バウスタジアムの守護する水タイプ使いのジムリーダー・ルリナに何とか打ち勝った俺達。
二つ目のバッジである『水バッジ』と技マシン『うずしお』を受け取った後。急いでローズさんとの昼食の約束のためにポケモンセンター近くのシーフードレストランに向かおうとした。
だがファンはそれを許してくれなかった。
「バトル凄かったぜ!」
「わたしアカツキ選手のファンになってよかったです!」
「君が戦うといつもダイマックスのバトルが見られて感激だよ!」
「アカツキ選手!今のジムチャレンジについて一言!」
ロビーにはジムチャレンジを終えた俺を一目見ようとファンの人たちが押しかけていた。ターフジム攻略の時は俺の試合で最後だったためすべての観客がロビーを行き来していたが今回は本当に俺の顔を見に来てくれただけの人たちだ。
ローズさんも言っていたがこうして自分の顔をわざわざ見に来てくれるファンの人が俺にもついてくれたのだと思うと嬉しさと気恥ずかしさが一緒に湧き上がってくる。
邪険になど決してしたくはないがこのままではローズ委員長との約束がどんどん遠のいていってしまう。なんとか穏便にファンの人たちを躱してレストランに行きたいのだが如何せんこんなことは初めてでどうやっていけばいいのかがわからず困ってしまう。
「ファンの皆様失礼します」
俺がファンの人たちに囲まれ困っているとスタジアムの外からローズさんの秘書、オリーヴさんが入ってくると俺とファン達の間に入るこみ立ちふさがる。
「アカツキ選手はこれより大会運営委員長との昼食の約束がございます、どうか皆様ご理解いただければ。そうですよね?アカツキ選手?」
「あっと、そうです。みなさんすいません、せっかく俺なんかのために来てくださったのに…」
オリーヴさんの言葉に同意を示し、ファンの人たちに頭を下げる。残念そうな顔を浮かべるファンの人たちだが「ローズさんとの約束なら仕方ないよね」といって別れて行ってくれた、本当にローズさんの人徳は計り知れないと思った。
それでも来てくれたファンの人たちに何かを伝えようと思い、インタビュアーのお姉さんからマイクを受け取一言だけ感謝を伝える。
「俺なんかのために来てくれてありがとうございました!これからも頑張るので応援してくれると、えっと………頑張れます!」
何も考えず言った言葉なので頑張ります、が被ってしまった。それに気が付いて顔が赤くなるがお姉さんにマイクを返してスタジアムを後にする。
外には黒色のリムジンが待機されており、オリーヴさんに乗せられてレストランまで一気に連れていかれた。
「…ふう、委員長の約束から約30分の遅延です。ガラル地方にとってローズ委員長の30分がどれだけの価値を生むかおわかりですか?」
車の中でオリーヴさんから委員長についてのありがたいお言葉とローズ委員長のリーグカードを貰った。
レストランに着くと足早に委員長の元へと向かった。
高級レストランの最上級席。海とスタジアム、そしてバウタウンのシンボルマークともいえる灯台が纏めて見られる席にローズ委員長、そしてなぜかソニアさんが座っていた。
「やあアカツキ君!君の勝利をお祝いしましょうか!」
「委員長、誰かを待ってるかと思っていたら彼だったんですね」
「ソニアさんも呼ばれていたんですね」
「なんと二人は知り合いだったか、いいねいいね!さぁさぁ席についてください!このお店のシーフードは最高なですよ!」
ローズさんの言葉に導かれ席に座る。
ローズさんの言葉通りこのレストランの料理は本当に美味しかった。
ブロスターのシーフードドリアや、新鮮なヤドンのしっぽのステーキ、そして昨日大量に捕獲されたヨワシのマリネなどどれもこれも満足のいくものだった。
「どうだったかな!?お祝いになれたら幸いだよ」
「すごく美味しかったです。ローズ委員長、ありがとうございました」
「いえいえ!ガラル地方の未来を担う若者と一緒にご飯を取るのもボクにとってはとっても有意義なんだ!それにすごかったよ、ジムチャレンジ!あのルリナ君に一歩も譲らない戦いぶり、君達は本当にダンデ君を彷彿とさせてくれるよ!」
ローズ委員長はとても偉くてすごい人なのだがどこか接しやすいと思わせてくれる不思議な感じがして、おれもついつい言葉が流れ出てしまう。これがカリスマというものだろうか。
「ところでソニア君、マグノリア博士はお元気にされていますか?」
俺についての話題がひと段落したところで今度はソニアさんの方に話題が向く。そうか、ダイマックスはローズさんの会社とマグノリア博士の合同研究。ソニアさんもその強いつながりがあったのだ。
「博士にはとてもお世話になりましたからね。今のダイマックス技術があるのはマグノリア博士のおかげですよ」
「俺のダイマックスバンドも博士に作ってもらいましたから、頭が上がらないですね」
改めて右手に着けたダイマックスバンドを見る、これがなければジムリーダーの強力なダイマックスポケモンにも太刀打ちできなかっただろう。ポケモン図鑑を貰ったこともあるが本当に博士には頭が上がらない。
「まあダイマックスにはまだ不明なことも多くて不安もあると博士は言ってました」
ソニアさんはそう答えると食後のコーヒーを一口飲む。博士でもまだ未知なことがあるのかと思い自分もコーヒーを一口飲む、ブラックはまだ飲めないので砂糖とミルク入りだ。
いい感じにお腹も膨れ、食後の温かい飲み物で少し眠くなってきた。さっきまでの激闘が嘘のように感じられる穏やかな時間だったがローズ委員長のスケジュールもそろそろギリギリのようでお開きとなった。
「それではアカツキ君!これからもジムチャレンジを頑張ってくださいね!君のことは人一倍応援していますから!」
「あはは…ありがとうございます」
こんなところをビートに見られたら殺されそうだと思いながら最後に握手をしてもらった。どこかポケモントレーナーを彷彿とさせるようだったが何ということはない普通の大人の人の手だった。
「ああそれとソニア君、ダイマックスについてのことならナックルシティの宝物庫に足を運ぶといいよ」
「え、いいんですか!?」
「わたくしは歴史の中にも大マックスの秘密を紐解くカギがあると考えております、オリーヴ君」
「わかりました、見学の手配をしておきます」
できる大人というのは本当に行動が早いなと感心してしまった。
それにしてもナックルシティには宝物庫なんてものがあるのを初めて知った。やはり金銀財宝がウッハウハなのだろうか?
「ははは!アカツキ君が思い浮かべているものとはきっと違いますよ」
「(思考を読まれた!)」
「それでも一目見ておく価値があるものです、きっとガラル地方のためにもなることです」
そういって黒色のリムジンに乗ったローズさんとオリーヴさんを俺とソニアさんは見送った。
「そういえばアカツキ、水バッジを手に入れたんだね。あのルリナに勝つなんて大したものだよ」
「ソニアさんはルリナさんとお知り合いなんですか?」
「うんまあね、昔ジムチャレンジの時に知り合ったんだ」
「ダンデさんと同じような感じですか?」
「ダンデ君はそれより前から…もうほんと昔っから変わらないんだから」
ソニアさんはルリナさんに一目会ってくるといってそのまま別れた、ついでに勝利祝いとして技マシンの『かたきうち』を貰った。他二つの技マシンと違ってこれはノーマルタイプの技なので使い勝手は良さそうだ。
技マシンをカバンに直した俺はポケモンセンターへと戻った。
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ポケモンセンターに戻りポケモンを回復させてもらっていると町巡りから帰ってきたホップとばったり出くわした。
「あ、その様子だと…」
「うん、この通り!」
バッジリングにきらめく『水バッジ』をホップに見せつける。先を行かれた悔しさでホップはその場で地団太を踏んでいる。
「くっそー!ユウリはもう先に進んじまったしアカツキも俺より早くバッジを手に入れたしで追い抜かれちゃったぞ!」
「ホップも明日ジムチャレンジでしょ?ホップなら大丈夫だよ」
「ま!そうだな!お前とユウリが突破出来てオレに突破できないなんてないからな!」
「その意気だよホップ!まあホップが挑んでいる頃俺はもうエンジンシティに向かってるだろうけど」
「すぐに追いついてやるからな、覚悟しておけよ!」
「待ってるさ!」
ホップならきっとルリナさんにだって勝てる、それだけの実力を持ち合わせているのがホップだ。きっとすぐにまた俺を追い抜かしてユウリにも手を伸ばすだろう、俺も早く進まなくては。
「そういえばバウタウンを抜けた先にある第二鉱山でジムリーダーのカブさんがよく特訓しているらしいぜ」
「じゃ、俺もう行くからホップは明日までバウタウンに滞在してるといいよ。さっそく第二鉱山に行ってくる!」
「させるか!明日の朝まではいかせないぞ!」
第二鉱山へ一足先に向かおうとする俺とその俺の行く手を阻むホップ、醜い争いが始まった。
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結局次の日の朝バウタウンを出発した。ホップは朝早くからスタジアムに向かっていった、ホップなら勝ったその足ですぐにでも追いかけてくるだろうから少しでも先に向かって距離を付けておこう。
ターフタウンと比べてこのバウタウンにはずいぶん長いこと滞在していたようにも思える。
初日は夕方から食べ歩きをして、次の日はユウリと食べ歩いして、昨日は午前と午後で食べ歩きをした。この町は恐ろしい、いつかこの町の海産物に取りつかれそうだ。
惜しみながらもバウタウンを抜けると、すぐに第二鉱山は見えてきた。三番道路を経由して着いたガラル鉱山と比べて随分と近かった。それに入ってみてわかった、ガラル鉱山と比べると第二鉱山はまだまだ開拓が途中だということが。各所に明かりが設置されているがガラル鉱山の様に工事の音がそこまで聞こえてこない、まだまだ人の手が入り切っていない静かな洞窟だった。
しばらく第二鉱山を進んでいくと遠くのほうからカンカン!という何か固いもの削る音が聞こえてくる。
聞き覚えのある音だった。恐らく岩盤か何かを掘り進めているのだろう、人力で。岩盤を叩く音は不規則だがどこか熱意を感じさせてくる、音のする方に近づいていくとその音はどんどんと大きくなっていった。
もうすぐそこだ。角の道を曲がって進んでいくと、大きな一枚の岩盤に遮られた行き止まりに突き当たる。思った通り、岩壁をノミとハンマーで叩き続ける少年がいた。
「また『ねがいぼし』探し?精が出るね、ビート」
「おやおや、君のような弱者が二つ目のジムまで攻略するとはさすがのボクにも予想外でしたよ」
第二鉱山で再び出会ったビート、彼は俺を見て小馬鹿にしたような笑みを浮かべると持っていたノミとハンマーを放り出す。そして、カバンからドリルを取り出した。キュィィィイィィン!!!
「待ってくれ、さっきまでノミとハンマー使ってただろ!なんでドリルなんて無粋なものを!」
「うるさいですね、委員長のためにもボクは一刻も早く『ねがいぼし』を集めなければいけないのです。ノミとハンマーなんて旧時代の遺物を使うのはここまで、これからはドリルの時代なんですよ!」
「くそ、邪道に落ちたか!ノミとハンマーの力を見せてやる!」
「ハハハ!人力が電動にかなうわけがないでしょう!」
電動(ドリル)と人力(ノミとハンマー)、負けられない戦いが今始まった!
「ミブリム!」
「ロコン!」
「「『ねがいぼし』の位置を教えろ!!!」」