ふと、思いついた百合。 作:FM
「話?」
「そう。話があるの。」
私の目の前で本を読んでいる彼女はきょとんとした顔でこちらを見つめている。
「どれくらいかかるの?」
「…椿の対応次第」
「んー、ちょっと待って。」
ちゅーと紙パックのジュースを飲み干す。そういえばこのリンゴジュースばかり彼女は飲んでいるような気がする。
「よし。で、話って?」
森本椿。私の初恋の相手でもあり、現在片思い中の相手である。
「椿って…恋人っているの…?」
そう。普段なら絶対この質問はしない。こんな事をする理由は唯一つだ。
先週の日曜。私は彼女が知らない男と仲良く話ながら歩いているところを見てしまった。
「どうしたの?夢月。いきなりそんなこと…。」
「その…気になって…。」
しまった。焦りすぎて返答を考えていなかった。
心臓の鼓動は見る見るうちに高まってゆく。
「…夢月ならいいかな。」
「何を」と言おうとしたが彼女はそのまま言葉を続けた。
「私ね。この前彼氏できたんだ。」
恐らく椿はいくつか言葉を連ねただろう…が私は何も考えられなかった。
…心の中で彼女ならそんなことはないと信じていた。いや信じようとして背けていた。
こんな事なら聞かなければよかった。カタオモイのままでよかった。
シツレンに成りたくなかった。
「…つき?夢月!」
「あっ…。」
「そんなに私に先越されるの悔しかったの?」
恋したい年ごろだもんねと椿は続ける。
…椿に私の思いを伝えたことはない。ひた隠しにしてきた。
椿は私が先に彼氏を作れなくて悔しい、そう考えているのだろう。
彼女は私に向かって微笑んだ。その微笑みが…私にはたまらなく辛かった。
ああ。なんでだろう。椿の良さを一番身近に感じてきたのは誰だったのだろうか。
彼女の良さすべてをなんのフィルターもなしに感じていたのは…私じゃないか。
そもそもできて当然と言っていい。森本椿はその辺のどの女よりもかわいらしく、優しく、面白く、そして…。
「ちょ、ちょっと夢月!?大丈夫?」
「え?」
何か心配されるようなことを無意識下にしていただろうか。
「…ごめん。何も相談しなくて。私…泣くほどだとは思わなくて。」
泣くほど…? 頬にあてた手は流れていた涙をせき止めた。
知らず知らずに泣いていた。
「い、いやこっちこそ。ごめん…じゃないね。おめでとう。つ…」
椿の名前を呼ぶことすら、なぜだかできなかった。
「…ありがとう。夢月」
と、同時にチャイムが鳴る。時計の針は五時を差していた。
「ごめん夢月!今日は用事あるんだ。」
そういって彼女は帰りの支度を始める。
「…そう。じゃあね。私は…まだ残ってるよ。」
少なくともこの気持ちを落ち着かせねば自転車事故でも起こしかねない。
「じゃあね。また明日!」
教室から出ていく彼女の姿を私は唯、茫然と見ていることしかできなかった。
森本椿…最近彼氏ができたらしい17歳のJK。身長はたかめの162cm。胸はあるほう。夢月とは小学生から幼馴染の関係。周りから大人っぽいとよく言われる。
橘夢月…椿に昔から片思いしてる17歳のJK。身長は低めの154cm。ぺちゃぱい。