剣盾旅記録   作:鳴神ハルキ

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5、新しい仲間

まどろみの森を抜け無事ハロンタウンに帰還したアカツキとユウリ。

 

「もう柵を壊して森に入ったりするんじゃないぞ」

 

「メェ?」

 

二人がウールーを仲間のところにまで連れて行くと仲間達も心配していたのかどんどんと集まってくる。仲間に何か言われているようだがくだんのウールーはポケっとした顔で首をかしげている、あんな場所に迷い込んでおいてこの態度とはよほど大物なのかそれとも天然なのだろうかとユウリと話しながら帰宅し、家の前で別れる。もともとはポケモン図鑑を貰いに行く旨を伝えるだけだったはずが随分と濃い体験をしてしまったと思いながらスボミーのいる庭を抜け、玄関をくぐる。

 

「ただいま」

「あらお帰りなさい、ダンデさんが心配してたみたいだけど大丈夫だった?」

「うん、でも森の中で不思議な体験をしてさぁ……」

 

一応ということでアカツキは母親に体を確認してもらったが特に外傷などはなかったようだ。それからポケモン図鑑を貰いに行く旨を伝えると既にダンデから連絡は来ていたようですんなり許可は下りた。少し多めのお小遣いと傷薬やモンスターボールを受け取るとアカツキは元気よく家を飛び出していった。

既にホップとユウリは町を出たと連絡が来ており急いで1番道路を進むアカツキ。基本は一本道のその道路を突っ切るだけなのだが運悪くウールーたちの群れに道が塞がれていた、野生のウールーと放し飼いにされているウールーが混同しているハロンタウンではよくあることだ。どうしようかとアカツキが悩んでいると少し戻ったところにある脇道のことを思い出す。普段はあまり使われないその道は野生のポケモンが出没する危険な道だが今のアカツキには頼りになる相棒がいる、あまりみんなを待たせるわけにもいかないと考えたアカツキは脇道へと足を踏み入れた。

 

「……今まで通ったことなかったけどこっちの道はあんまり人がいないな」

 

脇道は本道より少し狭く草木も多い、その分野生のポケモンの生息地にもなっているらしく偶に生物の息遣いが聞こえてくる。まどろみの森のように不思議な感じはなくこちらは日も差し風も通っているので自然の温かみを感じる。すると少し進んだところで茂みから一匹のウールーが顔を出してきた。もはやウールーは生活していて見ないことの方が珍しいハロンタウン民、見知らぬ道を進んでいたアカツキにとっては驚きよりも見知った存在と遭遇したことによる安堵の方が大きかった。

 

「ん?」

 

しかしそのウールーをよく見たアカツキは気づく。

 

「お前、もしかしてさっきのウールーか?」

 

「メェ?」

 

そう、先ほど森に入り込みなんとか町まで連れて帰ったウールーが今度はこちらにまで迷い込んでいたのだ。またこいつは…と思ったアカツキだが1番道路にはウールーもよく出没することを思い出す、事実先ほど道を封鎖していたのもウールーだったではないか。かといってこのままウールーを放置するのも忍びない、どうしようかと考えているとウールーが近くまで寄ってきて体を寄せてくる。もふもふとしたウールーの羊毛は気持ちがいい、ホップがよくウールーに抱き着いているのもうなづけると思っているとどうやらアカツキの腰についているものが気になる様子であった。

 

「『やすらぎのすず』、これが気になるのか?」

 

「メェェ♪」

 

『やすらぎのすず』をチリン♪と鳴らすとウールーは気持ちよさそうに鈴の音に耳を傾ける。右へ、左へと鈴に釣られて動くウールーに癒される。暫しの間ウールーと戯れるアカツキ。しかしチリンチリンと鈴を鳴らしすぎたせいか、ふとアカツキが周囲を見渡すと周りには一人と一匹を囲むポケモンの群れが出来上がっている。

ウールー、ココガラ、クスネ、ホシガリス、比較的一番道路で見かけられるポケモンだが数が多すぎる。20匹を超えるポケモンの群れに囲まれたアカツキは倒すことを諦め何とか脱出しようと考えを巡らせる。幸いポケモン達は鈴の音に心を奪われ目を閉じて完全にリラックスしている、何とか今のうちにと足を動かし距離を取るが突如としてその静寂は破られる。

 

「バリ…バリス!」

 

静寂を破ったのは、普段この一帯では姿が見られないホシガリスの進化系、よくばりポケモンのヨクバリスであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

突如として現れた進化系のポケモンにたまらずポケモン達は踵を返し散り散りに去っていく。そしてその場にはアカツキ、ヨクバリス、そして未だに鈴の音に耳を傾けるウールーだけが残った。

ポケモン達が消えたことでいくらか落ち着きを取り戻したアカツキだが目の前で強烈な存在感を放つヨクバリスを前に目を離すことができない。さきほどアカツキ達を囲っていたポケモンたちと比べて明らかに違う強さを誇るポケモン、進化したポケモンとはそれほどの強さを身に着けたポケモンなのだ。

 

「バ~リス、バリ、ヨクバリス!」

 

何を言っているかはわからないがどうやらヨクバリスは『やすらぎのすず』を御所望のようだと理解するアカツキ。モンスターボールを投げて捕まえるという手もあるがそんな隙すら見当たらない、明らかに自分たちよりも格上のポケモンだということを理解する。だからといってここで引くわけにはいかない、と鈴を握り締めたアカツキは空のモンスターボールではなく相棒の入ったモンスターボールを投げだした。

 

「いけ、メッソン!」

 

「メソ!」

 

挑んでくるとは思わなかったのかヨクバリスは目を丸くするがすぐに目を細めて小馬鹿にしたような表情を取る。ヨクバリスにとっては遥かに格下だとわかる相手の威嚇行為など怖くもないのだろう。

 

「メッソン、『みずでっぽう』」

 

先手必勝とばかりにすかさずメッソンに指示をとばす、吐き出された水の勢いは初めてのバトルの時よりもずっと強くなっている。ホップとユウリ、そしてまどろみの森であの謎のポケモンと戦ったことで強くなったのだ。そして『みずでっぽう』は避けるそぶりすら見せないヨクバリスにへと直撃する。これなら!と思ったアカツキだが、水が晴れた後には変わらず涼しい顔で立っているヨクバリスの姿が。

 

「そんな…」

 

驚きの隠せないアカツキを尻目にヨクバリスはその重い腰を上げメッソンへと突撃する、ただの『たいあたり』だが威力がウールーのものとは桁違いだった。避けることすらできずに『たいあたり』を受けたメッソンはそのまま樹に叩きつけられる、瀕死にはなっていないがもう動くことすら厳しいだろう。アカツキがヨクバリスを見るとヨクバリスはニヤニヤとした表情で近づいてきている。なんとかしようとするがもうアカツキにポケモンはいない、頼みの綱のメッソンは既に瀕死寸前だ。何もできない自分に悔しくなり手の中の鈴をさらに強く握りしめる。

 

『『やすらぎのすず』よ、これを持ってればポケモンと早く仲良くなれるらしいわ』

 

『気にしなくていいわそれあたしが作ったものだし』

 

大切な友人に貰った大切なもの、そんなものひとつすら俺は守れないのかとアカツキは唇をかみしめる。そうしている間にヨクバリスはアカツキの目の前まで来ていた。ここまでか、とアカツキが諦めた瞬間ヨクバリスは横から飛び出してきた白い塊に吹き飛ばされる。なにが起きたのかわからないアカツキがとばされたヨクバリスの方を見るとそこにはあのウールーが戦っている姿が見えた。

さっきまでのポヤポヤとしていたウールーの姿はなくヨクバリスの攻撃を自慢の羊毛で受け止め、反す刃で『たいあたり』を決めるウールーの姿があった。攻防は一進一退、攻撃を受け止めカウンターを決めるウールーと自慢のパワーでそれを押さえつけるヨクバリス。しかしヨクバリスの方が上手なのか徐々にウールーが押されていく、進化しているポケモンとそうでないポケモンではやはり地力が違うのだ。

勝負に見とれていたアカツキは気が戻るとすかさずメッソンの元へと走りバッグから『きずぐすり』を取り出し吹きかける、即効性の効き目のおかげかメッソンは何とか動けるまでに回復し立ち上がりアカツキを見据える。まだ戦えると訴えてくる相棒にアカツキも覚悟を決めるとメッソンへ指示を出す。

 

「メッソン、『みずでっぽう』」

 

「メッソ!」

 

ウールーとの勝負に夢中になっていたヨクバリスの顔面にメッソンの『みずでっぽう』が直撃するとその隙を見逃さずウールーは『たいあたり』を決める。さすがに二体の同時攻撃は効いたのかヨクバリスは後ずさる。その隙にウールーと合流し『きずぐすり』で回復させる。

 

「ウールー、一緒に戦ってくれるか?」

 

「メェェェエ~」

 

その声を同意とみなし一人と二匹はヨクバリスに立ち向かう。

ヨクバリスの攻撃をウールーが受け止め、メッソンの攻撃でひるんだすきにウールーがさらに攻撃を叩きこむ。初めてのコンビバトルに不思議な一体感を感じながらアカツキ達はヨクバリスを追い詰める。それに業を煮やしたヨクバリスは見かけによらないジャンプ力を発揮しウールーの上を取ると重力に従い落下する、『のしかかり』だ。

新しい技に反応できなかったウールーの対応が遅れ『のしかかり』が決まる瞬間、

 

「ウールー、『まるくなる』!」

 

「ッ!」

 

咄嗟に反応したアカツキの指示をきいたウールーが体を丸める。ホップのウールーが使っていたことを思い出し、きっと使えるはずだ、と出した指示は見事にヨクバリスの攻撃を受け止める。まさか受け切られるとは思っていなかったのかヨクバリスは驚愕を露わにする。ウールーはそのままヨクバリスの体をカチ上げるとそれを越えるほどの大ジャンプを行いさらに上をとる、ウールーの体が白いオーラに包まれると重力に従って落下する。そのままヨクバリスを下敷きにするとさらに速度は加速され地面へと強烈に叩きつけられた。ドシン!とひときわ大きな音が響き渡ると同時に砂埃がまき散らされる。

 

「くっ、ウールー!」

 

砂埃が晴れるとそこには目を回し地に倒れ伏したヨクバリスの姿があった、ウールーはヨクバリスの上から離れるとアカツキの元へ来ると鈴を握っている手に体を寄せる。

 

「はは、そんなに気に入ったのかこの鈴の音」

 

「メェェ~」

 

アカツキはメッソンをボールに戻すとウールーを連れて脇道を急いで抜ける、幸いヨクバリスのように強いポケモンには遭遇しなかったおかげかすぐに本道に戻ることができた。

ブラッシータウンの入り口にはホップとユウリが待っており汚れた姿のアカツキを見て驚く。

 

「どうしたアカツキ!」

「酷い傷じゃない、早く治療しないと!」

「俺のことはいいよ、それよりメッソンとこのウールーを早く回復させてあげたいんだ」

「そうか、なら研究所に行く前にポケモンセンターに行かないとな」

「あたしがポケモンセンターに連れて行くわ、ホップはダンデさんに伝えてきて」

「わかったぞ!」

 

ポケモンセンターに着いてからはジョーイさんにポケモンを預けユウリに擦り傷を治療してもらった後は大変の一言であった。鈴のためとはいえ圧倒的格上のポケモンに挑むなど命知らずだと怒られもした、主にユウリから。

 

「鈴なんてまたあたしに言えばいくらでもあげたわよ!そんなもののために命張るなんて馬鹿じゃないの!」

「ご、ごめん」

「まったく…はい!コレ!!」

 

そうして怒気と気恥ずかしさをごちゃ混ぜにしたような声をあげてユウリが何かを手渡してきた。アカツキがそれを受け取るとそれは水色に光る『やすらぎのすず』であった。

 

「これは?」

「あんたに鈴を渡した後ホップも欲しいって言ってきたからどうせならと思って三つ作ってきたの、水色はあんたの」

「作ってきたって…」

「さっき」

「えぇ…」

「もう出来てたのに貰ったポケモンごとの色を塗っただけよ」

 

メッソンを受け取ったアカツキには水色、ヒバニーを受け取ったホップには橙色、そしてサルノリを受け取った自分用の黄緑色に塗った鈴を取り出す。手先が器用で何でもそつなくこなすユウリだからこその贈り物だった。鈴は変わらぬ音色を奏でてくれる、心なしか波の音まで聞こえてきそうだとアカツキは思った。

 

「…ユウリ」

「…なによ」

「素敵な贈り物、ありがとうね」

「ッッッ!!!あーはい!どういたしまして!」

 

そういうとユウリは体ごと明後日の方向に向くとそれ以降アカツキと顔を合わせようとはしなかった。

傍若無人、自己中心、天真爛漫、周りを巻き込んでいく台風のようなユウリだがその心は誰よりも優しく友達想いの女の子なのだ。

 

そして数十分後ポケモン達は元気な姿でアカツキの元へと帰ってきた。

 

「メッソン、ウールー!よかった」

 

二匹を抱きしめその存在を確かめると一気に安堵感が湧いてきた。メッソンは言わずもがな、最後に『のしかかり』を受けたウールーも万全の状態にまで回復していた。

 

「ありがとう、二人のおかげで何とかなったよ」

 

「メソ」

「メェェ~」

 

そうしていると研究所から戻ってきたホップと話を聞いて飛んできたダンデがポケモンセンターに入ってくる。

 

「アカツキ!大丈夫か!?」

「アカツキ!無事だったかい!?」

「あはは、ふたりとも心配しすぎだよ」

 

ちなみにひとしきり騒いだ後ジョーイさんに怒られるのであった。チャンピオンの背中はそれでもまぶしかったという。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ウールー、ありがとね」

 

 

ポケモンセンターを出るとウールーを連れてブラッシータウンの入り口にまで戻る。ここまでお世話になったがウールーは野生のポケモン、ウールーにはウールーの生活があるのだと少し悲しみを感じながらもともと持っていた方の『やすらぎのすず』をウールーの首元に括り付けるとアカツキは別れを告げる。

 

「これでお別れだ」

 

そういって一番道路にまで一緒に行こうとウールーを引っ張るがびくともしない。驚きさらに力を込めるがウールーはその場を動かない、まさしく仁王立ち、ウールーに組む腕はないが。

しばらく引っ張ったり押したりとしたアカツキだがついには力尽きて地面にへたり込んでしまう。

 

「はぁ、はぁ、どうしたんだよウールー」

 

「メェェェ~」

 

アカツキが息を切らしながらウールーに尋ねるとウールーはその体をアカツキにこすりつける。

 

「ふむ、もしかしてウールーはアカツキの仲間になりたいんじゃないか?」

「えっと、そうなのウールー?」

 

「ンメェェェエ!」

 

過去一番に大きな鳴き声をウールーが上げる。アカツキがみんなを見渡せば無言でうなずいている。アカツキは立ち上がるとカバンから空のモンスターボールを取り出しウールーへと向けると最後の確認をとるとウールーも無言でうなずき返した。

 

「よし、いけ!モンスターボール!」

 

投げつけたボールがウールーに当たるとその口を開けてウールーが吸い込まれる。数度ボールが動いた末にポン☆という音とともにボールが動きを止める、赤い点滅もなくなり完全にゲットした証拠だ。

 

「これでゲット、できたのかな」

「ああ、見事なゲットだったぜ。このチャンピオンが太鼓判を押すほどのな」

「すごいぞ!こんなゲット俺初めて見たぞ!」

「まあ珍しいタイプではあるわね、おめでと」

 

 

 

 

三者三様の反応を受けたアカツキ。

頼りになる新しいポケモン、ウールーを手に入れた彼の旅はまだまだ続く。

 

 




アニポケを見て育った作者、友情ゲットさせたいなと思いこういった話にさせていただきました。作者はここあたりで普通に捕まえたウールーを最後まで使いました。

そしてこの物語は作者がソードをやった思い出をもとに書いていますのでもう捕まえるポケモンを決めた状態で書かせていただいています。

最後にヨクバリスが好きな皆様はごめんなさい!今回は完全に悪役にしてしまいました!
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