剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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サマポケRBを始めて一週目で何と堂々のBADEND、やり込みやヒロインが増えた分ちょっと多方に手を出し過ぎましたね。スイカバーを逃しさえしなければ…!


36、掘り出せアナホリダー

 

 吹雪吹き付けるストーンズ平野でニューラの群れを撃退した俺達はハシノマ原っぱにまで帰還すると傷ついたロコン達の手当てをすることとした。

 ポケモン預かり屋はこういった傷ついた野生ポケモンの手当てなどもしているようで道具や人手を貸してくれたのが幸いだった。

 

 驚いたのがマタハリとデネボラさんがこう言ったポケモンの手当てが上手だったということ。

 マタハリは炎タイプ使いなので炎タイプへの接し方がうまく、デネボラさんは本人の格闘経験や怪我への理解が深いということだ。

 そのほかにも預かり屋の人たちの協力もあり、無事ロコン達の負傷の手当を行うことができた。

 

 ロコンに話を聞いてみると彼らはあの嵐の戦いでリーダーたるキュウコンを失った後、他のロコンの群れに出会えず生き延びてきたというのだ。

 生き残った若いものの中でも神通力の扱いに長けたロコン達が中心となり天候の変化などを予知してこれまで生き延びてきたらしい。しかし、今回彼らを襲ったニューラたちは悪タイプを持ち合わせていた。リーダーを失った戦いと同じく神通力がまともに通じない相手にトラウマを発症していたロコン達はただ逃げることしかできず狩りの標的となってしまったといいうのだ。

 

 そして現在、ロコンが群れのロコン達と交渉をしているところである。交渉内容はもちろん合宿への協力の要請である。

 カブさん打倒を掲げる俺達は一匹でも多くの炎タイプとの戦闘経験が必要となる、ロコン達とポケモンバトルができればこれ以上ない特訓となるだろう。

 こちらが出せるものと言えば今回行った傷の手当てや食料を分けるくらいだがさて…

 

「コン」

 

「えっと、『良いけど条件がある?』」

 

 コンコンと言いながら首を縦に振る。

 ロコン達が求めている条件とは、

 

「『熱き炎の力を宿した石』?」

 

「コン」

 

 ロコンが頷く姿を見たあと群れのトップらしいロコンを見てみるとそちらも頷く。

 どこかで聞いたことのある単語だと思い記憶の蓋をこじ開ける。そういえばロコンの記憶を見た時にリーダーが言っていた言葉を思い出した。

 

『あとはそうですね…一番大切なことがあります』

『はい、それは熱き炎の力を宿した石を手に入れることです』

 

 リーダーの言っていた進化に一番必要なもの、かつてリーダーはトレーナーからそれを貰い進化したというのだ。

 ロコン達にはこのワイルドエリアを生き抜くための力がいる。かつてリーダーが指し示した進化への道しるべたる『熱き炎の力を宿した石』こそ今彼らが求めているもの、ということだった。

 

「『熱き炎の力を宿した石』…ねえ?」

 

 駄目だわからん、ポケモンに関してまだお触り程度にしか知識のない俺には全くわからない類の問題であった。

 だが心配することなかれ!

 ここには炎使いを自称する男マタハリが存在する。奴ならきっと答えを導き出してくれるだろう。

 

「『熱き炎の力を宿した石』だ? そりゃ『ほのおのいし』だろ」

 

 さっすがマタハリ頼りになる男だぜ!

 

 マタハリのおかげで彼らの求めているものが判明した。

 『ほのおのいし』、内部に炎のような紋様が入った石で特定のポケモンを進化させることができるらしい。

 

「つってもそうそう手に入るもんじゃねえぞ、俺だってガーディをウィンディに進化させるために石探ししてるんだからな」

 

「え、ガーディも『ほのおのいし』で進化するの?」

 

「ロコンとガーディだけじゃねえぞ。お前が捕まえたヒトモシも進化後のランプラーからシャンデラに進化するためには『やみのいし』が必要になるポケモンだ」

 

 つまり俺はポケモンを進化させるために貴重な品である『ほのおのいし』と『やみのいし』計二つを集めないということなのか。

 

「おこづかいで足りるか…?」

 

「足りねぇ」

 

「だよね~、はぁー」

 

 どうしたものかと肩を落とす。ロコン達の気持ちもわかるが進化に必要となるアイテムなんてものは俺でも貴重だとわかる品物だ。それをホイと出せるような収集家でもなければ資産家でもない1トレーナーには荷の重い代物である。

 

 とりあえず他の皆にも『ほのおのいし』を持っていないか聞いて回ったが返答は芳しくはなかった。だがその中でバーダンから貴重な話を聞くことができた。

 

「このワイルドエリアのどこかに穴掘り兄弟と名乗る穴掘り名人がいるらしい。彼らは穴掘りの過程で手に入れた貴重な品物を時々マーケットなどに下ろしているそうだ」

 

 なんと穴掘り兄弟と自称する穴掘り名人の兄弟が貴重な鉱石をこのワイルドエリアのどこかで手に入れているというのだ。

 そしてなんと偶然なことに預かり屋さんがつい最近穴掘り兄弟と接触したというのだ。

 

「彼ら偶にここにきて物々交換とかしてくれるのよ」

 

「その彼らがどこかにいるとか聞いてますか!」

 

「うーん、ああそういえばこの前来たときは『このハシノマ原っぱに穴掘りがいのある場所を見つけた』とか言ってたわね」

 

 預かり屋さんの証言に間違いがなければこのハシノマ原っぱに穴掘りの達人と『ほのおのいし』があるのかもしれない。

 俺達は顔を見合わせるとロコン達の保護を預かり屋さんに任せてハシノマ原っぱの探索へと乗り出した。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 とはいってもここはワイルドエリア、ハシノマ原っぱという一区画に絞ることができたとはいえそれでも広大な自然の平原だ。

 俺達は各地に別れてハシノマ原っぱ全域を捜索することにした。

 

「アオガラス、どうだった?」

 

「アァ、ガァ」

 

 アオガラスはフルフルと首を振るって見つからない意思を示す。

 飛行タイプであるアオガラスを使って空からの捜索を行っているが結果は芳しくない。

 

「さて、どうしたもんかな」

 

 飛行タイプであるアオガラスに頼っても見つからないということは少なくともこの見晴らしの良いハシノマ原っぱの中央部にはいないということだろうか?

 

「穴掘り…穴掘りか」

 

 穴掘りと聞いて思いつくのはやはり落とし穴だろうか?地面に大きな穴を掘る。

 だがバーダンに聞いたところ穴掘り兄弟が掘るのは穴というよりは壁穴らしい。

 丈夫な場所を掘り進めることが至高の趣味で鉱石などの採掘はそのついでだというのだ。

 

「となれば探すとしたら岩石地帯だな」

 

 ハシノマ原っぱにある岩石地帯に足を運び探してみることにした。

 

 現在このハシノマ原っぱの天気は『日照り』、ハシノマ原っぱ自体が遮蔽物の少ない広大な開けた草原なので日差しがダイレクトに降り注ぎ俺の体力をじわじわと削っていく。

 俺は水分を補給しながら岩場で捜索を続けていく。

 

 この竪穴は…違う、キテルグマの巣だ。グズグズしていられないすぐ逃げるとし…(ズシン)…あっ…死……

 

 こちらの洞窟は…違う、オンバーンの巣穴だ。天井一面に張り付いているオンバーンとオンバットは軽くトラウマ物の光景だ。

 

 隣のこちらは…違う、ただのミイラ化した修行僧だ。

 

「ロコン、そっちはどうだ?」

 

「コ~ン…」

 

 日差しの中でも元気に動けるロコンとも手分けをしているがなかなか見つからない。

 

 そしてさすがに疲れがピークに達してきたので途中で見つけた洞窟の中で休むことにした。

 洞窟内は日差しが届かずヒンヤリとしていた。今までの疲れと誰も見ていないのをいいことに地面に全身を押し当てる。

 

「あ”~”、床冷て~、気持ちいいー」

 

 声が反響し洞窟の中に響き渡るが誰の耳にも届かない。

 謎の解放感を感じた俺は一人でカラオケを始めてしまった。

 

「ポケモンマスターに~、なりたいな~、ならなくちゃ~、絶対なってやるー!」

 

 イェイ、一曲歌うとなんだかとてもスッキリした。俺の住んでいるハロンタウンやブラッシータウンにはカラオケなんてないものだからついつい興が乗ってしまった。

 まあ誰かに聞かれているわけでもないしいいか!

 

「続きまして、『OK』!」

 

「コン!」

 

「いいぞいいぞ!」

 

「ヒューヒュー!歌え歌え!」

 

「OK!!!……ぁぁぁああ!!?」

 

 気持ちよく二曲目の歌い出しを始めた途端横から謎の合いの手を受けた。

 謎の合いの手に一時思考が真っ白に染まる。そして復帰したと同時に恥ずかしさが俺の思考を埋め尽くしていった。

 

「し、死にたい。誰か、誰でもいいから俺を殺してくれ…」

 

「おいおい兄ちゃん歌聞かれたくらいで死ぬとか大げさだぜ」

 

「そうそう、死ぬなんて穴倉の中以外じゃごめんだぜ!」

 

「ここ穴倉の中(洞窟)だけどな!」

 

「「ガッハッハッハ!!」」

 

 突然現れ俺の歌を聞いたどころか突然笑いだし始めた二人の男たち。

 大きなバックパックを背中にかるった大柄な二人組、ガッチリとした体格はガラル鉱山などで見た工事現場の人たちにも負けず劣らずの肉体だ。

 だがそんなことはどうでもいい。大事なのはもっと別のところだ。

 

「というかあなたたち誰ですか!」

 

「オレ達は穴掘り兄弟ってもんだぜ!」

 

「貴方達が!?」

 

 驚きの連続でもう頭がおかしくなりそうだ……

 

 

 

 

 

 

「ふん、なるほど。『ほのおのいし』を求めてこの穴掘り兄弟を訪ねてきたということだな」

 

「コン!」

 

「はいどうか『ほのおのいし』を譲ってくれないでしょうか?」

 

 俺はロコンを腕の中に抱きながら穴掘り兄弟の二人に事情を説明していく。

 ロコン達のため、俺達の特訓のため『ほのおのいし』を譲ってくれないかと彼らに話してみると意外というかすんなりと話は通った。通ったのだが、

 

「譲ってやりたいのは山々だが生憎『ほのおのいし』は手持ちに無くてな…」

 

「石だの鉱石だのは手に入るも入らないも地質次第なのだ」

 

 穴掘り兄弟が言うにはこの辺りはまだ掘り始めたばかりで未だ『ほのおのいし』が出てきた事は無いのだという。

 せっかく穴掘りのスペシャリストを見つけることができたというのに残念な限りだと肩を落とす。

 ここまできて無いということは現状『ほのおのいし』が手に入る可能性はなくなったということだ。

 

 このままではロコン達の協力を得られない。せっかく出会えたロコンの仲間達の力になれないのは残念でならない。

 なんとかならないものか、と頭をひねらせていると今まで腕の中で話を聞いていたロコンが突然飛び出した。

 

 飛び出したロコンの体から青白い光を出るとその光が洞窟の全域に向かって解き放たれていく。

 ロコンの操る神通力の青白い光が洞窟の壁や地面を駆け巡っていく様子はまるで幻想的なプラネタリウムを見ているようで穴掘り兄弟も俺もその光景に見惚れてしまう。

 

 ロコンを中心とした光の波が広がっていくと洞窟のある地点で美しかった波の軌道がおかしくなる。

 その変化を感じ取ったロコンは俺に向かって『ここを掘れ』と訴えてくる。

 俺はロコンの言われるがままにビートから借りたままだったノミとハンマーを取り出すとその地点をコツコツと削っていく。

 地質はガラル鉱山よりも幾分か柔らかく、すいすいと進んでいく。会心の一撃が決まったかと思うと壁の一面が崩れて零れ落ちる。すると壁の中に明らかに地層とは別物の色と形をした物が埋まっていた。

 その石のようなものを壊さないよう優しい手つきで引きぬくと、とてもひんやりとした綺麗な青色の石であった。

 石は今岩盤から掘り起こしたばかりだというのに水滴が付着し瑞々しい姿をしていた。

 

「こいつは驚いた、そりゃあ『みずのいし』じゃねえか」

 

「これが『みずのいし』?」

 

 手の中にある青い石を見つめ直す。それは普通の石とは違い何かのエネルギーのようなものを感じる。

 石から目を離しロコンの方を見てみるとロコンは自慢げに胸を張る。

 今まで何度かビートのねがいぼし採掘に協力していたがそのたびに彼はビートのミブリムと張り合っていた。もしかすると『ねがいぼし』以外のものを探知できるようになったのかもしれない。

 

「すごいぞロコン、これならもしかして『ほのおのいし』も見つかるかも!」

 

「コォン!」

 

 再びロコンが神通力の力を洞窟中にかけ巡らせていく。

 だが光は水の波紋のように広がっていくが今回は何の反応も出さない。ロコンも手ごたえのなさに首を傾げもう一度とばかりに光をかけ巡らせるがやはりなにも見つけられない。これはどういったことだろう。

 すると今まで興味深そうにその光景を見ていた穴掘り兄弟の兄が「足りない」と言ってきた。

 

「足りない?」

 

「おそらくまだこのロコンの力が足りてないんじゃねえのか。浅い場所に埋まっている石の力は探知できても深くまで埋まってる石の力までは感じ取ることができてないんだと思うぜ」

 

 なるほどと思う。ロコンは強くなったと言ってもまだまだ成長途中、神通力の深淵にまでは至れていないということなんだろう。

 穴掘り兄弟(兄)の言葉にロコンはしっぽを垂らして落ち込んでしまう。

 俺が慌ててロコンを励まそうとするとそれより早く穴掘り兄弟(弟)がロコンの頭をガシガシと掴んで撫で始める。

 

「すげえじゃねえか、ちっこいの。オレは今まで穴掘りしてきたけどこんな方法で採掘してるやつは初めて見たぜ!」

 

「ああ、俺達も見落としていたのかもしれんな。ポケモンと人間が力をあわせればできない事は無いという当たり前のことを忘れていたな」

 

 そう言った穴掘り兄弟の二人はバックパックからおもむろにモンスターボールを取り出すとそれを放り投げた。

 

「ドーリュゥゥズ!!」

 

「ダグダグダグゥ!!!」

 

 頭と腕に大きな鋼鉄の鎧を纏ったポケモンと地面から大きな頭が三つ飛び出したポケモン。

 鋼鉄の鎧を身に着けたポケモンは地底ポケモンのドリュウズ、三つの頭が飛び出しているポケモンはモグラポケモンのダグトリオというらしい。

 

 二匹のポケモンはボールから出た途端に兄弟に向かって飛びついた。

 ドリュウズはその自慢の鋼鉄の爪を兄弟(兄)に突き刺し、ダグトリオは地面から飛び出した頭で兄弟(弟)に空中胴上げを食らわせていた。

 

「ええ!?」

 

「うわははは、すまんすまんお前達。穴掘りは人間だけでやるもんだと思ってからろくにボールから出してなかったな!」

 

「ガハハハハ、お前の鋼鉄の腕は相変わらずのようで安心したぞ」

 

 兄弟はまるでそれを気にしていないかのように受け止めているがポケモン達の顔はどう見てもガチだ。

 ドリュウズの爪はどう見てもさっき見たニューラの『メタルクロー』同様の技のはずだ。それでお腹をザクザク刺されているのになぜ笑っていられるんだ兄弟(兄)。

 ダグトリオの空中胴上げも傍から見ればポケモンからのスキンシップにも見える。だがダグトリオの地面から飛び出て胴上げをするスピードはあきらかにスキンシップの域を越えている。スマホで調べてみた『シゲル君の豆知識』とかいうサイトによればダグトリオの進化前のディグダの穴を出入りするスピードは299792.458kmらしい、激しさが伝わるだろうか?

 

 ということでしばらくポケモン達からの過激なスキンシップが続いたがポケモン達も気が晴れたのか終わった。

 兄弟たちは顔色一つ変えず俺達に協力を申し出てくれた。

 

「普段なら石やら鉱石なんぞのためだけに穴を掘るなんてしねぇが」

 

「だが小僧の熱意とロコンのすげえ力に免じてオレ達の力を貸してやるぜ!」

 

「ッ! ありがとうございます!!」

 

 穴掘り兄弟の二人が力を貸してくれることになった!

 

 ほのぐらい洞窟内をロコンの神通力の力が照らし青白く幻想的に輝く。

 その中で俺と穴掘り兄弟の二人、そして二人の手持ちポケモン達が音を反響させながら掘削を続けていく。

 

「ハハハ、いいねぇ! こういった光であふれる洞窟内で穴掘りするってのはよォ!」

 

「ああ、いつもとは一味違ってテンション上がるぜ!」

 

「あそうだ知ってますか、カロス地方なんてところには一面が鏡で出来た洞窟なんてものがあるんですって!」

 

「なんだとそんなのテンション上がってくるじゃねえか!」

 

「カロス地方に行ってみるのもありかもなぁ!」

 

「「「アハハハハハ!!!」」」

 

 ハンマーとノミを片手に壁を崩していく。

 ロコンの神通力レーダーを常時展開し少しでも変化のあった場所をひたすら掘り進めていくとなんだかテンションがハイになってきたような気がする。いや違う、この二人のテンションに釣られているだけだ。

 

 ノミを壁に突き立て、ハンマーには渾身の力を込めて叩きつける。

 その一連の動作を重ねるたびに俺の体には反動となって衝撃が帰ってくる。その衝撃は俺の体に染み入り一連の動作を洗練させていく。

 そして俺の経験値が一定のラインを越えたのだろう。

 それは俺の内から湧き上がり、技となって解放された。

 

「『破砕撃』!」

 

 左手に持ったノミを壁に打ち据え、溢れ出した力をすべて込めた右手のハンマーで叩きつける。ハンマーのエネルギーはノミを伝って壁に伝播され、一面に破壊を巻き起こした。

 一連の動作が終わると壁には今までとは比べ物にならない破壊痕と全身の疲労が残った。

 俺の体には謎の倦怠感とともに今の技についての疑問が駆け巡る。

 

「今のはいったい…」

 

「なにって、技だよ」

 

「技?」

 

「ポケモンだって技覚えるだろ。人間が技を覚えても不思議じゃねえさ」

 

 そういった兄弟(弟)が愛用している巨大なツルハシを頭の上へと掲げると、腕に力を込めながら力こぶと共に体から白いオーラが噴き出していく。

 蒸気のようなオーラを吹き出しながら兄弟(弟)は「見てろ…」と低い声を上げながら集中力を増していき、

 

「オラァ、『パワースマッシュ』!」

 

 噴き出したオーラとともにすべての力が込められたツルハシが壁へと叩きつけられる。

ドガァン!!!

 その衝撃は洞窟中を揺らすほどの一撃。しかし無駄な破壊を周囲へは伝播させず、圧倒的なパワーは叩きつけた壁を破壊し瓦礫を砂にするだけで留めていた。

 

「ふう、とまあこんなもんだ」

 

「いやいやいや、人間が出していい威力じゃないですよ!?」

 

 兄弟(弟)の放った一撃と比べれば俺の使った『破砕撃』など子供のような技だ。

 余計な破壊はまき散らさずただ叩きつけた場所のみを灰燼と化すその技は力だけではない、恐るべき器用さを用いる技であった。

 

「オレは力とスタミナ自慢の弟って謳い文句だからな。これくらいはできるさ」

 

 へへへっ、と鼻の下を掻きながら自慢する姿はまるで子供の用だった。

 

「それに兄貴も同じようなことができるぜ」

 

「お前みたいな馬鹿力俺にはねえよ…」

 

 「だがまあ…」と言った兄弟(兄)は持ち場の壁をコツコツと叩き始めた、そしてある地点で止まるとツルハシを構える。

 

「……『ストライク』」

 

 兄弟(兄)のツルハシは目にも止まらぬ速さで壁に叩きつけられ、遅れて両者のぶつかった音が洞窟内に響き渡る。大きな音ではない。しかし妙に存在感のあるひと振りであった。

 だが今の一撃がなんなのだ…?と俺が疑問符を浮かべる。その直後壁一面に余す所がない程のひび割れが入り込み、一瞬にして壁はガラガラと音を立てて崩れ去った。破壊の規模だけでいえば兄弟(弟)の作った穴よりも大きいほどだ。

 何の前触れもなかった。あるとすれば先ほどの一回だけ振り下ろされたツルハシくらいだ。まさか、今の一撃だけで?

 

「まあこんなもんだ。弟みたいな馬鹿力はねえが力は技で収束できる。スピードと技術の兄とは俺のことよ」

「お、良いもん見っけたぜ」

 

 何でもないように語る兄弟(兄)は壁を壊したがれきの中から何かを取り上げる。

 それは内に紫電の紋様を携えた明らかに普通とは違う石。

 

「『かみなりのいし』だな、ほれ目当てのもんじゃねえがやるよ」

 

 それを何とも思わないようにぽいっと軽い感じでこちらに投げかけてきた。

 

「ええ!?貴重な品ですよね!?」

 

「まあ『ほのおのいし』と大差ねえよ」

 

「いやそれ貴重な品ぁ!」

 

 色々と驚きの連続なのだが一つだけわかったことがある。

 この人たちは確かに穴を掘るということに関しては一流だということが。ポケモンバトルでいうならそれこそジムリーダーのような存在とすら言えるほどの存在感を放っている。

 俺は『かみなりのいし』を持ったまま腰を抜かす。この人達は穴を掘るという行為において俺の何歩も何十歩も先を行っている。

 

「おいおい技一回くらい使っただけでへこたれてんじゃねえぞ小僧」

 

「お前の技には進化と成長の可能性がいくらでもある」

「どうだ、俺達と一緒に穴掘りの道…アナホリダーになってみる気は無いか?」

 

 兄弟(兄)の言葉に俺は、、、、

 

 

 

 

 

 

「…かっこ悪いしいいです」

 

 …アナホリダーは流石にダサすぎるよね。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「兄ぃ!これは!?」

 

「そいつは『つきのいし』だちげえ!」

 

「じゃあ弟ぉ!これは!?」

 

「それは『トリのかせき』だ!見て分かれ!」

 

 俺が技という穴掘りスキルを覚えてからも採掘は進んでいった。

 技を覚えたことで格段に穴掘りのスピードが上がったが、兄弟からは「あくまで技は穴掘りの方法の一つ、頼り切っちゃいけねえ」と言われたので地道にノミとハンマーでの採掘を進めていく。

 その過程でロコンのレーダーに出る反応も数を増えていき壁からは結構な頻度での採掘物が顔を見せるようになってきた。

 

「これは!?」

 

「『たいようのいし』だ、近いけど別物だ!」

 

「ならこれは!?」

 

「だからそれは『リュウのかせき』だっつってんだろ!少しは自分で考えて質問しろ!」

 

 次々と発掘物は出てくるがなかなかお目当ての『ほのおのいし』はでてこない。

 さらに追い打ちをかけるようにして洞窟内を照らしていたロコンの神通力の力が弱まり始めたのだ。無理もない、もう二時間近く神通力を展開し続けているのだ。ロコンと言えど限界が来る。

 何度かロコンに休憩を取ろうと声を掛けているんだがロコンは頑なに休まなかった。群れの仲間のためなんだろうな。

 

 しかしそれでももう流石にロコンの体力も限界であった。

 レーダーの反応は弱まり洞窟内もほの暗くなってきた。いつの間にか洞窟の外も暗くなってきているしこれくらいが限界か…

 

「ロコン、もう帰ろう」

 

「コ…コン…」

 

 力を振り絞るロコンだがもはや寿命の来た電球の様に途切れ途切れになった神通力が危険な状態であることを伝えてくる。

 これまではロコンの頑張りに報いるために採掘に集中していたがこれ以上はトレーナーの責務だ。

 俺が腰のホルダーからロコンのボールを取り出し戻そうとする。その瞬間、

 

「ッ! コン!コン!」

 

 息も絶え絶えだったロコンが何かに反応してほえる。

 その声に反応してロコンが声をあげる方向を見てみるとレーダーに反応が出ていた。

 

「アカツキ!ロコンはもう限界だぜ」

 

「レーダーが反応を出しているうちに素早く採掘を終わらせてやれ!」

 

「ッ、うおおぉぉぉ!」

 

 ロコンのモンスターボールを腰に戻し、置いていたノミとハンマーを拾い上げる。

 反応の出ている場所まで少し距離がある!なんとかロコンの神通力がもっているうちに採掘しなれば!

 

 しかし採掘でくたくたになった体は中々動いてくれない。もはや一秒も無駄にしてはいられない状況だというのに!

 その悔しさがトリガーとなったのか。体はその場所から動かないというのに俺の腕にだけ活力がみなぎり始める。 

 

「ッ! アカツキ、そいつをぶちかましてやれ!」

 

 兄弟(兄)の言葉に俺の体が勝手に動き始める。

 ノミを空中に放り投げるとくるくると回転をしながら落下を始める。その回転には目もくれず俺は目標となる地点にのみ集中を注ぐ。

 右手に持つハンマーへと力は収束していき、落ちてきたノミと目標地点が一直線上に繋がったその瞬間ハンマーを、

 

「『飛・破砕撃』!」

 

 叩きつけた!

 ハンマーの全エネルギーを叩きつけられたノミは爆発したかのように打ち出され、反応のあった壁を寸分の狂い無く打ち抜き破壊した。

 

 そして打ち抜いたと同時にロコンの神通力が途切れその場に倒れ伏せる。

 ひと先ずロコンの容態を見るために確認は後回しだ!

 

 幸いロコンは力の使い過ぎで倒れただけで大事はなかったようで俺もホッとした。

 とりあえず水ときのみをゆっくりと摂らせ、ボールに戻す。

 

 一区切りがついたところでキャンプ用のランプを点け先ほど掘った場所を穴掘り兄弟と確認する。

 俺の技は結構強力だったようでがれきが多く退けるのが大変であった。

 

「ダグダグダグ!」

 

「ナイスだダグトリオ」

 

 ダグトリオとドリュウズの力も借りてがれきを撤去し、その中からダグトリオが何かを運んできた。

 それはがれきの中にありながらランプの光をよく受けてギラギラと輝いている。まるでロコンの出す炎のように強く暖かな輝きだ。

  

「これが…」

 

「ああ立派な『ほのおのいし』だぜこいつは」

 

 拾い上げた掌の中で暖かな光とほのかな熱を帯びた石をぎゅっと握りしめる。

 汚れた軍手の中でもその輝きと熱は失われる事は無かった。

 

 

 

 




ちょっと待ってくれ………
私が書いていたこの作品はいったい何だ?ポケモンかこれは?
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