やることが…やることが、、、多い!!
今回のお話事前に書き上げていたんですけど直前になってなんか釈然としなくなり部分部分を書き直したので整合性がちゃんと取れているのか心配になってきました…不安だからゲームして忘れよう。
『ちょ、ちょっとみんな離してよ!?ボクをどこに連れていくつもりなの!?』
ボクはロコン。ワイルドエリア生まれのワイルドエリア育ち、ひょんなことから生存競争に負けた僕の群れは散り散りになってしまい、今の主人であるアカツキさんのポケモンとなりました。
アカツキさんが参加しているジムチャレンジに参加しメキメキと強さを伸ばしていった僕ですがメラメラと燃えるような強さを持つジムリーダーの人とその人の従えるキュウコンに負けてしまい今は修行の真っ最中。久しぶりのワイルドエリア、久しぶりに再会できた群れの仲間達、僕は嬉しかった!
『だっていうのにこの仕打ちは何なのさ~~!』
だっていうのにアカツキさんがパルスワンの奴を特訓に連れて行った後しばらくしてから僕はかつての仲間に羽交い絞めにされて連れ去られていた。
自慢のしっぽは他のしっぽと結られてしまい使うことができない。なんとか神通力の力で脱出しようとしても総勢十体の神通力とかち合えばまず勝機はない。なんとか彼らから理由を聞き出そうとしているのだが、話も聞いてくれない。
『…もうどうにでもなれ』
かつての仲間達だ。酷いことなんかはしないはずだ。僕は抵抗することを諦めて彼らのなすがままにされるした。
そしてキャンプ地から大分離れた場所で仲間たちは腰を落ち着けた。これで話を聞くことができるだろう。
『それで、どうしてこんなことしたの?』
それを聞くと仲間たちは顔を背けビクっと肩を震わせる。
『どうしよう、本当に連れてきちゃったね~』
『連れてきちゃったもんはしょうがないでしょ!こうなったら説得あるのみよ!』
『でも聞いてくれるかぁ?こいつはもうあのトレーナーのポケモンなんだぜ』
『何とかするしかないわよ!私たちだって死活問題なんだから!』
こそこそと話し合う三匹。無理矢理連れ去られたあげくこうも話を無視されるとさすがの僕も腹が立ってくる。
なんとか抜け出してやろうかと思ったのたが現在周りには僕よりも小さな子たちがボクをとり囲んでいる。
こそこそ話をしている三匹が僕と同年代のいわゆる幼馴染みのような連中で、この子たちは僕よりも年下の子たちだ。リーダーが居なくなってしまい辛い思いをしてきたであろう子たちにはさすがに手荒なことはできない。
それに昨日吹雪の中でニューラ達を撃退してからというもの年下の子たちの視線が痛い、なんだかチラチラと見られているのだ。
『えっと、君達?』
『は、はい!なんでしょうか先輩!』
先輩…先輩かあ。いい響きだなぁ。
リーダーが居たころにはまだリーダーや他の年上達にも甘えていた僕たちだけど、今は幼馴染の彼らが群れを率いているんだ。その群れのトップと同い年ということだから僕の呼び方が『先輩』ということなのだろう。
とりあえずこそこそ話でこちらの話を聞く余裕のなさそうな彼らではなくこの後輩たちから話を聞いてみることにした。
『どうして俺が連れてこられたのか分かる?』
『えーっと、新リーダーが『連れていく!』って言ったからです』
『えぇ…』
駄目だ、どうやらこの子たちはまともな情報を持っていないようだ。
まだこそこそ話は続いていそうだしさてどうしたものか…
『あ、あの先輩!』
年下のロコンの一匹がしゃべりかけてきた。どこか緊張した様子の彼はこんなことを聞いてきた。
『どうしたら先輩みたいに強くなれますか?』
『僕が?強く?』
『はい!あのニューラの群れを相手に一歩も引かない立ち回りっぷり。しっぽの使い方もすごかったですし、なにより神通力も使わずにあいつらを倒すなんてすごかったです!』
キラキラとした眼差しの奥には吹雪の中で戦っていた時の僕の姿が見える。
謎の視線を向けてきていたのはそういうことだったのか。どこかで見たことあるような目つきだと思っていたがあれはかつて僕たちがリーダーに向けていた目だ。
尊敬と憧れの乗った眼差し。まあ正直悪い気はしない。僕もリーダーみたいに強くなれているんだと再確認できる。
群れから離れた僕が強くなれた理由…
『やっぱりバトルを重ねることかな?強い相手と戦うのが一番だよ』
『はいはい!自分より強い相手にどーやって勝つんですか?』
『ちゃんと頭を使うことかな?今戦っているところではトレーナーもポケモンもみんな頭がいいから普通に戦ってるとすぐ負けちゃうんだ』
『頭いいってどのくらい?』
『……リーダーくらい?』
『ええー!!?そんなの勝てっこないよ!』
『リーダーより頭のいい人なんて知らなーい!』
だよねえ。うちの群れはリーダーや大人のロコン達が賢くて他のポケモン達と争い合うことなどめったになかった。だからリーダーよりも頭のいい存在なんて僕も知らなかった。
人間たちの中にはリーダーよりも賢そうな人たちがいっぱいいて、そのポケモン達もリーダーに負けないくらい賢かったりする。ジムミッションという舞台はリーダークラスがいっぱいの魔境ということだった。
『確かにそれならボクが強くなってるのも当然なのかもしれないね…』
格上を相手に知力と死力を尽くして戦いあう。たとえ相性で勝っていても容易に覆されるなんてのは野生のバトルの中じゃあ滅多に起こらないことだ。
アカツキさんや他の皆と一緒に戦っていると格上との戦いも多くあんまり気がつかなかった。
『ねえねえ先輩』
『うん?』
年下組の中から話しかけに来た女の子。他の年下組より少しばかり落ち着いている子だった。
『私たちのリーダーになってよ』
『……は?』
その後輩からとんでもない爆弾が落とされた。
『いやいや、僕はもうアカツキさんのポケモンだし無理だよ!』
『どうして?もとは私たちの群れだったじゃない』
『い、今は変わったの!』
『だったらまた変わればいい。それで戻ってきてください』
ぺこりと頭を下げてくるのだが、彼女には断るという言葉が通用しないような気がする。端的に言えば、なんだこの子押しつっよ。
そしてその子の言葉に同調するように他の子たちも俺にリーダーをやって欲しいと騒ぎ始める、さすがに騒ぎが多くなり話をやめた同年代組が戻ってきた。
『助けて』
『…お前ずいぶん懐かれたな。オレには中々懐いてくれなかったってのに』
『なんだか少し見ないうちに強くなったよね~』
この二匹は僕と同年代のロコン、意地っ張りな奴と呑気な奴だ。
『…オレなんて才能無えから年下たちに中々懐いてもらえなかったんだぜ、それをこんな簡単にコイツ!』
『随分神通力が上達したよね。前はぼくたちとも大差なかったのに~』
『うわ心外だな、ボクだって頑張って神通力練習したんだから』
意地っ張りな方は昔から神通力一辺倒が苦手で体を動かすのが得意なやつ、呑気な方はいつものほほんとしているがどんな時でも自分を見失わない精神的に強いやつだ。
『ハイハイ静粛に!今のリーダーはアタシよ!静かにしなさい!』
そして三匹目、この気の強い子が神通力の上手だったやつだ。僕たち同世代の中では頭一つ神通力の上手かった彼女が今の群れの実質的なリーダーをしている。
しっかり者だがうっかり家な面もある彼女がリーダーをしているとは…大丈夫だろうか。
その新たなリーダーに向かってあの落ち着いている子が真正面からとんでもないことを言ってのけた。
『新リーダー、私新リーダーに変わって新しいリーダーに先輩を推します』
『なん…ですって!?』
『新リーダーより先輩の方が強くて格好いいです。きっといつかリーダーみたいに知的で格好いいリーダーになってくれるはずです』
『アタシじゃリーダーが務まらないっていうの!』
『そうではありません。先輩の方が適任だと言ってるんです』
『キー!』
…こっわ、女の子同士の口論こっわ。
しかし彼女に真っ向から言ってのけるとは年下なのに大した子だ。
『実はあの子もうオレ達より強い神通力使えるんだぜ』
『でも思ってることズバズバ言いすぎて新リーダーとよく喧嘩になっちゃうんだよね~』
『…あのところで誰か止めたりは』
『『『じんつうりき』!』』
『のわー!?』
言い争いがついには神通力合戦へと発展し、力の中心部にいた彼女たち以外がまとめて吹き飛ばされる。
年上組の二匹は慣れた感じで着地をしていたので僕はしっぽを使って後輩たちを助けることにした。『スイープビンタ』を覚えてから少しだけどしっぽを長くすることができるようになったのだ。伸ばしたしっぽ6本を使って彼らをキャッチし着地させる。
『ふぅ、大丈夫?』
『うわーすごい、まるでリーダーみたい!』
『やっぱり先輩が新しいリーダーになってよ!』
助けたら助けたでまた面倒なことになってしまった…どうすればいいんだ、助けてアカツキさん!
そんなボクの祈りが通じたのか、はたまた神通力が作用したのかお告げが下る。
(・ω・)b
『話を聞かない奴はぶっ飛ばして言うことを聴かせる、ユウリも言ってた』
幻想の中のアカツキさんが親指を立てながら言っている。ユウリさんの言いそうなことだ。
僕は深く考えることを諦め幻想の中のアカツキさんの言うことに従っちゃうことにした。
『オラァ!静まれぇ!』
『『!!?』』
子供のような喧嘩を始めた二匹と、二匹の周りで渦巻いている神通力を相殺しながら僕は突撃した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
チャリン!チャリン!チャリン!
パラリラ!パラリラ!パラリラ!
「うおおお、ロコン迎えに来たぞー!」
アーマーガアとの戦いで負傷した体に鞭を撃ちながらハシノマ原っぱを駆け回る。
自転車のベルとキャンプ場に置いてあったラッパを吹きながら駆け回るとなんということでしょう、野生のポケモン達が群れを成して追いかけてきています。
だけど僕は頑張る!こんなポケモン達に付き合っている暇はないのだ。
「……む、これは神通力の波動!?」
走り回っている最中ふと東の方から空気を伝って謎の震えが肌を刺す。今まで何度か感じたことのある神通力の感じと同じだ。
自転車をそちらに急旋回しペダルを一気に踏み込む。その圧倒的なスピードには野生のポケモンといえど追い付くことなど不可能なのであった!
『ふむ、おかしな力の波動を感じて孤島から出てみればなんだこのポケモンの数は』
俺の去ったハシノマ原っぱに取り残されたポケモン達。
獲物を見失ったポケモン達が互いに牽制し合う場所に現れた一匹のポケモン。武人然とした態度とエスパーパワーを感じ取る優れた感覚器官をもつポケモンだ。
『ちょうどいい、最近はきのみ目当てに島を訪れるポケモンも少なくなって退屈していたところだ』
『お前達でこの腕の切れ味を試させてもらおうか』
『ジグ!ザグ!!』
『バトバット!!』
『アブリ―!!』
その後ポケモン達がどうなったのかは知らない。
「ロコンここにいたのか!」
「コンコン!」
力の波動を辿りついた先にはロコンがいた。なぜかボロボロの姿になっているロコンを『きずぐすり』で治療するとすぐに元気いっぱいになった。
「それで…これどういう状況?」
「コン!」
元気いっぱいになったロコンが返事をするが「コン!」ではわからないぞ。
周りの木々はねじ切られ、土は掘り起こされ二匹のロコンが目を回して倒れている様はまるで嵐の通った後か何かのような光景であった。少し離れた岩場からロコンの群れの残りがこそっと顔を出している。
いやほんとどういう状況だ?
とりあえず倒れていたロコン二匹に『げんきのかけら』を分け与えてあげるとすぐに元気になった。
だが群れのリーダーをしていたロコンは目が覚め周囲を見渡すと突然目に涙を浮かべて森の方へと走り抜けてしまった。
「あの子も夢に出てきた子…だよな?」
自信満々に神通力を操り勇猛果敢にスコルピと戦っていた、昨日俺達が群れと遭遇した時も率先して群れを纏めたり交渉をしてくれたりとしていたはずだ。それが何故?と混乱してしまう。
「なあロコン、やっぱりなにかあった…」
何があったのかを改めてロコンに聞いてみようとすると、
「コ、コン!?」
「……コンコン!」
先ほどまで倒れていたもう一匹の小さいロコンが俺のロコンに詰め寄っている。小さいロコンはやけに熱心な顔をしており、ロコンの方は顔を引きつらせている。どうやら一方的に何かを言われているようだ。
とりあえずロコンから離し話を聞いてみることにした。
ロコンが言うにはあの小さなロコンが群れのリーダーになって欲しいと言ってきているらしい。あのねじれた木々やボロボロになった地面はリーダーのロコンと年下のロコン二匹の戦闘によって引き起こされたものらしい。それを止めようとした俺のロコンが突撃し三つ巴の戦いへと発展したらしい。
うーん、二匹のロコンが倒れていたのは俺のロコンが勝ったからということなのか…流石だな!
「コンコンコン」
ロコンと話をしていると岩場に隠れていた他のロコン達が来ていた。
小さなロコン達はロコンを一斉に囲みこむともみくちゃにしている。するとロコンと同じくらいの大きさのロコン二匹が俺に話しかけてきた。
『あー、あー、わかるかトレーナー?』
「っと、これは神通力のテレパシー?」
「そうだ。…すまなかったなお前のところのあいつを突然さらっちまって」
神通力で話しかけてきた少しぶっきらぼうな口調のロコン、どこか聞いたことのある口調だと思ったが夢で見た神通力が苦手だと言っていたロコンのようだ。なんとなく手持ちのポケモンとは意思疎通ができるのでテレパシーというのは新鮮だった。
「…どうしてこんなことを?」
一番気になっていたことを聞いてみた。
『うちの群れに戻ってきてほしかったからだ』
「っ!」
『群れにいたころはそんなに強くもなかったあいつがあんなに強くなってたのは驚いた』
『神通力の扱いでも新リーダーと互角、接近戦での強さなんかもオレなんか軽く越えちまっってた』
『まあ悔しかったけどさ、それ以上に嬉しかったんだ。あいつだけ見つからねえしどっかで野垂れ死んだんじゃねえかって思ってたもんだから』
「……」
そうだ、このロコン達は言わばロコンの家族。死んでしまったと思っていた家族が生きていたんだ。帰ってきて欲しいと思うのは当然と言えば当然なのだろうか。
『…あいつの強さが目当てでもあるからそんなに思いつめないでくれ』
『このワイルドエリアではなによりも強さが求められる。今のうちの群れにあいつは是が非でも戻ってきて欲しい存在なんだよ』
「で、でもロコンは俺の仲間なんだ」
このロコンの気持ちはもっともだ。だけど、そう簡単に受け入れられる内容でもなかった。
俺が引き抜いた側で、彼らが引き抜かれた側なのだから。立場が違えば考えも変わる。俺が逆の立場なら確かに是が非でも帰ってきて欲しいと思うだろう。
『……だよな』
するとロコンは思った以上にすんなりと引き下がった。
しかし顔を見たらなんとなくわかってしまった。
『まあ、あいつがいたんじゃ俺達年上組の立つ瀬なんてねえからな!』
どこか無理をしているような口調。涙が流れないよう瞼を閉じ、表情筋を無理矢理動かしているのがバレバレだ。嘘とかつくのが苦手なのだろう。
『だから、さっさと連れて行ってやってくれ』
『その方が…あいつも幸せだろうからよ…』
結局ロコンはそういった後すぐさま俺から顔を背けて新リーダーが走っていった森の方へと入っていってしまった。茫然と手を伸ばす俺にもう一匹の落ち着いた雰囲気のロコンが会釈をするとそれを追うようにいってしまった。
この場に残されたのは俺とロコン、そしてロコンを囲むようにしてワイワイと盛り上がっている小さなロコン達だけ。
伸ばした手は彼らに届く事は無かった。
俺はキャンプ地で帰りを待っているだろう仲間達にスマホで連絡を入れ今日はロコンの群れと一夜を過ごすことにした。幸いワイルドエリアの天候は荒れておらずキャンプ道具無しでも野宿できてよかった。
小さなロコン達は騒ぎ疲れたのか眠ってしまった。
俺は焚火の番をしながらロコンと二人で夜を過ごす。
「…なあロコン」
「コン?」
「お前、群れに戻りたいか?」
「……」
ロコンは答えずただ黙りこむのみであった。
あれから三体のロコンは戻ってこず小さなロコン達を置いていくわけにもいかずここにいるわけだが俺はその間ロコンを見ていた。
かつての仲間から頼りにされるほど強くなり、小さな後輩たちからは憧れの視線を向けられていた。ロコンもそのことを満更でもなさそうな顔で受け止めてはいたし、向ける視線は優しく穏やかなものだった。それでも時折顔に影を刺していた。
迷っているのだ。彼も。
こんなときこそトレーナーとして自分のポケモンの頼れる存在でいたいと思う。が、残念ながら俺も答えを出せないでいた。
行ってほしくはない、俺とジムチャレンジを駆け抜けてほしい。
だけど、本当にそれが彼のためになるのか。俺に着いてきてくれたとしてロコンは群れのことを後悔しないだろうか。
「コン」
俺が悩んでいるとロコンがしっぽで包んでくる。突然のことで驚いたがそのぬくもりには抗いがたかった。
温かいロコンのしっぽに包まれていると今日一日の疲労がぶり返してきたのか急激な睡魔に襲われた。睡魔にあらがうこと敵わず、俺はそのまま深い眠りに落ちてしまった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『リーダー!!』
夢の中だ。
声を聴いた時もうこの世界が夢の中だと気がついていた。
今はもういない、美しい九本の尻尾と首に巻いた赤いスカーフがトレンドマークの群れのリーダー、キュウコン。
今よりも少し小さいロコン、今よりももっと小さい年下のロコン達、群れを率いる大人のロコン達。そのすべてがリーダーのキュウコンに尊敬のまなざしを向けていた。
ロコンはリーダーの下へと走っていくと芸術品のようなしっぽにダイブする。
『あ、ずるいぞお前だけ!オレもリーダーのしっぽに埋もれてぇ!』
『ちょっとあんた達リーダーの迷惑でしょ、少しは落ち着きってものを――』
『ぐう…すか…ピー』
『でもさっきから年少組の子がリーダーの尻尾の中で寝てるよ~?』
『もうあの子ったら!!』
『はは、みなさんあまり慌てないで。わたしの尻尾はどこにも逃げませんから』
その言葉に目を輝かせたロコン達は一斉にリーダーの尻尾に飛び掛かる。それを見た大人ロコン達は笑みを浮かべ、リーダーは子供たちの多さと奔放さに少し苦笑いをしていた。
群れは優しくて温かで、とても幸福に満ちている。そんな風に見えた。
『…リーダーはね僕たちの憧れで、目標で、最高のリーダーだったんだ』
その光景を俺の横で見つめていたロコン。幸せだったころの光景を見ながら目を細めている。
『群れの皆はね今もあの頃を目指してるんだって』
「でも、リーダーはいないし大人たちも、居ない…」
『うん。だから誰かがキュウコンに進化すればもしかしたら、ってね』
それで『ほのおのいし』を求めていたのか。
誰かが進化すればきっとかつてのリーダーの様に皆を導いてくれる。そうすればいつかは、あの幸せな日々が帰ってくると信じられるから。
『ボクもあの頃のことは大好きだ。大好きで、大好きで―――』
『だからこそ、今の僕にあの群れに戻る資格なんてない』
群れが散り散りとなり、今生き残ったメンバーが集まれたのは奇跡に近い。そんなとき、ロコンは何をしていたのか。
俺達の仲間となり楽しく旅をしていた。
それが、彼は許せないのだという。
仲間の一番大事な時にぬくぬくとしていた自分が許せない、どれだけ乞われようとあの群れに自分が戻る資格なんてないのだと…
涙を流してついに群れを直視できなくなるロコン。その涙にはロコンが自分を責める以外の感情も含まれていた。
てっきりリーダーのことはすっかり振り切れていると勝手に思っていたけどそんな事は無かったのだ。彼の瞳は今でもリーダーへの尊敬と情念を宿している、なんてことはない彼も群れのロコン達と同じでリーダーのことが大好きだったのだから。
リーダーはもう戻ってこない、カバンの中に今も保管している傷だらけのスカーフがなによりの証拠だ。
ここまでロコンの話を聞いて俺は思う。
ロコン、こいつはかなりのヘタレだ。
仲間が、家族がロコンの生還を喜びその力を欲してくれているというのにひたすらロコンは自分が群れに戻れない理由を探している。ここまで聞いて思ったが未練がタラタラなのがバレバレだ。
そうだというのにフン切れがつかない理由。それは、
「ロコンはさ俺達との冒険は楽しかったか」
『っ!もちろんです!スタジアムでのバトルもビートさんのユニランとの戦いもみんなで食べたカレーの味もボクにとっては大切な思い出です!』
最高の時間だった過去、挫折と成長と新しい仲間を得た現在。
どちらも大切ですと胸を張って応えるロコン。
俺達と冒険した時間は、ロコンが育ち多くの想いを残したあの頃の時間にも負けない宝物だと言ってくれる。
フン切れがつかない理由はどちらも大切だから。
確かにヘタレで優柔不断かもしれない。だが、その言葉を聴けただけで、俺はもう十分満たされてしまった。
だけど、それじゃあきっとロコンが納得をしないし満たされない。俺が群れに戻したとしてもきっと未練は断ち切れないままだろう。
だから、今この夢の中で、
【ドラアアアア!!!】
『っ!なに!?』
夢の中の群れが消え温かな陽光に包まれた草原も消える。
代わりに現れたのは冷たい雨と風が吹きつける平原。群れの代わりに現れたのは、
【ドゥラアアアアア!】
『な、なんで!?』
群れを壊滅させたあの、ドラピオンが姿を現す。
この夢の世界はロコンが神通力を使って作りだしたもので、ロコンの中に眠るあの頃の記憶を強く想うことで再現していたのだろう。だから俺も強く願った。ロコンの世界を壊したあの凶悪なポケモンを。
かつてきのみ屋のじいさんとアーマーガアに撃退され、大きく負傷したドラピオンを倒すことはできた。
あの頃はそんなドラピオンを倒すだけでも精一杯だった。
だから今ここで証明してみせよう。
「倒すぞロコン!」
今まで俺達と積み重ねてきたものが無駄なんかではないことを!
『え…あ、あの…』
(・ω・)b
「今の俺達ならきっと倒せるさ、どうせ夢の中だ気楽に行こうぜ」
ドラピオンを前に少しおびえた表情をするロコンだが俺の言葉を聞いてここが自分の作り出した夢の中であることを思い出す。
それで少し安心したのかロコンはすぐさまドラピオンへと向き直る。この戦闘時の切り替えも、俺達がこれまで歩んできた旅の成果の一つだ。
さあ乗り越えてやろうか!かつての記憶を!