カスミトアケボノ 緋月編   作:緋月霊斗

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第2話

「あー……疲れた……」

そう言って上着を脱ぎ捨て、薄いシャツ1枚になる天音。

「まだ簡単な護身用の魔術だからな?そんなんじゃ戦闘参加はいつになる事やら……」

呆れながら、霊斗が天音にタオルとスポーツドリンクを手渡す。

「それは霊君が火炎魔法使わせてくれないからじゃん」

「お前が使ったら周囲一体が消し炭になるだろう。仲間まで巻き込んでどうする」

そう言いながら、霊斗はソファに座る。

「むー……」

唸りながら隣に座った天音が腕を絡めてくる。

「おまっ!なにして!」

しっとり汗に濡れた肌の感触と、布1枚挟んでいるが、確かな弾力。

普段落ち着いていても、まだ齢18の霊斗には刺激が強い。

「訓練が終わって、疲れてる霊君にご褒美、だよ」

天音がそう言うと、その瞳が微かに光を放つ。

「やめ!お前っ!」

光を直視した霊斗の思考が鈍る。サキュバスの能力、催淫だ。

ちなみにこの能力は、自らが好意を寄せる異性にしか効果はないのだが、霊斗はそれを知らない。

「ほーら……素直になっちゃえ……」

天音の甘い声音に牙が疼く。

吸血衝動は、主に性欲によって発動する。

「くそっ……お前……」

抗い難い喉の乾き。思わず本能のまま動きそうになった時だった。

霊斗の携帯から警報の様な音がなる。

驚いた天音が能力の発動を止めたため、霊斗の身体が自由になる。

「緊急回線?なんだ……?」

霊斗が通話ボタンを押し、スピーカーモードにする。

「どうした?」

『お兄ちゃん?今、緊急で来た情報なんだけど、過激派が動き出したって』

「あの馬鹿共が……先走ったか」

『今神奈川に各地から集結してるみたい』

「地味に遠いな……まぁいい。すぐ向かう」

霊斗はそう言って電話を切る。切る直前に桃香が何か言っていたが、何か重要なことならもう一度かかってくるだろう。

「止めに行くんだよね」

「ああ。戸締りはしっかりしろよ?何があるかわからないんだからな」

天音にそう言って、霊斗は玄関に向かう。

そんな霊斗の袖を、天音が掴む。

「どうした?」

「闘う……んだよね?」

「場合によってはな。それより、急いで行かないとヤバい事になる。離してくれ」

霊斗がそう言うと、天音は霊斗に背中から抱きつく。

「訓練で魔力使ったんだから、補給してかないと……ね?」

抱きつく手が強くなる。それに合わせて、背中に当たる弾力が強くなる。

「お前……何言ってるかわかって……」

「わかってる。これまでだって何回かしたでしょ?」

「……あのなぁ、許嫁だからって無理にこんな事しなくてもーー」

「無理じゃない。霊君はさ、私が誰にでもこんな事すると思ってるの?」

天音の手が震えている。怒っているのか、泣いているのか。

「それは……」

「思わないなら、ちゃんと補給して行って。」

こうなった時の天音は何を言っても聞かない。

乱暴にならないように天音の手を解き、霊斗は天音を見る。

もちろん霊斗だって天音に好意を抱いているし、天音からの好意も気付いている。

だが、今は人間との戦争が始まるか否かの瀬戸際だ。

魔族の頂点に立つ緋月家当主として、色恋に現を抜かしている暇などない。

だが、今は魔力補給の為だ。許されるだろう。

霊斗は、自分納得させて、天音に言う。

「本当に良いんだな?」

「う、うん………」

深呼吸をして、天音の肩に手を置く。

そのまま天音の身体を引き寄せ、耳元で呟く。

「好きだ、天音」

「霊君……」

天音の返答を待たず、その首筋に牙を埋める。

痛かったのか、天音の肩が跳ねる。

しかし、吸血鬼の吸血には快楽効果がある。

段々と天音の吐息が甘いものになって行く。

必要分の血を吸い終わる直前、天音が霊斗の耳元で呟いた。

「私も、霊君が好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……勢いに任せて吸っちまうとは……」

「昔もそうだったじゃん。なんで今更自己嫌悪してんのさ」

天音の台詞に、その通りかと納得し、立ち上がる。

正直な所、吸血よりも勢いで告白したことの方が後悔しているのだが、事態は一刻を争うのだった。

「……行ってくる」

「行ってらっしゃい、気を付けて」

天音の言葉に頷き、霊斗は空間操作の魔術を発動した。

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