…ところでダイヤモンド・パールのリメイクは、、、
サイホーンとサイドンの群れを退け勢いづいた俺達はワイルドエリアを突き進む!
と意気込んだ矢先、俺達一行を襲ったのは空を覆うほどのココガラとアオガラスの群れであった。
「こんな数反則だろぉ!?」
ココガラの群れは俺達を見つけた途端襲い掛かってきたのだ。俺達もポケモンを出して抵抗したが50を超えるポケモンの群れには防戦一方であった。
バトルの最中やたらと俺のことをつけ狙ってきたココガラたちを不審に思いながらもバトルを続けている最中パルスワンが痛手を受けてしまう。
急いで『きずぐすり』を取り出そうとカバンを開いた瞬間、
『ガガガァァァァ!!!』
「うわ、なんだこいつら!?」
開いたカバンに向かって我先にと言わんばかりにココガラたちが群がってきた。
「コ、コラ。俺のカバンに群がるなよ!!」
このカバンには『きずぐすり』や『モンスターボール』の他にもきのみやオリジナルのカレースパイスが沢山詰まっているんだ。渡してなるものか!
そして周囲で戦っていたココガラたちも俺のカバンに大量のきのみが積まれているとわかった途端バトルをやめてこちらに群がってくる。
「おや、ポケモン達が離れていきましたね」
「どうやら奴らアカツキのカバンのきのみがお目当てだったみたいだな。ふいー、疲れた疲れた」
「アカツキ君、ここは君のカバンを放棄して逃げよう。きのみなら後でみんなで集めればいいさ」
「嫌だぁ!こいつには今日作るカレーのために厳選したきのみや自慢のスパイスが!」
「アカツキ!我儘言っとらんとここはバーダンの指示に従おうと!」
マリィもカバンを明け渡そう、と言ってくるが絶対に渡してなるものか。
もはやなりふり構わず手持ちのポケモンをすべてバトルに出して、なんとしてでもカバンを守り抜くようにとがむしゃらに指示をとばしていく。
「ジメレオン、『みずのはどう』!
パルスワン、『スパーク』!
ロコン、『やきつくす』!
アオガラス、『ついばむ』!
ウールー、『にどげり』!
ヒトモシ、『ほのおのうず』!」
ポケモン達の大技を繰り出し次々と群がってくるココガラたちを吹き飛ばしていく。
そうして少しの間互いの攻防が拮抗しはじめこのままなら守り切れるか?と思い始めた時それは起こった。
ピカーーー!!!
突如として群れの中腹からまばゆい光が解き放たれたかと思うとその中心でうごめいていた黒い影がどんどんその姿を変化させていく。
人間の半分ほどの大きさだった影はたちまち人間の大きさを上回り、その影は硬質な音を立てながら大きくなった翼を広げてさらにその姿の威容を高めた。
「アーーマーーガァ!!」
「嘘だろ、進化した!?」
ココガラとアオガラスだけかと思われていた群れに突如としてその進化系のアーマーガアが現れた。まさかこんなタイミングで進化が起こるなんて!
アーマーガアに進化した個体はその全身から敵を威圧するオーラを放つ。
『プレッシャー』を受けた俺のポケモン達は委縮してしまい、逆に敵のココガラたちは新たなリーダーの誕生に勢いづき始めてしまった。
「く、くそ。このままじゃ!」
このままではカバンが奪われてしまうと思った俺は一番の俊足の持ち主であるパルスワンにカバンを任せ離脱するように指示を出す。
「パルスワン、このカバンを持って今す…ぐ?」
「クゥゥン……」ブルブル
パルスワンは体を震わせ地面にひれ伏していた。
どうやらアーマーガアの放つ『プレッシャー』をまともに受けてしまい戦意を喪失してしまったようだ。
ウィンディの『いかく』を食らい動けなくなったりとパルスワンは恐怖や畏怖に対して弱いのかもしれない。
それからなんとか他のポケモン達に指示を出して抗戦するも、進化したアーマーガアの強固な鉄の鎧がこちらの攻撃を受け止める。どうやらもうこちらの攻撃が通用しなくなってしまったようだ。
そして奮戦虚しく俺のカバンは奪われてしまった。
「俺のカバンがぁぁぁ!!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして無残な姿となったカバンを残して鳥ポケモン達は帰っていた。
幸い父さんのカバンは随分丈夫に出来ていて、ところどころに傷が入りながらも無事な形で帰ってきた。だが…肝心の中身は…
「これが人間のやることかよぉぉぉ!!」
「落ち着け、あいつらはポケモンだ」
『きずぐすり』や『モンスターボール』などの食べられないもの以外は軒並み持っていかれてしまった。
自慢のカレースパイスの入った瓶や保存していたきのみも食材も何もかもだ。もう許せない、絶対に復讐してやる!
「落ち着きたまえアカツキ君」
「離せー!俺はあいつらを倒してスパイスを取り返さないといけないんだー!」
「おーいこいつを落ち着かせるの手伝ってくれ」
「なんかアカツキ君性格変わった?」
「アカツキはカレーが関わるといつもこうなんです…」
バーダンとマタハリに拘束されながら空に飛んでいったアーマーガア達の背中を恨みがましく睨み付ける。
すると群れの戦闘を飛行していたアーマーガアがこちらをチラリとみて、
「…ガァ」ニヤリ
「ムキー、あいつ今俺のこと見て笑った絶対笑った!」
「ココガラの進化系全般は知恵が働いて賢い、今の僕たちじゃ数も強さもかなわない。諦めよう…」
「それに僕たちにはやるべきことがある、そうだろ?」
その言葉を聞いて暴れていた腕を止める。
俺達には超えるべき高い壁がある。その壁を越えるために合宿を始めたはずだ、それを思い出すんだと訴えかけてくる。
唇をかみしめ、悔しい気持ちをなんとか飲み下す。
「…すいません、落ち着きました」
「うん、それでよし。トレーナーには時として熱くなった時にも冷静でいておける力も必要だ」
ようやく落ち着いたところでバーダンもマタハリも拘束を解いてくれた。
未だスパイスへの未練はあるがこうなっては仕方がないと思おう。俺達にはもっと大切な目標があるのだから。
「心配すんな。きのみ集めなら俺達も手伝ってやるさ」
「修行で山籠もりしたりするからきのみ集めならあたしも負けないよ!」
「マリィたちも手伝う、安心しとーと」
「ありがと…」
その後橋の下に陣取るヨクバリスをしばき倒して沢山のきのみを収穫した。
納得は行かずとも十分な量のきのみを手に入れることができて皆には感謝の気持ちしかない。
「ということで夕飯は俺に任せてくれ」
そんなわけで合宿予定地のポケモン預かり屋に到着したころには既に日は落ち暗くなり始めていた。
ジムチャレンジ参加者ということで預かり屋さんも快くキャンプの設備を貸してくれた。
「隊長! あたし達女子組が手伝うことはありますか!」
「ふむ、では貴公らには食材の下準備をお任せしようと思う」
「イエス、サー!」
「サー!」
「カレーキング、我ら男組が手伝うことはありますか!」
「諸君らにはテントの設営を頼みたい。大変だと思うが労働の後のカレーは格別だ!」
「イエス、サー!」
「サー!」
マタハリとバーダンにはテントの設営を任せて俺達はカレー作りに取り掛かることにした。
マリィは何度かカレー作りを手伝ってきたからか以前よりも手際が良くなってきていた。
それと意外なことにデネボラさんは料理が上手であった。手際よく食材を切っていくところなどは感嘆に値した。
「デネボラさんはよく料理するんですか?」
「うん。体動かしてるとお腹減っちゃうでしょ、だから自然と料理の腕も上がったってわけ」
「なるほど、じゃあお肉の方も任せて大丈夫ですか?」
「お姉さんに任せなさい!」
「アカツキ、ほらマリィの方もちゃんと見といて!」
デネボラさんに対抗するようにマリィも食材を切っていく姿はなんというか、とても微笑ましく映った。
初めてマリィとカレーを作った時のことを思い出してやはりカレーは最高だということを実感する。
「さーて俺も頑張らないとね!」
二人にだけいいところを任せてはいられない。服の袖をまくると俺も本格的にカレー作りに取り掛かることにした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「うめええ!」
「っ!これは美味しいね!」
「ガツガツ。アカツキ君お代わり!」
「うん、相変わらずアカツキのカレーは美味か」
カレーは無事大成功の出来であった。
おそらく俺が用意していたカレーの材料ならばこれ以上のものは出来上がっただろう。
だが、
「このクラボのみはマタハリが、こっちのナナシのみはバーダンが、チーゴのみはデネボラさんが、そしてこのモモンのみはマリィが…」
今日のカレーに使ったきのみの残りを眺めながらそう呟く。
カレー作りをするならだれでも使ったことのある5種類のきのみ。辛味のクラボ、酸味のナナシ、苦味のチーゴ、甘味のモモン、そして俺の採った渋味のカゴ。
どれもお店でもすぐに買えるくらいのありふれたきのみ達。
だけどこれは全員で集めたものだからこそできた味だ。
「…俺、合宿に来てよかったかも」
「なにブツブツ言ってんだ、お前も飲むぞ!」
「いや飲まないから」
「うるせえ飲め!」
「モガガガガ!!?!」
「あ、未成年飲…」
「それ以上いけない。大会に関わるからこのことはみんなの秘密にしておこうか」
「さんせーばい」
酒癖の悪いマタハリに無理矢理酒を呷らr……
なぜかその後の記憶があいまいでよく思い出せない。覚えていることは恥ずかしそうにお代わりをしていたマリィに「マリィは軽いからもうちょっと食べら方がいいぞ、ほうらもっと大盛りにしようぜ!」と言ったらモルペコの『オーラぐるま』をけしかけられたくらいだ、解せぬ。
「はいお水」
「…ありがとうございます」プスプス
謎の酩酊感はデネボラさんに貰ったお水を飲んだことで大分意識がよくなってきた。体のあちこちがモルペコの電撃で焼けて少し香ばしい香りを放っている。
「モルペコの『オーラぐるま』、また威力を上げたみたいです」
「うんうんポケモンの技の成長はやっぱりトレーナ自信が受け止めるのが一番だよね」
「そういうことじゃないんだよなぁ」
焚火に当たりながらぐるりと辺りを見回してみる。
酒に酔ったマタハリがバーダンに絡んでいる。
一度あいつの酒癖の悪さに付き合ったことがあるのでもう絶対絡みたくない、バーダンは苦い顔をしながらこちらをチラチラ見てくるが顔を背けておこう。
「……恨むよ」
バーダンから恨みの篭もった呪詛が聞こえたが聞こえなかった(矛盾)
マリィはモルペコのご飯に付き合ってあげているようだ。モルペコの食べっぷりはいつ見ても気持ちがいい。
そしてこちらの視線に気がついたマリィがこちらの方を向き、目が合うとプイッと顔を背けられてしまった。
「……マタハリ殺〇」
恨みの篭もった呪詛を放った。
しかし酔っ払ったおじさんには効果はいまひとつだった。酔っぱらいは無敵というのはやめてほしい。
そして今隣にはデネボラさんがいる。
マタハリと違って今日あったばかりの人で、バーダンと違って同性ではない。
俺よりも少し年上の女の人というのはあまり関わる機会がなかったので緊張してしまう。
「いやー、カレー美味しかったよアカツキ君。うち(ガラル空手)で料理人やらない?」
「光栄ですけど遠慮しときます、俺が作れるのはカレーだけなんで」
「そっかー、残念。アカツキ君のカレーだったら毎日食べてもいいんだけどなー」
「うっ」
カレー職人にとって一番言われたい言葉ナンバーワン、『君のカレーが毎日でも食べたい』をこうしてまじかで言われると照れてしまう。相手方にそんな意思がなくても言われると恥ずかしいものだ。ちなみに二番と三番は『君のスパイスで僕を染めてほしい』と『一緒にきのみ狩りに行こう』だ、三番はともかく二番はよくわからない。
「アカツキ君はさそんなにカレー作りに夢中なのにどうしてジムチャレンジに参加したの?」
不思議そうに尋ねてくるデネボラさんの言葉に少し記憶を振り返る。
俺はポケモンを貰ってまだそれほど時間が経ったわけではない。もちろん家にいた時からゴンべやスボミーたちとも遊んではいたがやはり俺にとってはジメレオンが最初のポケモンなのだ。
「最初に貰った相棒がやる気だったのと友達と約束したからですかね。『俺達の誰かがチャンピオンになる!』って」
「青春してるね~」
「あ、ちなみにあたしはサイトウちゃんに追い付くためだね」
「サイトウちゃん?」
どこかで聞いたことのある名前に首をかしげる。
出てきそうで出てこない記憶を何とか掘り起こしていく。
「たしかカブさんの次の、四番目のジムリーダーですね」
「そう! サイトウちゃんはねあたしとほとんど変わらないのに『ガラル空手の申し子』なんて呼ばれる天才カラテ美少女で、あの激しいマイナーリーグを勝ち抜いてメジャートレーナーになってるアタシの憧れなんだぁ!若いながらもサイトウちゃんのカラテはとっても鋭くて見てるこっちがほれぼれするくらいでね、それにポケモンバトルでも常に冷静を心がけてるみたいでバトル中はキリっとしてて格好良くてね!それからそれから……!」
おっとなにか地雷のようなものを踏んでしまったようだ。
突然のマシンガントークに最初は圧倒されたが聞いているとそのサイトウという人のことがわかってきた。
『ガラル空手の申し子』、と言われるほどの達人でポケモンバトルでも無類の強さを持つ若き天才。その上鍛錬を怠らず常に上を目指し続ける努力家でもあるというのだ。
「アタシも何度かバトルしたことあるんだけどね、バトルに入ると性格が変わったようにすっごい冷静になるの」
「冷静に?」
「そう。ルーティンっていって格闘家がよく使う手法なんだけどある特定の動作で意識をパチッと切り替えちゃうの。これが本当にすごくてねいつもは礼儀正しくて可愛いんだけどバトルに入るとそれがもう氷タイプかってくらい冷静沈着になってバトルをする姿がねほんとう…」
ポケモンだけでなく自らも体を鍛え、戦いに身を捧げる格闘使い。
ポケモンとトレーナーが互いを鍛えあっていくそのスタイルは向上心を保ち、互いの呼吸をも知り尽くす。ポケモンバトルではお互いの動きが手に取るようなコンビネーションを見せてくるらしい。
「何度か戦ったことあるけど一回も勝てなくてね…でも今回のジムチャレンジでは絶対に勝ち上がって決勝トーナメントで戦ってみせるんだ!」
「俺なんかとは違って立派ですね」
「そんなことないよ、互いに高め合える相手がいるってのは恵まれてるんだよ。アタシみたいに目標があるだけよりずっとね」
目標を作ることは誰にでもできる。だが同じ目標を持ち、互いに競い合えるライバルが得られるのかは自分だけではどうしようもない。
俺はホップにユウリに、マリィにダンデさんにソニアさん。とこれ以上ないくらい恵まれていることを自覚する。
「ところで俺にもそのルーティンってやつはできるんですかね?」
先ほどのルーティンの話を聞いて興味を持った俺が訊ねるとデネボラさんは難しそうに頭をひねる。
「う~ん、ルーティンってのは長期の積み重ねがあって初めてできることだからね。今から身に着けるのは難しいんじゃないかな」
「そうですか…」
残念だ。そういう技術を身につければ昨日のように途中で戦意を喪失したり混乱してしまった時に便利だと思ったんだけどな。
「なんとかカブさんとの戦いで使えればいい戦略になると思ったんですけどね」
「あたしもルーティン身に着けたいなー。せめて気が動転した時とか無理矢理にでも引き戻せたらいいのにね」
「ですねー」
「「はぁ…」」
二人で同時にため息を吐くとなんだかおもしろくなって笑ってしまった。
最初は初対面だし女の人だしで仲良くなれるか心配だったのだが、なんてことはない。俺達にはポケモンという橋掛けがあったのだ、打ち解けれないわけがなかった。
「それにしてもいい案無いかな~」
「無いですかね~」
「ブハハハハ!お前も飲め飲め、もう成人してるから関係ねえだろうが!」
「ああもう我慢の限界だ!」
温厚で誠実なバーダンもついにしびれを切らしたのか悪絡みをするマタハリの口に何かを放り込んだ。
「ン? なんだこれ?」
「よく味わって食べろ」
「ン? ンンンン!? か、辛ええええ!!?」
「あの反応はマトマのみですね。唇が赤く腫れあがって口から火を噴いてるのが目利きのポイントです」
「食べた反応だけで何の実かわかるなんて君も大概だね」
慌てふためくマタハリを見て笑っていると俺の脳裏にひらめきが走る。
「デネボラさん、ちょっと」
「ん?」
「ごにょごにょ」
「ふんふん。いいわねそれ!それなら結構簡単にできそうだし一発で正気に戻れるかも!」
「そうと決まれば明日から試してみましょう。俺が最適なものを選んでみせます!」
カブさんとの戦いに向けて一歩何かをつかめた気がした。
こうして夜はふけっていくのであった。
「マタハリの奴に腫れに効く甘くて冷たいものでも作ってあげましょうかね?」
「う~ん、自業自得だし作らなくてもいいんじゃないw」
「ですねw」
「か、辛ええええ!!?」
マタハリは自業自得なので放っておくことにした。