霊斗が目を閉じた次の瞬間、凄まじい轟音と共に、身体に掛かっていた重量が消えた。
霊斗は記憶を頼りに、入口の方へ飛び退く。
「どういう事だ……これ」
そこには部屋の扉に押し潰されたレインの姿があった。
「霊君!無事!?」
「天音?なんでお前がここに?」
「細かい事はいいから!早く逃げよう!」
天音はそう言って霊斗の手を引く。
「逃がさないよぉ……天音ちゃんも一緒に頂いちゃおうかなぁ……」
レインがまるでゾンビのようにゆらりと立ち上がる。
「ねぇあれ何!?」
「レインだな。なんかヤバいけど」
「レインちゃん!?本当に!?」
天音がレインを見て後ずさりする。
「残念ながら本当だ……とりあえず逃げるぞ」
霊斗はそう言って空間転移のゲートを開く。
「じゃあレイン、そっちは頼んだ。じゃあな」
「あっ!待てぇ!」
レインが駆け出すのと同時に、霊斗は天音を抱き上げてゲートに飛び込む。
無事ホテルから数十メートル離れた所に転移し、霊斗は息を吐く。
「ったく……レインのやつ、何考えてるんだ……」
そう呟き、自宅の方へ向けて歩き出す霊斗。
その霊斗の腕の中で天音が虫の鳴くような声をあげる。
「ね、ねぇ霊君……そろそろ降ろして欲しいかな……」
「ん?あぁ、悪い」
霊斗はそう言って天音を降ろす。
地に降りた天音は、霊斗に聞く。
「それで、霊君は一人でレインちゃんと会って何をしてたのかな」
「何って……アメリカの方の魔族が下手に日本に攻めて来ないように牽制してもらう為に話し合いをな」
霊斗はそう言って天音の頭を撫でる。
「恋愛感情で会いに行った訳じゃない。俺が好きなのは天音だけだから」
「そ、そっか……ありがと」
「おう。じゃあ帰ろうぜ」
霊斗は今度こそ自宅に向けて歩き出す。
その霊斗の腕に、天音が自身の腕を絡める。
「えへへ……大好きだよ、霊君」
「あぁ、俺もだ」
二人は家路についた。
夕食後、自室で霊斗が寛いでいると、部屋の扉がノックされる。
「どうした?」
「お兄ちゃん、今いい?」
「桃香か。いいぞ」
霊斗が答えると、桃香が扉を開けて入ってくる。
「ねぇ、お兄ちゃん。アレ、いいかな」
「アレか。今回周期が早くないか?」
「うん……」
桃香は申し訳なさそうに俯きながら、ベッドに座る。
「召喚獣の覚醒が近いのか……?何か感じるか?」
「よくわかんない……でも、すごく……欲しいの」
「そうか……まぁいいか。始めよう」
霊斗はそう言って服を脱ぐ。
上裸になった状態の霊斗の背に、桃香が手を回す。
その体勢のまま、桃香は霊斗の首筋に噛み付く。
「ん……んく……」
霊斗の首筋から夢中で血を吸う桃香。
数分そのまま吸い続け、口を離す桃香。
「もう大丈夫か?」
「うん、ありがとうお兄ちゃん」
桃香の返事を聞き、服を着る霊斗。
満足した桃香は軽い足取りで部屋を出ていく。
部屋の外から桃香の短い悲鳴と、階段を転げ落ちる音が聞こえた。
霊斗は苦笑し、部屋を出る。
「桃香、無事か?」
「う、うん……なんとか」
「そそっかしいやつだな。気をつけろよ」
「はーい……」
階段を降りた霊斗は、桃香の頭を撫で、リビングに向かう。
「今すごい音したけど」
ソファで寛いでいた蒼牙がそう言って霊斗を見る。
「桃香が階段から転げ落ちただけだ。気にすんな」
「ふーん……そうだ、俺今から召喚獣の訓練しに行くけど、兄さんも来る?」
蒼牙はそう言って立ち上がる。
「うーん……俺はいいかな。疲れたし、もう少ししたら寝る」
「そっか。じゃあ行ってくるよ」
「ああ、あんまり無理しないようにな」
「了解。おやすみ、兄さん」
蒼牙は肩を回しながら出ていった。
「さて、俺は寝るかな……ふぁ……」
欠伸をしながらキッチンに行き、水を一杯飲み干す。
コップを洗い、未だ涙目の桃香の頭をもう一度撫でてから、霊斗は自室に戻るのだった。