剣盾旅記録50話達成!
合計文字数40万越え!
話の進行具合!ナックルシティ出発!
……おっかしいな、25話の時には既にルリナさんと戦っていたはずなんだけど…また幻術なのか?
「――というわけでこいつが新しく仲間になったカジッチュだ、みんな仲良くするんだぞ」
「チュゥゥゥ!」
新しい仲間、りんごぐらしポケモンのカジッチュをポケモンセンターで休んで元気いっぱいになったみんなに紹介する。
反応はまちまちだった。
まずジメレオン、突然舌を伸ばしたと思ったらきのみごとカジッチュを食べようとしてきた。
『お前……美味そうだな?』
次にアオガラス、きのみの裏側から飛び出しているカジッチュの体を鋭いくちばしで突いて食べようとしてきた。
『我、虫が大好物である!』
パルスワン、カジッチュの潜むよく熟した甘ーいきのみの匂いに刺激されてか大きく口を開いてかぶりついてきた。
『おいしそうな匂い~!』
バイウールー、カジッチュを栄養満点なきのみとしか認識せず食べようとしてきた。
『ボクの毛並みの礎になれ!』
最後にヒトモシ、今日の晩御飯か何かと勘違いしたのか『おにび』を打ち込んできた。当たれば焼きリンゴ確定!
『料理は火加減ッス!』
「ぬおおおおお!!!?」
「チュチュゥゥゥウ!!?」
カレーによって育て上げられたうちのポケモン達はみんなきのみが大好物だ。
その日は美味しそうなカジッチュを守り通すだけで精一杯だった。というかこいつら大分食欲に支配されてらっしゃる?
食いしん坊ポケモン達の脅威にさらされたカジッチュは完全におびえてしまうようになった。
「……これは時間が解決するしかないかな」
まさかうちの子達があんなに食欲に駆られる獣たちだったとは……育て方を間違えたかな?
とりあえず彼らには三日間カレー抜きの刑を求刑しておいた。
ポケモン達は悲痛と絶望の表情を浮かべ、頭を地にこすりつけ許しを請ってきたが無視した。大事な仲間を食べようとするなんてあってはならないことだ。反省させるためには多少の荒療治というものが必要だろう。
「はいカジッチュ、あ~ん」
「チュゥゥゥ♪」
まだ小さなカジッチュはそれほどの量を食べられないので、スプーンに一口分のカレーを乗せて近づけると美味しそうに食べる。ちなみにカジッチュの好みに合わせて作った甘口カレーだ。
うちの子たちはみんな食欲旺盛でバクバク食べる子達ばかりだったので、こういうのは新鮮でなごむ。
その様子をポケモンたちが恨めしそうに見つめている。
『カレー……美味そう』
『フーズだけじゃ満足できないよ!』
『カレー…我はカレーが食べたいのである…』
『ボクの毛並みを整えるのにはカレーが不可欠なのに…』
『ッス、新人のくせに生意気ッス!』
そんなことを俺は露も知らずカジッチュにカレーを食べさせるのであった。
「いっぱい食べて大きくなるんだぞ~」
「チュゥゥゥ♪」
う~ん、和むなぁ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして翌日、俺は調べ物や情報収集を終えた昼頃にナックルシティを出発することにした。
昼までの間にルークとジーナちゃんのところを訪ねたり、ポケモンセンターにあるパソコンでジムチャレンジの情報など絵を調べていたのだ。
調べた情報によるとじわじわとカブさんを突破したジムチャレンジャーが増えてきたそうだ。四日前に俺やマリィたちがカブさんの連続防衛をぶち壊したことが他のチャレンジャーにも火をつけたとかでジムチャレンジャー全体の勢いが上がっているらしい、そんな記事を見た時は誇らしさと同時にうかうかしていられないなと思った。
ちなみに昨日ナックルシティの中央広場で武者修行のようにトレーナーを集めて勝ち抜きバトルをしていたこともネットに挙げられていて反響を呼んでいたので改めてジムチャレンジャーの注目度の高さというものを実感した。
ナックルシティの西側を目指し、宝物庫を通り抜け、堅牢な城壁を抜けた先にある跳ね橋を渡った先の六番道路にたどり着く。
日が一年中照り付け、乾燥した気候である六番道路はどこかワイルドエリアの砂塵の窪地を連想させる。バンギラスに追いかけられたのが記憶に新しい。
「よ、よーし!目指すは二日後までにララテルタウン到着だ!」
恐ろしい記憶を振り払い気合を入れ直す。
跳ね橋と繋がったレンガの橋を渡り切り、六番道路の乾燥した土を踏みつけたところで、
「うおおおお!我々エール団はスナヘビを安心して眠らせるためにエールをおくーる!」
「かわいい、可愛すぎる瞳よスナヘビ!」
橋を渡ったところで最近はあまり見かけなかったエール団の姿を見かける。
二名のエール団は道端で寝ようと転がっているスナヘビにメガホンをむけて大声でエールを送っている。あれじゃあ眠れるものも眠れないだろ…
「まあいいか、通りまーす」
「だめー!」
「子供はうるさいから通しません!」
「っち」
しれっと通ろうとしたところで二人のエール団に道を遮られてしまう。
エール団はマリィを応援したいがためにこうして他のジムチャレンジャーの妨害もしているらしい。マリィ本人にも怒られていたのにどうしようもないサポーターたちだ。
「おや、ここは通れないのかい?」
「いえいえ、紳士。どうぞお通りになってくださいな」
「どうぞどうぞ」
「アタシもポケモンは起こさないから通してもらうさね」
「お通りくださいマダム」
「どうぞどうぞ」
「ぼくもとおるー!」
「どうぞどう……って貴方はジムチャレンジャーだから通しませーん!!」
「っち」
通行人に紛れる作戦も失敗した。
俺の無駄に力を入れた幼児の真似でも突破できないとは……
「しゃーない、じゃあいつも通り強行突破させてもらうよ」
腰のモンスターボールを手に取りポケモンバトルの態勢を取る。
エール団にも俺の強さはそこそこ知れ渡っているようでしたっぱ二名が少し怯む。
これくらいの相手ならジメレオンやパルスワン一匹でも勝てるかな?と考えたところで、コツコツという音が聞こえてくる。橋を渡ってまた誰かがやって来たようだ。
「あっ、アカツキ。 お前もララテルタウンに行くのか……?」
「……ホップ?」
「おう、ホップ様だぞ……」
俺は変わり果てた姿のホップを見て驚いた。
いつも元気の塊のようだったホップは目に力がなく、頬も少し痩せこけている。
いつもならドタドタと音を立てて走っているホップらしくもなくコツコツと力なく歩いてきていたので、最初はまるでホップだとは思わなかった。
「なあエール団の人たち、そこ通っていいか?」
「だから子供はうるさいから通さないと言ってるのでーす!」
「こうなれば二人纏めてけちょんけちょんにしてやーる!」
エール団のしたっぱ二人が腹を決めたのか俺たち二人に勝負を仕掛けてくる。
「仕方ない、やるぞアカツキ」
「ホップ、大丈夫?」
「ははは…これくらいの相手になら負けないぞ」
いつも自信と元気に満ちていたホップの言葉にはどこか力がない。
それでもここを通るためにはエール団の二名を倒さなければいけないのでダブルバトルの申し入れを受ける。
「いくでーす、スカンプー!」
「ジグザグマ!」
「よろしくヒトモシ!」
「頼んだラビフット!」
エール団の二人が出したのはスカンプーとジグザグマ、どちらも進化前のポケモンだ。
そしてこちらはヒトモシとラビフット、W炎タイプだ。
「距離があるうちに体勢を崩す!
ヒトモシ、『おにび』!」
「モッシシ」
ヒトモシの周りにふよふよと浮遊する火の玉が現れ相手の二匹に殺到する。
二匹はそれを左右に分けて回避するとスカンプーはラビフットに、ジグザグマはヒトモシに向かって突撃する。
「スカンプー、『かみつく』!」
「ジグザグマ、『したでなめる』!」
両者ともに飛び掛かりながらの勢いある攻撃。
だけど、勢いだけじゃどうしようもないこともある!
「ラビフット、『でんこうせっか』!」
「ヒトモシ、『あやしいひかり』!」
スカンプーが『かみつく』直前、ラビフットの全身がぶれ虚空を噛みつく。スカンプーが目標を見失い、キョロキョロと周りを見渡しているがラビフットが居たのは空。両足を構えて既に狙いをつけている。
ジグザグマの方も『したでなめる』をしようと口を大きく開けた直後、あやしげな紫色の光に顔を包まれて正気を失う。
「ス、スカンプー上だ!」
「ジグザグマ!?」
「そのまま『にどげり』!」
「『ほのおのうず』で吹き飛ばせ!」
スカンプーがラビフットの影に気がつき、空を見上げた時には真っ赤に赤熱したラビフットの両足がスカンプーの体を頭を捉えて地面にめり込ませる瞬間だった。
ジグザグマはというと正気を失いふらふらとしていて隙だらけだったので遠慮なく最高火力の技で焼き払った。
「カ、カンプ~……」
「ザッグ……マ」
「スカンプー!」
「ジグザグマ!」
二匹はそれで戦闘不能になってしまった。
思った通りこの二人はそれほどたいしたことがなさそうだ。
「く、くそ」
「アカツキにホップ、流石はチャンピオンに推薦されたジムチャレンジャー…!」
したっぱの「チャンピオンに推薦された」という言葉にホップが一瞬反応する。
「ですが、負けるわけにはいきまーせん!」
「先輩から預かったこのポケモンでギッタンギッタンにしてやるわ!」
「いくでーす、マッスグマ!」
「レパルダスちゃんお願い!」
したっぱは再度ポケモンを繰り出してくる。
出てきたのはマッスグマとレパルダス、先ほど倒した二匹よりかなり手ごわそうなポケモンが出てきたな…
二匹の立ち姿には隙が無く、よく訓練されたポケモンだということが伝わってくる。これは油断ができないぞ。
「ラビフット、『でんこうせっか』!」
と慎重に考えていた俺の隣でどこか焦ったような声色のホップがラビフットを疾走させる。
ラビフットは乾ききった地面を蹴り飛ばし一瞬の合間にレパルダスの懐に入り込む、そのまま一撃が加わろうとしたところで、
「レ、レパルダス、『ねこだまし』!」
レパルダスの前脚が『でんこうせっか』よりも素早い速度で放たれラビフットの攻撃を無理矢理中断させる。
技を止められ、意識の空白が生まれたラビフットにマッスグマの黒く染まった鋭い前脚が襲い掛かる。
「マッスグマ、『つじぎり』でーす!」
「ビ、ビフッド!?」
首筋を捉えたマッスグマの『つじぎり』がラビフットの体をくの字に曲げて吹き飛ばす。
「追撃よ、『みだれひっかき』!」
「させるか、『おにび』!」
吹き飛んだラビフットの体に俊足を誇るレパルダスが追いつき、よく磨かれた爪で切り裂こうとする。
だがヒトモシが放った火の玉が横から殺到し、レパルダスの体を爆発とともに吹き飛ばすことで難を逃れる。
「ホップ!焦り過ぎだよ!」
「あ、ああ。ごめんアカツキ」
やはりどこか無理をしているようなホップ。
ここは俺がなんとかしなくては!
「ヒトモシ、『ほのおのうず』!」
「モーシーシー!!」
マッスグマもレパルダスもヒトモシとは比べ物にならない素早さを持つポケモンだ。
まっとうに戦っていては以前のようにボロ負けしてしまうことが目に見えているので大技の『ほのおのうず』によって二匹を纏めて閉じ込める。
「ッグマ!!」
「レパルゥ…!!」
『ほのおのうず』が二匹を包み込むと空にまで経ちのぼる火炎の渦となり内部の二匹を焼き苦しめていく。
「いいぞ、そのまま燃やしきれ!」
ヒトモシの炎は勢いを増しマッスグマとレパルダスの体力をじわじわと削っていく。このまま削り切ってやる!
「マッスグマ、『つぶらなひとみ』!」
しかし、マッスグマのするどかった目つきが突然ぬいぐるみのようにつぶらでかわいらしい瞳に変わる。
炎の中からその瞳に見つめられたヒトモシは無意識のうちに炎の勢いを落としてしまう。
勢いの弱まった炎の檻を二匹が破壊し中から飛び出してくる。しまった!
強力な炎技を使って疲弊したヒトモシの下に二匹のポケモンが同時に襲い掛かる。
「『つじぎり』!!」
「『つじぎり』!!」
誤差なく、全く同時に二方向から迫る暗黒の凶刃。
一撃でも喰らえば致命傷となりうる悪タイプの攻撃が、ゴーストタイプのヒトモシに迫る。
防御も回避も不得手なヒトモシにこの状況を打開する手はない。
もはやここまでかと思われたとき、
「ラビフット、『にどげり』!」
そこにラビフットの『にどげり』が待ったをかける。
真っ赤に赤熱した『にどげり』の威力はすさまじく、効果抜群とはいえ二匹のポケモンを軽々と吹き飛ばす。
「…!ホップ助かった!」
「アカツキ、お前も焦り過ぎだぞ!」
本調子ではないもののホップのその言葉は本心から来るものだった。
焦りは隙を作り出す、そのことをよく思い出してもう一度敵を見据える。
「今のは惜しかったのに!」
「おのれ忌々しいでーす!」
絶好のチャンスを逃したエール団の二人が悔しがり地団太を踏んでいる。
せっかくやってきたチャンスをものにできなかったのがよほど悔しかったと見え、そこからの二人の指示はさらに精細さを欠いたものとなっていった。
「先にヒトモシからたおーす!
マッスグマ、『とっしん』!」
「レパルダス、『みだれひっかき』よ!」
「え?」
「は?」
ヒトモシに攻撃を絞ってきた両名、しかしその指示はあまりに常軌を逸しており俺達の思考に空白が生まれる。
これがジムリーダやジムトレーナーによる指示なら何か裏があると思っただろう、が相手は戦った限りそこまで手強くはないしたっぱ達である。
まさかと思いその攻撃を素通りさせていると、
「く、何故攻撃が当たらないのでーす!」
「レパルダスちゃんの爪がすり抜けていく!?」
本気で驚愕している両名。
「なあ、こいつら……」
「あー、うん。本当にしたっぱみたいだね」
「……おし、ならこれでとどめにしてやるぞ!」
「うん、最大パワーで『ほのおのうず』!」
「こっちも最大パワーで『ニトロチャージ』!」
後衛となったヒトモシが炎技を繰り出し、ラビフットが駆け回り二匹を翻弄する。
焦りに焦った両者のポケモンが詰められたところに『ほのおのうず』を纏い炎の量を倍増させたラビフットの『ニトロチャージ』が襲い掛かり二匹ごと炎の中に沈んでいった。
「おーのー!」
「先輩のポケモンなのにー!」
「最後までうるさい子供トレーナーたち!」
「これじゃあスナヘビも…って、あれ!いない?」
「スナヘビならバトルが始まってさっさと場所を変えて行ってたぞ」
「よっぽど二人の声援がうるさかったんだろうね」
「ガ、ガーーーン!!」
「そんな。それでは我々の声援の意味が!?」
俺の言葉がとどめになったのかエール団の二人は涙を流しながら六番道路の先に走り去っていった。
「おつかれ」
「ああ、お疲れ様だぞ」
なんとなく締まらない終わり方ではあったが、無事エール団を撃退して一息つく。
六番道路に出て早々これとは何ともついていないな、と二人で苦笑いする。
「なあ、アカツキは聞いたか?俺がビートに負けたこと」
「…聞いたよ、ビートの口から」
「そっか」
そこまで言ってホップが遠い目をする。
ここではない何処か、ここにはいない誰かを見るような眼差しだ。
「負けたのは…いいんだ。オレがまだ未熟だったってことだからな」
「うん」
「ただ、あいつにアニキの名前に泥を塗ってますねって言われてさ。そんな自分の弱さが嫌になったんだ」
顔を俯けたホップが心底悔しそうに言う。
「オレが弱いとアニキまで弱いと思われる。そんなのは嫌だぞ!アニキは最強で無敵なんだ!!
だからオレ、もっと強くなる!お前もユウリも強くなれよな!」
ホップはそのまま六番道路の先へと走り去っていく。
自分の考えが正しいかはわからない、そんな不安を考えないようにひたすらに我武者羅に走り去っていくホップの背中はどこからしくないと思った。
「おやおや、今のがダンデの選んだジムチャレンジャーだね」
「え、、、どわぁ!?」
ホップの背中を見送ったらいきなり背後から声を掛けられた。
音もなく気配もなく、そしてやたらと派手な服装をしたおばあさんに声を掛けられビックリ仰天だ。
「そんなに驚かなくてもいいだろう。あたしはポプラさ、詳しいことはカードをご覧よ」
おばあさんは首に巻いた紫色のファーからリーグカードを差し出してくる。
「いいバトルを見せてもらったよ、これはその駄賃だと思っておきな」
「アラベスクタウンのジムリーダー!?」
リーグカードのまさかの照会文に驚く。
ポプラさんはカードだけ押し付けてそのまま行ってしまった。
「(随分ゆっくりと歩いているけど大丈夫かなぁ?)」
さすがに高齢のようでゆっくり一歩ずつ進んでいくポプラさんが心配になり、一緒に六番道路をついていこうかと考えた時砂埃を上げて強風が吹きすさぶ。
砂埃に咄嗟に目を閉じる。
「あっぶなー……ってポプラさんいねぇ!?」
少し目を離したと思ったら先ほどまでゆっくりと歩いていたはずのポプラさんが消えていなくなってしまった。
本当に何者?というか底のしれないジムリーダーとの出会いだった。