剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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現在カブさん戦を執筆しております。
二本立てにする予定なので少し更新が遅れるかもしれないです。


40、合宿の終わり vsマックスレイドバトル

 

 夢の世界でドラピオンを降し、一層の覚悟と強さを身に着けたロコンと俺。

 現在は朝早くキャンプ場に戻ってきた俺がみんなの朝ごはんの支度を整えている最中だ。

 

「『ほのおのいし』は要らない?」

 

『そうよ。あんなことのあった手前報酬なんて受け取れないじゃない』

 

「でも俺達も使わないし…なあ、ロコン」

 

『うん、要らなーい』

 

 朝食のカレーを作っている最中、新リーダーの彼女から報酬である『ほのおのいし』を突き返されている最中だ。

 正直使う気がないので困ってしまう。

 

『どうして?あんた達すっごい強い相手と戦ってるんでしょ、なら手っ取り早く進化すればいいじゃない』

 

 もっともな疑問を口にしてくる新リーダー。その言葉を聞いた俺とロコンは顔を見合わせるとやれやれと溜息を吐きながら両手でお手上げのジェスチャーをする。その顔とため息が気に入らなかったのか新リーダーがムキー!と怒ってくるので仕方がなくその疑問に答えてあげることにした。

 

「だって」

 

『進化しないで』

 

「倒した方が」

 

『格好…』

 

「いいじゃん!!!!!」

『いいじゃん!!!!!』

 

『ねえ、こいつら馬鹿なの?』

 

『オレにはわかる、男のロマンってやつだぜ!』

 

『ロコンのまま勝つ先輩…格好いい…』

 

『馬鹿しかいなかった…!』

 

 新リーダーが自分の群れは想像以上に馬鹿しかいなかったことに愕然としている。

 まあさっきのは表向きの理由。実はちゃんとした理由だってある。

 

『今進化するときっと伸びしろが止まっちゃう、感じがするんだ』

 

 なんてことはない、ただのロコンの直感だ。

 だが直感だと侮るなかれ。なんとスマホで軽く調べてみたところ『ほのおのいし』などのアイテムで急激な進化を施すと進化前と比べると格段に成長スピードが落ちるという論文が出てきたのだ、マジかよ。シンオウ地方のナナカマド博士というポケモン進化の権威と呼ばれる人の論文らしいが、正直難しくて内容は一割くらいしか理解できなかった…というか長い、PDFでダウンロードするんじゃなかった…

 読み取れた範囲の論文の内容を要約すると、

 

『普通の進化と違いポケモン本人の成長に関係なく進化をさせることができるこの進化法は便利な反面ポケモンの体にかかる負担が大きく、急激な体の変化は成長を止めてしまう』

 

 とこんな感じの内容だった。あれだ、成長期は物覚えやトレーニングですくすく成長するけど大人になったら伸びにくくなる、みたいな感じだと思う。

 

 ということで俺たちには『ほのおのいし』を使うつもりがない。ロコンがパーティを抜ければさらに使う宛がないのだ。

 

「ア、アカツキさん。ちょいとご相談が…」

 

「帰れマタハリ」

 

 『ほのおのいし』欲しさにすり寄ってくるマタハリを追い返す。

 まあ確かにマタハリにはこの合宿で助けてもらったり逆に助けたりで石をあげるというのも別にいいのだが、

 

「ちぇ、なんだよ使わねえなら譲ってくれても良いじゃねえかよー」

 

「マタハリにあげたら後々めんどくさそうじゃん?」

 

「なんだよ、そりゃ俺がお前と戦うまで勝ち残るとでも思ってんのか?」

 

「そうだよ?」

 

 まるで自分がこのジムチャレンジを突破できないと思っているかのような口調だ。

 しかし、マタハリはこの合宿中特にメキメキと腕を伸ばしている。カブさんに勝つために夜まで勉強していたり、ロコンの生態調査などの研究している姿をよく見る。そのせいか以前よりも炎タイプへの造詣が深まり、かなり手ごわくなったんじゃないかと思う。マタハリならすべてのジムを勝ち抜きトーナメントにまで勝ち上がってきても何ら不思議はない。

 

「お、おうなんだ。褒めても何も出ねえぞ」

 

「だから、石はあげない」

 

 そんな未来のライバルに塩を送るつもりはサラサラない。というかこいつなら自力で『ほのおのいし』くらい手に入れられるだろうし。

 

「ケチ!」

 

「じゃあケチついでにマタハリの分のカレーから具材抜いとくね」

 

「…お前がカレーで手抜きするってのか?」

 

「はは、しないね!」

 

 この合宿でマタハリも俺のことがわかってきたようで、ますます油断ならないライバルになりそうだ。

 

「アカツキ君、私もうお腹ペコペコ~」

 

「おや、ロコン達も帰ってきたようだね」

 

「デネボラさんにバーダンもおはよう」

 

「うららぁ!」

 

「お、モルペコもおはよう。うりうり」

 

「うららぁ♪」

 

 カレーの匂いに釣られてデネボラさんにバーダン、そして食いしん坊のモルペコが起きてくる。

 マリィはというと昨日俺がロコン達を追いかけて行った後に帰るのを夜まで待っていたらしく今もまだ寝ているそうだ。

 

「さあ、カレーの出来上がりだ!」

 

 カレーから始まる一日。

 この強化合宿最後の日の開幕だ!

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「ロコン、『スイープビンタ』!」

 

「スナヘビ、『まきつく』!」

 

 今日は合宿の総仕上げ、互いのポケモン同士で戦いその成長を確かめ合っている。現在、俺はバーダンのスナヘビと一対一で戦っている最中だ。

 バーダンのスナヘビはその長い体をうまく利用した戦い方で翻弄してくる上に、攻撃を当てるたびに特性の『すなはき』によって砂嵐を吐き出してくるので非常に厄介だ。

 

「『やきつくす』!」

 

「スナヘビ、『あなほほる』だ!」

 

 ロコンの体に『すなあらし』によって無視できない傷が着いていき、これは不味いと大技で決めようとしたところでスナヘビは『あなをほる』を使って地中に逃げてしまう。

 地面の中を移動するスナヘビの速度は地上のそれと違い非常に素早く厄介だ。だが、

 

「土の中だろうとロコンからは逃げられない!」

 

 ロコンの体から青白い光が波紋の様に広がっていき地面に浸透していく、穴掘り兄弟と採掘をした時に使ったレーダーの応用だ。そして壁の中に埋まる石を探し出すことに比べれば動き回るスナヘビを見つけることくらい造作もない!

 

『見つけた!』

 

「そこだ、『じんつうりき』!」

 

 ロコンのレーダーで捉えたスナヘビに不可視の力が襲い掛かり、スナヘビは抵抗虚しく地面から掘り出され宙を舞う。

 

「スナヘビ!?」

 

「とどめだ、『スイープビンタ』!」

 

 宙に放り上げられたスナヘビにロコンの尻尾による連撃が叩きこまれる。空中で回避も防御もできず攻撃を食らってしまったスナヘビは地面に落ち、大きく目を回していた。

 

「スナヘビ戦闘不能。ロコンの勝ち!」

 

「やったぜロコン!」

 

『やったね!』

 

「負けてしまったか…だがいいバトルだった戻って休んでくれスナヘビ」

 

 ドラピオンとの戦いも終えたロコンはスナヘビを相手にしても一歩も引かない戦いを繰り広げた。たとえタイプ相性で負けていようともそれをひっくりかえせるほどの力を手に入れたのだ。

 

「よし、なら次は俺と!」

 

「なに言ってるんですかアタシが先ですよ!」

 

 その後デネボラさん、マタハリとも戦っているとテントの中から左手を日よけにしたマリィが起きてきた。

 

「うぅ、日差しが眩しか…」

 

「パルスワン、『スパーク』!」

 

「ガーディ、『かえんぐるま』!」

 

「ワオオン!!」

 

「ガァァディ!!」

 

 雷と炎を纏った大技が激突しあうとバチバチ!メラメラ!という音に加えて思わず目を背けてしまうような閃光が放たれる。

 

「眩しか!?」

 

「あ、マリィおはよー」

 

「夜更かしさんめ、お肌荒れるぜ?」

 

「うー。モルペコ、『かみつく』」

 

「うらぁ!」

 

「痛てててて!?今バトル中だっての!」

 

 この数日間でマリィもすっかり他のメンバーとも打ち解けている。起きたばかりでまだよく頭が働いていないのだろう、容赦なくモルペコに攻撃をさせている。眠そうに眼をこすったり、欠伸をこらえている姿などはいつも大人びているマリィを見ているので少しレアな光景だった。

 まあ、俺は『かみつく』じゃなくてモルペコの必殺技である『オーラぐるま』を食らわせられてるから俺の方が上だけど!(謎の張り合い)

 

 

「くそ、『ほえる』!」

 

 モルペコを引きはがした後、ガーディの口から体が震えあがるほどの威嚇の咆哮が放たれる。

 以前のパルスワンならばその声を聴いて震えあがっていたことだろう。

 

「パルスワン、お前の成長を見せてみろ!」

 

「ワォォォン!」

 

 パルスワンと視線を合わせる。

 アーマーガアとの戦いを乗り越えたパルスワンに、もはや恐れるものなどない。一段と頼りがいのある背中になったパルスワンはその咆哮に対して一歩も臆することなく、

 

「うっそだろ!?」

 

「ガディ!?」

 

 正面から技を受けきった。

 そして、『ほえる』で隙だらけになったガーディに向けて強靭な口を開いたまま容赦なく襲い掛かった。

 

 バトルは無事俺の勝利で終わりこれで二勝一敗。デネボラさんのルチャブルにアオガラスと空中対決で負けてしまったのが残念でならない。

 バトルが終わったころにはマリィも朝食を食べ終えモルペコと元気にストレッチをしている。

 

「よし、最後はマリィとだよ!」

 

「ん、返り討ちにしてあげる」

 

 マリィもダークーボールを片手にやる気満々の表情を浮かべている。

 そうしてマリィとのバトルを始めようとした矢先……

 

ドッカーーーン!!! 

 

 遠くの方からとんでもない爆発音が響き渡り、遅れてハシノマ原っぱ全域に吹き付けるような衝撃が走り抜ける。

 突然の衝撃によろめきそうになりながらなんとか踏ん張る。次の瞬間沢山の鳥ポケモンが空へと羽ばたき、草原には小型のポケモンが逃げるようにして隣のエンジンリバーサイドやストーン平野に逃げていく様子が目に入ってきた。

 俺達は顔を見合わせるとすぐさま自転車にまたがり、音と衝撃の中心地に向かうのだった。

 

 初日に自転車の壊れたマリィを後ろに乗せ草原を駆ける。

 先ほどまで空には太陽が燦燦と輝く『晴れ』の天気だったというのに既にハシノマ原っぱ全域を受けつくさんばかりの『すなあらし』が吹き荒れ始めたのだ。

 

「こんな規模の『すなあらし』は初めてだ!さすがワイルドエリアだ!」

 

「バーダンの野郎が眼を輝かせてやがる」

 

「うう、口の中がじゃりじゃりすると」

 

 視界の大半が砂嵐でふさがれる中、それでも逃げていくポケモン達のおかげで向かうべき先がわかったのが僥倖だった。

 しかしそれもしばらくするとポケモン達も非難し終えたのか数を消していく。さすがにこれ以上当てもなく進むのははばかられたので自転車を降り、慎重に行動することにした。

 しばらくは何もなかった。何もないと思い込んでいた。

 

「なあ、なんか聞こえねえか」

 

 マタハリが砂嵐の音に紛れて何かが聞こえると言い始めた。俺達も耳を澄ましてみれば確かにやまびこで帰ってきたかのような、遠いところから帰ってきたかのような音が聞こえてきた。

 

「確かに何か聞こえるね」

 

「でも、どこから?」

 

「音の拡散規模からして結構遠くからだと思う」

 

「マリィってそういうの詳しいの?」

 

「うん、アニ…知り合いがバンドやっててよく聞かされてたから」

「でもこの音の感じどこかで聞いたことあるような…」

 

 マリィの言う通りだ。俺たち全員このどこかからか響いてくる音に聞き覚えがある気がする。

 なんだろうこの音……いや、これはもしかすると鳴き声?鳴き声が空…上から聞こえてきている?

 

「っ!そうか、これは――!」

 

『ドォオオザァァイィィ!!!』

 

 俺が真相にたどり着いた瞬間今まで響いていた音をすべてかき消すような大音量が響く。思わず耳を塞いでしまうが今ので確信できた!

 

「い、今のって!?」

 

「おいおい、こりゃあ…」

 

「ダイマックスしたポケモンの鳴き声だ!」

 

『ドォオオザァァイィィ!!!』

 

 砂嵐の音を吹き飛ばすような大きく野太い鳴き声が響き渡ると砂嵐の一部が大きく黒ずんでいくのがわかる。それは影、大きさは優に数十メートルを超える大都会の建物かと見まごうほどの大きな存在の影が姿を現した!!!

 

「ドサイドン!」

 

 ポケモン図鑑を起動させるとすぐさま答えははじき出された。

 ドリルポケモン、ドサイドン。超高密度のプロテクターは城壁のごとき守りを誇り、巨大なドリルは全てを破壊すると言われる大型のポケモン。

 その大きな体がダイマックスによってさらに巨大化し、もはや圧巻という感想しか出てこない。

 

「なんでこんなところにダイマックスしたポケモンがいるんだよ!」

 

 マタハリが泣きそうな顔で最もなことを言っている。

 だが残念ながらここはワイルドエリア。何が起こるかわからない、かつて俺が初めてダイマックスバトルを経験した場所なのだ。

 

「みんなよく聞いて、このワイルドエリアではたまにダイマックスバンド無しでもダイマックスが起こるんだ!」

 

「その情報源は!?」

 

「マグノリア博士!」

 

「っざっけんな、滅茶苦茶有名人じゃねえか!」

 

「すっごいビッグネーム!」

 

「ガラルに居て知らない人はいない有名人だね」

 

 マグノリア博士の名前を出してみれば大人組がみんな一斉に納得した。この地方ではそれだけマグノリア博士の名前は知れ渡っているのだ。

 

「安心して相手がダイマックスしたってことは、俺のバンドも――!」

 

 以前ダイマックスしたマメパトと遭遇した時にはすぐさまダイマックスバンドが輝き始めた。ダイマックスが起きた場所には膨大なダイマックスエネルギーが充満しており、バンドのエネルギーもすぐ溜まるらしい。

 ダイマックスにはダイマックス。相手がどれだけ強くてもダイマックスができるならば十分に勝ち目はある。

 

「あ、あれ?」

 

 だが、光っていない。右腕に付けたダイマックスバンドは全く反応していない。

 以前マメパトと遭遇した時には爛々と輝いていたダイマックスバンドが今はうんともすんとも言っていない。ブンブン振ってみたりカチャカチャと弄ってみても全く変化なし。

 この中で唯一、俺の他にもダイマックスバンドを持っていたマリィのバンドも確認してみたが反応していなかった。これではあの超巨大ドサイドンに対抗する手立てがない…

 

 他の大人組も頼みの綱のダイマックスが使えないとわかると途端に表情を厳しくする。

 俺とて今まで何度もダイマックスをしたポケモンとの戦闘を乗り越えてきた。だからこそ、ダイマックスなしで挑むことの無謀さが理解できてしまう。

 

 そんな中、俺たち全員が顔を俯ける中で、一人だけがボールを手にしてドサイドンに立ち向かおうとしている。

 

 

 

「マリィ?」

 

「ん、どうしたと?」

 

 マリィだけは一人だけ何でもないかのように振舞っていた。

 マリィとてダイマックスバトルの経験がある、ダイマックスしたポケモンのその圧倒的強さもよくわかっているはずだ。

 

「ほら、みんなもシャキッとせんね!」

 

 だがマリィは本当に何でもないかのように俺達を奮い立たせようとする。本当にあのダイマックスしたドサイドンに勝てると信じて疑っていないのだ。

 

「確かにダイマックスは凄いし強力だし、『ポケモンバトルの華』といってもよかばい」

 

 立ち尽くしている俺達の中から一歩を踏み出し、小さな背中をこちらに向けたマリィは言葉を紡ぐ。

 

「でもあたしは知っとる!」

「ダイマックスしたポケモンにだって負けない、そんなアニキのバトルをいつも観てきたから!」

 

 いつか聞いたマリィのお兄さん。その背中を追いかけているマリィはダイマックスしたポケモン相手にも…否、ダイマックスをした相手だからこそ果敢に立ち向かう。 

 

 女の子のそんな姿を見せられてしまえば男の子として立ち上がらないわけにはいかない。俺もボールを取り出し、一歩前に出る。後ろをチラリと振り返ってみればそんな少年少女の姿を見た大人組もボールと一緒に気を持ち直していた。

 

 

「頼んだぞ、ジメレオン!」

「メレオォォン!」

 

「行くよ、ズルッグ!」

「ズッルゥ!」

 

「ルチャブル!」

「ブルゥ!」

 

「任せた、ヤジロン!」

「ヤージー!」

 

「お前だ、ガーディ!」

「ガディ!!!」

 

 五匹のポケモン、五人のトレーナーが立ち向かうのは巨大なダイマックスポケモン。砂嵐を背景にその巨大な存在に立ち向かう姿はまるで映画のワンシーンのようだ。

 

「そういえば初日に倒したのもサイドンだったわね」

 

「そんなこともありましたね」

 

「ジムチャレンジでもなければダイマックスをしたポケモンなんて滅多に戦えない相手だ、逃す手はないね」

 

「こんバトルでこの合宿の成果を見せたげる!」

 

「あいつを倒してこの合宿の締めにしてやろうじゃねえか!!」

 

『うおおおおお!!!』

 

 マタハリの言葉に全員が賛成の声を上げる。有終の美を飾る相手としてこれほどふさわしい相手もいないだろう。

 かくして、戦いの火ぶたは切って落とされた。

 

「じゃあまずは俺達から!」

「ジメレオン、『みずのはどう』!」

 

「メーレー、オォン!」

 

 ジメレオンが両腕を構えると大きな水の弾が作り出される。合宿を得てその威力も大きさも以前と比べて格段に成長している。

 さらにこの技は以前サイドンやサイホーンにも大ダメージを与えることができた。その進化系であるドサイドンにも相当のダメージを与えることができるはずだ!

 

 

 

 しかし、俺の期待はジメレオンの全力全快を込めた一撃とともに粉砕される。なんてことはない、その圧倒的質量差の前に。

 

「うそん」

 

 そう、俺達からすれば身の丈ほどもある大きな岩であってもあのサイズのポケモンからすれば石ころ程のサイズもない。ジメレオンの作り出した『みずのはどう』も同じだ、ダイマックスしたドサイドンからすれば小さな小さな水風船程度の脅威でしかないのだ。

 それでも効果抜群の技を食らい不快に思ったのか、ドサイドンが右手を構える。

 

「ッ!マズイ、下がって!」

 

 何かに気づいたバーダンがヤジロンに指示を出すと透明な壁が展開される。

 技の名前は『リフレクター』、物理攻撃を防ぐことができる特殊な技だ。ヤジロンが『リフレクター』を張った直後、透明な壁に何かが激突しとんでもない爆発音が起こる。

 

「なんだなんだ!?」

 

「ドサイドンは手のひらにある穴にポケモンを詰め込んで発射することができるんだ!」

 

 バーダンの視線に沿って壁の向こう側を見てみるとそこには気絶したダンゴロが転がっていた。今の大きな爆発音はこのダンゴロが弾丸として放たれ、壁と激突した時の音のようだ。

 

「どうやら弾となっているポケモンまでは大きくなっていないのが幸いだったけど…」

 

「それでも厳しかね、今の砲撃」

 

 巨大化して打ち出す威力も上がっている、当たれば大きなダメージは避けられないだろう。

 

「僕とヤジロンが砲撃を防ぐ。攻撃は任せたよ!」

 

「頼んだ、バーダン!」

 

「ああ、任された!」

 

 バーダンと拳をぶつけあう。率先して前に出る、頼りになりそうなその背中はやはり年上としての貫禄を感じさせる。

 

 ヤジロンはなおも断続的に放たれるダンゴロ砲を『リフレクター』で防ぎ続ける。その間に俺達はあのドサイドンの攻略会議をすることとなった。

 

「格闘術なら相手の足を狙うのが定石です!」

 

「それだ!」

 

 防御をヤジロンに任せポケモン達はドサイドンの足元へと強襲を仕掛ける。

 ジメレオンは『みずのはどう』を、ズルッグは『きあいだま』を、ルチャブルは『かわらわり』を、ガーディは『かえんほうしゃ』をドサイドンの右足めがけて放つ。

 大きな音を立ててドサイドンの右足が爆発し、その衝撃で少し足が浮き上がる。

 いけた、と思ったのだがそこは重量級ポケモン。浮かんだ足に力を込めるとすぐさま地面に縫い止め直してしまった。逆にドサイドンが足を地面に直した衝撃でポケモン達の体が浮き上がる。

 

「ルチャブル!」

 

「ジメレオン!」

 

 トレーナーのところまで衝撃は伝わりグラグラと地面が揺れる。ルチャブルとジメレオンは空中に投げ出された状態から翼と舌を使い他のポケモン達を捕まえながら避難させる。直後、上空からダンゴロの弾丸が放たれ彼らのいた場所が爆撃される。

 

 足への攻撃は大きな戦果とはならなかった。

 ドサイドンは全身を分厚い装甲で覆われている。どこか攻撃を通せる場所は――

 

「あそこ!あそこならどう!?」

 

 マリィが指さした先は、

 

「そうか、あの手の平の穴になら!」

 

 ダンゴロを発射している手のひらの穴。確かにあそこなダメージが入るはずだ。

 マリィと顔を見合わせるとそれぞれ右と左の掌に狙いをつける。

 

「ジメレオン、『みずのはどう』!」

 

「ズルッグ、『きあいだま』!」

 

 ダンゴロを撃ち出す両の掌に向けて大技を叩きこむ。

 

『ドザァァァイィィ!!』

 

 どうやらマリィの狙いは正しかったらしくドサイドンは掌に攻撃が当たると大きな唸り声をあげ顔を歪める。効果抜群で威力もお墨付きの技だ!

 

「レオオオン!」

 

「ズーッグゥ!」

 

「ジジジ、ローン!」

 

「チャッブル!」

 

「ガーディ!」

 

 両手の穴に攻撃を集中させる。堅いプロテクターで体を覆ったドサイドンの急所ともいえるポイントに集中させた攻撃は確かなダメージとなりドサイドンに蓄積された。

 

「ちっ、掌を閉めやがったか」

 

 だが、それもドサイドンがこぶしを握るまでの話。拳を握ってしまえば穴は隠れてしまい、攻撃は拳のプロテクターに防がれてしまう。

 そして、ドサイドンは握った拳を振り上げるとそのままポケモン達に振り下ろした。

 

 『アームハンマー』、拳をハンマーに見立てた大ぶりな攻撃は技の後に大きな隙が生んでしまう技だ。

 しかし、それは反撃ができればの話。ドサイドンの攻撃は地を吹き飛ばし、攻撃を受けたポケモン達は軽々と吹き飛ばされてしまう。とてつもない攻撃を食らい気を失ってしまった彼らは、とてもではないが反撃ができる状態ではない。

 

「うおおおお!?」

 

「ゆ、揺れる!?」

 

 さらに『アームハンマー』が地面に叩きつけられた衝撃は地面を大きく踏みつけた時とは比べ物無いならない振動となりワイルドエリアを駆け巡る。

 その揺れはまともに立っていられないほどで体を鍛えているデネボラさん以外は地面に転げてしまう。

 

 ドサイドンは地面に突き刺さった腕を抜き、倒れて気絶しているポケモン達の頭上に掲げた。このままではあの強力な技が再び放たれてしまうであろう。

 

「ルチャブル、『フェザーダンス』!」

 

 その時、唯一衝撃を利用して空を滑空したルチャブルが隙を晒したドサイドンに向けて光り輝く羽根を巻き散らかす。

 羽根はドサイドンが掲げた腕、脚と巻き付いていき体の自由を奪うと同時に強制的に力を奪い取っていく。

 

『ザァァァイ…!?』

 

 体に巻き付いた羽根がドサイドンの力を吸い取り、足止めと同時にドサイドンを一気に弱体化させる。

 

「これなら…!」

 

 デネボラさんとルチャブルの顔に笑みが浮かぶ。

 

「ルチャブル、『かわらわり』!」

 

「チャッブル!!」

 

 ルチャブルは空中を飛び回り、時にドサイドンの巨体を足蹴にしながら空へと登っていく。ドサイドンの顔付近にまで到達するとひときわ大きく跳躍し、無防備な脳天に強烈な手刀を叩きつける。岩タイプであるドサイドンの堅い皮膚を砕いた効果抜群の技にさすがのドサイドンもぐらつく。

 それを好機と見たルチャブルがもう片方の手も使って何度も『かわらわり』を振り下ろしていく。ルチャブルの鍛えられた手刀がドサイドンすら無視できないダメージとなり傷を増やしていく。

 

 しばらく攻撃を食らっていたドサイドンだがその体が突然赤く光り輝き始める。それはドサイドンが体に溜めていたダイマックスエネルギー。全身から一気にダイマックスエネルギーを放出することで羽根を吹き飛ばし、弱体状態を力づくに引きはがしていった。

 その力の放出を受けたルチャブルが宙へと放り出されたところに向かってドサイドンの手の穴からダンゴロが発射される。正確無比な『うちおとす』を食らったルチャブルが飛行を制御できなくなると立て続けに追撃の『アームハンマー』がヒットし、ルチャブルはキリモミ回転しながら地面に墜落してしまう。

 

「ルチャブル!」

 

 落ちてきたルチャブルは目を回し、戦闘不能となっていた。

 

「くそ、ルチャブルがやられちまったか…」

 

「だけど、おかげで時間は稼げた」

 

 『アームハンマー』の衝撃を食らい倒れていたポケモン達は大きなダメージを残したままだが無事戦線に復帰することができた。それにルチャブルが攻撃を加え続けたおかげでドサイドンも披露した顔を見せ始めた。そしてルチャブルが時間を稼いでくれなければあのまま追撃を受けて全滅もあり得たであろう。

 

「アタシとルチャブルの活躍無駄にしないでよね」

 

 デネボラさんがこぶしを握り俺の胸をポスっと叩いてくる。

 

「もちろん、絶対に無駄にはしません!」

 

 その気持ちに応えるため俺も右腕で拳を作りコツンとぶつける。すると右腕に付けたダイマックスバンドに、今までうんともすんとも言わなかったバンドにほのかな光が灯る。

 いつもより弱弱しい光に色々な疑問が頭をよぎり、一つの回答にたどり着いた。

 

「そうか、あのドサイドンがダイマックスのエネルギーを独占していたんだ」

 

 あのドサイドンは本来なら周囲に充満しているダイマックスエネルギーを独占することで長時間のダイマックスを可能にしているようだ。

 しかし、先ほどのエネルギー大放出に伴って周囲にエネルギーがばら撒かれそれを吸収したダイマックスバンドが今になって光を灯したということのようだ。

 

「だけどこのくらいじゃあ、ダイマックスはできんね…」

 

 ダイマックスをするには心もとないエネルギーのバンドをマリィと見つめる。もともと使うつもりはなかったが今になって使える可能性が出てくるとそれに頼ってしまいそうになる、それがまだ自分が未熟だなと思わせる。

 

 気持ちをなんとか切り替えドサイドンに向け直すとドサイドンが体から再びダイマックスエネルギーを噴出している。それに連動してダイマックスバンドの光がさらに強まる。なんとあのドサイドンはダイマックス技を使おうとしてきている。今、強力なダイマックス技をまともに食らってはひとたまりもないだろう。

 ヤジロンが率先して前に出て『リフレクター』を展開するが、とてもではないがそれでダイマックス技を受け切れるとは思えない。

 

「みんな、ヤジロンではきっと止めきれない…」

 

 恐らくそれが一番わかっているであろうバーダンが手を握りしめて、弱音をこぼす。それでも耐えるかもしれない少しの可能性にかけようとしているんだと伝わってくる。

 

「ならズルッグも力になるよ!」

 

 マリィのズルッグも前に出ると『まもる』による絶対防壁を展開する。『まもる』はあらゆる攻撃を防ぐことができる。

 

「それでも、足りない…」

 

 二匹のポケモンが防御技を最大展開してなお、ドサイドンの体から湧き出る膨大なエネルギーに耐えられるとは到底思えない。それだけの力の圧を感じてしまう。

 なにかできることはないのか…と考えていたその時、ダイマックスバンドの光がまた一段階強く光る。まだダイマックスができるほどではないというのにドクッドクッと心臓の様にバンドが鼓動を始める。

 

「…なにかを伝えようとしているのか?」

 

 バンドはなおも鼓動を続ける。マリィの方を見てみればあちらのバンドも何かを伝えようと鼓動しているようだった。わからない。ドクドクと鼓動を続けるバンドを見つめるがそれ以上は何も伝えてはくれない。

 だから、ここは直感に頼ることにした。

 

「アカツキ君?」

 

 右手に付けたダイマックスバンドを外し。俺はそのバンドをバーダンへと突き出す。

 彼は差し出されたダイマックスバンドの意味が分からず疑問符を浮かべている。

 

「バーダン、きっとこれが正解なはずだ」

 

 俺も明確に何が起こるかはわからない。それでも、これをバーダンに渡すことが最良の選択だと俺の中の何かが伝えてくる。

 

「わかった…使わせてもらおう」

 

 バーダンはダイマックスバンドを受け取ると右腕に嵌める。ダイマックスバンドはポケモントレーナーであればだれでも憧れる存在らしく、どこかバーダンの表情も浮足立っていた。

 

 そして、力の充填が終わったドサイドンがついに技を発動させる。

 ゴゴゴゴゴ!!!!と大きな音を立ててその溢れる力を解放させると、地面が隆起していき超大質量の巨石を生み出す。

 

「これが『ダイロック』か!」

 

 カブさんのキョダイセキタンザンが使っていた『キョダイフンセキ』を彷彿とさせる超質量の巨石による物量攻撃。他の多くの技と比べても、恐らくこのような物量攻撃が普通のポケモンには致命的な攻撃であろう。

 二匹は力を今一度込めて防御の態勢を整える。『リフレクター』と『まもる』による二重防御からどんな攻撃も通さないというような気迫が伝わってくる。

 

「ヤジロン!」

 

「ズルッグ!」

 

「「頑張れ!!!」」

 

 二人の声援が二匹にさらなる気迫を与える。

 そしてその叫びを待っていた!と言わんばかりにダイマックスバンドが輝き始める。

 

「こ、これは!」

 

 二人の腕に着けていたダイマックスバンドからエネルギーが溢れ始め、まっすぐに飛んでいくとヤジロンとズルッグの体を包み込む。それは雷が走った衝撃をともない、まるでダイマックスバンドが二匹に力を分け与えるかのように内に溜めたエネルギーが二匹のポケモンに譲渡されていく。

 ドサイドンはすぐさま自分の両腕を使い『ダイロック』を押し倒す。巨石が重厚な音を立てながら傾き、四匹めがけて倒れ込んでいく。

 

 ダイマックスエネルギーで強化された二匹の作り出した障壁が『ダイロック』と衝突し、音を立てながら拮抗しあう。

 

『ドザァァァイドォォ!』

 

 『ダイロック』は超巨大な大岩、というだけの技だがその威力は強化された『リフレクター』と『まもる』の防壁をギリギリと歪めて今にも破壊してしまいそうな勢いだ。

 

「ジジロジー!」

 

「ズッグゥゥゥ!」

 

 二匹は必死に力を振り絞り防壁を展開するが巨石の重圧は時間が経つほどに二匹の負担となり積み重なっていく。

 それでも彼らは諦めなかった。

 

「ズルッグ!気張らんか!」

 

「ヤジロン!君の力を見せてやれ!」

 

 自らの主人の声援こそ彼らにバンド以上の力を振り絞らせる。

 

 ヤジロンとズルッグが限界を超えて力を振り絞ったとき、バンドから全てのエネルギーが二匹に受け渡される。

 色を失ったバンドとは対称的に二匹の体が紅く輝き始める。

 

『『ダイウォール』!!』

 

 

 二匹の作った防壁はダイマックスエネルギーと融合し、一瞬だけ、だが確かな技となり巨石を退けた。

 ダイマックス技を含めたありとあらゆる攻撃を防ぐ最強の防御技、『ダイウォール』。それは他のダイマックス技と同じくダイマックスしなければ使えないはずの技だったが大量のダイマックスエネルギーを消費することで一度だけその真価を発揮した。

 四匹を包み込んだ『ダイウォール』が『ダイロック』の力を完全に殺し、巨石は跡形もなく塵と消え去る。『ダイウォール』の力はダイマックス技の副次効果もろとも全ての力を無効化させるアンチダイマックスエネルギーで出来た技なのだ。 

 

「メレオォン!」

 

「ガディッ!」

 

 巨石が跡形もなく消え、ヤジロンとズルッグが倒れ込むとジメレオンとガーディが走りだす。

 

「ジメレオン、『みずのはどう』!」

 

「ガーディ、『かたきうち』!」

 

 『ダイロック』によりエネルギーを消耗したドサイドンに効果抜群の『みずのはどう』と、ルチャブルの仇を取るためにパワーアップした『かたきうち』が炸裂する。

 『みずのはどう』がドサイドンの岩の体を砕き、そこに『かたきうち』が追撃を加える。

 

 

「力を使い切っちゃってこれ以上は無理そう」

 

「こっちも同じだ。あとを二人に任せてしまって済まない」

 

 ズルッグもヤジロンもすべての力を使い果たしてボールに戻ったようだ。

 

 二人ともやりきれない表情をしている。

 特にマリィは顔を俯けて肩を震わせている。

 マリィはお兄さんのバトルを観てきたと言っていた。そのお兄さんがどういう人なのかは知らない、だがそのお兄さんのバトルを観てきたマリィがダイマックスしたポケモンにも負けないという気持ちがあったからこそ俺達は立ち上がり戦うことができた。

 そう思うと、喉の奥からスルリと言葉が出ていた。

 

「勝つよ」

 

 マリィの肩に手を置いてそう言う。

 いきなり肩を叩かれて俯いていたマリィも顔を上げる。少し目元に涙の跡が浮かんでいた。

 

「絶対勝つ。そうしたら、これはみんなの勝利だ」

 

「みんなの?」

 

「誰が居なくても勝てなかった。だからこの戦いはみんなの戦いで、勝利はみんなの勝利だ!」

「待ってて!絶対勝ちをもぎ取ってくるからさ!」

 

 そう言ってマリィの横をするりと通る。

 向かう先はドサイドンの目の前、いつもはあの距離で強大なポケモン達と戦っていたことを思い出せ!ジムチャレンジを思い出す。目の前に広がるのは超巨大なダイマックスポケモン、と大勢の観客とその声援。

 それに比べてみれば、ここはとても開放的で視界に入れるべき相手は一匹しかいないじゃないか!

 

「ジメレオン!」

 

 名前を呼べば、相棒は舌を器用に使いながら俺の前まで飛んできた。

 

「行くぞ!」

 

「レォォン!」

 

 ポン、と肩を叩きあうと気合が入る気がした。

 

「やだやだ、青いねえ」

 

「なんだ、マタハリも来たの?」

 

「お前だけ前に出て踏みつぶされでもしたら寝覚めが悪いだろ?」

「いやしかし、でっけえな…やっぱり帰ろうかな…」

 

「ジメレオン、『みずのはどう』!」

 

 俺の横にいたジメレオンがドサイドンの顔面目掛けて『みずのはどう』を叩きつける。プロテクターのない顔は比較的攻撃の通りやすい場所で、そして怒らせるには最適の場所だ。

 顔面に効果抜群の技を食らったドサイドンがこちらを睨む。

 

「お、おま!?おままま!?」

 

「アホ!馬鹿!間抜け!」

 

 アーマーガアには効いた挑発作戦はうまくいくだろうかと思っていたが存外うまくいった。ドサイドンの視線はジメレオンと俺に釘付けとなる。

 

「じゃあマタハリ、あいつ引き付けるからそっちもよろしくぅ!」

 

「メッレ…」

 

 狙いを付けられた俺の下にダンゴロ砲が放たれるがジメレオンに抱きかかえられ飛ぶ、そして着地する。

 その後ジメレオンにバシバシと叩かれる。昨日の今日で危険なことをしたことを怒っているという表情だ。

 

「これが終わったら謝るよ。だから今だけ俺の命を預けた…よ!」

 

 再び打ち出されたダンゴロ砲を目視で避ける。何だかんだこれだけ打たれれば両手の穴の向きに注意すれば避けるくらいはできるようになる。

 

「ほら、穴ががら空きだ!」

 

 そして俺を狙ってダンゴロ砲を撃てば打つほど両手の平の弱点が丸見えになる。

 そこに向けてジメレオンが『みずのはどう』、ガーディが『かえんほうしゃ』を直撃させる。連続攻撃を食らい大きな音を立ててドサイドンの両手が爆発する。

 

『ド、ドザァァイ…』

 

 俺が囮になり、何度も奴の手の平を開かせる。そのたびにジメレオンとガーディの攻撃が手の平に直撃し、大ダメージを与えていく。

 

 そしてついにドサイドンが膝をつく。今までのダメージが重なりついに相手を膝が着くところまで追い詰めてやったのだ。

 このまま一気に決めようと感情が高ぶったが引き留める、悪い癖だ。追い詰めた時こそよく相手を注意して見なければいけないと学んできたではないか。

 

「ッ!やっぱりまだ使えたか!」

 

 膝をつき、両手を地面につけてひれ伏していたドサイドンの体からダイマックスエネルギーが噴き出す。

 やはりまだエネルギーを残していたのか!

 

「おい、アカツキ!」

 

 ドサイドンの狙いはこちらに向いている。さすがにこれは危険だとマタハリがこちらに向けて声を掛けてくる。

 そのマタハリに向けてニッカリ笑いながら大きく指を立てる。

 

(^ω^)b

「骨は拾ってくれ!」

 

「お前ぇ!!?」

 

 ドサイドンお体が赤く発光し、新たなダイマックス技が放たれる。

 地面に膨大なエネルギーが吹きこまれるとドサイドンの体が半分地面の中に消える。そして地面をボコボコと隆起させながら高速でこちらに突撃してきた。どうやらこの技は地面を高速移動しながら対象に突撃する技のようだ、地面タイプのダイマックス技…『ダイアース』といったところかな?

 などと考えている間に隆起した地面が既に目前まで近づいてきていた。

 回避不可能!耐えるの不可能!当たれば即死!

 

「レオオオン!」

 

 ドサイドンがこちらにたどり着くすぐ直前で大きな水の防壁が立ちあがる。

 ジメレオンの全てのパワーを乗せた『みずのはどう』が俺達の姿を隠す水のヴェールとなって立ち上がる。

 しかし、その水のヴェールもドサイドンの体長からすれば障害物にすらなりえない。ドサイドンの『ダイアース』は超特急列車の様に水のヴェールごと標的を弾き飛ばしていった。

 

 

 

 

 

「と思ってるんだろろろろろろ!!!!!」

 

「ジメメメメメメ!!!!」

 

 『ダイアース』により全てを跡形もなく粉砕したドサイドン。

 だが俺達はジメレオンの粘々した舌をドサイドンの体に張り付けて難を逃れていた。痛い痛い、ドサイドンが高速で動いているのと地面を盛り上げながら進んでいるから土と石ころが飛んできて痛い。

 ちなみに無事の様にも見えるかもしれないが攻撃を食らわないというのは無理だった。なので地面タイプの攻撃に耐性がつくシュカのみを食べて二人でダメージを軽減させた。きのみ is GOD。

 まあ、ダメージを軽減させたが無事なのはドサイドンにしがみつくために使っている両腕のみ。あとはもう痛くて正直動かせない。それでも骨は折れてないのだから人間は中々に頑丈だ。

 

「ジ、ジメレオン…」

 

「…レオ?」

 

 ジメレオンも今の攻撃で相当のダメージを食らっていた。彼もドサイドンの体に張り付いているので精いっぱいだろう。

 だけど、そんな今だからこそ打てる手が残っている!

 

「お前の力に賭けるぞ!」

 

「レォォオォォン!!」

 

 最後はこうして相棒だより。それでもこいつは応えてくれる。

 

 ジメレオンの全身から青いエネルギーが迸る。

 それは荒れ狂い、すべてを飲み込む自然現象のごとき激流の力。ジメレオンの特性、『げきりゅう』による火事場の馬鹿力の大放出だ。

 

 突然自分の体から青い力が噴き出し驚いたのはドサイドン。まさか今の一撃で相手を葬り去れてなかったとは思わなかったのだろう。

 ドサイドンはその巨大な手を伸ばし、体に張り付いた虫を叩き落とすかのように手を伸ばしてくる。

 

「ガーディ、『ほのおのうず』!」

 

 そこにガーディから放たれた火炎の渦が放たれる。『ほのおのうず』はまるでしなった鞭のようにドサイドンの腕を絡め取り、片腕を封じ込める。

 

「ナイス、マタハリ!」

 

「うるせえ!最後はきっちり決めやがれ!」

 

 マタハリは目から涙を流しながら中指を立ててそう叫んだ。まあ、さっきので死んだと思うよね!

 マタハリとガーディの決死の足止め、無駄にはしないぜ!

 

「ジメレオン!」

 

「オォン!」

 

 掛け声とともにジメレオンは激流の力を両手から噴出させ、空を飛ぶ。

 俺達は水の勢いで上空十数メートルを飛び、ついにドサイドンの顔面の前に躍り出た。

 

『ザ!?ドォォォン!』

 

 こちらの狙いを理解したであろうドサイドンが『ほのおのうず』で拘束された腕とは反対の腕で顔を守ろうとした。が、もう遅い!

 ジメレオンは水の噴出を止めた直後、全ての力を収束させたドサイドンの顔程もある超巨大な水球を作り上げた。そして不敵な笑みを浮かべながら叫んだ!

 

『『みずのはどう』ぉおぉぉ!!!』

 

 俺の声とジメレオンの声が重なったのはほぼ同時。

 ドサイドンの防御よりも速く打ち出された超特大の『みずのはどう』はドサイドンの顔面に直撃した!!!

 

『ドォォぉオォォ!!!』

 

 『みずのはどう』の直撃とともにダイマックスドサイドンの体が爆発する。

 ドサイドンの食らったダメージがついに限界を超過し、内に溜めたダイマックスエネルギーとともに大爆発を起こしたのだった。

 

「あれ、これ……死……」

 

 ダイマックスエネルギーの大爆発に巻き込まれた俺は空の星となった。

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

「アカツキ!」

 

「っう、ぐぐ…」

 

 俺はダイマックスポケモンがやられた時に起きる大爆発に巻き込まれハシノマ原っぱの果てまでジメレオンと飛ばされてしまった。

 何とかジメレオンが最後の力で水の球体を作り、そこに飛び込むことで衝撃から身を守ることができた。ジメレオンは今ボールの中に戻って休息中だ。

 

「バカぁ、アホぉ!」

 

 誰かの声が聞こえたかと思ったらマリィだった。後ろの方から他の四人の声も聞こえてくる。

 

「バトルのためにあんな危なか真似して!ほんとに死んだらどないしよっと!」

 

 マリィが耳元で大きな声を上げるので耳がキーンとなる。心配と説教をない交ぜにした言葉はあまりに正論で胸の奥にザクザクと突き刺さってくる。

 確かに、最後の爆発は予想外だったとはいえとんでもなく危ないことをした自覚がある。今になって恐怖で体が震えてきている、正直『ダイアース』を食らった時は死ぬかと思ったし走馬灯?とかいう奴まで見えたっけ。

 

 

 それでも、何としても勝ちたかったのだ。

 この合宿で何か、明確なナニカが欲しかったんだと思う。

 

「へへ、勝ったぜ。ブイ」

 

 右手でVの形を作り、無理矢理にでも表情筋を動かして笑う。

 へたくそな笑いだろうな、と自分でも思う。頬がぴくぴくと痙攣しているのが自分でもわかるから。

 その顔が可笑しかったのか、それとも思っていたよりも無事そうだったからか。マリィも毒気を抜かれたような表情になり、ぷっと笑いをこらえる。

 

「…言いたかことは山ほどあるよ。でも…」

「うん。勝ったね、ブイ」

 

 俺の作った勝利のVと重なるようにマリィの作ったVが重なる。それでようやく、あの戦いに勝てたのだと実感ができた。

 

 先ほどまでは涙を浮かべていたマリィだが、今は満面の笑みを浮かべている。

 それがこの合宿で得た大きな勲章。その笑顔を目に焼き付けながら、

 

 

 

「マリィ、ごめん…」

 

「え?」

 

「い、今から死ぬ…お休み…」

 

「ちょ、アカツキ!?みんなはよ来て!アカツキが死んだ!」

 

 

 満足するとともに流石に体の限界が来たのか目の前が真っ暗になっていく。

 ぼんやりと沈んでいく思考の中で何故か「どうか財布の中身が半分になりませんように」と祈っていた。

 

 




最初の方に出てきた石の進化が云々というのはただのでっち上げです。
まあ実際石で進化すると新しい技とか覚えなくなるので、成長がカンストしてしまうというのは結構合ってるんじゃないかなと思ってたり思わなかったり。

ダイマックスバンドでポケモンがパワーアップしたのはゲーム再現しようと思った結果です。
マックスレイドバトルでは自分のポケモンが瀕死になった時に『応援』というコマンドが使えるのでそれを採用させていただきました。
が、『ダイウォール』は使えないので実質オリジナルですかね。
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