(カセキメラを見て)
こ、こいつ狂ってやがる
↓
あ、でもこのパッチルドンかわいい
六番道路を進む。
乾いた空気、まばらで短い草の生い茂る地面、そして照り付ける日差し。
「あっつー……」
ワイルドエリアでいくらでも日差しを浴びたと思っていた俺だが、環境が変われば同じような日照条件でもこうも違うものなのかというのを実感する。
ワイルドアエリアは基本的には広大な草原であった。
風も吹けば、草木が光を吸収し、空気にも十分な湿度があった。
しかし、この六番道路にあるのは、
岩!
岩!!
岩!!!
岩だけだ。
連なった岩盤が風の通りを阻害し、乾いた空気と照り付ける日差しが体から水分を奪っていく。
住んでいるポケモンもダグトリオやマラカッチにエリキテルといった乾燥地帯を好むポケモン達ばかりだ。
「でも、ここはここで見るところも多いんだよな」
そびえ立つ岩を見上げると壁には岩盤を削って作られたポケモンらしきものの像や遺跡の跡のようなものが沢山ある。
以前には何らかの文明があったとか無いとか言われているらしい。
たまに見かけるデスマスというポケモンが古代の遺跡につながる重要なヒントを持っているらしいが未だ謎も多いらしい。
「君子ゴーストタイプには近寄らず、って言うしね。
危険なものには近づかない、近づかない」
ゴーストタイプには今まで通算二回冥界に引きづりこまされそうになった経験がある。
興味はあるがスルーさせてもらうしかない。
「うんしょ……っと」
この六番道路は道を塞ぐ岩盤などが多いため、岩にかけられているはしごなどを登っていく。
上に上にと登っていく道のりは中々険しく、体力の減りも早いので大変な旅となる。
「うわぁー、ワイルドエリアが見える!」
しかし、岩盤を登るほど高くなっていく道のりから見える景色は絶景だ。
ナックル平陵からもワイルドエリアを見渡すことができたが、ここからならそのナックル平陵やナックルシティの城壁なども一望できる。
周りを見渡してみれば同じように景色を楽しむバックパッカーなどもそれなりの数がいる。
ここは絶景スポットでもあるようだ。
「あら、貴方ジムチャレンジャーのアカツキ選手じゃないですか?
ここであったのも何かの縁、一勝負をしてくれませんか」
バックパッカーの女性がモンスターボールを取り出し勝負を仕掛けてくる。
こちらも岩を登ったりしてばかりでちょうど退屈をしていたところだ。
「受けて立ちます!」
こんな感じでポケモンバトルを挑まれるのにも慣れてきたなぁ。
「いやぁー、負けた負けた!
それにしてもバトルも強いのにカレー作るのも上手いって反則過ぎません?」
「カレー作りは全ポケモントレーナーの必須技能みたいなものですからそこまで大したもの……でもありますね!カレー最高!」
バックパッカーのトモミさんと熱いポケモンバトルをした後はキャンプを張り一緒にカレーを作った。
リッキーと言われるゴーリキーの力強い攻撃などは次に控える格闘タイプのジムに向けていい予行バトルになった。
「あのーアカツキさん? 他の子達にカレーはあげなくてもいいんですか?」
カジッチュに甘口カレーを食べさせる中、他のポケモン達が羨まし気な目でこちらを睨んでいる。
「あいつらには今『禁カレー』を言いつけてるので気にしないでください」
「で、でもなんだかバトルの時よりもバイウールーちゃんが殺気立ってきてるんですけど」
「仕方ないですね……」
はぁ、と軽い溜息を吐く。
まあこうして他のトレーナーと一緒に居る時まで険悪なムードを見せるのはあまりいい気分ではない。
仕方がないな、という顔をするとポケモン達の顔が期待と歓喜で輝き始める。
「はい、じゃあカレーの匂いだけおすそ分け」パタパタ
『グアア嗚呼アア嗚呼あ!!!?』
カレーの豊潤なる香りでさらに己が罪を嘆くがよい。
匂いだけで生殺しにされたポケモン達の苦しみの叫びが夜の荒野に鳴り響いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「じゃあアカツキさん、ジムチャレンジ頑張ってくださいね!」
そういって次の日の朝トモミさんと別れた。
今日中にはなんとかララテルタウンの前に存在するというディグダの巨大石像がある遺跡のところにまでは着きたいと思う。
「そういえばトモミさんが『変な科学者がいるから気を付けてくださいね』とかいってたっけ」
なんでもここ最近六番道路のある場所で怪しげな実験と採掘を行っている変な科学者がいるらしいのだ。
ナニカを見つけると笑い始め、そのナニカを使ってこの世のものとは思えない恐ろしい化け物を生み出しているという。
科学者というくらいだから『ほのおのいし』みたいな鉱石のエネルギーを使ってロボットを動かしているのだろうか?ゴーストタイプみたいなのはお断りだが、そういったものには興味が湧いてくる。
「よし、その科学者とかいう人のところにいってみるか!」
ロボットは男のロマン!
ディグダの巨大石像までのルートからは少し逸れるがその科学者に会いに行ってみよう!
科学者がいるという場所を目指し六番道路を進む。
道中マミさんという大人のお姉さんにバトルを挑まれたりしたが、今まで戦ったことのないタイプの恐ろしい相手だった。
ピッピとピクシーを繰り出してきたお姉さんは、なんとどんな技が出るかわからない『ゆびをふる』だけで戦ってきたのだ。
初手で『ねむりごな』が飛んできて眠らされたジメレオンがタコ殴りにされた時はもう焦りに焦ったものだ、攻撃技が三回も出ないというミラクルに助けられなければ今頃ボロ負けしていたかもしれない。
乾いた六番道路を進んでいくと、ついに科学者がいるという場所にたどり着く。
岩が積み重なってできた薄暗い採掘場跡。
積み重ねられた岩が陽の光を遮り、近くを流れる川のおかげで驚くほどに涼しい。
「ふっ、さながらここは砂漠のオアシs「そーーーれ、がっちゃんこ!!!」もー、最後まで言わせてよー」
気持ちよく涼んでいると奥の方から聞き覚えのある声が響いてくる。
「……駄目、何も出てこないネ」
「そ、そんな!?あれでも駄目だったの!?」
「あのサイズのカセキでは復元は不可能ということだな。もっと立派なカセキを見つけるがいいゾ」
「こうなったら意地でもほりだしてやるんだからー!」
カンカンという穴掘りで聞きなれた音とともに聞き覚えのある声が聞こえてくる。
また君かぁ……
「あ!アカツキじゃない、一昨日ぶり―!」
「はい、いつものユウリさんでーす」
涼やかで静かな採掘場でツルハシを振るおうとしていたのは我らがジャイアンことユウリ尊師。
二日前、ローズさんとのお茶会以来だ。
「あれ? じゃあ採掘場に居るって言う頭のおかしな科学者ってのはユウリのこと…?」
「違う違う、アタシもその噂を聞いて来たの。 その噂の科学者はこの人よ」
ユウリがツルハシを振り続ける白衣の女性を指さす。
「ん?なんだ?」
女性は採掘をやめてこちらを振り返ってくる。
顔や白衣のいたる所に泥が付着し、よく見てみれば履いている靴が左右でバラバラだ。見ているだけで不安になってくる、なんというか迂闊そうな人だ。
「君のお知り合いかネ?」
「そうよ、アタシのライバルのアカツキよ」
「そうか、私の名前はウカッツ。よろしくしたまえ」
本当に迂闊そうな名前の人だった。
ウカッツさんは軽く自己紹介をするとまたすぐさま採掘に戻って壁を掘り始める。
自分の興味関心以外にはかなり無頓着っぽいということがうかがえる。
「あーもー、だからウカッツは掘り方が雑なのよ。そんなんじゃ出てくるものも出てこないわよ」
「そこに埋まっているかどうかが重要であり、掘り方など些末な問題だヨ」
そしてウカッツさんの掘り方は俺やユウリから見てもなんとも雑な掘り方だ。
まず腰が入ってない。腰の力を十全に伝えることこそが基本にして極意だというのに、白衣の上からでもわかるでろんでろんな腰使いだ。
ツルハシの持ち方も雑、なんで白衣の袖の上から持ってるんだ。今にもすっぽ抜けそうで怖いわ。
「ああ、もう貸してください」
見ていられなくなった俺はウカッツさんの持つツルハシを横からかっさらうと自分が掘る!と宣言する。
何処を掘ればいいのか尋ね、「そこだヨ」と指さす場所の前まで行くと掌で触れる。
「彼はいったい何をしているのかネ?」
「さあ、あたしにもわかんない。ちょっとアカツキ、なにしてんの?」
「岩の鼓動を感じてる」
「……とてもスピリチュアルな友人だナ」
「こいつこんな奴だったかしら?カレー以外でも頭おかしくなってきてる?」
「………よし、大体把握した。思ったよりも深くにあるわけじゃないし、これなら俺でもいける」
以前穴掘り兄弟に習った穴掘り技術の一つだ。壁や地面に触れることで中に何があるのかを判別する。
あの時はロコンという頼れる存在がいたので使う必要もなかった技術だが、今ここでは役に立つ。
そして目的のものはそれほど深くには埋まっていない様子だったので、俺くらいの穴掘り師でも感じ取ることができた。
「このなかにあるカセキを掘り出せばいいんですね?」
「その通りだ」
「よし、じゃあ二人とも退いてて。一発大きいので掘り出すから」
ツルハシをぶんぶんと振って感触を確かめる。
両手でしっかり握ったツルハシを剣道の上段の様に構え、体から吹き出す力を両手とツルハシに集めていく。集中集中……
「君の友達の体からなにやら白いオーラが立ち上っているガ?」
「なんかこういうのたまに見たことあるわー、TVのビックリ人間みたいな番組で……」
「うおおおお!! 『スマッシュ』!!!」
集めた力をエネルギーに変換し、ツルハシとともに叩きこむ。
ツルハシの鋭い切っ先が岩場に突き刺さると破壊のエネルギーが爆発を起こしたかのようにはじけ飛び、刺さった場所に破壊をまき散らす。
「うーん、イマイチ。やっぱり見様見真似じゃこんなもんか」
ガラガラと崩れ去っていく岩場を見ながらそう呟く。
穴掘り兄弟(弟)の使っていた『パワースマッシュ』に比べればあまりに稚拙。必要な破壊を必要な範囲内にのみ留め、瓦礫を砂に変えるあの一撃と比べてみれば威力も範囲も子供みたいなものだった。
技を使ったことで体に急速な疲労感が湧いてきたので振るったツルハシを支えにする。
「お、カセキみっけ」
壊れた岩盤の中から目当てのカセキを取り出す。
傷や損傷ができないように加減したがこうまで不出来な技だと少し心配だったのだが傷一つない綺麗なままでよかった。
「ちょっと、危ないわね!?」
「ケホケホ、君は人間かね?」
「失敬な、どこからどうみてもただの人間じゃないですか」
「こんなビックリ人間コンテストに出てくる奴みたいなこといきなりしてんじゃないわよ!」
「いやいや、こんなのやり方覚えれば誰でもできるって。ユウリなら1時間もあればできるようになるよ」
「え、マジ?教えて教えて!!」
~40分後
「『シュート』!!!」
そこには体の内に眠る力を収束させて壁を穿つ技を習得したユウリの姿があった。
「ユウリはどっちかというと穴掘り兄弟(兄)みたいな技術タイプっぽいね」
「アタシとしてはさっきあんたがやってたみたいなド派手な技を使いたかったんだけど。まあこれも悪くないわね!」
流石はセンスの塊といわれるユウリだ。まさか本当に一時間もかけずに技を習得するとは。
「…非科学的だ、人間はいつから人間をやめたのかネ?」
「ポケモンが技を使えるんだから人間に使えない道理はない、俺に技を教えた人の言葉です」
「そいつ人間やめていないか?」
「多分半分くらいやめてたと思います」
ユウリに技を教えている間ウカッツさんは掘り出したカセキを調査していた。
水場が近く、余計な日の光が入らないここは確かに拠点としては申し分ないようでカセキは綺麗にその形を露わにしていた。
「これは『カセキのトリ』だったよ」
「それってどんなポケモンなんです?」
「わからん」
「え?」
「このガラルで見つかるポケモンのカセキは全て上半分か下半分だけなのサ、不思議なもんだネ」
綺麗になったカセキを眺めながらウカッツはそう呟く。
「君はカセキポケモンを見たことがあるかな?」
「えっと、前に居たところでは何回か。体がガッチリしてて、どのカセキポケモンも強そうな見た目でしたね」
「そうか。他の地方ではしっかり全身を再現できているというは本当のようだナ」
「???」
俺の話を聞いたウカッツさんはまた考えるようにブツブツと何かを呟く。
「チャーシューメーン!!!」
後ろの方で技を覚えたことによって調子に乗ったユウリが採掘を続けている。ゴルフじゃねーんだぞ。
どこからあのタフネスが湧き上がってくるんだ、ホップレベルだなと思っているとガラガラと崩れる瓦礫の中からカセキを掲げてユウリが走ってきた。
「これ!これだったら復元もいけるんじゃない!?」
ユウリの掲げるカセキは先ほど採掘したカセキに負けず劣らず綺麗な姿を保っている。
だが、先ほど見つけた『カセキのトリ』とは明らかに違うポケモンのカセキ。
「これは別のカセキだし無理なんじゃ…」
「行けるわ、ウカッツの持ってるこの機械を使えばね!」
そういってユウリがウカッツさんの拠点から大きな機械を転がしてくる。
左右には投入口らしき入口、機械の真ん中には透明なアクリルガラスの扉がついている。開けてみると中は空洞でポケモンが一匹入れそうなくらい大きい。あれだ、紙コップ式自動販売機の取口みたいな感じだ。
俺が未知の機械に目を輝かせ、扉の中に頭を突っ込んでいるとユウリとウカッツさんが投入口に発掘したカセキを放り込んでいく。
「アカツキ離れてなさい」
「別に離れなくてもそれはそれで面白いものが見れそうだから退かなくてもいいゾ。なんせボックスシステムを開発した研究者はポケモンと融合を果たしたらしいからナ、その瞬間を見られるかもしれん」
「??」
離れろ、というユウリの指示に従って扉を閉めて機械から離れてみる。
惜しい、という顔をしたウカッツさんが機械の電源を入れるとバチバチという音とともに機械が稼働を始める。
ガタガタと機械の体が揺れ、投入されたカセキ達に電気的な処置が施されていく。
時間という枠を取り去り、保存という名の石化を解き明かし、別々だった命が一つに結合されていく。
何をしているのかは全くわからないがそんな科学の集大成を見るのに夢中になっていた俺は時間の経過すら感じ取ることができなかった。
そして機械は沈黙を取り戻し、
チーーーーーン
という電子レンジみたいな音を立てて完全に稼働を停止した。
今すぐ機械の扉を開いてみたい衝動に駆られていると、ガンガン!という音とともに内部からアクリルの扉が叩きつけられる。
何度かの衝撃を受けた後、扉のロックが解除され自動的に開いていく。
シュ~ウという音と白い煙、そして電気分解によって発生した殺菌作用のあるオゾン特有の臭いが扉から溢れ出てくる。
そして、時間を越えて現代によみがえったカセキポケモンが姿を現す。
雷によって立ち上がった頭髪。
親近感を抱かせる愛らしい顔。
腕からは電撃をそのまま形にしたかのような小さな翼がついている。
なるほど、確かにこれは古代の鳥ポケモンのようだ。
直後そんな単純な感想を吹き飛ばす衝撃的な光景が目に飛び込んでくる。
上記の感想は扉から出してきた上半身を見て俺が感じた感想だ。
扉から飛び出したそのポケモンの全体像を見て目を丸くした。
大地を踏みつける強靭な足腰。
一撃でこの機械すら破壊してしまいそうな立派な尻尾。
そんな古代の竜を彷彿とさせる力強く、太ましい下半身。
そしてポケモンは下半身がむき出しになっていた。
むき出しと言ってもよくわからないだろう。
端的に説明すると……切り身。魚の切り身のような生々しい断面がむき出しになっていたのだ。
「ば、ばけも──!!?」
「きゃーーーかわいいーー!!!」
咄嗟に口から出た感想と被さるように、同じ光景を見ていたユウリが走りだす。
ユウリは明らかに異形な見た目をしているそのカセキポケモンの上半身に飛びついて抱きしめる。
「決めた、貴方はアタシのポケモンにするわ!!!」
「チラァ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「落ち着いたかね」
「ええ……すいません…」
あまりにも衝撃的な光景を見たことで腰を抜かした俺はウカッツさんの拠点の中で水を貰って落ち着いていた。
近場の川の水だ、よく冷えていて体に染み入っていく。
ある程度落ち着いたところで俺はウカッツさんの顔を見て話を聞くことにした。
「……あれは、なんなんですか?」
「あれとは?」
「…あのポケモンですよ」
拠点となっている大きなテントの窓部分から外を見る。
上半身がトリで下半身がドラゴン、復活したカセキポケモンがユウリを背に乗せて外を走り回っている。
「君も見ていただろう。復活した古代のポケモンだヨ」
「でも……あのポケモンはどう見てもおかしい!」
「ああそうだ、おかしいね」
俺が絞り出すようにして口にした言葉にウカッツさんは何でもないように返す。
俺はその光景が信じられない、とばかりにウカッツさんの顔を見ると彼女は話を続ける。
「このガラルでは上半分か下半分のカセキしか見つからない、そう言ったね?」
その言葉に無言で頷く。
「そしてその内訳は大きく分けて四つ、
『カセキのトリ』
『カセキのサカナ』
『カセキのクビナガ』
『カセキのリュウ』、この四種類のカセキしか見つからないのだヨ。そしてこの上半分のカセキと下半分のカセキたちはね、どんな組み合わせでもポケモンを復元できるのさ」
「!!?」
言葉を失う。
衝撃的な事実に口が酸素を求めてパクパクと動く。
「あのポケモンの名前はパッチラゴン、正真正銘図鑑にも登録されているポケモンさ」
調べてみたまえ、と暗に促す彼女の言葉に従いポケモン図鑑を向けてみるとすぐさま反応を起こす。
「かせきポケモン、パッチラゴン。
『古代ではたくましい下半身で無敵だったが、餌の植物を食べつくしてしまい絶滅した』……本当だ」
「その通り、出来るはずがないのに復元できてしまうこの矛盾。ウカッツはその謎を調べるためにカセキの研究をしているのサ」
その後ウカッツさんにその他のガラルのカセキポケモンのデータを入れてもらった。
『カセキのトリ』×『カセキのリュウ』
=パッチラゴン
『カセキのトリ』×『カセキのクビナガ』
=パッチルドン
『カセキのサカナ』×『カセキのリュウ』
=ウオノラゴン
『カセキのサカナ』×『カセキのクビナガ』
=ウオチルドン
四つのカセキを組み合わせることで四体の違うポケモンが生まれるという衝撃的すぎる事実を知り何が何だか分からなくなってしまった。
どうみても不自然な復元、だがしっかりとポケモンとして成立しているのだという。
本当に復元してよかったのか?
彼らの望まぬ復活だったのではないか?
いいや、そもそも人間が復活させるなど烏滸がましいことだったのではないか?
答えの出ない問いにぐるぐると思考だけが回されていき、思考の螺旋はさらなる深みにはまっていく。
「ほら、アカツキうじうじしない!
アタシとパッチちゃんのポケモンバトル第一号になれることを誇りに思いなさい!」
「チラチラゴォォ!!」
そんな思考の螺旋に捕らわれていた俺を救い出したのはユウリ、と他の誰でもないパッチラゴンだった。
現代によみがえったばかりのパッチラゴン。
明らかにおかしな状態で復元させられたにもかかわらずパッチラゴンは楽しげに走って、笑って、はしゃいでいた。
そんなパッチラゴンと、バトルを介することで俺たちポケモントレーナーは通じ合っていく。
「バイウールー、『とっしん』!」
「パッチちゃん、『つばめがえし』!」
力強い『生の鼓動』は、戦っているこちらにまでビリビリと響いてくる。
大地を踏みつけた衝撃は地面を揺るがし、力強く叫ぶ鳴き声は空気を震わせる。
どんな状態で蘇らされたなど関係は無い。
彼らは、今を生きているのだ。
「『にどげり』!」
「『ドラゴンテール』!」
それにバイウールーとバトルをする彼の姿はとても楽しそうに俺の目に映る。
戦いを楽しみ、自然に目を輝かせ、ユウリの指示を無視して近くに生えているきのみに突進していった時などは笑わせてもらった。
そんな彼と出逢えたことに比べれば、答えのない問いなど些末なこと、、なのかもしれない。そんな風に思った。
「とどめの『まねっこ』!」
バイウールーから伸びたドラゴンエネルギーを凝縮した尻尾がパッチラゴンの脳天に深々と突き刺さると、よたよたと後退した後バタリと倒れる。
「あー、負けちゃったか」
「パッチラゴン、すごいパワーだったね」
「あったり前でしょ!この子はアタシのポケモンなんだから!」
そう自信満々に言ってのけるユウリの姿はどこまでも輝いている。
俺の様に考えて考えて、ドツボに嵌ってしまうのも悪いことではないのだろう。
だがユウリの様に、悪い事ばかりを考えず今を生きる者にしっかりと目を向ける、ということがとても眩しく見えた。
「どう、少しは気分が良くなったかしら?」
「うん、すごいねユウリは」
「当然、アタシがすごいなんて今更でしょ!」
「じゃあやっぱりすごくない」
「すごいわよ!」
「小芝居が終わったんならパッチラゴンを少し解ぼ……回復させてもらうぞ」
「今、解剖を回復って言い直さなかった?」
「言い直してないゾ」
「……この人に任せるのは危ないね」
「そうね、自分たちで手当てさせましょう」
「ま、まて。貴重なサンプルなんだ。せめて少しくらい実験の協力に……!」
「逃げるぞユウリ!」
「ほい来たアカツキ!」
パッチラゴンの体を抱えて悪の科学者の魔の手から逃げ出す。
所詮は部屋にこもって実験と研究ばかりしているモヤシ野郎だ、元気溢れる子供に敵うわけがないだろ!
まあさすがにかわいそうだったので目を覚ましたパッチラゴンに話を通してトリ部分の電気を纏った体毛とドラゴン部分の鱗を採集させてあげた。
「まだまだカセキポケモンの謎は解けてはいない、なにか分かった時はまたこのウカッツのところを訪ねてきたまえ」
サンプルを取れてご満悦なウカッツさんと別れを告げる。
カセキポケモン。
まだまだ謎の多い存在ではあるが、現在によみがえった彼らと出会ったのなら過去や未来の問題を考えるより先に今を生きる彼らをしっかり見てあげることが大切だと学んだのであった。
自分もこういうことを考えると倫理の問題がーとか考えてしまうのでユウリの様に今を生きる彼らのことを見て判断したいなと思いました。
幸いポケモン世界はエーテル財団やポケモンセンターみたいにポケモンに優しいところが多いので深く考えるのは野暮だと思いました。
え?
命を頂く?
ミルタンク肉にバッフロン肉?
バスラオの煮付にサシカマスの塩焼き?
知らない料理ですねえ。
ちなみに初期構想では機械に四種類のカセキ全部を放り込んで『ウオパッチルノラゴン』を作り出そうかと考えていましたが後半の流れを書いていたらもう書けねえな、と思いやめました。