人生初のポケモンバトルを見事白星で終えたアカツキとメッソン、次に立ちはだかるはハロンの
「アカツキ君、いい勝負だったぜ。俺もついリザードンと参加するところだったよ」
「ありがとうございます!」
「リザァアア!」
「メ…メソォ…」
ホップとのバトルを称賛するダンデ、まだまだ未熟なれどアカツキとメッソンのバトルになにかしら光るところを見つけたようだ。リザードンもメッソンの戦いを称賛するが王者の貫禄を放つリザードンにたじたじのようだ。
「ちょっとアカツキ~、ダンデさ~ん、あたし早くバトルしたいんですけど~」
「おっとすまないユウリちゃん。じゃあ次のバトルにも期待しているよアカツキ君」
期待している、とアカツキの肩強くたたくと審判をしにバトルフィールドを出ていくダンデ。無敵のチャンピオンに褒められたことでアカツキもつい頬が緩んでしまうがなんとか持ち直す。次の相手はユウリ、ホップ以上に油断のならない相手だということを認識しアカツキは気持ちを切り替える。
「いくわよ、サルちゃん!」
「ウッキ!」
ユウリの投げ出したボールからはこざるポケモンのサルノリが現れる。草タイプのサルノリはメッソンとは相性が悪いなと思うが他のポケモンを持ち合わせていないアカツキはメッソンを繰り出す。サルノリは手に持った木の枝で地面を叩いてメッソンを威嚇するが可愛いだけだ。
「サルちゃん可愛い~!『たいあたり』」
「ッ躱せ!」
そんな様子をスマホで撮っていたユウリがさっそく指示をとばす。不意を突かれる形となった『たいあたり』だがなんとかメッソンは躱す。
ふざけているようでふざけていない、ふざけていないようでふざけているユウリには油断も隙も無いと承知していたアカツキだからこそ指示を出せた。これがアカツキと同じバトル初心者だったならスルリと出された指示に反応できず直撃を食らっていただろう。
「あら、案外騙されないわね」
「そりゃあ毎日君の行動を見ていればね、警戒するよ」
「まあそうこなきゃこっちも面白くないわ、サルちゃん『えだづき』」
再びの指示にサルノリは持っていた木の枝を構えると走りだす。サル特有の身軽な移動法にかく乱されたメッソンは躱すことができずにサルノリの『えだづき』がヒットしてしまう。
「メッソン、大丈夫か!」
『えだづき』は水タイプに効果抜群な草タイプの技、そのダメージはホップ戦でくらった『たいあたり』や『ひのこ』の比ではない。メッソンはなんとか立ち上がるがかなりのダメージを食らってしまったようだ。
「今度はこっちからだ、『みずでっぽう』」
メッソンの放った『みずでっぽう』がサルノリを直撃する。効果はいまひとつとはいえ無事では済まない。
ならばとアカツキは連続で『みずでっぽう』を指示する。『たいあたり』や『えだづき』は近くにまで接近しなければ攻撃を当てられない技だということを見抜いたアカツキは遠距離攻撃主体の戦闘に切り替える。立て続けに放たれる水の弾幕にさしものユウリとサルノリもうかつに近づけない。
「やるわねアカツキ!」
「ホップとのバトルで学んだんだ!バトルはタイプの相性だけじゃない、ポケモンのスタイルに合わせた戦闘もあるんだってことを」
メッソンの『みずでっぽう』を躱しながら冷静に分析をするユウリ。こちらには確かに遠距離攻撃のための技はない。しかし、忘れてはいないだろうかサルノリにもほかのポケモンにはない武器が存在することを。
「サルちゃん、枝投げて!」
「ウッキ、キー!」
遠距離技はなくともサルノリには常に持ち歩いている木の枝が存在する。完璧なコントロールで投げられた枝は水の弾幕を貫きその先のメッソンを捉える。予想していなかった遠距離攻撃手段にアカツキもメッソンも驚きを隠せず水の弾幕は途切れてしまう。そんな隙を見逃さずユウリは一気に畳みかけにかかる。
「サルちゃん、『えだづき』」
投げられ、ブーメランのように帰ってきた枝をつかみなおしたサルノリは再びメッソンに接近する。
「く、迎え撃つよ『はたく』」
近接には近接、避けられないと判断したアカツキは『はたく』によるカウンターを狙う。
二つの技がぶつかり合い、相殺される。まさか不利な相性の技に飛び込んでくるとは思わなかったのかサルノリはぶつかった衝撃により枝を手放してしまう。その隙を見逃さなかったメッソンは『はたく』を放ったのとは逆のもう片方の手で『はたく』を繰り出す。顔面に『はたく』の直撃をくらったサルノリはたまらず吹き飛ばされ目を回してしまう。
「サルノリ、戦闘不能。メッソンの勝ち!」
「いいぞメッソン!」
何とか勝ちをもぎ取ったメッソンにアカツキは称賛の声をかける。事実、今の攻防はアカツキの指示に加えて技がぶつかった後にすぐさま自分の意志で『はたく』を使ったメッソンのおかげによるものだ。当然だ、とばかりに胸を張るメッソンだが『えだづき』を受け止めた右腕はまだしびれが取れていない様子だった。
「やるわね、特に今のメッソンには驚かされたわ。でもあたしにはまだ真打が残されてるのよ!行きなさい、ヤミちゃん!」
サルノリをボールに戻すと新しいボールを取り出す。そのモンスターボールではない緑と黒に彩られたダークボールから出てきたのはくらやみポケモンのヤミラミ。いたずらが大好きなヤミラミとユウリが手を組んだ時はハロンタウン中の大人が震えあがったものだ。
「先に動かれたらまずい、『みずでっぽう』」
ヤミラミは特殊なポケモンである、好きに動かれれば敗北は免れないと考えたアカツキは速攻にかかる。しかしユウリはにやりと笑みを浮かべると遅れながらも指示をだした。
「ヤミちゃん、『あやしいひかり』」
「ヤーミー」
メッソンが『みずでっぽう』を放つより早くヤミラミの『あやしいひかり』がメッソンを包み込む。怪しげな光にたまらず目を隠したアカツキが次に目を開いた時、メッソンは目を回しながら自分の頭を地面にぶつけていた。
「どうしたんだ、しっかりするんだ!」
「無駄よ、今のメッソンは混乱状態。自分も敵も分からない状態になってるわ」
「そんな、メッソンの方がはやく技を準備していたのに…」
「あたしのヤミちゃんの特性は『いたずらごころ』、状態を変化させる技を必ず先制させることができるのよ」
わけもわからず自分を自分を傷つける今のメッソンにアカツキの声は届いていない。ヤミラミがその様子を見てケタケタと笑う、まさしくいたずらが成功した時のいたずら小僧そのものだ。
「こうなったらもうおしまいね。ヤミちゃん、『ナイトヘッド』」
ヤミラミの目が赤く輝くとそこから黒い光が放たれる。避けることもかなわずそれに直撃すると小さな爆発が起こる、砂埃が晴れるとメッソンは目を回していた。
「メッソン戦闘不能、ヤミラミの勝ち。よってこの勝負ユウリの勝ち!」
「まあ、当然の結果ね!」
「いや、ユウリも一体負けてるじゃん」
「うるさいわよ、負け犬腰巾着」
「ぐはっ、負け犬腰巾着…」
勝負に勝ったユウリはついでにヤジを飛ばしたホップも戦闘不能に追い込んだ。
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「………それでね、こうやって『きずぐすり』を染み込ませた包帯を巻いておくと普通に浮き掛けるよりも治りがよくなるわ」
「…へぇ、『きずぐすり』って吹きかけるだけじゃないんだね。でもこんなに少量でいいの、もっと使った方が早く良くなるんじゃない?」
「元がスプレータイプの薬なのよ、少量でも良くなるようにできてるの。使いすぎは人間にとってもポケモンにとっても毒よ」
「なるほど」
戦闘不能になったメッソンを抱えたアカツキは治療のためホップの家に戻る。
先ほど相棒のメッソンの傷口に多量の塗り薬を塗り付け人を殺せるような視線を受けたアカツキはおとなしくユウリの治療を見ている、メッソンはまだ染みているのか目に涙を浮かべている。
「はい、これで終わり。ちゃっちゃとよくなりなさい!」
ユウリは包帯を巻いたメッソンの右手をバシンと叩く。バトルではサルノリの攻撃を受け止め、先ほどはパートナーから薬を塗られ染みていた右手は悲鳴を上げメッソン本人も悲鳴を上げてしまう。
「あちゃー泣いちゃった。ほらご主人様、何とかするする」
「ええ、俺が!!?」
泣きわめくメッソンをアカツキに押し付けるとユウリとホップは次のバトルのため庭へと出て行ってしまった。
メッソンをあやしながらアピールタイムの時にも泣いていたなと思いアカツキは苦笑する。バトルでは頼りになる相棒だが意外と泣き虫なのだろうかと思うと愛しさが溢れてくる、これが…愛?いいえギャップ萌えです。
しばらく泣いていたメッソンだがポケモンバトルによる疲労と疲れからアカツキの腕の中で眠ってしまう。メッソンを起こさないようにモンスターボールへ戻すと二人のバトルを見るため庭へと足を進める。
ホップとユウリの戦いは終盤に差し掛かっている。ホップはウールーを失い、ユウリはサルノリが戦闘不能となり既にヒバニーとヤミラミによる一騎打ちが行われている。どちらも体のいたるところに傷がつき大きく息を荒げていてどちらが倒れてもおかしくはない。
「ヤミちゃん、『あやしいひかり』」
「食らうか、もう一度ジャンプして避けろ!」
「きた!そこで跳ぶのは予測済みよ、『かげうち』」
ヤミラミの『あやしいひかり』がヒバニーを襲うが跳躍することで躱す。しかしそれを予測していたユウリによる『かげうち』、突如ヤミラミが消えたかと思うとヒバニーの影の中からヤミラミが襲い掛かる。空中で避けることのできなかったヒバニーは抗うことができず倒れてしまう。
「ヒバニー、戦闘不能。よってこの勝負ユウリの勝ち!」
「アカツキに続いてユウリにも負けてしまったぞ」
「ふふん、当然の結果ね」
「ホップもユウリちゃんもいいバトルだったぞ」
「お疲れ様、最後だけだけど見てたよ。すごかったね」
「今の俺は惨めな負け犬…賞賛は不要だぞ」
「そうよ、負け犬なんて放っておいてあたしを称えなさい!」
「なんだと!」
「なによ!」
グギギギと互いににらみ合うホップとユウリ。本当にこの二人は仲がいいのか悪いのかとアカツキがクスりと笑うと同じように口に笑みを浮かべているダンデと目が合った、たまらず二人は吹き出してしま。庭にはいがみ合う二人と笑いあう二人の声が響き渡るのだった。
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「三人ともナイスファイトだった、どの勝負も思わずリザードンと参加しそうになるくらいだったぜ」
ポケモン達を休憩させているとダンデが全員を集めて褒め称える。実際、二人は経験があるとはいえ一人は完全にポケモンバトル初心者だった。しかし二人との戦いでアカツキはぐんぐんとバトルの腕をあげていった。これは二人も同感だと頷いた。知らぬは本人ばかりである。
「なあアニキ、俺もっともっと強くなりたい。だからポケモンジムに挑ませてくれ!」
「なるほど。ガラル地方最大のイベント『ジムチャレンジ』に参加したい、そういうことだな?」
「そうだ、ジムチャレンジ!俺もアニキみたいにジムチャレンジに参加したいんだ!」
『ジムチャレンジ』、それはガラル地方で一年に一回行われる戦いの祭典。ガラル地方各地に存在するプロジムリーダー八人に勝利し八個のジムバッジを手にしたものだけがチャンピオンと戦える『チャンピオンカップ』への挑戦状を手にすることができるのだ。ガラル地方中を巻き込んだこのお祭りはもちろんアカツキも知っている。しかしこのジムチャレンジは各地のプロジムリーダーなどの実力者や著名人に推薦された一部のトレーナーにしか参加することができない。
「わかった」
「本当か!やったぞ!」
「だが、そのためには条件がある。ユウリちゃんはもう心配いらないと思うがホップとアカツキはもっとポケモンに詳しくなるんだ」
「ポケモンに詳しく…ですか?」
「そうだ、そのためにもまずはポケモン図鑑を手に入れるんだ」
ポケモン図鑑とはポケモンの情報を自動的に手に入れそのポケモンの強さやタイプなどを見ることができるポケモントレーナーの必須アイテムである。当然ポケモンを貰いたてのアカツキとホップはまだ持っていない。
「ユウリちゃんは少し前に博士から図鑑を貰っている、だから参加の資格は十分だ」
「よし、ポケモン図鑑を貰うならポケモン研究所だな!」
「そのノリだホップ、博士にはこちらから伝えておくよ」
「よし、さっそく隣町まで競争だぞアカツキ!」
話を聞き終わると早速家を飛び出そうとするホップの襟首をユウリが掴んで止める。ぐぇ、とカエルがつぶされた時のような声をあげるホップ。
「はい、ちゃんとおばさんに伝えてから行きなさい」
「ぐ、いつも大人に隠れて色々やってる癖に…」
「あたしは敢えて言わないだけよ、悪戯するのを吹聴する馬鹿がどこにいるのよ。ほら、アカツキもおばさんに伝えてきなさい」
「わ、わかった」
こうしてアカツキの長い冒険の第一ページは幕を閉じたのだった。