経緯はどうあれ、戦争に参加することを転移した全員が決意してしまったため、戦う技術を学ばなければならない。イシュタル曰く俺たちはチートらしいのだが平和ボケした日本人ではどう頑張っても戦えない。
しかしその辺の事情は織り込み済みらしく、聖教教会本山のある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】に受け入れ態勢があるらしい。それならなぜハイリヒ王国に召喚しなかったのか疑問だが何か理由があるのだろうか?
ともかく神山を下山しハイリヒ王国に行くために、俺たちはしばらく歩いて聖教教会の正面門にやってきた。
凱旋門もかくやというような、無駄に荘厳な門をくぐり辺りを見回すと、そこには雲海が広がっていた。
雲海が見える高度にいるにもかかわらず、何の違和感もなく過ごしていたのである。普通なら気圧の変化でいろんな症状が出るものだが、そういったものがないところを見ると、霊術的な力が働いているのだろうか。なんにしろ平地に召喚すればそういう術を使う必要もなかったのでは?とさらに疑問が膨れた。
しばらく歩くと、イシュタルに促され柵に囲まれた円形の大きな台座に乗らされた。台座には所謂魔法陣と呼ばれるような模様が描かれていてみんなはきょろきょろと魔法陣を覗き、ファンタジーに胸を躍らせているようだった。
そしてイシュタルが何やら呪文のようなものを唱えると霊力がはじけ、まるでロープウェイのように丸い台座が動き出した。
霊力に働きかけるのに言葉を要するのを見ると、この世界の魔法というのは宗教に近いものなのかもしれない。
そんなことを考えていると雲海を抜け、都市が見て取れた。おそらくあれがハイリヒ王国なのだろう。
♦♢♦
そのあと、国王に謁見したり、晩餐会があったりしたのだが、正直大して地球との差異はなかったのでつまらなかった。だが少なくとも、国王よりも、教皇のほうが権力があるらしかった。
そして今、俺は各自に1室ずつ与えられた部屋で今日会ったことの整理と同時に、お守りの勾玉に霊力を込めて鉏比売を呼んでいた
「来ない…」
のだが、かれこれ30分近くも勾玉に霊力を込め続けているというのに一向に来る気配がない。一度海に落ちた時などは、霊力を込めた瞬間すっ飛んできたのだが、流石に異世界ともなるとなかなか来れるものでもないのだろうか。
「はぁ…」
溜息を一つこぼし、やけくそ気味に霊力を流した瞬間、勾玉は閃光を放って砕け散った。
「っ!」
閃光は一瞬で収まり、思わず投げてしまった勾玉はなくなったが、そこには美しい女性が立っていた。
「驚きすぎですよ、龍也。」
「いきなり勾玉が砕けたら驚くだろうが…」
「まったく、たったあれだけの光で怯むようではまだまだ修行が必要ですね。」
まるで弓道着のような和服と長く伸びた黒髪、そして白崎がかすんでしまうほどに美しい顔立ちをした、女神。胸鉏比売が笑顔で俺を真正面から見つめていた。
「…へいへい」
「まあそれはともかく、今朝ぶりですね。今日は異世界まで旅行ですか?」
「唐突だったからどうしようもなかったんだよ。というかL〇NE送っただろうが。」
「学校には来るなといったのは龍也です。ついでに言うと、文面で"やばいすごい霊気"、といわれてもわかりません。それだけの情報じゃ対処のしようがありませんし、そのあとすぐに転移してしまったので本当にどうしようもありませんでした」
ぐうの音も出なかった。
「…確かにそういわれると何も言えないけど。連絡というか、念話できなかったのか?」
「30分前に勾玉に霊力が入るまであなたのいる世界がどこかすらわからなかったんですよ?何かあったらすぐに勾玉を触れと言いましたよね。」
「それは、唐突だったから考えつかなかっただけというか。場所わかったら念話できるんだったらさっさと念話しろよ。そしたら俺も驚かなくて済んだのに」
「それは、その…場所が分かって安心したら泣いてしまったというか……ま、まあ、そんなことはいいんです。」
「泣くほど会いたかったんだ。」
「あ、当たり前です!一日ずっと反応がないから死んでしまったかと思って焦ってたんですからね!」
「そんなに心配してくれてたんだ。」
「それは、まあ、一応、あなたの恋人ですし、心配ぐらいしますもん」
「こほん、とりあえずは現状の説明をしてもらってもいいですか?」
「えーと、魔人とか亜人ってのが人間のほかにいて、人間は今魔人と大戦争中。そんで魔人が強かったんだけど数が少なくて、人間のほうが多かったから拮抗してた。
でも魔人が魔物を使役し始めたんで数的有利が無くなって人間大ピンチ、まずいから上位の世界から強いやつ呼ぼうってなって俺のクラスがほぼ全員転移。でいろいろあって、不本意ながら戦争に参加することが決まったとこ。」
「なるほど。テンプレっぽい感じですね。」
「え、ラノベ読んでるの?」
「あなたの買った本を多少。」
なんか以外だ
「そんなことより、神はいましたか?」
「今のところは確認できてない。けど宗教があった。一神教みたいだったから、あんまり気にしなくていいと思う。ついでに言うと、異世界召喚もその神様の仕業って言ってたけど、霊気を使ってたから召喚自体は人間がやったことだろうね。」
「まあ一神教の神はただの傍観者ですからね。ただ一神教の宗教の信者は面倒なのが多いのであまり関わりたくないですね。」
「でも人間の大体が聖教教会、さっき言ってた宗教の信者らしいから関わらないわけにはいかなそうだけどね。」
「うーん、それは面倒ですね…。まあでも選択肢は3つですね。戦争に参加するか、すぐに帰るか、観光するか。」
「戦争に参加しないか、だろ。観光って言うな」
「でも参加しないってなるとそれぐらいしかやることないですよ?」
「それはそうだけどさ……まあ選択肢は戦争に参加する、だな。いくらこの世界じゃ強いからといって高々日本の高校生が戦争に参加したところで犬死がせいぜいだろ。」
「素直じゃないですね。」
「うっせ。まあともかく、方針としては戦争に参加して一人でも多く死者を減らす、だな。」
「了解です。あと、ここまで霊気を使うことに慣れている人間がいると私が見られてしまう可能性があるんですけど…どうします?」
「そうなのか。うーん、クラスメイトもいるし、念には念を入れて隠れてろ。またみられると面倒くさそうだ。」
「そうですね。もうあんなのはころごりです。」
普通の人間は、神様を見ることはできない。だが神格を落とせば人間でも見ることができるのだ。一度だけ、神格を落として鉏比売とデートをしたのだが、何せ鉏比売が美人だったためいろいろと面倒ごとが起きたのだ。それ以来、デートはしていない。
「まあ方針も決まったし寝るとするか。ベットはシングルだから狭いけど、まあいいか。」
「いつもより狭い程度ですし、問題ないでしょう。今日はしますか?」
「疲れたから寝よう。明日もいろいろあるだろうし。」
「わかりました。またしてくださいね?」
「一昨日したじゃん…お休み」
「ふふふ、はい、おやすみなさい」
♦♢♦
翌日から座学と訓練が始まった。鉏比売は自室に待機させている。
招集された訓練場に全員が集まるとスマホよりも少し大きいぐらいの銀色のプレートを渡された。
プレートを観察していると、訓練を指導してくれるという騎士団長のメルド・ロギンスが説明を始めた。
「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?
プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。"ステータスオープン"と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とかは聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
聞きなれない単語に天之河が質問する
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたといわれている。」
ということはこの世界の魔法技術は衰退したということだろう。一神教の神は一度も地上には降りてこない。作るだけ作ってあとは観察するだけの傍観者が一神教なのでアーティファクトと呼ばれるものを作ることはできるということなんだろう。
「そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトといえば国宝になってるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな。」
なるほど、と頷き、指に針を刺し、魔法陣に血を擦り付けた。
すると魔法陣が一瞬だけ淡く輝き、表に数字が表示された。
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日碕 龍也 17歳 男 レベル:1
天職:神子
筋力:90
体力:80
耐性:50
俊敏:80
魔力:240
魔耐:180
技能:■■■■の寵愛[対軍戦闘時ステータス4倍][防衛戦時ステータス2倍][海上戦闘時ステータス1.2倍][航海術(風読み)(時化除け)(波読み)][隠密(気配遮断)(忍び足)(幻踏)][弓術(狙撃)(弓矢生成)(イメージ補正力上昇)(消費魔力減少)(高速生成)(纏魔)]・水属性適正・全属性耐性・弓術・魔力感知・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+魔力障壁]・高速魔力回復・格闘術・言語理解
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文字化けしていた。寵愛となると鉏比売以外の心当たりがないので、鉏比売の寵愛なんだろうが、なぜ文字化けしているのだろうか…
後で鉏比売に聞こうと決めていると、メルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか?説明するぞ?まず、最初に"レベル"があるだろう?それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示してると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力をすべて発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
つまり、レベルは成長率の割合で、ステータスが上がるからレベルが上がる、ということだ。ゲームのように経験値があるというわけではなさそうだ。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!
次に"天職"ってのがあるだろう? それは言うなれば"才能"だ。末尾にある"技能"と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
なるほど、では俺はどちらだろうか。神子ということは神に仕えるものなので、非戦系天職っぽいが
そんなことを考えているとメルド団長から更に説明がなされる
「あとは……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
訓練内容ぐらいなら自分で考えたり鉏比売に考えてもらったほうが効率的なのだが、まあいいだろうと思い報告しようとメルド団長に目をやると、天之河が報告をしていた。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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「ほ~、流石勇者様だな。レベル1にで既に3桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め!頼もしい限りだ!」
勇者という似合いの天職に納得しながらステータスを計算すると、合計600。俺の合計は720である。
更にいうと技能の数も段違いで俺のほうが多い。
あれ?神子強くね?
ステータスの合計値だけで言うと、アル〇ウスと600族的な差が生まれている。
驚きながらも報告の順番を待っていると、メルド団長がハジメのプレートを見て、なぜか笑顔のままかたまり、目を疑っていた。
そしてものすごく絶妙そうな顔をしてプレートをハジメに帰した。
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛冶職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れの悪いメルド団長をみてハジメを目の敵にしている男子たちがにやにやとしながら嗤っている。
そんな中、俺が勝手に子悪党4人組と呼んでいるハジメに突っかかる子悪党その1、檜山大介が声を張り上げた。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か?鍛冶職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しいんすか?」
「……いや、鍛冶職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前そんなんで戦えるわけ?」
「さぁ、やってみないと分からないな」
檜山も白崎を好いている筆頭で正直情けないこと極まりないと思うが高校生なんてこんなものだろう。
しかし、それよりも、わかってはいたが、クラスメイト達の愚かさに辟易する。
戦争に参加するというのに、全く持って危機感のない檜山にイライラしつつも、自制していたのだが檜山は、俺が思っていた何倍も子供で、愚かだった。
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボい分ステータスは高いんだよなぁ~~?」
メルド団長の表情から内容を察していたろうに、わざわざ執拗に聞く檜山。まったくもって外道のような性格をしている。さらに取り巻き三人がはやし立てる。
ハジメは諦めたような顔をして投げやりにプレートを渡した。
ハジメのプレートを見て、檜山は爆笑し、取り巻き三人も爆笑していた
「ぶっははは~、なんだこれ!完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」
「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
ここまで小学生のような子供じみた行動をされると、言っても意味がないことがわかる。なので、鉏比売に教えてもらった隠密歩行法でひっそりと、メルド団長に報告がてらにこの状況に収拾をつけることにした。
「メルド団長、」
「おわっ!どうした」
「見苦しいので事態を収拾します。ステータスを見たら声を出して下さい。」
「あ、ああ。わかった…」
「感謝します。」
そういってメルド団長にステータスプレートを見せた。
「んん?!」
そういってメルド団長は俺からステータスプレートを取り上げた。
「神子だと?!しかも寵愛を受けている?!しかしこれは……」
おそらくわざとではなく、素だろう。
思い通り、メルド団長に注目が行く。でも驚くの神子のほうなんだな。ステータスのほうに驚くと思ってた。
「どうしたんですか?」
八重樫が声を出し、子悪党4人組もハジメいびりをやめ、こちらを見た。
やはり八重樫は頭が回る。
「いや、龍也の天職と技能に驚いただけだ。龍也、見せてもいいか?」
やはりステータスを無断で公開するのはマナー違反だったようだ。
納得しながらうなずく
「いいですよ。」
「天職"神子"。持っているだけで教会で高い地位を頂けるだろう。十万人に一人、いるかいないかという貴重な天職だ…
しかも寵愛を受けている。なぜか名前は読めんが、かなりの量の技能が詰まっているようだ…」
「あの、そろそろいいですか?」
少し恥ずかしがるふりをしてステータスプレートを返してもらい、メルド団長に尋ねた。
「これって、聖教教会に見せたほうがいいですか?」
メルド団長は少し悩んでから答えた
「…いや、いい。お前達は違う世界から来たんだろう?高い地位に入ると帰りにくくなる。こいつが神子だということは秘密にしておいてくれ。みんなもステータスを勝手に公開するのはマナー違反なので注意するように。
では今日はこれで解散。明日も訓練がある。しっかり休めよ。」
どこか不自然に自分をかばって、そのまま話を切り上げると、メルド団長は訓練場を去っていった。
その後、少しだけクラスメイトに話しかけられたが、適当に受け流し、自室に戻った。
帰る途中でハジメにお辞儀をされたが、無視することにした。
会話文が書けない