剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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二話連続投稿です、先に20話を読むことを推奨します。


21、vsヤロー

ジムチャレンジ最初の関門、ターフジム。

そのジムミッション・ウールー転がしを攻略した俺は控室で休憩を取り終え、今はコートの入場口でスタンバイしていた。

二人のジムトレーナーと戦い疲労したポケモン達も既に前回にまで回復を終えた。ポケモン達のコンディションは万全、後はこの高ぶる心臓を落ち着けるだけだ。

 

「落ち着け落ち着け、こういう時は人って文字を三回書いて…」

 

『さて準備が整いました!それではジムチャレンジャー、アカツキ選手の入場です!』

 

「ああもう!…よし、行くか!」

 

人という文字は書けなかったが自分の頬を叩いて気合を入れる。泣いても笑ってもここが最後の勝負、勝てば初勝利負ければ初敗北それだけだ。

俺は歓声と光あふれるコートに足を踏み出した。

 

『うぉぉぉぉぉおおお!!!』

 

「ッ!」

 

観客席から伝わる歓声の振動が直に伝わってくる。あの開会式の日と同じ、いやそれ以上かもしれない衝撃に包まれ一瞬思考が停止しかけたが何とか持ち直す。

手を握り締め、目は前だけを見据え、左足から前に出す。俺が入ってきた入場口とは反対に存在するもう一つの入場口から日よけ帽子を深くかぶり、首に深い緑色のタオルをかけた男性の姿が見える。

二人はコートの中心にまで歩みを進め、そして互いを認識する。

やはり大きい、体もだがその気迫が。体の大きさ以上に大きな壁の様に見える。

 

「いやあ、僕のポケモンジムは初めのジムなので次々来る挑戦者が来るのです」

 

「そのためにジムミッションも割と厳しめに設定しとるんですけど、」

 

「まさかあんな方法を使ってクリアをするチャレンジャーが現れるとは!」

 

「…やっぱり道具を使っちゃまずかったですか?」

「いやいや、ポケモントレーナーたるものポケモンの性質を利用するのも戦略の一つ」

 

「そういう意味でもアカツキさんはしっかり合格。さすがの一言だわ」

 

ヤローさんの言葉にホッと息をつく。この大舞台に立っているこの状況で「道具を使ったから反則です!」なんて言われたら羞恥と絶望で死んでしまうところだった。

ヤローさんは俺が一息ついたのを見計らって、こう宣言する。

 

「こんな手ごわいトレーナーには、ぼくも『ダイマックス』を使わねばな!」

 

その言葉にハッとした俺がヤローさんの顔を見るとヤローさんの満面の笑みが映る。

純粋にバトルを楽しみにしているトレーナーとしての顔と、この不遜なチャレンジャーをどう調理してやろうかと考えるジムリーダーの顔が合わさったような顔に背筋が凍りつくような感覚を覚える。

それも一瞬のこと、すぐにいつもの優しい笑顔に戻ってしまう。やはりジムリーダーとはあらゆる面でこちらの上を行っている、そんな底の見えなさを感じさせる。

 

ヤローさんが回れ右をするのに合わせ、俺も体を回転させコートの中央から距離を取る。今まで見えていなかった自分側の観客席が見える、予想通りの超満員だ。

俺とヤローさんがもう一度体を回転させ向き合うのは同時だった。互いに腰に手を回し、ボールをその手に収める。

 

『バトルは二対二のシングルバトル!それでは両者、ポケモンを!』

 

審判の声が観客席すべてに響くような大音量で響き渡る。

ボールを投げだしたのはわずかに俺の方が早かった。

 

「いけ、ロコン!」

「行くんじゃ、ヒメンカ!」

 

互いのポケモンが姿を現す。こちらはロコン、あちらは先ほどソウタが出してきたのと同じヒメンカ。

同じでも油断はしない、なにせ相手はジムリーダーなのだから!

 

『先行はアカツキ選手からです、はじめ!』

 

「ロコン、『やきつくす』!」

 

先行の有利を目いっぱい使った不意打ちスレスレの攻撃宣言、実は緊張して言葉が早く出てしまっただけだ。

ロコンの口からすべてを焼き尽くす炎が吐き出される。ヤローさんのヒメンカはそんな炎を前に悠然としている。

 

「ヒメンカ、『こうそくスピン』じゃ」

 

「メメン!」

 

ヒメンカの体が高速に回転し始める。ジムトレーナー・ソウタとの戦いでも見たヒメンカの『こうそくスピン』、だが。

 

「な、『やきつくす』を弾いた!?」

 

ヒメンカの『こうそくスピン』はロコンの炎をものともせずに相対し、粉砕した。まだなお回転するヒメンカの周りに振り払われたひのこが舞い散る。まるで相手は踊っているようにも見える。

 

「そのまま『こうそくスピン』じゃ」

 

こちらが呆気に取られている隙を見逃さず、回転したままのヒメンカはロコンに体当たりを当てる。

強力な『こうそくスピン』はロコンを弾き飛ばしてもなお回転を持続させる。

ロコンが空中で態勢を整え着地するがその攻撃力に驚く、たった一撃でもなんと重い一撃だ。

 

「ぼくのヒメンカをソウタのヒメンカと同じと思っとるようでは勝てませんねえ」

「なら、『でんこうせっか』!」

 

まだなお回転し続けるヒメンカはより速度を増していく。その速度に対抗するためロコンも『でんこうせっか』で対抗する。

ヒメンカの体当たりに合わせて『でんこうせっか』を逐次使用し、その暴威を回避させる。

 

「中々に速いですねえ、ならば『りんしょう』!」

 

「メェェェン!」

 

『こうそくスピン』を解除したヒメンカの口から美しくも力強い音の波動が放たれる。いかに素早く動いているロコンでも音のスピードには勝てず『りんしょう』の音波に飲み込まれる。

 

「ヒメンカ、続けて『りんしょう』!」

 

まだまだ歌い足りないとばかりにヒメンカの口からさらなる音の波動が放たれる。知っている、『りんしょう』は歌えば歌うほど威力の上がる厄介な技。ビートとの勝負の後、音系の技の効果を調べていたのが助かった。

 

「させるな、『かなしばり』!」

 

「コォォン!」

 

ロコンの目が青白く光り、ヒメンカの姿を瞳に捕らえる。その瞬間放たれようとしていた音の波動は霧散し、擦れた声だけが口から漏れ出る。

 

「メェェ…………ヒメ?」

 

「あら」

「逃がすな、『おにび』!」

 

『りんしょう』の発動タイミングを逃したヒメンカが技が出ないことに困惑する。

その隙を狙い生みだされた火の玉は一斉にヒメンカに襲い掛かりその身を焼き焦がす。

 

「よし!『やけど』状態になった!」

「これは一本取られたんじゃ」

 

ヤローさんもここまでの流れるような戦法に口を丸くする。

これでヒメンカの『りんしょう』を封じ、『やけど』による継続的なダメージも望める。悪くない、むしろ押せているはずだ。

 

「なるほど、こりゃ負けていられんな!」

 

ヤローさんもついに本気を出す気になったのか目を見開いてこちらを見据える。その瞬間風が吹いたような感じを味わった。これが強者の真の迫力!

 

「ヒメンカ、『マジカルリーフ』」

 

ヒメンカの体から七色に光り輝くはっぱが生み出される。なんとなくだがあれは『おにび』に近いものだということを感じ取る。『おにび』に近いということは、

 

「ロコンに避ける隙間を与えるな。全方向から一斉に貫け!」

「やっぱり動きを自在に操れる技か!」

 

『マジカルリーフ』は使用者の意思に従い、そんな不規則な軌道も描くことができる。ロコンの四方を囲み残った上の空間すらも『マジカルリーフ』が埋め尽くし、一斉に襲い掛かる。

 

「ロコン、『やきつくす』」

 

「コォォン!」

 

しかしそれでも相手は木の葉、炎に晒されればその姿を灰へと変えるのだ。

しかし、相手の考えはそのさらに上を行く。『マジカルリーフ』は急遽軌道を変えて一枚の巨体な木の葉に擬態する。いつか子供の頃に見たヨワシというポケモンの様に。

 

「燃えても構わない!」

 

『やきつくす』に晒された巨大な一枚の『マジカルリーフ』はその表面が燃え尽き灰となる。しかし灰の下からまた新たな木の葉が生まれて内側の木の葉を守る盾となる。そうして『やきつくす』をしのぎきった『マジカルリーフ』は未知なる軌道を描いてロコンの体を切り裂き始める。

 

「ロコン!」

「草だからと言って炎タイプへの対抗手段がないわけではないんじゃ!」

「『でんこうせっか』で振り切れ!」

「追いすがれ!」

 

『でんこうでっか』で『マジカルリーフ』の包囲を強引に突破する。しかし、使用者の意思に従って動く不思議な木の葉はロコンを追跡するように追手がかかる。

『でんこうせっか』による加速はいつまでも続くものではない、このままではまた『マジカルリーフ』の餌食になってしまう。

 

「! そうか、ロコン、ヒメンカを狙え!」

 

それは幸運だった。

大量の木の葉によって遮られていた視界が広がると、『マジカルリーフ』を制御中で無防備となっているヒメンカの姿が丸見えとなった。

無防備なヒメンカをターゲットに入れたロコンの『でんこうせっか』がヒメンカへと向かう。しかし、この時日よけ帽子の下でにやりと笑うヤローさんに気が付かなかった。

 

「それは囮じゃ!ヒメンカ、『こうそくスピン』!」

 

「しまった!」

 

『マジカルリーフ』に意識が向いて忘れていた。ヒメンカには苦手な『やきつくす』をも弾き返す強力な近接対応技があるのだった。

不用意に近づいたロコンにヒメンカの『こうそくスピン』が炸裂する、と思った次の瞬間ヒメンカの全身が炎に包まれる。

 

「ヒメェ!」

 

「このタイミングで『やけど』の発炎じゃと!」

「ロコン!いけぇぇ!!」

 

「コォォン!」

 

『やけど』の発炎による追加ダメージを食らい『こうそくスピン』が不発に終わる。

ロコンが全身の力を傾けた『でんこうせっか』をくらったヒメンカがよろよろと後ろへ後ずさる。

 

「ヒメンカ、『こうそく」

「『やきつくす』!」

 

ロコンの口からふたたびすべてを燃やし尽くす炎が放たれる。炎は弾く間もなくヒメンカの体を燃やし尽くすと、後には力つくしたヒメンカだけが残った。

 

『ヒメンカ戦闘不能。ロコンの勝ち!』

 

『うおぉぉぉぉぉお!!!』

 

ジムリーダーのポケモンが先に倒れたことで今日一番の歓声が沸き起こる。

なんとか一匹、ただのトレーナーやジムトレーナーとの戦闘とは比べ物にならないほど集中していたことに気が付く。歓声が今の今まで聞こえていなかったのだ。

 

「ヒメンカ、よくやってくれた」

 

ヒメンカをボールに戻したヤローさんの目がこちらを見据える。先ほど感じた迫力に負けず劣らずの気迫だ。

ボールを腰に戻したヤローさんが、もう一つのボールを取り出す。あれが最後の一匹、アレさえ倒せば俺の勝ちになるはずだ。

 

「うぉぉぉぉ!ぼくたちは粘る!農業は粘り腰なんじゃ!!!」

 

最後のモンスターボールを構え今日一番の声を張り上げるヤローさん。マイクを使わずともこのスタジアムにいる人間全員に届きそうな大音声だ。

 

「行くんじゃ!ワタシラガ!」

 

投げ出されたボールから飛び出したのは見たことのないポケモン。背中に大きな綿毛を抱えたそのポケモンはワタシラガ、どうやらヒメンカの進化系らしい。

 

再びポケモン同士がにらみ合う。先の戦闘でロコンもかなりのダメージを負った、長期戦では不利になる。

 

「ロコン、『やきつくす』」

 

やはり効果抜群の技で少しでも相手のポケモンを消耗させる。放たれた炎はまっすぐワタシラガに向かっていく。

 

「ワタシラガ、『わたほうし』」

 

「シラァガ!」

 

ワタシラガの背中の綿毛が大きく膨れ上がり射出される。飛び出した綿毛はロコンとワタシラガの中間に陣取り『やきつくす』の炎を受けて大きく燃え上がる。

綿毛が引火し巨大な炎の壁と化したことで視界が塞がれる。

 

「くそ、前が見えない!」

「ワタシラガ、『マジカルリーフ』じゃ!」

 

そんなことはお構いなしとばかりに壁を越えて先ほどの巨大『マジカルリーフ』が壁を貫通して現れる。こちらの姿が見えていないはずなのに木の葉は的確にロコンに襲い掛かる。

 

「こうなったらこっちもだ!火の壁を突き破れ!『でんこうせっか』」

 

『もらいび』の特性を持つロコンに炎は通用しない。燃え盛る綿毛を突き抜けロコンがワタシラガへと一撃を加える瞬間が後ろのスクリーンに映る。そうか、ヤローさんもこうやってこちら側のロコンの居場所を。

しかし一撃を加えたロコンの体にワタシラガの背中の綿毛がまとわりついて動きを鈍くさせる、これは『わたげ』というワタシラガの特性らしい。

 

「『りんしょう』」

 

「シィィラァァ!」

 

ワタシラガの口から音の波動が噴き出す。それは炎の壁すらも消し飛ばし、ロコンをこちら側にまで吹き飛ばした。

 

『ロコン戦闘不能。ワタシラガの勝ち!』

 

『うおぉぉぉぉぉお!!!』

 

またしても歓声が上がる。一進一退のポケモンバトルに観客たちの熱気も最高潮に高まってきているようだ。

俺はロコンを戻して、もう一つのボールを手に取る。

 

「それが君の最後のポケモンじゃね」

「ええ、こいつが俺の切り札です」

「そうか、ならこちらも切り札を出さんとねえ」

 

そういうとヤローさんがワタシラガをハイパーボールの中へと戻した。

なんだと思っているとヤローさんの右手首に巻かれた大マックスバンドが赤く光り輝き始める。

 

「まさか!」

「さあ、ダイマックスじゃ!根こそぎ刈り取ってやる!」

 

ダイマックスエネルギーを取り込み巨大化したボールを軽々と片手で抱え、ポンポンと優しく抱いたあとめいっぱい真後ろに投げ飛ばす。

 

『おおっと、ここでジムリーダー・ヤロー、『ダイマックス』だぁぁ!』

 

『うおぉぉぉぉぉお!!!!!』

 

先ほどの歓声をも上回る大歓声。

ボールから飛び出したワタシラガがその大きさを増していく。10メートル、15メートル、20メートルにまで巨大化したワタシラガが姿を現したのだ。

その圧倒的な大きさに文字通り圧倒される。ダイマックスしたポケモンを見るのはこれで三匹目、ワイルドエリアで捕まえたマメパトとそれに対抗してダイマックスしたうちのメッソンきりだ。

俺は右手のバンドとモンスターボールを見つめる。既にバンドは準備完了だとばかりに赤く光輝いている、モンスターボールの中のこいつも新しい力を解き放ちたいと今にも飛び出しそうになっている。

ここまで来たなら覚悟を決めろ、こんどこそこのバンドとダイマックスの力を使いこなすのだ!

 

「いけぇ!アオガラス!」

 

「ガアガア!」

 

ボールから飛び出したのは黒い体に青い翼を携えた鳥ポケモン、アオガラス。ちょうど先ほど控室で休憩していた時に進化を遂げたのだ、この情報はまだ誰にも伝わっていない。

まさかのポケモンの登場にヤローさんも目を大きく見開く。そりゃあそうだ、ジムミッション中はココガラだったポケモンが進化していたのだから。

 

『まさかまさか!先ほどジムミッション中に姿を見せたココガラ!?この短い時間にアオガラスへと進化したのか!』

 

「それだけじゃない!」

 

俺は出したばかりのアオガラスをモンスターボールに戻す。そして右腕を構えた瞬間ダイマックスバンドに蓄えられたエネルギーがボールへと移行していく。

巨大化したボールはヤローさんの様に片手では扱いきれない。両手でしっかり持ちあげ、大きく振りかぶって真後ろに投げ飛ばした。

ボールから飛び出したアオガラスの体がどんどんと大きくなっていく。ついにはダイマックスしたワタシラガとも並んでしまうほどに。

 

広大なコートがたった二匹のポケモンで埋め尽くされる。

ダイマックスポケモン対ダイマックスポケモンその火ぶたが切って落とされた。

 

「ワタシラガ、『ダイアタック』!」

「アオガラス、『ダイジェット』!」

 

攻撃はほとんど同時。

しかしワタシラガの放った『ダイアタック』がアオガラスを捉える前に『ダイジェット』を使ったアオガラスが少し後ろに引いたことで空かされてしまう。

ワタシラガの体に『ダイジェット』のによって生み出された竜巻が突き刺さる、効果は抜群だ!

 

「ぬぅん!なんの、『ダイソウゲン』!」

 

『シィィィラッァァァガァァ!!』

 

ワタシラガの体から四つの大きな種子が打ち出される。それを回避したアオガラスだが『ダイソウゲン』はそれでは終わらなかった。

 

「驚けよ!たまげろよ!これがダイマックスの技じゃあ!」

「なんだ、種から!」

 

巨大な種子は地面に触れた瞬間に芽を出し、根を張り、一瞬にして森を作り上げた。そしてその森がアオガラスの周りを囲い込んだ時、森が爆散した。

 

「うわぁぁぁ!」

 

『ガァァァ!』

 

『ダイソウゲン』による爆発でアオガラスも大きなダメージを受けた。

そして爆発の後にフィールドを緑色の光が駆け巡る。どこからともなく草が生えわたり、木の葉が吹き飛ばされる。

 

「これは…」

「『ダイソウゲン』の使用後効果、フィールドを『グラスフィールド』に書き換え草タイプの技の威力がアップするんじゃ!」

 

ということは、

 

「もういっぺん、『ダイソウゲン』じゃあ!」

「『ダイウォール』!」

 

再び放たれた種子が地面に到達する前にアオガラスの張った『ダイウォール』の力がそれを無効化する。

 

「おっと、『ダイウォール』の切りかたをもうマスターしとるとは!」

「一回痛い目にあったんです!」

 

かつての巨大化したマメパトの『ダイウォール』によって手痛い反撃を受けたことを思い出す。あれが功を奏した。

 

「アオガラス、『ダイジェット』!」

 

『ガアアアアア!』

 

再び生みだされた竜巻が巨大化したワタシラガの体を削り取る。『ダイソウゲン』で力を使ったばかりのワタシラガには『ダイウォール』を張るだけの力は無い!

 

「いけぇぇ!!!」

 

『ガアアアアア!!!』

 

残されたダイマックスエネルギーを使い切る思いで『ダイジェット』に力を注ぎこむ。ついに竜巻はワタシラガを飲み込んでしまった。

 

『シィィィラァァァ!!!』

 

「…ここまで、じゃな」

 

ワタシラガの断末魔も竜巻に巻き込まれ消えていった。

 

全てのダイマックスエネルギーを使い果たし、アオガラスの体が元のサイズへと戻っていく。

既に竜巻がおさまったにもかかわらず巨大なワタシラガの姿が見えない、つまりはこういうことだろう。

 

『ワタシラガ戦闘不能。よって勝者、チャレンジャー・アカツキ!』

 

『!!!!!!!!!!!!』

 

ダイマックスが終わりしんと静まり返っていた会場に審判の判定が下る。みれば遠いコートの端でワタシラガが伸びている。

判定が宣言された一瞬の静寂が嘘のように大歓声に塗りつぶされる。

 

「草の力、みんなしおれてしもうた……なんというジムチャレンジャーじゃ」

 

ヤローさんが何かつぶやいていたようだがこの大歓声に遮られ消え去ってしまった。

 

歓声がおさまり、俺とヤローさんはコートの真ん中に再び足を進める。向き合い、そして改めて勝てたことを実感する。あれだけ大きく見えたヤローさんの姿が今では俺より頭数個分大きい程にしか見えなくなっていた……いや、普通に十分大きかった。見上げないと顔が見えない。

 

「…君にとって、実りの多いポケモン勝負だったか?」

「……はい!」

「それでよし!では、ジムチャレンジでジムリーダーに勝った証として、草バッジをお渡しするんだわ!」

 

ヤローさんの大きな手からターフジム攻略の証、草バッジが進呈される。

事前に渡されていたバッジリングに草バッジをはめてみようとするが、如何せん他に何もついていないのでどこに着けるのかがわからない。

 

「ここだよ、リングの右下のくぼみ」

「……っと、嵌まった!」

 

ヤローさんに教えてもらいながらなんとかバッジをはめる、これを後7つ。大変だがやっと俺もジムチャレンジの一歩を踏み出せたのだと安心した。

そんな俺を見たヤローさんが手を差し出してくる。いつもは俺からやることだった。

 

「他のジムリーダーにも挑み、見事勝利を手にするんじゃ!」

「はい!」

 

ヤローさんの大きな手をもう一度握りしめ握手を交わす。とても力強くて、温かい手だった。

 

『それではこれで、本日のジムチャレンジを終了いたします。観覧席の方は他の方を押し退けませんよう、ゆっくり落ち着いての退席をお願いいたします』

 

 

 

そんなアナウンスは大歓声と拍手に潰され、誰の耳にも入らなかったという。

 

 




はじめてのジムリーダーとのバトル、作者個人的には結構力を入れたと思うのですがどうだったでしょうか。まあ所詮は一筆書き、プロットも何もなしの勢い重視の作品なのですが楽しんでいただけたらなによりです!

ゲーム貯金がなくなりましたのでまたゲーム本編を進めてきます。


ジムバトル書くのはかなりカロリーを使った気がする。
つまり今なら夜食を食べても0キロカロリー?
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