剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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ようやく最初のジムに挑めますね…


20、ジムミッション・ウールー転がし

ターフタウンの地上絵を見た後、ホップとユウリは5番道路にソニアさんはまだ地上絵を調べたいということでターフタウンに残ることになった。

そういえばホップのココガラがアオガラスに、ユウリのウパーがヌオーに進化していた。

 

『ヤローさんに勝った瞬間にさ!ココガラがブオーって光ってさ、バーって進化してたんだぞ!』

『あたしのヌオちゃんもね。ギリギリの勝負だったわ、さすがジムリーダーね』

『草タイプ使いのジムリーダーに水・地面タイプのウパーをぶつけるなんてユウリは怖いもの知らずだね…』

『そっちの方が面白そうだったからよ!』

 

俺はポケモンでも先を行かれてしまった。俺のポケモン達もはやく進化させてあげたいものだ。

 

 

そして時はきた、本日最後から二番目のジムチャレンジャーの挑戦が終わった。既にスタジアムに来ていた俺はユニフォームに着替え、呼ばれる時を今かいまかと待ち望んでいた。

幸い、ジムチャレンジャーに余計なプレッシャーを掛けまいとあまり話しかけてくる人はいなかった。俺に話しかけてきたのは2人。

 

「は~い、毎度おなじみボールガイだボルよ~」

 

まずはこの公式マスコットを自称する謎のコスプレ存在。以前エンジンシティの開会式でも話しかけてきたこのマスコットの存在はなんだかんだで挑戦前の緊張をいくらか解してくれた。緊張をほぐすには別の衝撃を与えるのが効果的というのは本当のようだ。

 

「仲良しの印にこのボールをあげちゃうボル!」

 

前回リーグカードとともにモンスターボールを押し付けてきたボールガイが次に渡してきたのはフレンドボール、捕まえたポケモンがすぐに懐いてくれるという便利なボールだ。

 

「…ありがとう」

 

せっかくなのでもらえるものは貰っておく、あって困るものでもないのだから。

 

「いや~、ボールって奥が深いボルね~」

 

そういってボールを渡すとボールガイはすぐまたどこかへ行ってしまった。とはいっても行く先々で悲鳴やら何やらが聞こえてくるのでどこにいるのかわかるのだが。

 

「おーす、アカツキ君緊張してる~?」

 

二人目はソニアさん、どうやら本当に見に来てくれたようだ。

 

「やっぱり緊張しますね、ボールガイのおかげでいくらかは緩和したんですけど…」

「ボールガイ…あー、あのマスコットのことね」

「はい」

「確かにあれの迫力を直に浴びたら緊張もどっか行くかな」

 

ソニアさんもあれと相対したことがあるようでその不気味な迫力がわかってしまうらしい。本当に何者なのかあのマスコットは。

 

「ま、わたしは観客席で待ってるからね。ちゃんとミッションを突破するんだぞ」

 

そういってソニアさんも観客席に向かう通路へと行ってしまった。これで正真正銘俺は一人になった。

 

「…いや、一人じゃないか」

 

腰のモンスターボールとお守りに手を当てる。

頼もしい仲間達、ライバルたちがこの先で待っているのだ。こんなところで立ち止まってはいられない。

 

『――ジムチャレンジャー、アカツキ様。ジムチャレンジャー、アカツキ様。用意が整いましたのでユニフォームに着替え、ロビー中央の入場口までお越しください』

 

召集のアナウンスが響き渡る。ロビーにいた一般の人や、試合を見に来ている他のジムチャレンジャーの目線が俺にあつまってくる。

なるべく周りを見ないようにして入場口にまで進む。

 

「あれがチャンピオンに推薦されたっていう……」

「昨日出た他の二人もすごかったらしいぞ」

「あんまりすごそうにはみえないですねぇ」

「ようチェックや!」

「草バッジを手に入れたらあなたのファンになってあげるー!」

 

それでも耳までを防ぐことはできない、やはりダンデさんからの推薦ということでかなり注目を浴びているらしい。

入場口の前まで来ると受付の人にチャレンジバンドの確認とユニフォームの番号の確認をされる。

 

「……ユニフォーム番号『114』、アカツキ選手、確認終わりました」

「それでは改めて説明を申し上げます。ジムミッションを乗り越えて頂くと、その後ジムリーダーとのバトルに進むことができます。そして晴れてジムリーダーに勝つことができればその証としてジムバッジを手にすることができます。以上でご質問は?」

「…ジムリーダーとの戦いではダイマックスをしても?」

「はい、可能でございます。その資格と実力があれば…ですが」

 

右腕に着けたダイマックスバンドを見つめる。ダイマックスをしたのは一度きり、この大舞台でそれを使いこなせるかどうかは未知数だが前回のような無様をさらすわけにはいかない。

 

「他にご質問は?」

 

「ありません」

 

「では、貴方のベストを尽くしてください」

 

受付の人からの激励を受け取り、俺は入場口に入りまっすぐ進んでいく。通路を進むと大きな扉に突き当たる。

 

『ジムチャレンジャー、承認。ジムミッションを開始します』

 

電子的なアナウンスとともに扉が開かれると隙間から風が入り込んできて咄嗟に目をつむる。風が収まるのを待ち、その目を開く。すると。

 

「なんだこれは…」

 

扉の先に広がっていたのは牧場を模した長い長い一本道。芝生が植えられ、木が植えられ、レンガによって仕切られ、牧草の塊で封鎖された長い長い一本道。そして一番目を引くものが目の前に存在している。

 

「「「「「ンメメメェェェ!!!」」」」」

 

二十頭にもおよぶウールーの群れ。どうやらジムミッションというのは一筋縄ではいかないようだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

入り口の階段を駆け下り、地面の上に立つ。感触もなにもすべて本物の土と芝生だ。

そんな風に考えているとレンガで仕切られた入り口に立っていた金色の髪とひげを蓄えたおじさんが待機していた。

俺が下りてくると、おじさんはこのジムミッションについての説明をしてくれた。

 

「ターフタウン、ポケモンジムのレフェリーを務めさせていただくダンペイと申します」

「あ、ご丁寧にどうも」

「このポケモンジムでのジムミッションはズバリ、あのウールー達を操り!道を塞ぐ牧草の塊を押し退け!この入り口の向こう側にたどり着くこと!…これだけでございます」

 

これだけ、とはいってもこれはかなり厳しいミッションだ。

ハロンタウンに住んでいたからこそわかる、ウールー達は基本気まぐれでのほほんとしている気性の穏やかなポケモン達だ。そのウールーを操って牧草を吹き飛ばし、道を突き進むというのは言うほど簡単なことではないのだ。

 

(ホップが慣れた感じで、っていうのはそういうことか)

 

朝ヤローさんから聞いた二人のミッションの具合を思い出す。確かにハロンタウンで育った二人ならばこのジムミッションも慣れたものなのだろう。

しかし俺だってハロンタウンで過ごして二年、手持ちにウールーだっている。二人はともかく他のジムチャレンジャーには負けてはいられない。

 

「それでは、ジムチャレンジスタート!」

 

ピピー!というダンペイさんのホイッスルとともにジムミッションがスタートする。

まずはウールー達にコンタクトを取るのが先決だ!と考えウールー達の集団に近づいていく、すると。

 

「「「ンメメメェェェ!!!」」」

 

俺の接近に気が付いたウールー達は体を丸め、転がるように一目散に逃げていってしまった。そのあとには一匹のウールーも残らず、ウールー達は俺から離れたところまで逃げるとむしゃむしゃと芝生を食べ始めたではないか。

 

「えぇ…」

 

俺の知っているウールーと違う。驚きで足が固まっているとダンペイさんがメガホンを掲げて言ってきた。

 

『このウールー達は皆、人やポケモンが突然近づくと転がって逃げ出すように訓練されております』

 

なるほどそうきたか。たしかにこれならホップやユウリでなくとも攻略は簡単だ。つまりは、

 

「ウールーを追いかけまわして牧草を押し退けるほどに危機感を与える!そういうことですね!」

『さようでございます!』

 

タネがわかれば簡単だ、ただウールー達を追い回して牧草のところまで誘導すればいい。その程度ならハロンタウンで数年程度の俺にもできる。

ウールー達は俺から一定の距離を取ると足を止め、芝生を食べ始める。さらにこちらの気配にはとても敏感なようで、芝生を食べていてもすぐに体を丸めて逃げ出す。かなり訓練されているのがわかる。

ならばまずやることは、

 

「散らばったウールー達を一か所に集める!」

 

確かにこのミッションフィールドは広大だが一本道の特性上両サイドはレンガで封じられている。俺はレンガ沿いにミッションフィールドをぐるりと一周し壁際のウールー達を中央にまで逃がす。後は簡単、中央に集まったウールー達をが左右ではなくまっすぐ逃げるように両サイドに別の刺客を設置する。

 

「ロコン!メッソン!頼んだ!」

 

俺はモンスターボールからロコンとメッソンを呼び出し左右に配置する。正面には俺、左にはロコンで右にはメッソン。三方向を囲まれたウールー達は俺が動くとともにところてんの様に一方向へと押し出される。

向かうは一つ目の牧草の塊、牧草ロールだ!

 

「壊せぇぇ!!」

 

「「「「「ンメメメェェェ!!!」」」」」

 

二十頭にもおよぶウールーの『たいあたり』に牧草ロールの壁が破壊される。次なるステージの道が開いた!

 

「ええ、ではここで足止めさせていただきます」

 

ウールーが次のステージへ逃げ出し、このスピードを維持して一気に突破と考えていたがそこまで甘くはなかった。

緑色のユニフォームを身にまとい、黒縁の眼鏡をかけた少年が目の前に現れたのだ。

 

「君は?」

「ぼくはソウタ。このターフタウンのジムトレーナーを務めさせてもらってるよ」

「目的は?」

「君を追い返すこと、かな!」

 

そう言うとソウタは手にしたモンスターボールをからポケモンを繰り出してきた。

 

「いけ、ヒメンカ!」

 

「メメン、カ!」

 

出てきたポケモンを図鑑で確認する。草タイプのポケモン、ヒメンカだ。

 

ロコンとメッソンはウールーの囲いに向かわせている、ならばこちらは。

 

「頼んだ!ココガラ!」

 

「ガァガァ!」

 

相性で勝る飛行タイプのココガラ。昨日ビートのゴチムにいいようにやられてしまったことで闘志に燃えているようだ。

 

「ココガラ、『みだれづき』!」

 

ココガラが空からヒメメンカに襲い掛かる。

 

「甘いですよ。ヒメンカ、『こうそくスピン』」

 

「メメン!」

 

ココガラの攻撃が当たる瞬間ヒメンカはその体を高速に回転し始めた。回転したヒメンカはココガラの『みだれづき』をヒラリと躱し、返す形でココガラを吹き飛ばした。

 

「ココガラ!」

「チャンスです、『このは』!」

 

ヒメンカが緑のオーラを纏ったはっぱ取り出しココガラに向かって投げつける。しかし、所詮ははっぱだ。

 

「ココガラ、風を起こせ!」

 

「ガァ!」

 

ココガラは小さな翼を広げ力いっぱい振り下ろす。発生した強い風にあおられた『このは』はココガラには向かわず四方へと散っていってしまった。

 

「終わりだ!『ついばむ』!」

「! ヒメンカ、『こうそくスピン』!」

 

ココガラのくちばしがさらに鋭く長くなりヒメンカを捉えるために一直線に進む。負けじとヒメンカは体を回転させるが回転したばかりの『こうそくスピン』ではまだパワーが足りない!

 

「突き破れ!『ついばむ』!」

 

「ガァァァ!」

 

『こうそくスピン』を無理やり押し切り『ついばむ』が直撃する、効果は抜群だ。

 

「ヒ、メメェ…」

 

「あぁ、ヒメメンカ!」

『ヒメンカ、戦闘不能。アカツキ選手の勝ち!』

 

レフェリーのダンペイさんが勝負の終わりを宣言する。突然のことだったがなんとか勝てた。

 

「さすがジムチャレンジャー、ポケモンとの息もぴったりだったね」

「そっちのヒメンカこそ、『こうそくスピン』の回転で攻撃をかわすのは驚いたよ」

「他にもここには二人のジムトレーナーがいるよ、頑張ってね!」

「うん!」

 

ソウタと手を握り、互いに健闘を称えあう。俺はすぐにソウタに背を向けて次のステージに向けて足を踏み入れた。

ステージの広さは最初とそうは変わらない、違いはただ一つ。

 

「わっぱ!」

 

ウールー達の行く手を阻む牧羊犬、ワンパチがいることだ。ワンパチの鳴き声に怯えウールー達は前にも後ろにも逃げることができない。

 

「メッソン、『みずでっぽう』」

 

「メッソォォ!」

「わぱっ!?」

 

まあ行く手を阻むなら退かせるだけだ、牧草ロールとそうは変わらない。

 

『アカツキ選手、ギミックであるワンパチへの攻撃は…』

 

そうは変わった、どうやらワンパチへの攻撃は駄目だったらしい。

 

「すいません」

『次からはペナルティとさせていただきますので…』

 

ちぇ、いい案だと思ったんだけどなぁ。

それからワンパチはメッソンを恐れてウールー達に近づいてこなくなった、ダンペイさんは微妙な顔をしていたが結果オーライということでさっさと次のステージに進んだ。

 

牧草ロールを押し退け次のステージに足を踏み入れた。今度は入って早々ジムトレーナーが襲い掛かってくるということもないようでホッとした。

 

「さて次は…」

 

先ほどまでより直線の距離が長い。二本の仕切りが設置され道が三本に分割されているようだ。この分ならば囲いは要らないなと考えてロコンとメッソンを手持ちに戻す。

とりあえず真ん中の道から…と追い込んでみると真正面から新たなワンパチが走ってきていた。

 

「ぐるる、『わっっぱぁ!』」

 

「「「「ンメェェ!」」」」

 

「あ、ウールー達が!」

 

ワンパチの『ほえる』によって驚かされたウールー達が俺の方に逆走してきた!たまらず俺が背を向けるとウールー達は散り散りに三つの道に分かれて行ってしまったではないか。

 

「…これはまた集めるのが大変だな」

 

三つの道に分かれたウールーだが、追撃をかけるようにワンパチが三つの道をしらみつぶしに走り回り始めた。追いかけられたウールー達がさらにまとまりなくバラけて行ってしまう。

 

ひとまず一番右の道に入ってみるとウールーの他に人が立っている。

 

「よく来たね!僕を倒せばワンパチを止めてあげるよ!」

「乗った!」

 

どうやらこのジムトレーナーを倒せばワンパチが停止するらしい、よく考えられたジムチャレンジだと感心したがいまは一刻も早くワンパチを止めてウールーの散開を止めなければいけない。

 

「僕の名前はセイヤだよ。いけ!スボミー!」

「よろしくセイヤ!いけ、ロコン!」

 

セイヤが出してきたのは草・毒タイプのスボミーだ、だがそのポケモンについてはよく知っている。

 

「ロコン、『おにび』」

 

「コン!」

 

ロコンの体の周りをふわふわと不思議な火の玉が現れては消える、そして消えたかと思うと一瞬にしてスボミーの周りを取り囲み漂い始めた。

 

「スボミー!」

「スボミーの『どくのトゲ』は直接触れなければ発動しない!」

「くっ、その通りです」

「いけ、『やきつくす』!」

 

『おにび』に囲まれ動けなくなったスボミーにロコンの『やきつくす』が襲い掛かる。『やきつくす』は『おにび』と混ざりあい、より大きな業火となってスボミーを燃やし尽くしていった。

 

「ス、ボ…」

 

スボミーはその一撃で倒れてしまう。効果抜群の攻撃二つ分のダメージだ、当然だろう。

 

「スボミー、僕の判断ミスだ。ごめん」

「これでワンパチは止まるの?」

「いいえ、僕にはまだもう一体ポケモンがいます!」

 

そういってセイヤはスボミーと交代するように新しいポケモンを繰り出してくる。

 

「お願いします!ナゾノクサ!」

 

ナゾノクサ、これは知らないポケモンだ。図鑑で確認する前にナゾノクサは攻撃を仕掛けてくる。

 

「先手はこちらから、『しびれごな』」

 

「ナッゾ、クサ!」

 

ナゾノクサが体を揺らしはじめる、すると頭の草から黄色い粉が散布される。ロコンがその粉を吸い込んだとたんに膝をつき、動けなくなる。

 

「『しびれごな』は相手を『まひ』の状態にする技です、もうロコンはまともに立って動けません」

「ロコン、『おにび』だ!」

 

相手が状態異常ならこちらも状態異常、『おにび』を作り出しロコンが打ち出そうとする。しかし突然体を硬直させて動きを止めてしまう。

 

「体がしびれて動けないようです、『せいちょう』」

 

「クサ!クサ!」

 

ナゾノクサが照明の光を浴びて光合成のようなものを始める。すると頭の草がより一層大きくなる。

 

「これで攻撃力が上昇しました、『すいとる』」

 

ナゾノクサの頭の草が伸びロコンの体を締め上げる。緑色に輝きだした草はロコンの体から体力を吸い上げていく。

 

「ロコン振り払え!」

「無理です!『せいちょう』でパワーアップしたナゾノクサの『すいとる』は振りほどけません」

 

『せいちょう』をしたナゾノクサの草は振りほどけない、それほどまでに頑丈なのだろう。ロコンがもがくが『まひ』で十分な力を発揮できず、『すいとる』で体力が削り取られていく。この状況を打開するには!

 

「ロコン、『おにび』だ!」

「ナゾノクサ、注意すれば避けられます」

 

「クサ!」

 

ロコンの体の周りを浮遊する火の玉、『まひ』でまともにコントロールのできない今、確実に狙える存在は…

 

「自分だ!ナゾノクサの草ごと自分を焼け!」

「なんだって!」

 

如何にコントロールが効かなくても自分の体に誘導することなど児戯にも等しい。自信の体ごと焼いた決死の『おにび』は草を伝い、ナゾノクサごと燃やしはじめる。

事態に混乱したナゾノクサの拘束が緩まったことでロコンは草から脱出する、抜け出す前よりもその体に熱を宿して。

 

「何故!」

「ロコンの特性は『もらいび』、炎タイプの攻撃を吸収して炎技の威力をアップさせることができる」

「自分の技で『もらいび』を発動するなんてありですか!?」

「ありです!ロコン、『やきつくす』」

 

『もらいび』によってさらに威力を増した『やきつくす』が『やけど』で大慌てのナゾノクサを飲み込む、後に残ったのは頭の草を燃やし尽くされたナゾノクサだけだった。

 

『ナゾノクサ戦闘不能。アカツキ選手の勝ち!』

 

ダンペイさんの試合アナウンスとともに始まりのホイッスルとは別の笛の音が鳴り響く。するとワンパチが『ほえる』のをやめてセイヤの元まで走りこんできた。

 

「ごめんよワンパチ、僕負けちゃった」

 

「わっぱ!」

 

「おめでとうございます」

「良い勝負だったよセイヤ、正直焦った」

「こちらこそ、炎タイプのいい勉強になりました」

 

ソウタと同じくとても気持ちのいいバトルだった。草タイプの多様な技には翻弄されっぱなしだ、ジムトレーナーでこれならヤローさんはもっとすごいのだろう。

 

「しかしウールーはかなり散らばってしまいましたね、大丈夫ですか?」

「そこだなぁ…」

 

このジムチャレンジには別に制限時間というのは設けられていないが一度ステージの各所に散らばったウールーを集めるのは至難の業だろう。

 

『棄権なされますか?また予約が必要となりますが最初からジムミッション行えますぞ』

「結構です」

 

ダンペイさんの申し出を断り思考の海に埋没する。

ウールーをどうやって集めるか、追えば逃げるウールー達。ダメだ、どうやっても集めるというのが難しすぎる。

 

「せめてウールーの方から集まってくれれば楽なんだけど…」

 

そう、あちらの方からよって来てくれれば楽なのだがあちらは逃げるばかり…

 

「うん?集める?」

 

集める集める。そういえば以前ポケモンに群がられた時があった、そう一番道路の出来事だ。あの事件が起きたのは!

 

「そうかあれを使えば!」

 

腰につけたボールとお守りに手を付ける。お守りは触れるとチリン♪という心地の良い音を響かせてくれる。セイヤはその音色に耳を傾けてうっとりとしている。

 

「良い音ですね、アカツキさんそれは?」

「これはね、最高のライバルがくれた最高の贈り物だよ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『アカツキ選手、見事にジムミッション達成です!』

 

ふぅぅうぅう!!!!

コートに響いたジムミッション達成の報告に観客席がどよめき立つ。

 

「速いな」

「どのチャレンジャーも最後のステージの複雑さと二匹のワンパチに翻弄されてかなり時間をかけてたよな」

「ジムトレーナーのミドリも結構強くて苦戦するって聞いたぞ」

 

俺は何とかジムミッションを攻略して控室でポケモンとともに休憩をとっている、その間コートに設置されたスクリーンで俺のジムミッションの様子が映し出されている。実況はダンペイさんだ。

 

『おおぉーっと!!!アカツキ選手の『やすらぎのすず』の音色にウールー達が引き寄せられていきます!』

 

そう、ユウリに貰ったおそろいの『やすらぎのすず』。いつもお守りとして腰にぶら下げていたこれが今回のキーアイテムとなった。

俺のウールーが『やすらぎのすず』を大層気に入ったようにウールーは鈴の音色というのが好きだという。俺が『やすらぎのすず』を鳴らしながらステージを回るとみるみる間に二十頭のウールーが群がってきた。

本来なら近づいただけで逃げ出すウールー達がここまで寄ってくるとは…ユウリはやはりすごい。

 

『なんと!鈴の音色に導かれたウールー達はワンパチの鳴き声すらも逃げ出しません!』

『むしろ鈴の音色を聴いたワンパチの方が群れに合流し始めました!』

 

「そんなのありかよ!」

「おれここでリタイアさせられたんだけど!」

「さすがチャンピオンに推薦を受けたチャレンジャーね!」

 

というわけで最後のステージもそのまま攻略してしまった。ステージ中央で待機していたミドリさんというジムトレーナーは呆気にとられたような顔をした後、大笑いをして通してくれた。

最後の牧草ロールを吹き飛ばしてミッション完了した後もウールー達が離れてくれなかったのは驚いたがそれでも何とかここまでたどり着いた。

 

あと十分もすればポケモン達も回復してジムリーダーとの、ヤローさんとのポケモンバトルが始まる。

それまでは、ここで『やすらぎのすず』の音でも聞いてゆっくりしておこう。チリン♪

 

 

後日沢山のジムチャレンジャー達が『やすらぎのすず』を買い求めようとしたが、そもそも売っていないという現実に打ちひしがれたという。

 

 




チート!
チートですねこれは。
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