもできたのかと再び感心する。
「いけ!連続で『はたく』!」
ヒレを捕まれ逃げ出そうとするウパーの頬を連続で叩きつける。何度も何度もはたき続けられ、気が付くとウパーは目を回していた。
「ウパー戦闘不能!メッソンの勝ち!」
「うぉぉぉ!!あそこから巻き返したぞ!」
「すげぇぜ坊主!」
「メッソンすごーい!」
「くぅぅぅ、あたしの完璧な作戦があんなドッキリ戦法に破られるなんて…!」
ユウリは悔しそうにウパーをボールに戻す。このどろどろのフィールドは残されたユウリのポケモンにとっては悪環境だ、有効活用させてもらおう。
「あとはお願い!サルちゃん!」
「ウキ!…ウキィ」
どろどろのフィールドで動きづらそうにするサルノリ。ウパーほどではないがメッソンにとっては動きやすいフィールドであるので有利になるぞ。
「メッソン、『みずのはどう』」
『みずのはどう』を地面にたたきつけ泥ごとサルノリへ叩きつける。泥の波に巻き込まれたサルノリはたまらず逃げるが泥に足を取られ転倒してしまった。
「サルちゃん!」
泥を巻き込んだ『みずのはどう』をくらったサルノリはダメージを受けるとともに全身泥まみれになってしまう、これで恐らく動きも鈍るはずだ。
「って、『みずのはどう』でせっかくの泥が」
『みずのはどう』で作った泥の波戦法はうまくいったがせっかくの泥の大半を洗い流してしまった、勿体ないことをした。
「サルちゃん!『はっぱカッター』」
「『みずでっぽう』!」
サルノリの『はっぱカッター』を『みずでっぽう』で迎撃するが撃ちもらしたはっぱがメッソンに当たりそのまま押し切られてしまった。ウパー戦でのダメージも相まってメッソンは目を回してしまう。
「メッソン戦闘不能!サルノリの勝ち!」
「こんどは嬢ちゃんが勝った!」
「いいぞー!もっとやれー!」
「サルノリがんばれー!」
なんというかギャラリーって本当に自由だなと思った。
「さあ、最後の一匹を出しなさい」
「あとはお前だけだ、頼んだぞ!ロコン!」
「コン!」
「ウキィ!」
相性ではこちらが有利、全身泥まみれで動きも鈍っているが油断はできない。
「動きを止めるぞ、『かなしばり』」
「させないわよ、サルちゃん『ちょうはつ』!」
「なんだって!」
動きを封じようとしたロコンが神通力を発動させる前にサルノリが指を立てて『ちょうはつ』を仕掛けてくる、表情と相まって実にこちらの気に触れる。
「コン!コン!」
「ウキキ!ウッキぃ!」
『ちょうはつ』に乗ったロコンは好戦的になり変化技を封印されてしまう、これはかなりの痛手だ。
『おにび』と『かなしばり』が封じられた今、残されたのは『でんこうせっか』とあの技だけだ。
「サルちゃん!『はっぱカッター』!」
サルノリの放つ『はっぱカッター』が迫る、もう隠しきれないな。
「ロコン、『やきつくす』」
「コォン!」
ロコンの口からすべてを焼き尽くすような炎が吐かれる。相性もあり『はっぱカッター』はすべて燃やし尽くされ灰となって散る。
「『おにび』以外にも炎技を持っていたのね」
「できれば最後まで取っておきたかったんだけど『おにび』が封印されちゃったからね」
サルノリは『やきつくす』を警戒して近づいてこなくなるがこうなったらもうごり押しだ。
「ロコン、『やきつくす』だ!」
広範囲に炎を吐き出しサルノリを燃やそうと迫る。狙い通りサルノリの全身も炎に包まれ大きなダメージを与えたはずだ。
「よし!いいぞ!」
「サルちゃん!」
炎に包まれたサルノリ、効果は抜群なのだこれで終わったはずだと思った。
「そんな、なんで」
なんと炎を振り切りサルノリが突進してきたのだ。おかしい、こんなはずではないはずなのに!
「そうか、泥の装甲!」
「なるほど!よくやったわサルちゃん!」
「ウキィ!」
よく見てみるとサルノリの全身を包んで覆っていた泥が綺麗さっぱり消えている。泥の装甲が『やきつくす』の炎を防御し、乾燥したことで砂になり剥がれ落ちたのだろう。サルノリは本来のスピードを取り戻し迫ってくる。速い!
「いっけぇ!『えだづき』!」
「ウキィ!」
サルノリが腕を後ろに大きく振りかぶる。
先のヤミラミとの戦闘、混乱状態での自傷と広範囲の『やきつくす』で体力を失ったロコンでは受け切れないし避けきれない。『やきつくす』で反撃しようにもまだ技のインターバルで打つことができない。
「ウキィィぃ!!!」
「いっけぇぇぇ!!!」
ユウリとサルノリの声が完全にシンクロする、大きく振りかぶられた腕が振り下ろされる!
「あら?」
「ウキ?」
「あれ?」
「コン?」
振り下ろされた、そう振り下ろされたのだが……サルノリの手に枝がないのだ。サルノリが何度も腕を振るうがやはり枝はない。なぜ?
「枝ならさっきの『やきつくす』でなくなったぞ」
「…え?」
泥の装甲はサルノリの身を守ったがどうやら主武装の木の枝を守ることはできなかったようだ。えっと…
「ロコン、『やきつくす』」
「コォォォォン!」
「ウキィ!」
「サルちゃーーん!」
恰好の隙をさらしたサルノリにチャージの終わった『やきつくす』が襲い掛かる。効果は抜群だ。
「サルノリ、戦闘不能。よってアカツキの勝利だぞ」
しばしの間ギャラリーも声を失っていたが各所からパチパチと拍手の音がするとそれは大きな拍手の音になっていく。
「すごかったぞぉ!」
「ああ、最後は締まらんかったがいい勝負だったぞ!」
「サルノリもかっこよかったよ!」
ギャラリーにも褒められなんとか俺達も正気を取り戻す。
ロコンをボールに戻しフィールドの真ん中にまで進む、ユウリは顔をうつむけたまま俺の正面にまで来る。
「……今度は負けないわよ」
「そっちこそ、今度も俺が勝つよ」
バトルが終わればしっかり握手、次はこうもうまくいかないかもしれないが次もまた勝つと強がってみせる。
顔をあげたユウリは目のふちに涙をためて口をへの字に曲げて泣くのを我慢している、こんな表情のユウリを見るのは初めてだ。
「こ…今度…こ、そはあ、あたしが勝つんだからね!!一回勝ったくらいで、いい気にならないことよ!じゃあね!!!」
捨て台詞を残してユウリは三番道路に向かって走っていった。もしかしてユウリは今まで負けたことがなかったのだろうか?
「あいつ、今まで自分よりすげえ奴とは戦ったことなかったんだ。今回の負けはいい経験になるかもな」
「ホップ…」
「気にするな、オレ達はいっつもあいつに振り回されてたんだからな」
そういってホップは俺の肩を叩くと、三番道路にむかって走っていった。
「うぉぉぉ!ハロンタウンのホップが新しいチャンピオンだぞー!!」
去り際もホップらしい。
その後ギャラリーの人たちにいい勝負だったと褒められた、こういうのもいいものだと感じれた。
さらにそのあとリーグスタッフを要請して泥だらけになったフィールドの掃除を手伝ってもらった。放りっぱなしは俺の気が済まないというか罪悪感が半端じゃなかったからだ。
支度を整えた俺がエンジンシティを出たのはかなり後、他のチャレンジャーに差をつけられてしまったがやっと俺のジムチャレンジはスタートしたのだった。