ワイルドエリアに到着して早々ビークインの襲撃にあってしまった俺達だがソニアさんと力を合わせて何とか切り抜けることに成功した。
キャンプで一夜を明かした俺たちはエンジンシティに向けて移動を始めていたが、如何せんまだ朝の6時少し過ぎだ。
「ふぁ…眠いね」
「そうね、いつもならまだベッドでごろごろしてた時間なのよね」
「わたしも…久しぶりのキャンプでちょっと鈍ってるかも」
「みんな情けないぞ!そんなことじゃチャンピオンにはなれないぞ!」
一昨日まではまだ自室のベッドでごろごろしていた時間だというのにホップの元気の良さは変わらない。思い返してみれば彼は毎日町を駆け回っていた気がする。
「あのホップの元気の良さの秘密を知りたい」
「毎日よく食べて、よく遊んで、よく寝てるからでしょ。あいつの生活スタイル昔からあんまり変わってないわよ」
「大人になるとちょっと眩しいわねあの子」
一人元気よくしているホップと俺たちの温度差がすごい。
しかしそこはまだ俺達も十代(ソニアさんを除く)、初めて見るワイルドエリアの光景を見るたびに興奮で眠気は冴えていった。
しばらく湖沿いを歩いていくと大きな橋が架かっている、おそらくあれが昨日ソニアさんの言っていた湖を渡るための橋なのだろう。
橋から見る湖の水はとても澄んでいて遠くのポケモンの姿を確認もすることができる。図鑑を使えば沢山のポケモンを知ることができる。
「お、あれはギャラドスだな。本物はでっかいな」
「あそこを飛んでるのは…ペリッパーだって、口大きいね」
「見てみて!あそこにいるのウパーよ!可愛くない!?」
「「あんまり」」
「あんたたち目ん玉腐ってるんじゃないの!?」
「ひぃ、理不尽!」
「あ、でもよく見れば可愛いかも。目のとことか」
「でしょでしょ!あたし捕まえてくるからちょっと待ってなさい!」
その後腕まくりをしながら湖に飛び込もうとしたユウリを何とかその場にとどめることに成功し、ついでにウパーがユウリの手持ちに入った。現在そのウパーの体にほおずりしているユウリを俺たちは息を切らしながら見つめる。
「はぁ、はぁ、何とかなったね」
「あぁ、メッソンが陸地近くまでウパーを追い詰めてくれたおかげだぞ」
「あぁ、可愛いわねウパちゃん。このぬぼーっとした目とかヌルヌルの体とか超可愛いわ」
「ウパ?」
捕まえるまでの手順はこうだ。
まず橋の上からメッソンを泳がせウパーを向こう岸まで誘導する、岸近くまで接近したウパーをサルノリが追い詰め、そして捕獲した。ちなみに一番大変だったのは湖に飛び込もうとしたユウリを力づくで止めたことだ、ホップと二人がかりでようやく互角というところにユウリのスペックの高さを実感する。
ウパーを捕まえてからは特に特筆すべきこともなくエンジンシティまでの道のりを歩いた。ソニアさんの言った通りまっすぐ進んでいったよりも早くエンジンシティに着くことができそうだと思っていると少し先の方角から突如として赤い光が空に上がる。
「なんだあの光!」
「行ってみましょ!」
光の立ち上がる場所まで走って向かったがすぐに光は途絶えてしまった。なんとか光の立っていた場所についてみるとポケモンとトレーナーが気絶していたので近くの木陰まで運んで話を聞いた。聞いてみるとどうやら野生のポケモンと戦っていると突如としてポケモンが巨大化し、そのまま自分もろともポケモンに蹂躙されてしまったらしい。
「巨大化って、まさか」
「ああ、ダイマックスのことだな!」
「ええ、ここワイルドエリアにはいくつかパワースポットといわれる場所が存在してね、そこにいる野生のポケモンがダイマックスする現象があるのよ」
ソニアさんの話によると本来ならばダイマックスには『ねがいぼし』と『パワースポット』二つの存在が必要不可欠だが、極稀にパワースポット近くに住んでいる野生のポケモンがダイマックスをしてしまうという現象が起こるらしい。いくつか事例が存在するが『ねがいぼし』なしでダイマックスするのか未だに謎らしい。
「ダイマックスする野生のポケモンか、俺ワクワクしてきたぞ!」
「ダイマックスしたポケモンは本当に危険よ、普通のポケモンとは比べ物にならないくらい強いのをわかってるの?」
「俺達にだってダイマックスバンドがある、こっちもダイマックスして対抗するんだぞ」
そういうとホップは腕に巻かれたダイマックスバンドを掲げる。確かにいまだ未知数な力だがこのバンドがあれば対抗することは可能だろう。
「はぁ、そういう考えなしなところがほんとダンデ君そっくり…」
「そうか、ありがとな!」
「褒めてないし…」
その後ダイマックスしたらしきポケモンを捜索したが見つけることはできなかった。
聞いた話では小さな鳥ポケモンだったらしいがダイマックスしたその身の丈は数十メートルにも大きくなったという、この広い平原にそのサイズのポケモンが立っていれば遠目からでもわかる。見つけられないということはもう元に戻ってしまったのだろう。
「とにかく、見つからないのならしょうがないわ。今はとにかくエンジンシティに急ぎましょ」
「仕方ないですね、登録も済ませないといけませんし」
「ちぇ~、ダイマックスしたポケモン見たかったのにな」
「ぐずぐず言わないの、ほら歩いた歩いた」
ホップは渋々といった態度でダイマックス跡地を後にする、本音を言えば俺も興味はあったがまずはエンジンシティに向かうのが先決だろう。
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ワイルドエリアは広大だ、文字通り地平線の先まで見渡すことができる。
そんなワイルドエリアと比べてみてもこの階段は大きすぎる。
「で、でかい!」
「はい、ここがエンジンシティ名物別名『心臓破りの階段』よ」
「ここ上るの大変なんだよな」
「どうもワイルドエリアから簡単にポケモンが入ってこられないように作られたらしいわね」
エンジンシティの入り口にまでついにたどり着いた。遠目からでさえその大きさは感じていたが近くで見ると二回りほど大きく感じる。確かに入り口には見上げるほどの大きな階段、その階段から左右に広がる壁は城壁ともいえる厚さと幅を持つ。人間の技術の神秘を感じた、科学の力ってスゲー!
「ほらー、アカツキー、置いて行っちゃうわよ」
「ごめん待ってよ」
感動していた俺を尻目に他のみんなは既に階段を上り始めていた、しかも既にかなり上まで登っている。そうして遅れて階段に足を踏み入れようとした瞬間突然吹き付けるような風が階段を叩きつける。
「ちょ、危ないわね」
「危うく階段踏み外しそうになったぞ」
「あーもー、まとめた髪が」
三者三様、ユウリはスカートを抑え、ホップは転びそうになったことで階段にしがみつき、ソニアさんは風で崩れた髪を直している。
風が吹いてきたのはエンジンシティのちょうど真正面、そちらを振り向くと空に向かって伸びる赤い光が見えた。
「こ、これって」
『ポォォォォォポォォォォ』
光の中から一匹のポケモンが現れる。見た目は確かに鳥ポケモン、ただしそのサイズが明らかに異常だ。
身の丈は十メートルを軽く越え二十メートルに届いているかどうかといったところ。羽ばたくだけで暴風を生み、周囲の木から木の葉が根こそぎ吹き飛ばされている。
暴風でカメラをあわせるのに苦労したがなんとかポケモン図鑑で捉えることに成功する。
「マメパト…体長は、0.3メートル?嘘つけ!」
現れたポケモンはマメパト、図鑑では平均的な体長は0.3メートルと書いてあるが見ての通り比べ物にならない。単純計算で70倍近い誤差などありえない。
「となると、こいつがさっき現れたダイマックスしたってポケモンか!」
先ほど聞いた鳥のポケモンという話からおそらくビンゴであろう。何とかしたいが巨大化したマメパトの起こす暴風に踏ん張るだけで精いっぱいだ。
「うぉぉ!すごいぞ!ダイマックスしたマメパトなんて初めて見たぞ!」
「言ってる場合じゃないでしょ!このままじゃ階段から落ちちゃうわよ!」
階段の上からホップの喜ぶ声とユウリの絶叫が聞こえてくる。たしかにこの状況では階段を上る三人の身が危ない、と考えているとソニアさんが暴風に負けないほどの大きな声で話しかけてきた。
「アカツキ!私たちは下に行けないわ!だからあんたがポケモンをダイマックスさせなさい!」
「無茶ですよ!俺ダイマックスなんてしたことありません!」
「いい!?よく聞きなさい!」
「ダイマックスしてるってことはここら一帯がパワースポットになってるの!時が来ればダイマックスバンドに力がたまって輝きだすからそうしたら「あ、なんか光ってきました!」それよ!あとはポケモンを一度出してからモンスターボールに戻せばなんとかなるわ!」
腕のダイマックスバンドが赤く光りだしたのでソニアさんの言う通り一度ポケモンを出す。
「頼んだ!メッソン!」
「メッソ……メソ!?」
流石にメッソンも目の前の巨大なマメパトに驚いたのか声を裏返らせている。振り向いたメッソンが「あれは無理」と訴えかけている、バトルに関しては血の気の多い相棒が既に涙目だ。
ダイマックスバンドの光がさらに強くなる、俺にもわかるほどのなにか大きな力が集まっていくことを感じる。
「メッソン!俺を信じろ!」
ダイマックスバンドをつけた右腕が光る。メッソンをボールに戻すと、バンドに集められたエネルギーのすべてがモンスターボールへと集まっていく。すべての力がモンスターボールに移行すると野球ボールサイズだったモンスターボールが両手でやっと支えられるほど大きくなる、体をぐらつかせながらなんとかモンスターボールを投げだした。
『メッェェェェソォォォォォ!!!!』
巨大化したボールから現れたメッソンが大きくなっていく、ついにはあの巨大だったマメパトと並ぶほどに大きくなった。大きくなった相棒に見惚れていると相手も敵の出現に警戒したのか巨大化した翼を広げて威嚇の意志を示すとすぐさまその翼を振り下ろした。
「うををぉおぉぉ!??」
先ほどまで吹いていた風がそよ風だったといわんばかりの竜巻が発生する。この時の俺は知る由もなかったが『ダイジェット』といわれる飛行タイプのダイマックス技だ。
背後の俺たちを守ろうとしたのかメッソンはその竜巻を正面から受け止める。ガリガリと嫌な音を立てるがなんとかその竜巻を受け止めた。
「えっと、えっと、これか。メッソン、『ダイアタック』!」
『メェェェソォォォ!!!』
ダイマックスしたメッソンが地面を殴りつけた瞬間、こぶしから打ち付けられたエネルギーが地面を通りマメパトの真下から放出された。
ダイマックスしたポケモンは通常の技を使えなくなる代わりにその溢れるエネルギーによって『ダイマックス技』という専用の技が使えるようになる。今の技はノーマル技が変化した『ダイアタック』だ。
その威力にたまらずマメパトが羽を広げて離脱する。明確な威力がわからないがかなりの痛手を与えたはずだ。
「よし、もう一発『ダイアタック』だ!」
殴りつけた地面からさらにエネルギーが放たれる。巨大化したマメパトに再度エネルギーが直撃し爆発を起こす。
「やったか!」
そんな俺の予想を裏切るよかのように爆風から無傷のマメパトが現れる。
『ダイウォール』、あらゆる攻撃を弾く無敵のバリアだ。直後、硬直しているメッソンに向けて放たれた『ダイジェット』が直撃する。先ほどのように腕で受け止めた時とは違い、体の真ん中を捉えた『ダイジェット』はメッソンの体を削り取る。
竜巻が収まるとメッソンはその場に倒れこむ、衝撃が地面を通り足元が揺れる。マメパトも満身創痍だがメッソンも戦闘不能直前、あと一度技を使うだけで精いっぱいだ。。
図鑑を確認し、残った技を確認する。見上げるとメッソンもこちらを見据えていた。
「……いけるか?」
『メェェソォォォォォ!』
大きくなってもその闘志に変わりは無かった。さすが俺の相棒だ。
「よし、これに全てをかけるぞ『ダイストリーム』!」
メッソンの口が最大限にまで開かれる。集められたエネルギーは水へと変換され放出される。『げきりゅう』で強化された『みずでっぽう』や『みずのはどう』すらも軽く上回る勢いと水量だ。
『ダイストリーム』を避けようとしたマメパトだが『ダイウォール』から立て続けに『ダイジェット』を使った反動がきたのか動けないでいた。
「いけぇぇぇぇ!!!」
あらゆるものを流し飛ばす激流に飲み込まれたマメパトがその姿を消す。激流が収まった後には雨が降り注ぐ。
水たまりに一匹の鳥ポケモンが落ちる。激流にもまれ、すべてのエネルギーを使い果たし傷だらけになったマメパトだった。
俺は静かにモンスターボールを取り出すと投げずに直接、触れるようにボールを当てる。抵抗することなくマメパトはボールに吸い込まれる。カチ、カチ、と手の中で震えたボールがその動きを止める。
「ゲット、だな」
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その後いつの間にか元に戻っていたメッソンをボールに戻して階段をかけ上りエンジンシティのポケモンセンターに駆け込んだ。
メッソンもマメパトも大きく負傷しているものの安静にすればすぐに良くなるといわれて安堵の息を吐く。
「アカツキ、お疲れ様だぞ」
「ホップ…」
「お前もメッソンもすごくかっこよかったぞ」
「…ダイマックス同士の勝負って思った以上に大変だね」
「ああ、俺もソニアの言ってたこと理解したぞ」
『ダイマックスしたポケモンは本当に危険よ、普通のポケモンとは比べ物にならないくらい強いのをわかってるの?』
思い出す。たしかにあの大きさと強さは普通じゃない、自分の想像を大きく上回っていた戦いが今も瞼に焼き付いている。
「……よし、決めた!」
「どうした?」
「俺さ、もっともっとダイマックスをちゃんと極めたくなったよ。どんな力も使い手次第、俺がもっとうまく使えるようになればメッソンみたいに傷だらけにしなくてすむからね」
「そうだな、俺もウールーとヒバニーをもっと楽に勝たせてあげるようにならないとな!」
二人で待合室のソファから立ち上がりユウリとソニアさんの元へと向かう。
自分の半身たる相棒のためにもっとすごいトレーナーになろう、今はただそれだけを考えて強くなろう。
『ジムチャレンジ』開催まで、あと4日。
う、うーん。
一日筆をおいただけで最初書き方がわからなくなった。物書きって大変ですね。