剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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プリコネのガチャを200連回して何の成果もあげられませんでした!!
おのれ諸悪の根源、草野優衣!

…ぐすん、いいもん。
作者には妹を自称するちゃんリノがいるから…


37、リベンジマッチ vs空の覇者

 

 ロコンの群れに協力を仰ぐための『ほのおのいし』を手に入れるため穴掘り兄弟に協力を求めた俺達。

 彼らと穴掘りで意気投合した俺は目当ての『ほのおのいし』を手に入れたことでロコン達の協力を取り付けることに成功したのだった。

 穴掘り兄弟に別れを告げキャンプ地に戻った俺はロコン達に『ほのおのいし』を見せる。ロコン達も『ほのおのいし』に秘められた力を感じ取ったのか快く協力を申し出てくれた。

 

 次の日は朝からロコン達との対炎タイプ特訓を行っている。ポケモン達には戦闘経験値を蓄えさせていく。特訓のおかげか炎タイプの攻撃への回避能力が段々と上がってきているようでなによりだ。

 

 そして俺達トレーナーはというと炎タイプの特徴についての意見を出し合いカブさん対策の準備を整えていた。

 

「──つうわけで殆どの炎タイプは体の中に炎袋なりの炎の発生器官が備わっている。あいつらの炎だって無限じゃあない、『かえんほうしゃ』だの『やきつくす』だのは連発はできないから次の発動には必ずインターバルができる」

 

「マタハリ先生!そういう時はどうすればよいですか!」

 

「炎タイプには地面タイプや岩タイプや水タイプの攻撃を当てる。完璧な作戦だろ?」

 

「さすがっすねェ~!カブさんに通用するのか、という点に目を瞑ればよォ!」

 

「仕方ねえだろ!相手は炎タイプ使いのエキスパートだぞ!オレみたいなひよっこ炎タイプ使いの思いつくことなんてとっくに対処してるっつうの!」

 

「そこでなんとか知識を振り絞るのが大人の役目でしょお!?」

 

「うるせえ!カレー作るしか能のないガキは黙ってろ!」

 

「なんだとこの野郎!」

 

 ギャーギャーギャーギャー

 

「うるさい!」ガツン!

 

「ギャン!」

 

「ヒデブ!」

 

 デネボラさん怒りの鉄槌で強制的に黙らされてしまった。もとはといえば対策会議前に「オレに任せな(若干渋めの声)」とか言ってた割に凡庸な意見しか出さないマタハリが悪いと思う(責任転嫁)

 

 

「ふー、あぁそうだアカツキ君。例のブツの目途は立った?」

 

「いつつ、例のブツ?」

 

 拳骨を食らったマタハリが疑問の声を上げる。

 それに対して俺はもちろんだ、と返答する。戦闘をしているときも穴掘り兄弟を探していた時にもきっちりと材料を見つけ、作り出しておいたのだ。

 

「ジャーーン!これです!」

 

「これって…!」

 

 俺はカバンから小さな赤いカプセルを取り出す。手のひらの中央にちょこんとあるそれは普通の飲むカプセルと比べてもかなり小さい。

 

「はい!これこそ俺のスパイス技術を詰め込んだ集大成!名付けて『激辛君!』です!」

 

「『激辛君!』!!名前からしてもう期待大ね!」

 

 デネボラさんの考えた作戦。それは「強い刺激でどんな状況からでも復帰をする方法」だ。

 ポケモンバトルをしていれば誰でも一度は想定外の事態に直面して頭が真っ白になってしまうことがあるだろう。そこで激辛のものを食べたりすることで無理やり正気に戻してしまおうという作戦だ。ちなみにこの作戦はマトマのみを食べて辛さで狂った後酔いが醒めたマタハリから構想を得ている。

 

「なんとこの『激辛君!』は奥歯に仕込めるほどの大きさのカプセルにあらゆる辛味きのみのスパイスを入れています!」

 

「奥歯に仕込めるほどの大きさなのに!?」

 

「はい!それにただ辛いだけじゃありません、辛すぎて使ったときに我を失うような馬鹿な構造はしていません。そんなやつはマトマのみを食ったマタハリくらいです」

 

「おい」

 

「そうね、マタハリみたいに口が腫れて火を吐いたりしたらバトルどころじゃないもんね」

 

「ですがこの『激辛君!』は辛さでバトルの続行不可能になるギリギリのラインを見極めて配合した特殊スパイスです。ぐ、ぐへへ…大元のクラボのみ粉末とフィラのみ粉末を3対4の配合で混ぜてからマトマのみ粉末を軽く炒ったものを加えてオッカのみの皮をすりつぶして入れています。カレーに入れるだけでもワンランクもツーランクもアップさせられるこれは悪魔のスパイスですよ」

 

「アカツキ君!」

 

「デネボラさん!」

 

「イエーイ!」バチン

 

「イエー!いってえ!?」

 

 デネボラさんの腰の入ったハイタッチで体ごと右腕が吹き飛ぶ。うぐぉ、まだビリビリしてやがる…

 だけど喜んでもらえたなら幸いだ。

 

「あいつらには着いていけねえ…バーダンにマリィ、お前達はどうだ」

 

「ぼくはこいつを使おうと思っているよ」

 

 マタハリの質問にバーダンはモンスターボールから一体のポケモンを取り出す。

 ボールから出てきたのはワイルドエリアで彼が捕まえていたスナヘビというポケモンだ。

 

「こいつは攻撃されると辺りに『すなあらし』を起こせるんだ。これをうまく使えばダイマックスポケモンで天候を変化されても有利な天候にすぐに変えることができる…と思う」

 

 なるほど、天候を味方につけたポケモンは普段の何倍もの力を発揮する。ワイルドエリアのポケモンとの戦いで嫌というほど体験したことだ。

 

「あたしはモルペコを中心にして、昨日捕まえたこの子を使おうかと思うとる」

 

 マリィは膝に乗せた一匹のポケモンを撫でながらそう言う。

 気持ちよさそうに猫なで声を上げるそのポケモンはまさしく猫、しょうわるポケモンのチョロネコだ。

 

 昨日俺がキャンプ地に帰った後に現れ、俺の持つ光り物(『ほのおのいし』)を狙ってきたのがこのチョロネコだ。

 チョロネコは傷ついたふりをして茂みから現れ、俺達に接触してきた。そしてチョロネコに『ちょうはつ』された野生のポケモン達が次いで現れると俺達にまで襲い掛かってきたのだ。そしてそのどさくさに紛れて俺の『ほのおのいし』を盗もうとしたが、マリィに撃退されゲットされたのだ。

 

 マリィ曰く、

 

『悪タイプのポケモンの扱いには慣れ取るけん、演技がバレバレやったと』

 

 と胸を張って言っていた。

 捕まってからはマリィの指示に従っているところをみると改心したとみるべきなのだろう。

 

「そうなるとオレ達も新しいポケモン捕まえてみるか?」

 

「俺はもう手持ちが6匹になってるから難しいかな」

 

 今もロコン達と戦闘を繰り返している相棒たちをのぞいてみる。 

 このワイルドエリアで何度も戦闘を重ねた彼らはその強さを一層増している。特にジメレオンなどは『日照り』に晒される中で何度も水技を使ったおかげか水技の切れがかなり向上したと見える。ウールーは、なんだか毛の量が増えた?

 

「ンメェェェ!!!」

 

「うわ!?」

 

 ロコン達の放つ『おにび』が増毛したウールーの羊毛に当たると増えた毛に一斉に燃え移る。ウールーの『もふもふ』は物理攻撃のダメージを少なくする代わりに炎タイプの技にはめっぽう弱いのだ。

 このままではウールーが丸焼きになってしまうとジメレオンに火消しを指示しようとした時、炎に包まれたウールーの体が光り輝きだす。

 

「これは…!」

 

「進化の光だ!」

 

 炎の中で光り輝くウールーの体が音を上げながら変化を始める。

 ウールーの結られていたもみあげのような羊毛が頭の周りをぐるりと囲むとボンと膨らむ、頭にちょこんと生えていた角が天高く伸び存在感を一気に増す、もこもことした体毛から少し出るだけであった四本の脚が長くなり蹄が地に跡を残す。そして今までもかなりの存在感を放っていた全身の羊毛が一層の存在感を増し膨らむ。

 

「ンン、メェェェ!!」

 

 より逞しさを増した声が空気を震わせると同時に全身の炎を弾き飛ばしついにその姿をあらわにする。

 そのポケモンの名前は、

 

「バイ、ウールー…?」

 

「ンンメェェェ!!」

 

 炎をものともせずに振り払ったその姿はハロンタウンでも何度か見かけたことのあるウールーの進化系ポケモン、バイウールーだ。 

 ウールーの頃より長くなった頭の角とその少し下から生えた新しい短めの角、そしてどんな攻撃も受け付けないとばかりに存在感を増した羊毛がその証拠だ。

 

 進化したバイウールーにたまらず抱き着くとかつてのウールーを越える弾力と暖かさを備えた極上の羊毛が包み込む。

 

「お前、進化したんだな!」

 

「ンンメェ!」

 

 進化したバイウールーの体をもふもふしているとバイウールーの新しく生えた角がみぞおちに直撃したり、より凶悪になった蹄の下敷きになったりしたが、バイウールーと進化の喜びを分かち合うことができて嬉しかった。

 

 

 

「ハハハハハ、こっちだぞーバイウールー」

 

「ンメメェエ!!」

 

「…浮かれとるばい」

 

「まあいいんじゃねえの自分のポケモンが進化したんだし」

 

「バイウールーのあの羊毛、いったいどれだけのカラテに耐えうるのか…」ゴキゴキ

 

「ちゃんと承諾は得るんだぞ…」

 

 進化したバイウールーはパワーも耐久力も軒並みに上昇し防御においてはさらなる磨きがかかっていた。

 …かかっていたのだが、

 

「コン!」

 

「ンンメメェ!!」

 

 進化したことがよほどうれしかったのだろう。進化による気分の高揚と合わさって奴は攻撃を避けなくなってしまった。

 どんな攻撃も受け止めてやる、という気概は素晴らしいのだが攻撃を避けることがなくなり高確率で蒸し焼きになっている。進化したからと言って炎タイプの技が平気になったわけじゃないんだから避けてくれよ…

 

「このままじゃあカブさんとのバトルには出せないかな…」

 

 カブさんのポケモンの炎はロコン達の炎の優に上をいく。さすがに今のままのバイウールーは出せないな。

 ジメレオンは出す予定だがさて後の二匹はどうしたものか。

 

「うーん、パルスワンはなぁ…」

 

 戦力として魅力的なのはやはりパルスワンだ。

 高いスピードと特性の『がんじょうあご』によりパーティでも有数の攻撃力を持つ一匹だ。

 

「だけど…」

 

 チラっと戦闘中のパルスワンを見る。

 ロコンを相手にその実力を発揮しているパルスワンだが二日前、野生のアーマーガアの『プレッシャー』を前にして動けなくなったことが記憶に新しい。

 それに加えてカブさんのウィンディと戦った時にも『いかく』で必要以上に怯えていた節が見える。

 

「臆病な性格なのかな?」

 

 性格に関しては仕方がない、そんなところもパルスワンの良いところなんだから。

 だが戦闘の際に恐怖で動けなくなるというのは致命的だ。パルスワンの持ち味である俊足が使えなければさすがに彼を出すことはできない。

 恐怖を克服することができればカブさんのウィンディにだって負けない力を持っているはずなのに…!

 

 なので俺は決めた。

 

「よしパルスワン!」

 

「ウォン?」

 

「お前にはこれからアーマーガアを倒してきてもらう」

 

「ウォン!?」

 

 恐怖とは乗り越えるもの。

 覚悟とは恐怖を乗り越えた先にあるもの。

 そして目に見えている恐怖があるというのなら、越えてしまえばいいのだ。

 

「一昨日俺達を襲ってきたあのクソカラスを退治する、いいな!?」

 

「ウ、ワオン!」

 

 そうこれはパルスワンのためだ。決してカバンの中身を取られた復讐などではないのだ。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 ロコン達との訓練に区切りをつけた俺達はロコンと皆に留守番を頼みアーマーガアを倒すための作戦会議をしている。

 幸いこちらには進化前のアオガラスがいる、あいつを放っているので捜索にはそれほどの時間はかからないだろう。

 

「いいかパルスワン、何事も根性だ。相手が怖かろうと根性で乗り切るんだ!」

 

「ウウ~ウ!」フルフル

 

 強い相手からの威嚇行為にめっぽう弱いらしいパルスワンに根性理論を教えてみるが首を振って無理無理!と言っている。

 まあ根性でどうにかなるのなら無理はないんだよなぁ。

 

 俺は腰を下ろしてパルスワンと目線をあわせる。

 いつもは身長差から中々合わない目線をあわせてみるとパルスワンは不安そうな目をしている。

 アーマーガアと戦うことが怖いのか?と聞いてみればビクッと体を震わせた後小さく頭を縦に振った。

 

「まあ怖いよな…」

 

 あのアーマーガアの『プレッシャー』という特性はそこに居るだけで相対するポケモンに重圧をかけてしまう恐ろしい特性だ。進化したばかりだというのにあの貫禄と強さはさすがガラル地方の空の覇者というだけあるだろう。

 だが「怖さ」というだけならあのカブさんのウィンディの『いかく』のほうが恐ろしかった。

 睨まれたパルスワンがボールに戻っても恐怖し続けたくらいだ。あの『いかく』を乗り越えるためにはこれくらいの荒療治が必要となるはずだ。

 

「…よしパルスワン」

 

「ワォン…」

 

「アーマーガアが見つかったら、まず俺があいつと戦うわ」

 

「ワァ!?」

 

 パルスワンが必要以上にあいつを怖がっているのは結局のところ俺達がアーマーガアを倒せなかったからだ。恐怖心なんかも同じだ、『不可能』という言葉で恐怖は大きく膨らんでいく。だから俺が証明してみせる。ただの人間がアーマーガアの『プレッシャー』に耐えられるということを証明してやればパルスワンだって自分もできる、とそう思うはずさ。

 俺の一方的な物言いにポカンとしていたパルスワンだが理解すると「やめろ!」と抗議の声を上げてくる。

 だが抗議は受け付けない、パルスワンをボールに戻してしまったからだ。

 ボールに入れてもカクカクとボールが暴れているところを見ると本当に心配してくれているんだなと想い笑みが浮かぶ。

 それでも俺はアーマーガアの前に立って見せる。パルスワン、お前ならきっとその姿を見て乗り越えてくれるはずだと信じて。

 

 その後少ししてから捜索に出していたアオガラスが帰ってきた。

 出ていく前までは外に出ていたパルスワンがいないことに首をかしげていたアオガラスだが俺が早く案内してくれというとそのままアーマーガアの下に案内してくれた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 ハシノマ原っぱとエンジンリバーサイドを区切る境界線、以前サイドンの群れと戦った大橋の下に着く。

 アオガラスの言葉によれば大橋の下にアーマーガア達の巣があり、今その巣にはアーマーガアだけしかいないというのだ。

 こんな絶好の機会を逃すまい!、と意気込んでいると、

 

「奴らの巣は……」

 

 見つけた。大橋の柱を中心に木や土などを材料に作られた巨大な巣。

 それは以前までならココガラとアオガラス、群れを収納して余りある大きさと強度を保っていたのだろう。それが群れのトップたるアーマーガアが生まれ耐久オーバーとなったのだ。

 きっとアーマーガア以外が出払っているのも巣を増築するための材料を集めに行っている最中ということなのだろう。

 

 俺は意を決してカバンからボールを取り出し大橋の柱の中腹、十数メートルは上空に存在する巣の中でぐうすか眠っているアーマーガアに向かってモンスターボールを投げつけた。

 

ポン☆

 

「……ガァ?」

 

 モンスターボールは見事にアーマーガアに当たり吸い込むことなく弾かれて地面に落下する。しかし気持ちのいい天気の下昼寝をしていたアーマーガアの気を立たせるには十分な挑発行為であった。

 ぐるぐると周りを見渡し空に外敵がいないことを確かめた奴は巣から顔を覗かせて下を見る。その目にはこちらを睨むいつぞや目にした人間の小僧が映っているところだろう。

 

 アーマーガアはにやりと笑うとその翼を広げ巣から飛び立つ。以前あった時よりも優雅に飛び立つその姿はまさしく覇者と言える貫禄だった。

 そして俺がいる地面にわざわざ降りてきたのも強者の余裕、というものなのだろう。

 

「…ガア?」

 

 翼を畳み大きな二本の脚で地面に立つアーマーガアはこちらに問いかけてきた、「…なぜこのようなことを?」と。

 …そんなものは、決まっている。

 

「お前の馬鹿面見に来ただけだよバーカ!」

 

 そういって俺は手に持っていたもう一つの赤いものを投げつけた。

 アーマーガアの顔にベチャ、という音を立ててぶつかる赤い果実。以前マッギョにも投げつけた辛さ弾ける地獄の果実。マトマのみだ。

 

「!? ガアァァァ!!!」

 

 潰れたマトマのみから火を吐くほどの激辛である果汁が流れ出る。

 口、そして目に突然の劇物を食らったアーマーガアがあまりの刺激に優雅な体裁を保てなくなっている。

 ※よい子のみんなは絶対にマネしちゃいけないよ。人間なら失明確定、ポケモンだからセーフだよ。

 

「ははは、いい気味だ!俺のカレースパイスを台無しにした報いだ!」

 

 目を封じられたアーマーガアの聴覚に首謀犯である人間の汚い罵声が入り込んでいく。

 頭のいいアーマーガアだ、きっとこんな罵倒の言葉すら理解しているはずだ。

 

「ッッ、ガアアァァ!!!」

 

 誇り高く知能とプライドが高いというアーマーガア、彼らがこんなことをされて激昂しないはずがない。

 翼を広げ憤怒の形相でこちら睨む鳥ポケモンに向かって手をクイクイと動かして挑発する。

 

「来いよ害鳥、駆除してやる」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「俺の渾身のストレート、食らええ!」

 

 二発目のマトマのみはあっさりと防がれた。鋼鉄の羽根は潰れたきのみの汁を通すほどやわではなかった。そしてマトマのみのストックは尽きた。

 

「…やっべ」

 

「ガアアアア!」

 

 侮辱するような俺の攻撃に怒り狂ったアーマーガアは鋼鉄の翼を広げると、さらにそこに力を込めることで強度を倍増させる。

 その状態で手加減を排したであろう『はがねのつばさ』が振り下ろされる。

 

「うおおお!?」

 

 俺はその場から飛びのきゴロゴロと転がりながら回避する。なんとか回避に成功しホッと一息をついてから、直後今自分がいた場所を見てみる。

 

「うっわ、地面えぐれてる…」

 

 『はがねのつばさ』により破壊された地面がそこにはあった。まるでブルドーザーで地面を掘り起こした後のようだ。

 「即死」という言葉が脳をよぎるが頭を振って振り払う。

 だがそんな隙を許さないアーマーガアは、こちらにめがけて再び鋼鉄の翼を振り下ろす。

 

「ッどわああ!?」

 

 二度目の攻撃が俺のすぐ目の前の地面に突き刺さり、地面ごと俺も吹き飛ばされる。

 空中で態勢を保つなんて言う高等技術ができるはずもなく俺は尻から落ちて尻を強打する。めっちゃくちゃ痛いっ!自分の体重が乗っただけだというのになんて衝撃だ。

 なんとか土を払いながら立ち上がる。今アーマーガアは最初のマトマのみのおかげで片方の視界を失っている、それで遠近感覚がおぼつかず俺の目の前の地面に『はがねのつばさ』が当たったのだろう。

 

 アーマーガアも今の一撃が当たらなかったことで不満げに顔をしかめる。

 だがすぐに思考を切り替えると次は翼を振り下ろすのではなくガンガンと叩き始めた。

 鋼鉄の翼同士がぶつかり合い不快な『きんぞくおん』が巻き散らかされる。あまりの音に俺は顔を俯け両手で耳を塞ぐ。

 

 空気を震わせるほどの大音量が消えハッとした時にはもう遅い。顔を上げたときにはアーマーガアの巨体がすぐ目の前に迫っていた。

 

 ゴウッ!

 咄嗟に交差させた腕の上からとてつもない衝撃が体に伝えられる。トラックの衝突にも匹敵するその攻撃を受けた俺は轢かれた小型ポケモンのように吹き飛ばされ何度も地面にぶつかり転がる。

 

 ………っあ。

 痛てえええええ!!!!? 

 アーマーガアの『はがねのつばさ』をもろに食らってしまった。全身が砕けそうなほどの痛みが体を駆け巡り、『はがねのつばさ』を受け止めた両腕は骨から悲鳴を上げている。ポケモンの攻撃を食らってまともな方がおかしいというものだ。

 それでも全く力の入らない手で地面の土を握り締める。なんとか膝を曲げ、力の入らない右腕を支えにして立ち上がろうと…

 

 

 バサバサと降りてきたアーマーガアの目に射抜かれる。

 

 

 アーマーガアの体から発せられる圧倒的威圧感。

 明確な敵意を持って向けられるその覇者の『プレッシャー』に立ち上がろうと動かした腕、脚、体の全てが動きを止める。

 蛇に睨まれた蛙、そんな言葉の通り向けられた視線の圧だけで俺の体は自由を放棄してしまった。パクパクと動く口が酸素を取り込めず急激に息苦しさが増していく。

 獲物の恐怖に彩られた表情を見てアーマーガアは冷静さと自尊心を取り戻していた。

 見下す視線は傲岸不遜なプライドの高さを物語っている。それでも体は言うことを聞いてはくれない。

 

「ガァァァ!」

 

 大きな翼を羽ばたかせて再び空に飛び立つアーマーガア、一方の俺はその風圧の煽りを受けてまたゴロゴロと吹き飛ばされる。

 ゴロンと大の字に倒れた俺の目に太陽を背に空に浮かぶアーマーガアの姿が入る。アーマーガアは獲物の首を確実に仕留めるためか、顔をこちらに向けたまま足に付いた鋼鉄の爪を構えていた。

 

 アーマーガアが爪をこちらに向けたまま一気に急降下する、鋼鉄の爪は一切の狂い無くこちらの首を狙っている。

 それが恐怖で目を瞑った俺が最後に見た光景だった。

 

 

 

 

「ワオオオオン!!!」

 

 力強い遠吠えとともにボールから雷を纏った勇ましきポケモンが姿を現す。

 『スパーク』を身にまとったパルスワンの体当たりがアーマーガアに直撃する。突然現れたパルスワンにアーマーガアも対応できず鳩尾に強力な『スパーク』を食らい吹き飛ばされる。

 

「グルルル、ワオォォン!」

 

 アーマーガアの巨体を押し退けたパルスワンが威嚇の遠吠えとともに地面に降り立つ。

 今まで見たこともないような敵意を向け「グルグル」と今にも飛び掛かりそうな形相だ。

 

「……よしよし」

 

「グルゥ……くぅーん」

 

 パルスワンの顎を撫でてみればすぐにいつものパルスワンに戻る。それでも視線をアーマーガアから外していない。

 

「…ごめん、助かった。危ないことしたね」

 

「…ワぉン」

 

 パルスワンの鳴き声とともに腰のボールが一斉に揺れる。まるで今まで静観していただけ、というように抗議の圧力が伝わってくる。

 

「ごめんごめん!謝るから許して」

 

 ボールからの抗議は止まらず腰がガクガクと揺さぶられる。まあ確かに危ないことをしたという自覚があるので反論できない…

 

 そうしていると音を立ててアーマーガアが立ち上がってくる。効果抜群の技をまともに食らったというのにタフなやつだ。

 

「パルスワン、いけるか?」

 

「グルル、ワオン!」

 

 やっとのこと、ついにポケモンバトルの火ぶたが切って落とされた。

 

「ガアアァ!」

 

 アーマーガアが小手調べとばかりに翼を全開まで広げ最大限体を大きく見せる。視覚的に大きく見せることで敵への威圧を行う方法だ、マッスグマなどの四足歩行ポケモンもよくやるという手法である。

 体を大きく見せたアーマーガアのプレッシャーはさきほどにも増して大きな圧力を感じる。先ほどの首を狙った攻撃を思い出してゴクリとつばを飲み込んでしまう。だが、

 

「ワオオン!!」

 

 『いかく』に怯え、『プレッシャー』に屈していたはずのパルスワンは大きな遠吠えを上げて自分を奮い立たせている。そんな姿を見てしまえば自分だけが怯えてなどいられない!

 

「パルスワン、『スパーク』!」

 

「ワオン!」

 

 自己を奮い立てたパルスワンが地を駆ける。電撃を纏ったパルスワンはグングンとスピードを上げてアーマーガアに接敵する。

 

「ガア!」

 

 だがアーマーガアとてそう何度も食らうわけもない。広げた翼で羽ばたいて空に――

 

ガッシャァァァァン!!!

 

「ワオオン!??」

 

 羽ばたきではなかった。鋼鉄の翼を打ち合わせとんでもなく大きく不快な『きんぞくおん』を巻き散らかす。

 音による妨害を防ぐことができずパルスワンはたまらず『スパーク』をやめてその場に立ち止まってしまう。

 

「止まっちゃだめだ!」

 

 俺も片耳を防ぎながら指示をとばすが『きんぞくおん』に弾かれパルスワンの耳元には届かない。

 そして『きんぞくおん』をピタリとやめたアーマーガアは今度こそ翼を使って飛翔する。大きく広げた『はがねのつばさ』が真正面からパルスワンの体を打ち抜いた。

 

「ッ!ワオン!」

 

「ガアッ!?」

 

 『はがねのつばさ』を食らい大ダメージを食らったパルスワンが負けじと翼に歯を立てしがみつく。

 まさか相手が鋼鉄の翼に噛みつくとは思いもよらずアーマーガアも困惑している。『がんじょうあご』のあるパルスワンだからこその芸当だろう。

 

「チャンスだ『ほっぺすりすり』!」

 

 鋼鉄の翼に歯を立てたパルスワンの瞳がきらりと光り、全力でその頬を翼にこすりつける。頬から流された微弱な電流は金属の装甲を容易くすり抜け『まひ』状態にしてしまう。

 『まひ』した体から自由が奪われアーマーガアの体が硬直する、翼がこわばり墜落を始めると目に見えて慌て始めたのがわかる。

 

「『スパーク』!」

 

 もはや張り付く必要はないとアーマーガアの体を足蹴にして一足早く地面に降り立つパルスワン。

 轟音を立てながら地面に墜落したアーマーガアの泣きっ面に渾身の『スパーク』が炸裂する。

 

「ガガッァ!」

「ガアアアア!」

 

 むくりと起き上がったアーマーガアにはもはや余裕の表情は浮かんでいなかった。憤怒の形相を浮かべ目の前の敵を倒すために全力を出す気になったようだ。

 だがこれは好機、墜落のダメージと『スパーク』のダメージにより盤石だと思われたアーマーガアの防御に陰りが見え始めたのだ。

 

 大きな翼を広げて『はがねのつばさ』を使ってくる。その速度は今まで本気でなかったことを証明するほどでパルスワンは回避も防御も間に合わず弾き飛ばされる。

 

「パルスワン!」

 

 あまりの速さに俺の対応も遅れる。

 弾き飛んだパルスワンが大ダメージによって地面をはいつくばっていると好機とばかりに攻め立ててきた。先ほど以上に力を乗せた『はがねのつばさ』伏したパルスワンに襲い掛かってくる。

 

「パルスワン、『ほえる』!」

 

「グルル、『ワォォオン』!!」

 

 だが近くまで接近してきたアーマーガアめがけて至近距離からの『ほえる』が炸裂する。

 叩きこまれた音の爆弾は如何に鋼の鎧でも防げない。平衡感覚を狂わされたアーマーガアの動きが、『はがねのつばさ』の狙いが悪くなるのがわかった。

 

「『かみつく』!」

 

 『はがねのつばさ』を回避しカウンターで『かみつく』を叩きこむ。広げた翼の付け根、鉄の鎧が薄い部分を『がんじょうあご』から放たれた『かみつく』が粉砕する。脆い部分への攻撃が見事にクリティカルヒットしアーマーガアは声にならない悲鳴を上げる。

 体に残る『まひ』の痺れ、『かみつく』によって破壊された翼の付け根が積み重なり目に見えて奴の飛行能力が落ちる。

 

 アーマーガアは体に残る不愉快な痺れや頭を揺らす残響音を叩きだすために『きんぞくおん』を鳴らそうと翼を打ち付ける。

 

ガシャン…

「ガ、ガアア……」

 

 だが、アーマーガアは一度大きな音を立てただけで動きを止めてしまう。

 翼の付け根に負わされた『かみつく』によるダメージが『きんぞくおん』によって伝わる衝撃に耐えられなかったのだ。痛みで翼をだらんと下げ大きな隙を晒す。

 今のアーマーガアは隙だらけだ!

 

「とどめだ、『スパーク』!」

 

 俺が指示を出すより速く地面を蹴って走り出していた。

 三度目の『スパーク』、パルスワンの纏った一層激しい雷撃がアーマーガアの鋼鉄の鎧を貫通し内部までを焦がしていく。効果抜群の技三回目だ、これで倒れてくれ!

 

 

「いけええええ!!」

 

 爆発音とともにアーマーガアの巨体がはじき飛ばされる。シュウシュウという音とともに出ている煙がアーマーガアの体がどれだけ電撃に焼かれたのか想像に難しくはない。

 

「やった…か?」

 

 どれだけ待ってもアーマーガアは顔を上げない。パルスワンもしっぽを立てて警戒をしていたが立ち上がってこないアーマーガアのことを戦闘不能と判断しくるりとこちらを向く。

 

「ワン!!」

 

 最初の威圧以降も垂れ流されていた『プレッシャー』を意にも返さず戦っていたパルスワン。なんとかウィンディの『いかく』対策は完了できたのかと思うとタイマンのことを思い出して俺も気が抜けそうになる。

 

 瞬間、「騙し討ち」という言葉が脳をよぎる。

 アーマーガア系列のポケモンは知能が高いとされ得意とする技は主に飛行、鋼、そして悪タイプの技だ。アオガラスも『つけあがる』を愛用している。

 まさかこれすらも敵の作戦、と急いで倒れこんだままのアーマーガアを凝視する。

 

 だがこれで本当に打ち止め。アーマーガアは間違いなく戦闘不能であった、だって目回してるもん。

 

 

「ワンワン!」

 

「どわぁ!?」

 

 そんな俺の心配を無視してパルスワンが飛びついてくる。

 やめ…やめろぉ!?顔、顔がべたべたにあ~~~・・・

 

 

 

「あ!大変なのアカツ…」

 

「ただいま~」

 

「ワン!」

 

「どどどどうしたとその怪我!?は、早く治療を…!」

 

「大丈夫大丈夫、ちょっとトラックに轢かれたくらいの怪我だから。ホップなら唾つけとけば治る、って」

 

「治らんばい!」

 

 キャンプ地に戻るとマリィに手当てをしてもらった。幸い腕も別に折れていないようで助かった。

 

「ってことでさ、もう敵に回したアーマーガアは怖いのなんのって」

 

「男としては一度は夢に見るよな、生身でポケモン退治」

 

「ああ、ぼくも小さいときは木の棒持って挑んだものだよ」

 

「アタシは結構現在進行形でポケモンと組み手とかしてますよ?」

 

「お前達武術家はサイキッカーどもと同じで人間カテゴリーには入ってねえよ」

 

「なんですと!『からてチョップ』!」

 

「頭が真っ二つに割れるほどの衝撃! ぼ、暴力反た…ガク」

 

 というわけで俺にも一つ武勇伝ができたぞ。街に帰ったらホップやユウリにも自慢してやろう。

 

「あれ?ところでロコン達は?」

 

 今日一日の出来事を話すのに夢中になっていて気がつかなかった。

 ふと周りを見てみてもロコン達の姿がない。というか俺のロコンもいないではないか。

 

「もしかして機嫌損ねて出て行っちゃった?」

 

 野生のポケモン達だ、そういうこともあるのかと思っているとフルフルと首を振るう皆。

 

「えっとな…アカツキ、今から話すことなんだが…気を確かに持ってくれ」

 

 いつもふざけた雰囲気のマタハリが神妙な顔つきになる。その事実に本日二度目のつばを飲み込む。

 

 

 

「ロコン達がよ…………お前のロコンを連れてどっか行っちまった」

 

「よし戦争だ」

 

 こちらは既にやる気満々だ、元仲間だろうが関係あるか、うちのロコンを誘拐した罪は重いと知れ。

 

 

 




人間がポケモンに勝てるわけないだろ!
伝説ポケモンと体で語り合ったホップやハブネークをステゴロで倒して捕まえたキャンディー・ムサリーナさんを基準にしてはいけない。
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