剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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ゲーム内でわざと負けるためにバイウールーだけ連れていったらジムチャレンジで捕まえた三匹も手持ちに入ってきて意外と面倒だった。おのれ『もらいび』持ちめ…


33、合宿だ!

 

 エンジンジムの洗礼を受け、その圧倒的な力に敗北してしまった俺とポケモン達。

 俺はいま、

 

 

 ふかふかの枕とお布団にくるまわれていた。

 

 

 昨日カブさんとの勝負に負けた俺は応援してくれていたホップやユウリ、マリィに一言も告げずそのまま部屋に閉じこもってしまったらしい。

 らしいというのは実は昨日戦った後の記憶がないのだ。ホップとマリィから心配の連絡が来ていてそれで知ったのだ。

 幸いポケモン達はポケモンセンターに預けて帰っていたようで安心した。俺にもポケモントレーナーとして最低限の意識は残っていたようだ。

 だが、それでも目を瞑れば昨日のバトルの光景が瞼の裏に浮かんでくる。

 

 地に伏したジメレオン、怯えたまま最後を託されたパルスワン、最後はウィンディの『かえんぐるま』によりパルスワンは敗北した。

 

「(なさけない…!!!)」

 

 最後のパルスワンとのバトル、あの時点で俺とパルスワンの勝つ気力は失せていた。

 それをカブさんに見破られたのか交代して出てきたウィンディの『いかく』によりさらに委縮した俺達のバトルはお世辞にも褒められた内容ではなかっただろう。

 力の差を直に感じるポケモンはともかくとして、トレーナーは最後まで勝負を諦めてはいけない。

 自分の代わりに戦ってくれているポケモンの信頼を裏切ってはいけないのだ。

 だが、俺はそんな彼らの信頼を裏切ってしまったのではないか、と思うとポケモン達を迎えに行くことも怖くなってくるのだ。

 

 思考はぐるぐると負のスパイラルに嵌っていき自力での脱出はどんどん困難になっていく。

 何もかもを忘れてこのまままた眠りについてしまいたい。

 そんなことを思って、瞼を少しずつ閉じていく、

 

ピロリン♪

 

「うわっ」

 

 もうあと少しで瞼も意識も閉じきる、といったところでスマホが音を上げる。

 誰からだろうと思い、布団にくるまったままスマホを手に取ってみる。

 

『ホップ』

 

『落ち込んでるかもしれないけど、オレ、勝つからな。』

『試合、見ててくれよ』

 

 そのメールの内容に驚いて飛び起きる。そうだ、今日朝一番にジムチャレンジをするのはホップじゃないか!

 

 飛び起きたその勢いでテレビのリモコンを手に取り、ジムチャレンジの生放送チャンネルに合わせると既にホップはカブさんと戦っていた。

 

『ウールー、『にどげり』だぞ!』

 

『クイタラン、『ほのおのムチ』!』

 

『躱して『とっしん』だ!』

 

 テレビの中のホップはいつもと同じように笑顔だ。

 本気で、バトルを楽しんでいることが画面の向こう側からでも伝わってくるようだった。

 

 テレビの中のホップとポケモンはいきいきとしていてとても楽しそうであった。

 あぶなっかしいところも目立っていたが、俺はホップたちのバトルから目が離せないでいた。

 

『ラビフット、『ダイナックル』だ!』

 

『ブースター、『ダイスチル』!』

 

『なんのまだまだ! 『ダイナックル』!』

 

『『ダイスチル』を無理やり破壊してくるとは!』

『それでこそだ、『ダイバーン』!』

 

 戦っているカブさんの表情も、昨日最後に俺が見た表情よりも躍動しているように見える。

 全力と全力のぶつかり合いがこちらにまで伝わってくるようだ。

 

『ラビフット!』

 

『ブースター!』

 

『『にどげり』!』

 

『『ほのおのキバ』!』

 

 ダイマックスが終わった後にも続く大激戦、互いの最大の一撃がぶつかり合う。二つの大技がぶつかり起こった大爆発で二人と、二人のポケモン達の姿が隠れてしまった。

 その行く末が速く知りたいのだと心臓が騒ぎ立てる。

 そして爆発の煙が晴れた中で立っていたのはラビフットであった。

 

「よおしっ!」

 

 まるで自分のことのように思い、拳を握って立ち上がる。

 いつの間にか落ち込んでいた気持ちが嘘のように晴れやかになっていることに気がついた。

 

「(やっぱりすごいや、ホップは)」

 

 いつも明るく周りを元気にしてくれるホップとポケモン達。思えば俺がハロンタウンに引っ越してきて初めて声を掛けてくれたのもホップだったっけ…

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

『んめぇぇぇ!』

 

『うわ!ごめんなオレのウールーが』

『オレはハロンタウンのホップ!お前は!』

 

『…アカツキ』

 

『アカツキ!かっこいい名前だな!』

『そうだ!こっちの頭のおかしそうなのがユウリで、こいつはオレの相棒のウールーだ!これからよろしくな!』

 

『誰の頭がおかしいですってぇぇ!?』

 

『うわぁぁぁ!!?ユウリ、足はソッチに曲がらないぞ!?』

グギッ

『うぎゃああああ』

 

『…ぷっ』

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「…ぷっ」

 

 初めてあった時のことを思い出して少し笑ってしまった。あの頃から、いいや、

 

「ホップもユウリも、ずっとすごいやつだ」

 

 あんな立派な二人をライバルに持つ俺がこんなところで燻っていていいだろうか?

 

「いいや!俺はいつかあの二人も、ダンデさんだって超えてみせる!そう誓ったよね!」

 

 あの日交わした約束を思い出し、再び心を奮い立たせる。もうこんなところで落ちこんでなんていられない。

 手早く準備を整えホテルを飛び出す。

 

 スタジアムは今日も観光客と応援客で超満員だったが人の波にうまく滑り込みスタジアム内部、中央の選手入場口の近くまで行くと試合を終えたホップがちょうど出てきたところだった。

 

「ホップ!」

 

「アカツキ!」

 

パァン!

 

 俺の振り上げた掌とホップの掌がぶつかり合うと、乾いた音を響かせる。その音はざわざわと人でごった返しているスタジアムの中でもひときわ大きく響いていた。

 

「見てたか?」

 

「うん、見てた」

 

「オレは兄貴の弟だからな。こんなところで立ち止まってはいられないぞ」

 

 そう言っているホップの顔には自信が満ち溢れていた。

 

「そうだね、そして俺はホップのライバルだ」

 

「「だから!!」」

 

「すぐに追いつくよ!」

「待ってるぞ!」

 

 ホップと話したいことは終わった。俺は勝利者インタビューやファンに囲まれだしたホップを背に中央受付に足を急がせた。

 

 

「次のチャレンジは4日後!?」

 

「はい、今のスケジュールですと次の挑戦はそれくらいとなりますね」

 

 受付で再挑戦の手続きをすると、なんと再挑戦には4日もかかるのだという。

 

「な、なんでそんなに…」

 

「アカツキ選手は既に一度挑戦していますからね、現在は後続の選手たちも続々と到着してきていますし初挑戦の方が優先的にされているのです」

 

 どうやら俺やホップやユウリ達はジムチャレンジ全体で見ても前を走っていたようで、現在は俺達に追い付いた後続の選手と俺達よりも先に挑戦し負けた再挑戦組で予定がギュウギュウになっているということらしい。俺も一度負けた立場なのでとやかくはいえない。

 

 

 予約も済ませロビーにある巨大モニターで他のチャレンジャーのバトルを観戦する。

 やはりというべきかカブさんは強い、一度戦ったからこそよりリアルにその強さを感じることができた。

 

「(多分、あれでもまだ全然本気じゃない)」

 

 過去のジムリーダーの公式戦などを見てみてもわかるが、チャレンジャーと戦うときのジムリーダーは本気を出し切っていない。あの背筋が凍るような気迫さえもチャレンジャーが乗り越えられる程度にセーブして出しているものなのだろう。

 現在カブさんを打倒したチャレンジャーはユウリとホップを加えても両手の指で足りるほどだ。今までストレートに勝ってきた挑戦者たちの行く手を阻む大きな壁、それを再認識する。

 

『うおぉぉぉぉ!!!』

 

「ん?」

 

 考え事にふけっていると不意に会場全体が大盛り上がりする。

 顔を上げてモニターを見てみるともこもこヘアーに不敵な笑み、睡眠が足りていなそうな少し濁った眼が目に入った。

 

「…よし、ポケモン達を迎えに行くか」

 

 あのショッキングピンク野郎なら、まあ、見なくても結果は決まっているから見なくてもいいかな。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「ごめん、ごめんなお前達。勝たせてやれなくて…」

 

「メレオォン…」

「コォン…」

「クゥ~ン…」

 

 ポケモンセンターに預けておいた相棒達を抱きしめる。昨日は彼らにみっともないところを見せたし、負けさせてしまった。

 ポケモン達はそんな俺を温かく受け入れてくれた。

 三匹のぬくもりに心癒されているとジョーイさんが他のポケモン達を連れてきてくれた。

 

「はい、アカツキさん。お預かりしたポケモン達はみんな元気になりましたよ」

 

「ありがとうございました。 …すいません、昨日はポケモン達を預けたままにしちゃって」

 

「はい。わかったのなら、次からはこの子たちのことをしっかりと見てあげてくださいね」

 

 ポケモンセンターのジョーイさんの言葉だ、重みが違う。

 アオガラスとウールーも俺のことが心配だったのか飛びついてくる。

 

「お前達にも心配かけたな…って、あれ?おまえは?」

 

「モシモシ!」

 

 五匹の中に何か混ざっていると思っていると昨日のジムミッションで捕まえたヒトモシが手持ちの中に混ざっていた。

 

 ジムミッションで捕まえたポケモンは手持ちに加えるもジムに返却するも自由だった。旅の手持ちがこれ以上パンパンになることを危惧して三匹とも返却したはずなのだが、

 

「お前ついてきてたのか」

 

「モシモッシ!」

 

 ヒトモシは俺の肩に乗っかると頭の炎ごと顔を近づけてくる。

 

「おわ、熱…くない? むしろなんか気持ちいいかも…」

 

 熱すぎないほんのり温かいくらいの炎は俺を夢見心地の気分にさせてくれる。

 

「ア、アカツキさん!吸われてます!ヒトモシに吸われてます!」

 

 ヒトモシに生命エネルギーを吸われ夢見心地な気分となった俺が戻ってきたのはしばらく後となった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 ともあれ、新しくヒトモシが仲間に入ることになった。

 どうやらこいつは悪戯好きらしいので今後とも気を付ける必要があるようだ。

 

「それにしても今日を入れてあと4日か、それまでにカブさんとのバトルに備えて対策を練らなきゃな…」

 

 時間は思っていたよりもできてしまった、これからどうしたものか?

 

「炎タイプの対策は必須として、ロコンとヒトモシに手伝ってもらおうかな」

 

「コォン!」

 

「モシモシ!」

 

 

「そこの君!」

 

 突然の声に振り向くと、ポケモンセンターの入り口から差し込む光をバッグに謎のポーズをとる人影が一人…いや二人…三人?

 

「ジムリーダーのカブさんに無念の内にも敗北し、悔しくはなかったかい!!?」

 

「だ、誰だっ!?」

 

 この声にこの口調!

 

 誰だ!?

 わからない!?

 

 本当に誰だかわからずに困惑していると、謎の三人組の内の一人が話しかけてきた。

 

「ぼくの名前はバーダン! 君と同じジムチャレンジャーの一人さ」

 

 茶色の髪をしっかりセットした好青年っぽいこの人はバーダンというらしい。

 話を聞いてみるとこの人もカブさんに負けたジムチャレンジャーのようで一緒に強化合宿を行わないかという誘いであった。

 

 最初は突然のお誘いに困惑したが一人よりも二人、三人よりも四人で考え特訓した方が効率的であるし今まであまり関わったことのなかった他のチャレンジャーと交流を深めることもいい刺激になると思い引き受けることにした。

 

「そうこなくてはな、アカツキ君。僕らはジムチャレンジで競い合うライバルだけど、今は手を取り壁を乗り越えようじゃないか」

 

「はい。 俺まだまだ子供ですけど、よろしくお願いしますバーダンさん」

 

「敬語はやめてくれ。それに僕らは同じチャレンジャー同士、ライバルであり肩を並べる存在だ。堅いことはぬきにしよう」

 

「…そうか、じゃあよろしくバーダン」

 

 バーダンは何というか理想の年上のような頼りがいを感じる。

 ダンデさんのような豪快さは感じないがすごく好青年という言葉のしっくりくる人だ。

 

「じゃあ自分も自己紹介しますね!」

「アタシはデネボラ、カラテやってます!」

 

 フッ!ハッ!とカラテの正拳突きや蹴りを見せてくれたのは三人組の二人目、ソニアさんよりも濃い目のオレンジ色をした髪をしたデネボラさんという女性だ。頭をバンダナで縛り、カラテをしているというところから活発的な印象を受ける。

 

「よ!久しぶりだなアカツキ!」

 

「なんだ、マタハリか」

 

 デネボラさんと同じオレンジ色の髪をリーゼントの様にまとめているのはマタハリ。

 以前ガラル鉱山の前で立ち往生して野宿をしたときに一緒にカレーを囲んだ青年だ。酔うと面倒くさい。

 

「おいおい、俺の扱い悪くねぇ?」

 

「マタハリはほら、酒癖悪かったから…かっこいい年上の貫禄が…」

 

「手厳しいなぁ!」

 

 ひとまずこの四人で合宿を行う約束をして、昼頃にエンジンシティのワイルドエリア前広場で集合することにした。

 

「あ、さっきの変な口上バーダンに言わせたのマタハリでしょ」

 

「ばれたか」

 

 

 

 

 三人と別れた後俺はホテルに戻って道具を取りに戻る。

 一通りのキャンプ道具をカバンに入れ、残りをフロントに預けていざホテルを出ようとした時ちょうどマリィが帰ってきた。

 

「あ、マリィ。おはよう」

 

「アカツキもう大丈夫?」

 

「うん!ホップの試合観てたら俺も立ち止まっていられなくてさ」

「あ!そうだマリィも俺と一緒に合宿しない?」

 

「合宿?」

 

 カブさんとの再戦に向けて一緒に合宿をしようと誘ってみることにした。

 すると話を聞いたマリィはなぜか顔を赤くした。

 

「え、えっとそれは一緒にワイルドエリアでキャンプしようってこと?」

 

「まあ、そうだね」

 

「ホップやユウリは一緒じゃなくて?」

 

「ホップもユウリもカブさん倒しちゃったからね。マリィも早く二人には追い付きたいでしょ?」

 

「ま、まあそうやけど…」

 

 う~ん、と頭をかしげて考え込んでいるマリィ。まあマリィは年頃の女の子だし、野宿同然のキャンプよりホテルのほうがいいよね。

 無理はしなくてもいいよ?と言うと、マリィが小さな声で恥ずかしそうに言った。

 

「ア、アカツキはマリィと一緒に特訓したか…?」

 

「うん! もちろん!」

 

 マリィと一緒に合宿できると考えると今から楽しくなってくるほどだ。

 俺がうんうん!と強くうなずくとマリィも決心がついたのか首を縦に振ってくれた、やったね!

 

「えっと、じゃあもう出発する?」

 

「皆と集まる約束をしてるのは昼前だから、それまで必要な食材とか買ったりして時間潰しておこっか」

 

「………え? 皆?」

 

「うん。実はこの合宿もバーダン…他のジムチャレンジャーの人に誘われたんだ。って、どうしたのマリィ?」

 

「……う、ううん。なんでも無い、なか」

 

 マリィがあからさまに肩を落としているがどうしかたんだろうか?

 

「(アカツキは最初から二人っきりなんて言うとらんかったやん///恥ずかしか!!!)」

 

「あ、一緒に買い物に行くっていうとなんかデートっぽいよね。なんて」

 

「……」バシバシ

 

「え、なんでマリィ俺の背中叩くのさ」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「なんだその子?もしかしてお前のコレか?隅に置いておけねえなコノコノ」

 

「マタハリのカレーだけマトマのみ100%にするけどいいよね?」

 

「お前…俺を殺す気か?」

 

 時間となりワイルドエリア前広場にマリィと向かうと、小指を立てながらマタハリが突っかかってきた。

 俺だけのことならまだしもマリィも巻き込むなど万死に値する!ほらマリィが顔を赤くして怒ってるじゃん!!!

 絶対に許すな、と心の中のユウリも叫んでいたので奴のカレーだけ真っ赤に染めてやろう。

 

「君がマリィ君だね。アカツキ君から話は聞いているよ、よろしく」

 

「アタシ女一人だけで寂しかったんだー!よろしくねマリィちゃん!」

 

「よろしくお願いします」

 

 年上のデネボラさんにさっそくかわいがられ少し緊張しているマリィ。ユウリといい活発なタイプに好かれやすいのだろうか?

 顔合わせもそこそこにワイルドエリアに足を踏み入れてみれば依然変わらぬ大草原が眼前に広がっている。

 ワイルドエリアは広い草原や雑木林、はたまた朽ちた見張り灯台や砂漠すらも存在する雄大な自然そのものだ。天候も日によってまちまち、大雨に晒されることもあれば次の瞬間には砂嵐に飲まれることもある危険な場所だ。だからこそ、この地で生きるポケモン達は強い。以前の俺では太刀打ちできなかったポケモン、今でも手も足も出ないようなポケモンも生息しているだろう。

 この合宿でそんなポケモンたちにも負けない強さを身に着けてみせると決心する。

 

 そして俺たち一行はエンジンシティを出ると自転車を使ってダイソウゲンを駆け抜ける。旅の途中でもらったロトム自転車が役に立った。

 

 自転車で進んでいようがお構いなしに飛び掛かってくるポケモンたちを相手にして進んでいくと橋にたどり着く。

 

「ここは…」

 

「ここから先はエンジンリバーサイド、ポケモンの強さもここを超えると一気に厳しくなるぞ」

 

「目的地はハシノマ原っぱにあるポケモン預かり屋だよ、マリィちゃん大丈夫?」

 

「あたしは全然平気ですけど、アカツキ…大丈夫?」

 

 以前ドラピオンの群れと戦い、そしてロコンをゲットした場所でもあるここのことを思い出し少し顔をしかめてしまっていたようだ。

 今はあの時とは違い頼れる味方もいる、心配することはないだろう。

 

「よし、じゃあこのままハシノマ原っぱまで一直線だ!」

 

「「「「おお!!!」」」」

 

 

 

「まさか橋の前に陣取っていたカビゴンに自転車を壊されるとは…」

 

「うう…私とルチャブルのカラテが効かないなんて…」

 

「オレのガーディの『かえんほうしゃ』もやすやすと受け止めてたし自信なくすぜ…」

 

 橋を渡ると突然立ち込めてきた霧に視界を奪われ、橋の眼前で眠っていたカビゴンに衝突してしまった。

 寝起きで機嫌の悪かったカビゴンはマリィとバーダンの自転車を破壊するなどかなり大暴れしていた。なんとか近くに生えてある樹を揺らして落としたきのみを囮にして戦闘を離脱したところだ。

 今は俺の後ろにマリィが、マタハリの自転車の後ろにはバーダンが二人乗りをしている状態だ。

 

「…重くない?」

 

「これ電動自転車だから全然、むしろ軽いよ!」

 

「ちぇ、どうせならオレも女の子を乗せたかったぜ」

 

「少年少女の青春だ、我慢してくれ」

 

「若いっていいですね~。まだアタシ18ですけど!」

 

「デネボラに手を出したらソッコー蹴り飛ばされるな…」

 

「はい!アタシのカラテで粉☆砕しますよ」

 

 先ほどふっと発生した霧は瞬く間に消え去り今は穏やかな陽気だ、本当にワイルドエリアの天候の移り変わりは激しいということを実感する。

 

 適度な日差しと気持ちのいい風が吹き抜けいいサイクリング日和だと思っていると

 

「おっと、ポケモン達もご登場だね」

 

 バーダンの言葉に目を細めてみる大橋の下、ハシノマ原っぱに入る寸前を塞ぐポケモン達が現れる。強そうな雰囲気は以前戦ったドラピオン達にも負けず劣らずな手強い雰囲気を醸し出している。

 

 すかさずポケモン図鑑を開いてポケモンのことを調べるがポケモン図鑑が検索結果を表示するよりも前にバーダンが説明をしてくれた。

 

「あれはサイドンとサイホーンの群れだね。彼らは硬い外皮と強靭な角でトラックすら粉砕するよ!」

 

「詳しいなバーダン、まるでサイホーン博士だ」

 

「それはそうさ、何故ならぼくは」

 

 バーダンは腰に付けたスーパーボールを手に取ると勢い良く投げた。

 

「地面タイプ使いのバーダンだからね!」

「頼んだよ、ヤジロン!」

「彼らの突進攻撃は強力だ、まともに受けると一発で倒されてしまうから注意してくれ!」

 

「そういうことなら、ルチャブル!」

 

「おいおい、地面も岩も苦手なんだ。頼んだぜ、ガーディ!」

 

「地面タイプには当然水タイプ、ジメレオン!」

 

「いっちゃうよ、ズルッグ!」

 

 こちらも総力戦だ。

 それぞれがポケモンを出してこの窮地を脱するために戦い始める。

 

「俺とジメレオンが突っ込みます、『みずのはどう』!」

 

 ジメレオンの放った『みずのはどう』がサイホーン達の護りをやすやすと打ち砕き大ダメージを与える。さすが四倍弱点は伊達ではない。

 

「あたしたちも! ズルッグ、『きあいだま』!」

 

「ヤジロン、『サイケこうせん』!」

 

「ルチャブル、『スピードスター』!」

 

「ガーディ、『かえんほうしゃ』!」

 

 サイホーンの群れにそれぞれの遠距離攻撃を用いた一斉攻撃が仕掛けられる。

 だがさすがは岩タイプのポケモン達、その堅牢さはそこいらのポケモン達の堅さを遥かに凌駕しているようで歯牙にもかけない。

 

「く、かたい!」

 

「ドォォン!!」

 

 ジメレオン以外の攻撃では自分たちの防御を破れないと判断したのか、一部のサイホーンにジメレオンを足止めさせると残りのサイホーンを率いたサイドンがこちらに突進をしかけてきた。

 生中な遠距離攻撃では走りだした彼らを止めることはできないようだ。

 

「それならこれだよ、『フェザーダンス』!」

 

 しかしこちらも何度もジムリーダやトレーナーと戦い経験を積んできたジムチャレンジャーとそのポケモンだ。

 デネボラさんのルチャブルが空を舞うと光の羽根が舞い落ちその下にいたサイホーンたちの体に絡みつき始める。

 

「ホオォォン!?」

 

 突然絡みついた光の羽根はサイホーンたちの体から力を奪い取り、強制的に脱力させていく。

 こうなってしまってはいくらサイホーンの突進攻撃が強力でも脅威にはならない。

 

「良いサポートだデネボラ君、ヤジロン、『すなじごく』!」

 

「おう、俺たちもサポートに回るぜ。ガーディ、『ほのおのうず』!」

 

 『フェザーダンス』で強制脱力させられたサイホーン達はヤジロンの『すなじごく』とガーディの『ほのおのうず』で完全に足を止められてしまう。

 

「アカツキ君、マリィ君。そちらのサイドンは任せたよ!」

 

 囲んでいたサイホーンたちを蹴散らしたジメレオンとズルッグは、群れから完全に切り離されたサイドンと相対する。

 群れを統率するサイドンの動きには無駄がなく、かなりの強敵であることがわかる。それでも、

 

「俺たちは強くならなくちゃいけないんだ、『みずのはどう』!」

 

「そうやね! ズルッグ、『きあいだま』!」

 

 二匹の強力な遠距離技がサイドンに殺到する。

 

「ドオォォン!!」

 

 だがキィィィィン!という金鳴り音を響かせたサイドンが攻撃を正面から突破してくる。高速に回転した角はあらゆる妨害を粉砕しジメレオンの体を弾き飛ばした。

 弾き飛ばされたジメレオンは腹部を抑え地面にうずくまってしまう、どうやら大きなダメージとなっってしまったようだ。

 

「『ドリルライナー』だ、しかも今のは急所に当たったぞ。大丈夫かアカツキ!」

 

「ジメレオンならまだ平気さ、そうだよね!」

 

「メレオォォン!」

 

 大きなダメージを食らったがそれでもまだまだいける!とジメレオンは立ち上がる。

 

「いけ、『ふいうち』!」

 

 ジメレオンは攻撃態勢を取ったままのサイドンの懐に瞬時にもぐりこむと黒く染まった腕で強烈なアッパーカットを食らわせる。頭を揺らされたサイドンの大きな体が平衡感覚を失いグラグラと揺れはじめる。

 

「ズルッグ、アタシたちも負けてられんと!」

 

「ズッグゥ!」

 

「今ならアレが使えるけんね、『けたぐり』!」

 

 そこにさらなる追撃を仕掛けるようにバランスを崩されたサイドンの脚をズルッグが蹴り飛ばす。体重が大きければ大きいほどダメージの大きくなる『けたぐり』は今この場面でこれ以上のない必殺技となった。

 頭と脚、二つを攻撃され完全に体勢を崩されたサイドンは地面へと崩れ落ち、大きな顔を地面へとうずくめる。

 

「やったか?」

 

「ドォォォォンン!!」

 

 だが次の瞬間サイドンはその有り余るタフネスを発揮し地面から跳び起きる。完全に沈黙させたと思っていたがまだ足りていなかったのか!

 サイドンが両腕に力を込めると、腕が一回りも大きく巨大化する。

 

「『みずでっぽう』!」

 

 あれを食らったらマズイと思い、ジメレオンは『みずでっぽう』を撃ち出す。

 しかし巨大化した腕は『みずでっぽう』を軽々と受け止める。

 そしてサイドンは大きくなった腕を振りかぶると、勢い良く地面へと叩きつけた。

 

グラグラグラグラ

 

「う、うわぁ!?」

 

 サイドンが放った『アームハンマー』により地面は大きく揺さぶられ、立っていられないほどの揺れを引き起こされる。

 揺れは一帯を揺るがすほどのパワーで、周囲の地形にまで大きな亀裂が走る。

 その亀裂の一部が逃げ遅れたズルッグを挟み込み、動きを封じ込める。

 

「ッ! ズルッグ!」

 

「ドォォン!!」

 

 マリィがズルッグを助けようとするがサイドンの次なる『アームハンマー』が振り上げられる方が速かった。

 『アームハンマー』がズルッグの頭を叩き割ろうとしたその瞬間青い影が二匹の間に割り込みをかける。

 

「ジメレオン!」

 

 割り込んだジメレオンの両腕から大きな水の塊が発射され『アームハンマー』の勢いが殺される。しかしそれでも攻撃を止めるには至らずジメレオンはサイドンの強烈な一撃を真っ向から受け止めることとなった。

 その威力は絶大で受け止めたジメレオンの体は大きく沈み込み、足が地面に陥没する。あまりの威力に膝から崩れ落ち、地面に倒れこみそうになる。

 だが膝は崩れ落ちても、その体と心までは倒れこむことはなかった。

 

「レオォォン!!!」

 

 負けてたまるか!というジメレオンの力強い咆哮。

 するとそれに呼応するかの如くジメレオンの体が青く輝き始める。

 

「これは…『げきりゅう』か!」

 

 ピンチはチャンスと大昔のトレーナーが言った。

 その言葉通りに火事場の馬鹿力を発動させたジメレオンの体から青きエネルギーが迸り始める。マグノリア博士の家の前で戦った時よりももっと強く、そして荒々しい激流のような力がひしひしと伝わってくる。

 

「いけぇ、『みずのはどう』!」

 

「メレオォォン!!」

 

 激流のエネルギーを一転にまとめた『みずのはどう』は今までの『みずのはどう』とは段違いの威力となり、地面を土ごとめくりあげながらサイドンへと迫りその巨体を大きく吹き飛ばす。

 

「アカツキ、決めるよ!」

 

「合わせて、マリィ!」

 

「ズルッグ、『きあいだま』!」

 

「ジメレオン、『みずのはどう』!」

 

 亀裂から抜け出したズルッグとジメレオンのエネルギーは一つのエネルギーとなりサイドンの巨体をも飲み込み空の彼方へ押し出していった。

 

 その後群れのトップをやられたサイホーン達が逃げるように去っていくのをみてからマリィとハイタッチをした。

 

「イエーイ!」

 

「イ、イエーイ!」

 

 サイホーン達を撃退した後は何とも言えない達成感に包まれた。

 以前のスコルピとドラピオン達の群れ以上に強かったはずだがそれをここまで見事に撃退することができたのだ。嬉しくないわけがない。

 

「お前もありがとう、ジメレオン」

 

「レオォン…」

 

 さすがにエネルギーを使い果たしたのかジメレオンはしりもちをついて力なく笑う。

 俺はジメレオンの頭を一撫でしてからボールへと戻した。

 

「オレたちもなんだかんだ強くなれてるな」

 

「うん、ぼくもあの日エンジンスタジアムで開会式を迎えた時からずいぶん強くなってるのを実感するよ」

 

「カラテもポケモンの道もまだまだですが、成長を感じられるのはいいものですね」

 

 三人もあれだけの数のサイホーン相手に一歩も引かないバトルを繰り広げていた。やはり他のジムチャレンジャー達も油断のならない相手達ばかり。だがいまここでは頼もしい限りだ。

 

「それじゃあ、改めて出発しよう!」

 

「「「「おおー!!」」」」

 

 キャンプ予定地のハシノマ原っぱはもう目の前だ。

 いざ漕ぎ出せサイクリング!

 

 

 

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