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【オルクス大迷宮】
全百層からなるといわれる七大迷宮の一つである。階層が深まるにつれてモンスターの強さも上がっていく。
そして、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に人気がある。それは階層の深さによって、モンスターの強さを測りやすいからである。またモンスターの核である"魔石"が迷宮の外の物よりも良質なのだ。
魔石とは、いわば霊力の銅線のようなもので、質のいい魔石ほど抵抗のない銅線になるのだ。魔石は粉末状にするなどして魔法陣を作ると普通に描いたものより3倍以上強くなるという。
そして、良質な魔石を持っている魔物ほど、強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため霊力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。…のだが俺はなぜか詠唱なしで魔法が使える。しかし俺は魔石を持っていないので協力な魔物は霊力操作を持っているのでは?と推測している。気になるので魔物にステータスプレートを使ってみようと思っている。
閑話休題
俺たちはメルド団長率いる騎士団と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者たちのための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練に使う王国直営の宿屋に泊まり、明日から迷宮に挑戦する。
同室になったハジメと挨拶をし、返事も待たずにベッドに座る。訓練初日の夜に王国の宝物庫に入れておいた、愛弓、
十束剣の姿になった生之機弓を眺めてからもう一度弓に戻し、動作を確認しているとハジメに声をかけられた。
「ね、ねえ!なにそれ!」
…こんなに目がキラキラしてるハジメは初めて見た。
「…生之機弓。俺の愛弓」
言ってから気づく。愛弓と言ってしまった。
「変形する弓⁉剣⁉カッコいい‼」
興奮しているようでそこまで気にしてないらしかった。トータスにきてから一番焦ったかもしれない。
「弓にも剣にもなるって聞いてたからさ、試してみたかったんだよ。」
袋にしまうと残念そうな顔をされたが、これ以上失言をすると嫌なので無視して立ち上がる。
「トイレ行ってくる。触んなよ?」
そういって部屋を出る。
廊下で白崎とすれ違い、誰の部屋に行くのかと気になって振り返ると、ハジメと俺の部屋に入っていくではないか。
さっさと付き合えと思いながらもトイレにこもる。
(焦っったーーーーー…)
(別にばれてもどうってことないでしょう?)
(…確かに。でもなんにしろ説明が面倒だったし逃げてよかった。)
(なんでもいいですけどね。ともかく、整備ができたなら早く戻って寝てください。)
(わかってる。でも、ハジメと白崎がなんか話してたし、もうちょっと時間潰してからな)
(本当に、あの子たち好きですね…)
そのあと30分ぐらい時間潰してから戻ると、ハジメはもう寝ていたので俺もすぐに寝ることにした。
♢♦♢
次の日、俺たちは【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。
入口は以外にしっかりしていて、博物館の入場ゲートのような門があった。受付まであり、制服を着た女性が迷宮への出入りをチェックしている。
ここでステータスプレートをチェックして出入りを記録することで死亡者数を把握するらしい。
俺の天職がばれると面倒なことになると思いどうやって隠すか考えていたのだが、流石に勇者一行が来ることは伝達してあったらしく、メルド団長が受付の女性に一言いうとそのまま迷宮に入っていった。
迷宮の中は松明などの明かりがなくても先が見える程度に明るかった。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしい。
ぞろぞろと隊列を組んで進んでいると、広間に出た。警戒しながら壁の割れ目から大量の灰色の毛玉が出てきた。
気配でわかる。魔物だ。
すぐに弓を構え、技能で矢を作る。弓につがえ、弓弦を引きかけたところで鉏比売に止められる。
(訓練ですよ?あれくらいの魔物ならみんな倒せます。)
(確かに。反射的に構えちゃった)
弓をしまいながら話していると、メルド団長が声を上げた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
さて、天之河たちのお手並み拝見というところか。
天之河は純白に輝くバスターソード、"聖剣"を振るい、数体まとめて葬る。
剣筋は正直で、対人戦での本気の切り合いとなると駆け引きに劣るだろうが、ある程度はステータスで補えるだろう。まだ伸びしろはあるが、確かにリーダーになるに足る動きだった。
坂本は天職"拳士"に似合う立ち回りで拳撃をラットマンに浴びせるがやはり甘い。空手部らしいが、空手という武術は人間を殺すための技術なので魔物相手には微妙だが対人戦となると天之河にも劣らないだろう。
八重樫は侍というのが似合う、美しい太刀筋で魔物を切り伏せる。しかし彼女は剣道という道の技術だ。抜刀術などの技術もあるが、殺す、という点においては非効率といえる。
まあ、その技術はかなりの練度で、坂上と同じように、一騎討においてはかなり強いだろう。
数秒間の天之河たちが足止めをしている間に詠唱が響き、三人同時に魔法を放つ。螺旋状に渦巻く炎がラットマンを燃やしつくし、ラットマンは全滅した。
常套手段ともいえる作戦は見事なもので、火力も高く、殲滅力もある。個人個人の伸びしろはあるが、十分に戦力になるだろう。
あとは、人を殺す覚悟があるかだけが懸念材料だが、彼らが成長することを願うしかない。
「ああ、うん、よくやったぞ!次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ」
予想よりも天之河たちが強かったのか、苦笑いしながらメル団長が声をかける
「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収の念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」
なるほど、魔物と戦うときは魔石回収もあるか。オーバーキルに越したことはないと思っていたので認識を改めておかないと。
(どうだ?)
(うーん、まだまだですね。動きに無駄がありすぎます。魔法に関しては目も当てられないです。)
神様目線は大変手厳しい模様。もうちょっと甘くていいと思う。神様という種族は人間に求めるものが大きすぎる傾向がある。まじで、もうちょっと鍛錬優しくしてほしい。
それから交代で戦闘を繰り返し、順調に階層を下げていった。
俺はパーティーを組んでいないため、最初は騎士団の人がサポートに入ろうとしていたのだが、サポートに入る間もなく終わってしまうため、メルド団長は驚いていた。
そして、一流の冒険者かどうかを分けるといわれる、20階層にたどり着いた。
現在の最高到達点は65階層らしく、それも100年以上前の冒険者がなした異業だそうだ。
今は超一流は40階層、20階層まで降りれば十分に一流扱いだという。
皆がここまでかなりの速度で進軍できたのはチートと、騎士団員のおかげとしか言いようがない。
というのも、迷宮において一番恐ろしいのはトラップで、場合によっては死に直結することもある。
トラップの対策として"フェアスコープ"というものがあり、霊力の流れからトラップを感知するというものだ。迷宮のほとんどのトラップは霊力を使用したものなので、これを用いれば8割以上のトラップは発見できる。
とはいっても索敵範囲が狭くスムーズに進むには索敵範囲の選別をしなければならないので、結局は経験がものを言うということだ。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十階層で訓練して終了だ!気合入れろ!」
メルド団長の掛け声を上げる。しかし、幾人かの生徒は調子に乗っているようで、へらへらと雑談をしていた。
こういう油断がピンチを招くというのに気づくのはもう少し経験がいるだろう。
しばらく20階層を探索していると最奥の部屋にたどり着いた。
鍾乳石のようなつらら状の石が壁から飛び出したり、溶けていたりと複雑な地形をしていた。この先に階段があり、そこを降りると21階層にたどり着く。
そこまで行けば今日の実践訓練は終わる。あとは引き返すだけだ。
せり出した鍾乳石のせいで横に隊列が組めないため縦列になって進む。先頭に天之河たちが並びそこからカースト順に並んだ。
こんな時までカースト意識があることに若干恐怖を覚えながらも、最後尾に隊列を組んだ。
少し進んだところで戦闘の天之河たちとメルド団長が立ち止まる。どうやら魔物がいるらしい。
気配を探り、強さなのかを探る。
まだまだ弱い。手出しの必要はないだろうが念のため弓に手をかける。
「ロックマウントだ!腕に注意しろ!剛腕だ!」
メルド団長の声が響く。
坂上が人壁となり天之河と八重樫が取り囲もうとするが、足場が悪く取り囲めそうになかった。
するとロックマウントは後ろに下がって仰け反りながら大きく息を吸った。
直後、ロックマウントは多少の霊力と共に強烈な咆哮を発した。
あれが固有魔法の"威圧の咆哮"らしい。
天之河たちは怯んでしまい、ロックマウントに隙を与える。もちろんその隙を許すはずがなく、ロックマウントはステップをして横に飛び、傍らにあった岩を白崎たちに投げつける。怯んでいた前衛組の頭上を越えて白崎に迫る。
避けるスペースがないと判断した白崎たちは杖を構え、岩を迎撃しようと試みる。
しかし魔法を発動させようとした瞬間、岩が動いた。岩だと思っていたものはロックマウントだったのだ。
空中で回転し、両腕を開いて白崎に飛び込む。こころなしか鼻息も荒く、目も血走っているように見える。ルパンダイブさながらに突っ込んでいくゴリラ。
ここまで気持ち悪いと心の底から思ったのは初めてな気がする。
それを至近距離から見た白崎たちは相当に気持ち悪いだろう。
「こらこら、戦闘中に何やってる!」
メルド団長が慌てながらロックマウントを切り捨てる
白崎は謝るも、予想通り相当気持ち悪かったらしく顔が青褪めていた。
そんな表情を見て死への恐怖と勘違いしたのか、天之河がキレた。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
(龍也、相殺を。)
(了解…!)
あのバカ、あの霊力量はやばい。運が悪いと全滅する。というか鉏比売が注意したということは本当にまずい。崩落の可能性がかなりある。
考える。
縦に列を組んでいる。普通に矢を撃つことはできない。
考える。
矢を通す道は上か左右。壁から生え出た鍾乳石が邪魔なので上。
「万翔羽ばたき、」
考える。
落下を待つのでは速度が足りないので天井に反射させる。
威力を相殺するために霊力を放出する。
必要な構造は2つ、あとは技術次第。
「天へと至れ──」
弾力、調整、霊力を込める。矢はできた。あとは打つだけ
息を吸う。弦を引き絞る。天井を狙って、強く、強く、
「──"天翔閃"!」
撃つ
天之河が大上段から振り降ろした光を纏った聖剣は、その光が斬撃として放たれる。ものすごい霊力量を込められたその斬撃を止めるものはなくロックマウントを両断した
一方、俺の放った矢は狙い通り、比較的に平らな天井にあたった後、ロックマウントの少し奥に向けて進んでいった。
しかし、予想より少し奥にずれてしまった。
放たれた光の斬撃の少し奥で地面に矢が衝突し、霊力を放出する。斬撃の火力は4割程相殺したが、それでも止まらず、奥の壁にあたってひびを入れて消失した。
52点といったところか、予定通りにいけば完全に相殺できたはずだった。
(82点ぐらいでしょうか)
(…予想より点が高くてびっくりしてるよ。)
(現状の能力からすればこれくらいです。完全相殺は流石に難しいですからね。反射撃ちはまだまだ鍛錬が必要ですね。あと、龍也の狙い通りに成功したとしても完全相殺はできません。読みも甘いです。)
(そうか、まだ鍛錬が必要か…)
(でも、崩落を防げる程度にはなってるんです。もうちょっとですよ。)
(要求のレベルも高いと思うけどね。)
(いずれ半神になるんです。これくらいのことはできてもらわなければ)
(あ…はい。)
というか半神ってどうやってなるんだよ。
そんなふうに反省会をしていると、唐突に檜山の声が響いた。
「だったら俺達で回収しようぜ!」
どうやら希少な鉱石があったらしい
そう思って目をやると、確かにきれいな石だった。
大方、白崎が「キレイ」だとか、「素敵」なんて呟いたんだろう。
そう思っていると、鉏比売が焦ったように念話をしてくる
(止めてください。罠です)
「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」
メルド団長が慌てたよう叫んで注意するが、それでも檜山は聞こえないふりをしてひょいひょいと登っていく。
まずいと思い駆け出すが、それよりも早く檜山は鉱石にたどり着いた。
「団長、トラップです!」
騎士団員が警告をするが、時すでに遅し。檜山は声が届く前に鉱石に触れた。
瞬く間に魔法陣が部屋全体に広がり、輝きを増していく。
「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長の叫びもむなしく、部屋の中が純白の光に包まれる。
まるで召喚された日のようだった。だが、召喚された日のような浮遊感がない。
恐る恐る目を開けると、先ほどと同じい広間にいた。
しかしそこには、クラスメイトも、騎士団員もいなかった。
変形武器はロマン
オリ主も中二病なとこが出てしまった