剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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ジャンプ面白いなー
って読んでたら今連載してる20作品の内10作品が今年から始まった新連載で「マ?」となりました。


48、最強のジムリーダーと英雄のタペストリー

 

 

 ローズ委員長のお茶会で満足するまで都会のスイーツに舌鼓を打った俺達はその後別行動を取ることにした。

 ユウリはショッピングに、そして俺は街の名所めぐりにだ。

 ナックルシティにはガラル地方中世の歴史的な建物がごまんと残っており、エンジンシティのような近代的な都市とはまた違う人の賑わいをこれでもかと見せていた。

 

「へー、中も見学できるのか。見てみようかな」

 

 中世の建物は城壁を作られた頃と同じ時代に作られたものらしく、中にはその時代の食器や工芸品などが飾られており一つの博物館のような構造をしていた。

 他の地方から引っ越してきた俺としてもこういった歴史の品というものを見るのはワクワクする。

 

「おっと、これは剣?」

 

 飾られてあったのは中世の騎士が着ていたという全身を覆う鉄でできた甲冑。

 甲冑の左手には分厚き盾が、右手には鋭く磨かれた剣が握られている。中身は入っていないが、勇ましい騎士の姿には男の子として惹かれるものがある。

 

「…そういえばエンジンシティのホテルでは英雄の話を聞いたっけ」

 

 エンジンシティのホテルに飾られていた金色に輝く英雄の像の話を思い出す。あの話をしてくれたソニアさんは今頃どうしているだろうか。

 俺がそんなことを考えていると他の観光客の話が聞こえてきた。

 

「すっげえ迫力だぜ。さすが歴史を残す街、ナックルシティだよな」

「そういえば聞いたか?この街には普通の人間には入れない『宝物庫』なんてものがあるらしいぜ」

「それは見たいな、どこにあるんだ?」

「街の西側にあるらしいが行っても許可がないと入れないらしいぞ」

 

 『宝物庫』か、随分大層な名前だがここにある昔の品よりもずっと価値のある高いものとかが飾ってあるんだろうな。

 それこそさっきまで考えていた大昔の英雄についての品なんかがあったりして。

 

「でも許可がないんじゃ入れないよなぁ」

「なんの許可が必要って?」

 

 ふと呟いたところで横から声を掛けられる。

 その女性の声に振り向いて見ればそこには久しく見たサイドテールの女性が片手で髪をもてあそびながら立っていた。

 

「ソニアさん! おひさしぶりですね」

「いえーい。ジムチャレンジ、順調に勝ち上がってるみたいでなによりね」

「といっても今日ここにいるのは観光のためですけどね」

「いいのよジムチャレンジなんてそんなもので。ガラル地方をまるっと巡るんだから観光しなくちゃ損よ、損」

 

 そういいながらソニアさんの顔が少しずつ暗くなっていき「ダンデ君……トラブル……うっ、頭が」と頭を抱えていく。以前にもこんなことがあったがダンデさんは本当にジムチャレンジ中何をしていたのだろうか?

 

「ま、まあいいわ。それで少年、なんの許可が必要ですって?」

「さっきナックルシティには宝物庫があるって小耳にはさんで。でも、入るには許可が必要だから無理かなって」

「ふっふっふ、少年よ。その願い、叶えてしんぜよう!」

「ま、まさかソニアさんは許可を!?」

「ええ、その通り!ローズ委員長から許可を……」

「マグノリア博士の孫だからってその権力を乱用して許可を取ったんですね!」

「そうそうお婆様の権力が……って、違うよ!? ローズ委員長から正式に許可を貰ったの、というかその時キミも一緒に居たでしょ?!」

「(バウタウンでの会食を思い出す) ああ、そういえばそんなこと言ってましたね。宝物庫がヒントになるかもしれないとかなんとか」

「あ、あんまりそういうこと言わないでね? ほら、世間体が」

 

 あたふたと慌てふためく年上の女性はなんだかとても新鮮であった。

 マグノリア博士に小言を言われて肩をすくめていたり、ダンデさんに振り回されていたり、知的な私見を披露したりとソニアさんは本当にいくつもの顔を持っている。

 そういえば、と思い前々から気になっていたことをソニアさんに聞いてみることにした。

 

「そういえばソニアさん」

「なに?」

「ダンデさんとは付き合ってないんですか?」

「ブーーーーー!!!」

 

 前々から気になっていた質問をド直球に聞いてみるとソニアさんが噴き出す。ゲッホゲッホ、といくらかえづいた後でなにやらこちらのことをおかしなものを見るかのような目で見てくる。

 

「あ、あたしとダンデ君が? 付き合ってる?」

「はい」

「ないない、ないないないないない」

 

 両手をブンブン振るって否定の意をこれでもかと示してくる。

 

「でもダンデさんと幼馴染なんですよね」

「そりゃあダンデ君とは子供の頃から一緒だけど。でも、だからって付き合っているってのは飛躍しすぎなんじゃないかな?」

「俺、幼馴染萌えなんです」

「えぇ……」

「タネの頃から一緒に育てたきのみ同士を、最後には一緒にカレーにしてあげるのとか良いですよね……」

「なんかレベル高くないかなその話」

「じゃあ隣同士の家に住んでる幼馴染が結ばれる話とか」

「今度は一気にベターな幼馴染みの話になったわね…」

 

 幼馴染み最高!!幼馴染み最高!!

 さあ画面の向こうにいるそこのあなたも幼馴染み最高と叫びなさい。

 

 

 

 おっと思考が少し異次元に行ってしまっていたらしい。

 いかんいかん、こういうのはカレーの話をする時だけにしないと。

 

「まあ、あたしもそういうことを考えたことが無いとは言い切れないけどさ…」

 

 といいながら左のサイドテールを手持ち無沙汰にくるくると弄るソニアさん。

 

「お、これはもしかして脈あり?」

「最近はお婆様から早く孫の顔みせろって言われたり……」

「ソニアさんがすでに孫なのでは?」

「その割には早く自分の後を継げって小言言われるし……」

「ミミロルとホルビーを追うもの一兎を得ず、ってやつですね」

「なのにモデルとジムリーダーを兼任してるルリナの方はなんかヤローさんといい感じっぽいし……」

「そういえばルリナさんって『ヤローくん』って呼んでましたね、滾ります」

「でも研究に没頭してたら出会いなんかないし!!」

「切実ですね」

 

 ソニアさんの語尾が弱気な感じからどんどん強くなっていくのを感じそれとな~く建物の外へと誘導していく。さすがに建物内でこの話はね…

 

「もー、ただでさえブラッシータウンは穏やかだけど出会いがないのにさらに研究室なんかにこもってたら彼氏なんてできるわけがないでしょコンチクショー!!!」

 

 もはやただの愚痴になってきてしまっている。20代の女性にこの手の話題は禁句だったようだ、アカツキは覚えた。

 とりあえず色々な愚痴を吐きまくって疲れ切ったソニアさんをベンチに座らせてから近くの自動販売機で買ってきた『おいしいみず』のうち一本を手渡す。

 

「ぐすん……ありがとね」

「いえ、こっちもデリカシーにかけてました」

 

 二人でベンチに座り『おいしいみず』を呷る。冷たさとなめらかな舌触りがのどを駆け抜けていく。

 

「……気遣いできるし……ありか?」

「???」

 

 なんか横でぼそっと呟いているソニアさんの言葉はよく聞こえなかった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 というわけで街の西側にあるやたら大きくて厳重な造りの建物にたどり着く。

 宝物庫、という言葉の通り出来たのは恐らく城壁と同じく中世の頃なのだろう。頑丈なレンガ造りの構えはただならぬものがあるとみている側からもわかるほどだ。

 

「これは、ドラゴン?」

 

 宝物庫の入り口、木で出来た丈夫な扉の上にはドラゴンの像が埋め込まれている。

 

「ここナックルシティのジムリーダーは代々ドラゴンタイプの使い手でね。城の宝物庫を守る番人、って役割も持っているのよ」

「へー。確かに昔話とかだとドラゴンタイプが集めた宝物を守っているって話をよく見ますしピッタリですね」

 

 ジムリーダーが番人として守っているならこれほど頼りになるものもないだろう。襲う方だって願い下げだろう。

 そんな感じで宝物庫の前で立ちこんでいると後ろのバトルフィールドからポケモンバトルの音が聞こえてくる。

 

「いけトリトドン、ぽわーぐちょぐちょ!」

「……とどん」

「なんのサイドン!」

「ドドォン!」

 

 宝物庫に背を向けると、そこには若者が操るトリトドンと壮年の男性の操るサイドンがバトルをしていた。

 どちらも地面タイプではあるがトリトドンは水タイプを持っている。地面・岩タイプのサイドンではきつい戦いだ。

 

「押し切るぞ、『みずのはどう』!」

「とーどー、ンン!」

 

 トリトドンの口に集まった水のエネルギーが『みずのはどう』となりサイドンに一直線に飛んでいく。

 

「なんの、タイプで負けようと年期が違うわい!

 サイドン、『アームハンマー』!」

「ドォン!!!」

 

 しかし、効果抜群の技を軽々と『アームハンマー』がはじき返す。

 

「なっ!」

「あっ!」

 

 二人のトレーナーが同時に声を上げる。

 『アームハンマー』によって見事にはじき返された『みずのはどう』が宝物庫に飛んでいく。

 そして今、俺達がいるのは宝物庫の前だ。

 気がついた俺はなんとか避けようと体を動かす。

 そしてギョッとする。体を少し動かしたところで気がつく、俺の後ろにはソニアさんがいることに。

 

「(このまま避けたらソニアさんにッ!)」

 

 未だ宝物庫を眺めているソニアさんは全く気がついていない。

 ソニアさんに当てさせるわけにはいかなかった俺は避けようとする体に急ブレーキをかけると全身を広げ、攻撃を受け止めるための盾とする。

 

「(なんとかこれで!?)」

 

「いい反応だ!男だぜぇ!」

「ジュラァァァ!」

 

 俺が攻撃を受け止めようとした瞬間、男性の声とともに目の前に巨大な鉄の塊が降ってくる。

 いや、それはただ鉄の塊ではない。

 

「これは、ジュラルドン!?」

 

 全身を鋼鉄で覆われた鋼の竜が目の前に立ちふさがる。

 そしてジュラルドンは飛んできた『みずのはどう』に対して何の危機感も抱かぬとばかりに難なく受け止める。

 弾けた水飛沫が周りに散らばりながら後ろに立っていた俺は驚く。

 なんとこのジュラルドン、攻撃を食らったというのに一歩も体が動いていなかった。重厚な鋼の肉体はあらゆる攻撃を寄せ付けない無敵の鎧なのだ。

 俺が茫然としていると、どこかで見たことのある褐色の肌をしたジュラルドンに男性が駆け寄る。

 

「これくらいじゃびくともしねえよな」

「ジュララァァ!」

 

 男性がカンカンと鋼の体を叩いて無事を確認するとジュラルドンが勿論だ、とばかりに唸り声をあげる。

 そしてバトルフィールドから走ってきた壮年の男性と若者が褐色の男性に必死に頭を下げ始める。

 

「もうしわけありませんキバナさん!」

「お怪我はありませんか!?」

「心配すんな、あの程度の攻撃じゃこいつには傷一つ付かねえよ。なあ相棒」

「ジュンジュラァァ!」

 

 ジュラルドンの方はやはりというか無傷。

 そして謝られている男性の方はキバナというらしい。キバナ…キバナ!?

 

「それより、謝るべきなのはオレ様にじゃなくてこっちの奴らにだろ」

 

 そういって褐色肌の男性がこちらを向く。

 男性は頭にオレンジ色のバンダナを巻き、荒々しいまでの八重歯を光らせる。

 その姿は、あの旅立ちの日にチャンピオンダンデと壮絶な死闘を繰り広げていたドラゴン使いにしてガラル地方最強のジムリーダー。

 

「八番目のジムリーダーのキバナさん!?」

「俺のこと知っていやがったのか。なら話は早い、オレ様がそのキバナだ!」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「あれ、キバナ君じゃんやほー」

「ソニアじゃねえか。久しぶりだなー!」

 

 と俺のことは放置され知り合いらしい二人はさっそく会話に花を咲かせる。

 

「だ、大丈夫でしたか?」

「あ、はい。キバナさんとジュラルドンが守ってくれてたので」

「私たちもバトルに熱くなりすぎてしまいました。本当に申し訳ない」

 

 無事、の一言に若者と壮年の男性はホッと一息を吐く。

 二人には”よくあることだけど次からは気を付けてほしい”といってそのまま帰す。

 とぼとぼと歩いていく背中には哀愁が漂っていた。わざとではないとはいえ年下の自分に色々と言われるのは堪えたのだろう。

 

「そうだ、キバナ君!この子、この子がダンデ君の推薦したトレーナーよ!」

 

 俺が二人の背中を見送っているとソニアさんにガッと掴まれる。まるでお気に入りの人形を見せびらかすようにして楽し気に紹介していく。

 

「ダンデ君の弟のホップとその友達のユウリ、そしてこのアカツキ君よ。結構強いんだから!」

「へぇ…聞いてるぜ、この前カブさんを倒したんだってな……」

 

 じっくりと値踏みをするようにこちらを見る。

 その目は獲物を見つけた獣のように獰猛で、こちらの一挙手一投足を余さず視界に収めていく。

 しばらくその圧に晒されていたものの、ふっとその重圧が消える。

 

「いいねぇ……

 ダンデの奴が推薦したっていうからどんな奴か気になっていたが、さっきの男気と言い良いトレーナーだな!」

 

 キバナさんが肩をバシバシと叩いてくる。

 どうやらキバナさんのお眼鏡にはかなったようでホッと一息を吐く。見た目の荒々しさとは裏腹にとても気さくな人だった。

 

「今三つ目ってことは次は四つ目だよな、俺のところにまでちゃんと勝ち上がって来いよ!」

 

 そういってキバナさんは懐からカードを取り出すと手渡してくる。

 これでジムリーダーのリーグカードは四枚目だ。

 

「あ、そうだキバナ君この前のエキシビション見たよ。またダンデ君に負けてたわね」

「負けたオレ様もまた美しい、だろ」

「それ俺見てました!ダイマックスポケモン同士のバトル、かっこよかったですよね!」

「そらみろ。勝とうが負けようが俺ってやつは華になっちまうんだ」

「もーダンデ君に勝てる可能性があるのなんて、もうキバナ君くらいしかいないんだからシャキッとしてよね」

 

 そういってソニアさんはキバナさんの背中をバシバシと叩く。

 

「むうっ」

 

 ソニアさんが何気なく言ったその言葉が俺の琴線に触れる。

 

 ガラリ地方のチャンピオン・ダンデ。

 その不動の名声はチャンピオンに就任して以来公式戦無敗という伝説に支えられている。そのダンデさんのポケモンを一番多く倒しているのがこのキバナさんだと以前紹介されていたのを知っている。

 だが、俺達三人は旅立ちの日に約束した。この中の誰かがダンデさんのところまで勝ち上がり、そして勝つのだという誓いを。

 その誓いを立てた俺の前で「ダンデ君に勝てるのはキバナ君くらい」などと言われて黙っていられるわけがなかった。

 俺はソニアさんの袖をグイグイと引っ張る。

 その子供っぽい仕草にソニアさんがどうしたの?と聞いてくる。

 

「俺が倒します」

「え?」

「俺がダンデさんを倒します」

 

 あまりに真剣なまなざしにソニアさんも少し面を食らう。

 今の俺にはメラメラと対抗心というものが湧き立っている。この地方ではダンデさんに続く実力者、その相手に向けて視線を移す。

 

「へぇ……」

 

 見つめた先は最強のジムリーダー。

 俺の視線を受けたキバナさんの目が細められ、先ほどの値踏みするような視線とはまた違った瞳を向けてくる。

 まだまだ彼らに比べれば小さな獣である俺にすら彼らは容赦をすることなく牙をむく。それがポケモントレーナーの本能であり、どれだけ隠そうとしても隠しきれない。

 

「おもしれえな。誰が、誰を倒すって?」

 

 挑発するように聞き返してくる。

 その言葉の意味の重みを知っているがゆえに軽々しく口に出すことすら憚られる、と言わんばかりの重圧がかかってくる。

 

「俺が、ダンデさんに、勝つんです」

「いい啖呵だ、益々気に入ったぜ。名前、もう一回教えてくれ」

「アカツキ。ハロンタウンのアカツキ」

「ハロンタウンのアカツキ……

 その言葉が本当かどうかは、最後のジムチャレンジで確かめさせてもらうぜ」

 

 そういってキバナさんが俺の横を通り過ぎていく。

 過ぎ去った直後後ろからスマホの電話機能とともにバイブ音がなる。

 

「よう俺様だ、今から全員トレーニングしてやるからジムに集合な」

 

 それだけ言って再びピッという音とともに電話が切られる。

 振り返れば両手をポケットに突っ込みナックルジムへとまっすぐに向かっていくジムリーダーの後ろ姿。

 俺が振り返った直後にあちらもこちらをチラリとみて、八重歯を立たせてキラリと光らせる。

 その姿は今まで戦ったどんなジムリーダーよりも圧倒的で、強烈なオーラを振りまきながら去っていった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「キバナさん怖ぇ……」

 

 キバナさんが去り宝物庫に入った後になってようやく思考が回復し始めた。

 最強のジムリーダー相手にとんだ大言壮語を吐いてしまった……しかも最後の電話絶対ジムトレーナー達鍛え直すための電話じゃん、絶対強くなるじゃん。

 

「あばばばばばば」

「ほらほら、宝物庫の本殿まですぐそこだよ。階段登る」

 

 ソニアさんに背中を押されながら宝物庫の本殿へとつながる階段を登っていく。どうやら宝物庫は何か所かに分かれておりお目当てのお宝というのは一番奥にあるらしいのだ。

 幸い他に宝物庫に出入りしている人はおらず奥にはすんなりと行くことができた。

 そして目の前には厳重で大きな扉が立ちふさがっている。

 その見た目とは裏腹に扉はすんなりと開き、俺達は宝物庫の最奥に足を踏み入れる。

 

「これは……」

「ガラル地方ができたとされる頃に作られた四枚のタペストリー…」

 

 宝物庫の最奥はとても広く、そして静寂に包まれていた。

 しかし、そこに飾られていたのはたった四枚のタペストリー。掛け軸、のようなものだ。

 ガラル地方ができた時に作られたとされるタペストリーは左の方から順番に作られているらしくソニアさんが説明を入れてくれた。

 

「一番左が始まりのタペストリー。

 描かれているのは二人の若者と空から落ちてきたねがいぼし。」

 

「その隣にある二枚目のタペストリー。

 空は暗黒に包まれ、地上は争乱に包まれる。災厄を前にして困惑する二人の若者。」

 

「その隣にあるのが三枚目。

 暗黒と争乱。災厄を撥ね退ける剣と盾を手に入れる二人の若者。」

 

「一番右が最後のタペストリー。

 空を覆う暗黒は晴れ、争乱は終結する。王冠を掲げ、手に手を取り合っている二人の若者。」

 

「まあ、こんなところね」

 

 ソニアさんの絶命に従いながら、タペストリーを一つ一つじっくりと眺める。

 

 一枚目には二人の若者と空から降ってくる様子が描かれている。

 

 二枚目には空が黒と赤による暗黒で染まり、地上が争乱に染まっていく様子が描かれている。二人の若者は怯えている。

 

 三枚目にはその暗黒を切り裂く剣と、暗黒から身を護る盾が描かれている。二人の若者はそれに手を伸ばしている。

 

 四枚目には暗黒が晴れ、太陽が暖かく世界を照らしている。城と思われるものを背景に二人の若者が王冠を被り手に手を取り合っている。

 

 一つの物語としてこれ以上は無い、と言わんばかりの流れだった。

 

「これはガラルに王国ができるまでを伝えるタペストリーと言われているわ。

 ねえアカツキ。あなたはこれを見てどう思った?」

 

 今までは語り部としていたソニアさんが今度はこちらに語り掛けてくる。

 おそらくこの二人の若者が荒れたガラル地方を統べ、王国を建国したという英雄なのだろう。英雄の話は以前にも聞いた、だがここで一つの矛盾が生まれる。

 

「ホテルにあった英雄の像は一つだった。なのに、このタペストリーには英雄は二人描かれている」

「そう、その通り。エンジンシティにあった英雄の像はどう見ても一人だった」

 

 そこまで行ってソニアさんは俺から視線を外しタペストリーに向く。

 

「でもこのタペストリーには若者が二人描かれている。

 英雄は果たして一人なのか二人なのか。そして空を覆う暗黒、ターフタウンの地上絵に描かれていた巨大な存在とブラックナイトとの関係性はなんだったのか」

 

 そこまで言葉を締めくくると目をつむり途端に黙ってしまう。

 今まで驚くほど饒舌に言葉が出ていたというのにその切り替わりの速さには驚きだ。ソニアさんが黙ってしまったことで宝物庫には静寂が戻る。

 

「ソニアさん」

「……あっと、ごめんね。深く考えだすと周りのこと見えなくなっちゃうの」

 

 しばらくして声を掛けるとソニアさんが正気に戻る。空白の時間ずっと頭を回していたようだ。

 

「ありがと。言葉にしたおかげでいくらか考えが整理できたわ。

 あたしはまだタペストリーを調べておくけど……君はまだやることがありそうね」

「はい。少しでも特訓をしようかと」

「うんその調子。次のジムも、キバナ君に挑むのもあたしは応援してるからね」

 

 そういって俺はソニアさんと宝物庫を後にする。

 タペストリーに描かれていた王国ができるまでの物語。それは果たしてどこまでが本当だったのだろう。

 

 

 

 

「頑張れ、未来のチャンピオン!」

 

 宝物庫を出る際ソニアさんの声が背中を押す。

 俺は頭のニット帽をさらに深く被りながら、より一層の気合を入れるのであった。

 

 




幼馴染み最高!
幼馴染み最高!


幼馴染みの悪魔、俺の寿命を十年捧げます。
世に幼馴染み大勝利物語が増えますように……
でもそれは他のヒロインを蔑ろにしろというわけではなくちゃんと納得できる理由と二人の関係をより深く掘り下げる俗にいうエモさの追求をですね……(面倒くさいオタク)

あと僕はめんどくさい女の子も好きです。
ツンデレも最高!
ツンデレも最高!
ツンデレの悪魔、俺の寿命を(以下略
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