剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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三部作構成になるなんて聞いてない……HFかな?

作者の自己満足が爆発してしまった分文字数量が増えてしまったので分割いたしました。
それではどうぞ!




41、再戦 vsカブ

 

 ダイマックスしたドサイドンを倒した後、俺はアーマーガアタクシーを用いてエンジンシティに帰ってきた。ちなみにジムチャレンジ開催中はこのアーマーガアタクシーが使い放題らしい、ホテルといいローズ委員長が太っ腹すぎる!

 

 

 別れ際、四人には俺の新作カレースパイスを渡しておいた。

 

『離れていてもこの合宿で得た絆は不滅!このカレースパイスは俺と思って使ってくれ!』

 

『今日の夕飯にでも使うか』

 

『ありがとう、大切にさせてもらうよ』

 

『アカツキ君のカレーが食べられなくなるのは残念だったから嬉しいわ!』

 

『モルペコも喜ぶ』

 

 四者四様の反応の仕方にこれでお別れかと思うと少し寂しくなった。

 

『はぁ、んな寂しそうな顔すんなっての』

 

『は? してないし』

 

『…かわいくねぇー』

 

 それでもジムチャレンジを進めていればまた再開する時も近いだろう。

 

『次に会ったらポケモンバトルしようね!』

 

『こちらこそ受けて立つ!』

 

『アタシとポケモンのカラテ、もっとすごくなってるからね!』

 

『オレ様の活躍見とけよ!』

 

『アカツキ、次に会ったらコテンパンやけんね!』

 

 飛んでいく四つのタクシーを見送ったあと、俺は自分のタクシーに乗り込むのだった。

 

 

 

 

「あ!ようやく帰ってきたわね!」

 

「お帰りなさいだぞ、アカツキ!」

 

 エンジンシティの大階段前で出迎えてくれたのはホップとユウリ。二人は既にカブさんを倒して次のジムまで進むことが出来たのだが俺とマリィの再選が終わるまで滞在するつもりらしい。

 

「まあ一応あんたはアタシのライバルだし…ハンデは無しにしといてあげるわ」

 

 この数日間は日程スケジュールの都合で空いた分なのでノーカン、だと言いたいのだろうか?

 いつものユウリなら、

 

『負けたなら自分の責任でしょ、アタシとは大きく差が開いちゃったわね。オホホホー!』

 

 くらい言ってくると思っていたから意外だった。ホップに聞いてみればカブさんに負けた後の俺は自分で思っていたよりも悲惨だったらしく落ち込んでいた俺に気を使ってくれたという。ちなみにそれをぺらぺらと喋った後、ホップはユウリに絞められた。

 

「ゴホン。まあそういう感じだからさっさと勝ちなさいよね」

 

 わざとらしくせき込み、気恥ずかしそうに片目を開けながら言ってくるユウリはなんだか新鮮だった。

 だけど俺を待っていた4日間、それはジムチャレンジでも決して少なくない日数だ。

 

「…随分余裕なんだね、ユウリ」

 

 こちらがわざとらしく言ってみればすぐさまユウリの気恥ずかしそうな表情などどこかになりを潜め、いつもの強気で凶暴な顔に戻る。

 

「ふん!たった数日の日数差なんてすぐに取り返してやるわ!この程度アタシにとってはハンデにもならないもの」

 

 自信満々に言ってのける姿はこれこそがユウリ、といったところだ。やっぱりユウリはこうでなくちゃね。

 

「アンタががもし明日負けても勝つまで滞在してあげるわよ~?」

 

「俺だって負ける気なんてサラサラないよ!明日すぐに出発できる準備を整えておくといいよ」

 

「言ったわね。荷支度整えといてあげるわ」

 

 バチバチと互いの間で火花が散る。ユウリも俺もすっかり調子が戻ったのと少し久しぶりな感じがとても楽しく思えた。ちなみにホップは絞められて死んでいた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「ふー」

 

 そして当日、昨日までの楽しかった感じは一変し今日は自分も周りもピリピリとしているのがわかる。

 合宿の間は情報を断っていた俺達だが、聞いてみるとどうやらこの4日間新たにカブさんを突破した人がいないというのだ。

 俺達よりも早くに再戦をした者、俺達の後に到着して挑戦した者。その全てがカブさんとポケモンによって返り討ちにされた。

 

「それでも君が何とかしてくれるんじゃないかな~、ボル~♪」

 

「うわ、久しぶりに見た」

 

 ロビーで待機している俺の下に現れたのはジムチャレンジにたびたび現れる謎の生命体、ボールガイ。

 この行動理由不明、正体不明の謎存在はいつの間にかジムチャレンジのマスコットといわれるようになっていた。

 …みんなにはこれが本当にマスコットに見えているのだろうか?

 

「チャンピオン・ダンデが推薦した三人のトレーナー、そのうち二人がカブさんを倒したわけだから残りの君がこの閉塞した状況を何とかしてくれるんじゃないか~と皆期待してるんだボル~♪」

 

 なるほど。観客の人達から期待の視線が注がれていたのはそのためだったのか。

 だが俺が、俺がか…

 

「ぷっ…安心してよ、こんな状況すぐさま変わるからさ」

 

「およ、すっごい自信満々ボルね~。勝つ気満々ボル♪」

 

「いいや、俺じゃないよ」

 

「???」

 

「ほら、状況はすぐに変わるよ」

 

 俺がそういってモニターを指差した瞬間会場内が大歓声に包まれる。この歓声の出どころはスタジアムだ。

 その大歓声にボールガイも驚きスタジアムのバトルが映されている巨大モニターに振り向く。

 

『モルペコ、『ダイサンダー』!』

 

『ウララァァ!!』

 

ゴロロロロォォォォン!!!!

 

『く、『ダイアシッド』!』

 

『ニュアァァァ!』

 

『ッ! そこ、『ダイウォール』!』

 

『ペコォォォ!』

 

 

『ダイマックスがしのがれたか!』

 

『これで終わりにする、『オーラぐるま』!』

 

『それは前回エンニュートの『ほのおのムチ』で防いだ――!』

 

『無駄!『エレキフィールド』で威力が上がっとる!これは、止められんよ!』

 

『うらうら、うらぁぁぁ!』

 

『ニュ―――!』

 

 

 そこにはカブさんを降し、ほのおバッジを掲げているマリィの姿があった。

 

 最後のバトル、まるで昨日のマリィの言葉を思い返すような内容だった。

 ドサイドンとの戦いでも逆転の一手となった『ダイウォール』を使って相手のダイマックスをうまくしのぎ切り、通常のサイズに戻ったところを『ダイサンダー』によって作り出したフィールドを利用して決めるという戦い。

 

 それはダイマックスがポケモンバトルの華だというガラル地方ではあまり浸透しなかったという戦い方だ。

 今のバトルはマリィの目指すというお兄さんのバトルを彷彿とさせた。いつか俺も戦ってみたいな…。

 そして会場の盛り上がりは最高潮、不動のカブさんを破ったということで会場は大盛り上がりだ。

 

 

「…どうやら先を越されちゃったようボルね」

 

「いいや、これからさ」

 

 マリィの勝利を見ると俺にも勇気が湧いてきていた。

 不敵な笑みと意味深な言葉を口にした俺をボールガイのガタイとは不釣り合いなつぶらな瞳が見つめてくる。

 

 

 

 それからバーダン、デネボラさん、マタハリが立て続けにカブさんから勝ち星をもぎ取っていくと会場の盛り上がりはとどまることを知らないとばかりに上昇してった。今までの不動の優勢が一気に傾いていくような事態に会場は大歓声の大盛り上がりを見せていき、その興奮を間近で見たいとさらに会場は賑わっていく。

 

 誰一人簡単に勝ったという風ではなかった。

 カブさんのポケモンとその力はこちらの予想を何度も覆すように激しく攻め立て、熱かりし攻撃は一度食らってしまえば戦闘不能といっても過言ではない熱量を放っていた。

 それでも、

 

 

『ヤジロン、力を解放しろ!』

 

『ジーロー!!!』

『ネ、ネンド―――ル!』

 

『進化かッ!』

 

『これで終わらせる、『だいちのちから』!』

 

『ネーン、ドォォォル!!!』

 

 ダイマックスバンドを持たないバーダンは最後のポケモンに苦しめられた。しかし、対策として用意していたスナヘビが天候を常に張り替えることで善戦。ダイマックスポケモンの攻撃を受け切ったところでヤジロンが試合の最中での進化を果たし、最後の最後で勝利をもぎ取った。

 砂に全てを託し、最後の最後まで勝利を見据えていたヤジロン…じゃなくてネンドールとバーダンが起こした奇跡を引き寄せる勝利だった。

 

 

『…さっきは興奮しちゃってごめんね』

『でももう大丈夫。頭も綺麗に落ち着いた、なのに体はメラメラ燃えてるわ!これもアカツキ君の秘密兵器のおかげね!』

 

『ルチャ…』

 

『ごめんって…でも、昨日の大きいのに比べたらまだ全然いけるでしょ?』

 

『チャッブル!』

 

 デネボラさんは得意とする格闘戦を仕掛けるも炎タイプの『おにび』に苦しめられ、はた目から見てもとても焦っているように見えた。

 それでもあるときから立て直しを始め、ダイマックスしたポケモンを翻弄するルチャブルとのコンビネーションを見せつけた。巨大なダイマックスポケモンを相手取り、華麗に空を飛ぶルチャブルの姿は摩天楼を駆けるヒーローのようであり多くの子供達を湧き上がらせ、そして最後には大歓声をその身に浴びて勝利を収めた。

 

 

『マタハリ君、君はとても強くなった。それでも、僕と僕のポケモンの炎が君達を上回った』

『だけど、まだ君の奥にはまだ炎が灯っているようだね?』

 

『…腐るのはもうやめました』

『オレが勝ち上がるのを待ってる野郎がいるんです。そこにたどり着くまで、何度だって挑み続けるのが男をやるってもんだ!』

 

『良い気合いだ。来い、マタハリ君!』

 

 マタハリは格上の炎使いであるカブさんに終始苦戦を強いられていた。

 一度はその力の差に折れようとしていた。

 だが最後のポケモンが倒れるまで彼は指示を出し続け、ポケモンの勝利を信じて諦めなかった。観客の声は次第に彼の背中を後押しするように大きくなっていき、最後の決め手は、

 

『ガーディ、『きしかいせい』!!』

 

『ガディィィィ!!!』

 

 昨日までは確かに覚えていなかった技だった。その技を最後まで隠し続け、最後の最後で逆転を果たした。

 カブさんのポケモンが倒れ、マタハリのガーディもその場で立つこともできなくなり、審判が勝利を告げた瞬間にマタハリが笑顔で崩れ落ちた。その姿に会場全ての観客が拍手と喝采を送った。

 

 

「どういうことボル?なんでこんな立て続けに?」

 

 いつもは「ボル~~♪」なんてのんきに言っているこのボールガイがその結果に唖然としている。

 今まで多くのジムチャレンジがあってきた、そのたびにこのカブさんのジムは不動の関門として多くの挑戦者の心を折り挫折に追い込んできた場所だというのに何故という顔だ。

 

『――ジムチャレンジャー、アカツキ様。ジムチャレンジャー、アカツキ様。用意が整いましたのでユニフォームに着替え、ロビー中央の入場口までお越しください』

 

 マタハリが勝ちをもぎ取ると、ついに俺のところにまで出番が回ってきた。

 そのアナウンスにロビーにいる多くの観客の人が目線を向けてくる。かつて味わったことのない視線の数に晒されるがこの程度でもはや揺らぐようではない。

 

「じゃあねボールガイ、俺もこの波を大きくしてくるよ」

 

 そういいながらロビーの中央口に足を進めるのだった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 既にジムチャレンジを終えていた俺はすぐさまスタジアムへと続く通路に通される。マリィの試合からここまで早く回ってきたのはそういうカラクリだったのか。

 通路を通っていくとついにスタジアムへの入り口が見えてきた。

 そこに居た。

 

「やあ、三日。いや四日ぶりだったかな」

 

「こんにちは、カブさん」

 

 首にタオルをかけ、もうご年配だということを微塵も感じさせないエネルギッシュなオーラを迸らせるカブさんがそこには居た。

 

「君の前に挑戦しにきた四人から話を聞いたよ」

 

 どうやら他の四人ともこうやって話をしたらしい。

 

「みんなで強くなってきましたからね」

 

「いや、悔しいよ。ジムチャレンジの関門として長きにわたってこの地位を築いてきたというのに、まさか一度にここまで土を付けられてしまうとはね」

 

 口調はいつもとは変わらないように思える。しかし、言葉の節々から負けたことに対しての悔しさや自分への不甲斐なさや怒りなどが伝わってくるようだ。どんなに歳を重ねても、ジムリーダーとしての役割があったとしても、この人はトレーナーなのだということが理解できた。

 

「でもね、それもここで終わりにしようと思う」

 

 カブさんの鋭い視線がこちらを突き刺す。今までのバトルで既にカブさんの気持ちはフルスロットルにまで高まってきている、初めから手加減をするつもりなどさらさらないという気持ちが伝わってくる。

 それでも、俺はこう言い返す。

 

「連続突破記録、俺が更新させますよ」

 

 そういってカブさんの隣から一歩を踏み出す。スタジアムに足を踏み入れれば観客席からの大歓声がワッと洪水のように降り注いできた。

 大きく一歩一歩を踏み出していく俺の横を、小走りのカブさんがするりと追い越していく。

 

「…楽しみだよ」

 

 すっ、といわれたその言葉にはぐつぐつと煮えたぎった激情が込められていた。

 

 

 

『勝負は三対三のシングルバトル、それでは両者ポケモンを!』

 

 

 中央に着いた俺達に審判からのアナウンスが鳴り響く。

 その声に従って、二つのボールが空を舞った。

 

「行け、ウインディ!」

 

「出番だ、パルスワン!」

 

「ヴァオン!」

 

「ワォォォン!」

 

 スタジアムに立つ二匹の獣。

 犬系ポケモン特有の遠吠えを上げながらウインディは威嚇の態勢に入った。

 

「ヴヴヴ、ヴァオオン!」

 

 ウインディの鋭い目がパルスワンを貫く。

 その『いかく』はウインディの体から溢れる圧倒的な上位種のオーラにより効力を高めている。普通のポケモンならばそれだけで腰を抜かして動けなくなっていくだろう。だが、

 

「グルル、ワオォォォン!!」

 

 パルスワンはもう怯えない。

 『いかく』を正面から受け止めながら、それに負けぬと自分の力を誇示するようにと大きく声を上げる。

 

「…どうやら、以前の君とポケモン君ではないということだね」

 

「以前の俺達じゃないこと、すぐにでも証明してみせますよ!」

 

 

『先攻はアカツキ選手から、バトル開始!』

 

 そして長い睨み合いの末、審判によって勝負の火ぶたが切って落とされた。

 

「パルスワン、『スパーク』!」

 

 パルスワンが電撃を纏い、勢いよく突進を仕掛ける。

 

 さあ、どうする?

 以前は攻撃を回避することすらなく『いかく』だけでパルスワンを撃退せしめた。

 

 相手の出方を注意深くうかがう。

 するとカブさんとウインディは全く動いていなかった。先ほど、『いかく』を正面から受け切ったパルスワンの様に不動の姿勢を貫いている。もしかして、ジムリーダーとしてこちらのことを試そうとしているのだろうか?

 

「ワオォォン!」

 

「だったら遠慮なく決めさせてもらう!」

 

 パルスワン渾身の『スパーク』がウインディの巨体を吹き飛ばす。その威力にウインディが苦しそうな顔を浮かべている。

 以前までの俺とパルスワンならここでウインディにダメージを与えただけで安心感と満足な笑みを浮かべていただろう。しかし、パルスワンの嗅覚がウインディの体から漏れる些細な匂いの変化を見逃さなかった。

 

「ガウ!?」

 

 

「ウインディ、」

 

 

 

 

 

 

 

「『もえつきる』」

 

 

 

 

 

 

 その時、目の前に太陽が落ちてきたのではないかと錯覚した。

 

「なっ!?」

 

 ウインディの体から『かえんぐるま』などでは比較にならない豪熱が吹き上がる。技を使う前段階に放出された熱を感じただけで頭の中に警告音が鳴り響いてくる。

 

 そしてその直後360°ありとあらゆる方向に向けて豪炎が吹き荒れる。

 かつて味わったことのないほどの膨大な熱量が解き放たれトレーナーである俺やカブさんのみならず観客席にいる人にまで熱が届いていき、肌を焼いていく。

 

「ぐ、ぐおぉぉぉお!!?」

 

 『もえつきる』、そのすさまじい熱量が周囲一帯を灼熱の世界に塗り替える。その世界はただの人間にはあまりにも過酷すぎる。

 暫くの間フィールド全体がその炎に包まれていた。

 なんとかその灼熱地獄に耐えきる、気がつくと全身から汗が吹き出していた。なんて技だ……今までみてきた技の中でもこれだけの威力と範囲を誇る技はダイマックス技以外には見たことがない。だがそんなことよりも重大なことが目に入ってきた。

 

「パルスワン!」

 

「グ、グル……」

 

 全身に大やけどを負ったパルスワンが後方にいた俺のすぐ近くに転がっていた。炎に包まれていて気がつくことができなかった。

 だがあれほどの攻撃、相手もただではいられないはず…俺の予想は当たっていた。ウインディの体は自らの炎によって余すことなく焼け焦げていた。全身に大やけどを負っているのはウインディも同じだった。

 

 

「『もえつきる』は炎タイプが覚えることのできる最上位技の一つ。炎タイプがその身に持つ炎全てを放出することと引き換えに使うことができる技なんだ」

 

「ッ!そんな技をこんな、開始初っ端に!」

 

「僕は君を試すようなことはもうしないつもりだからね」

 

 ニヤッと笑うカブさん。

 つまり、最初に動かなかったところまでカブさんの予定通りということだったのだ。見通しが甘かったことをつきつけられる。

 カブさんは俺の出鼻を確実に挫き、後続への繋ぎすら破壊するために初手で最大のカードを切ったということだ。

 

 こんな戦い方は未だかつて見たこともなく、今の俺では真似することもできないだろう。

 

 

 

 

 だが、そんな歴戦の猛者であるカブさんの見通しも甘かったのだと直後に見せつけられる。

 

「ッ!パルスワン君が立ち上がった!?」

 

 全身に大やけどを食らい、脚をブルブルと震わせながらもパルスワンはその四本の脚で地を踏みつけ立ち上がった。

 

「ウインディの『もえつきる』をあの至近距離で喰らって耐えきったというのか!」

 

「生身のパルスワンが今の『もえつきる』を喰らっていたらとても無事ではすみませんでした…」

「でもパルスワンは咄嗟に『スパーク』で纏っていた電撃の量を増やして攻撃を防いだんです!」

 

 パルスワンが攻撃を察知できたところで、あの至近距離では回避にも防御にも移ることはできなかった。

 なればこそ攻撃は最大の防御ともいうべきか、攻撃中の『スパーク』がショートするほどの電撃を無理矢理体からひねり出し豪炎を防御したのだ。

 

「ウインディの『もえつきる』と同じです。全身から電撃を出す『スパーク』の原理を利用してすべての電撃を放出してダメージを弱めたんです!」

 

「ふ、ふふ。まさかこの攻撃が防がれるとは思っていなかったよ!」

 

 カブさんが大きな声で感服だと声を上げる。

 

「この戦法はかつてのチャンピオンにすらひと泡を更かせたことがあるというのに。本当に君とポケモン君の才能には驚かされるばかりだ!」

 

 そんな歴史がある戦法だとは思わなかった。

 二体のポケモンは大きなダメージを体に残しながら起き上がり互いの敵を睨み付ける。

 

「パルスワン、まだいけるか!」

 

「ワオン!」

 

「ウインディ、まだいけるね!」

 

「ヴァオン!」

 

 

『『かみつく』!!!』

 

 

 炎と電気を絞りつくした二匹の戦いは、ついに近接戦へと移行した。

 

 互いに自慢の脚力と強靭なあごの力をフルに活かした高速なバトルが始まる。お互いの牙が毛皮を削ぎ、爪が切り裂き、体のいたる所に無数の裂傷をつけていく。

 そしてその均衡を崩したのはこちら、

 

「ワオォン!!」

 

「ヴァ、オン!!?」

 

 パルスワンの『がんじょうあご』から放たれた強力な『かみつく』がウインディの脚を捉える。

 攻撃が当たった瞬間ウインディの脚からバギッ!という音が響き渡り、パルスワンの『かみつく』がどれほどのダメージなのかを容易に連想させた。

 

 片足がつぶされたウインディはその場で倒れ込み、パルスワンは反撃を警戒してすぐさま離脱する。

 だが脚が一つ潰されたことで、もはやウインディの不利は必至!

 

「畳み掛けろ、『かみつく』!」

 

「ワオォォン!」

 

 片足がつぶされたウインディの周りをぐるぐると駆け回って翻弄し、ウインディの死角に入ったところでその首にめがけて噛みついた。

 

「ヴゥ…!」

 

 首元に噛みつかれたウインディはそのあまりの威力に苦痛で顔を大きくゆがませる。

 このまま戦闘不能にまで持ち込んでやる!

 

 

「ウインディ、『いかく』だ!」

 

 

 カブさんが指示したのは、バトルの最初にパルスワンが打ち破った『いかく』。

 アーマーガアとの対決を乗り越え、強者からの威圧に対して高い耐性を身に付けたパルスワンにその手は二度喰らわないはずだ。

 

 特に今のウインディは炎技を失い、そして脚を一つ失った状態だ。

 相手への威圧という点で見れば、最初の威嚇に比べればその効力は大きく落ちているはずだった。

 

 しかし、多くを失った上位種から向けられたむき出しの敵意。それがパルスワンの意識とは無関係に体の力を縛り、束縛する。

 『かみつく』の力が不意に弱まったことでウインディは首を大きく振るい、パルスワンの体を空へと投げ飛ばす。

 体に力が入らないまま落下を始めたパルスワン、その無防備な体へ向けて放たれた強力な技が終わりをもたらした。

 

「ウインディ、『きしかいせい』!」

 

「ヴァオオン!」

 

 マタハリのガーディも使った最後の大技。食らったダメージを力に変換し、勝敗を覆させるほど強力な一撃。

 それによりウインディの傷ついた体が光り輝き、そこから放たれた流星のような体当たりが落下するパルスワンの体を貫いた。

 

 

「パルスワン!」

 

 

『パルスワン、戦闘不能。ウインディの勝ち!!』

 

 

 審判によりパルスワンの戦闘不能が言い渡される。

 一体目から思いもよらない波乱の展開。最大のバトルが幕を開けた。

 

 

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