いつもとは違うけど、やる事は変わらない。
リバーストライクの後部座席に愛宕さんが座る。
海面に着水するまではいつもこうやって二人乗りをしている。
「んふふ~」
「ご機嫌ですね」
「ええ、久しぶりにこんなに一緒にいるんですもの」
「……そう、ですか」
愛宕さんの鼻歌と、風を切る音だけが聞こえる。
重桜内の整備された道を抜けて、海岸を抜ける。
「それじゃ、降りるわね」
「はい」
一度トライクを停車させる。
愛宕さんが座席から降りて、艦装を展開した。
……隼鷹と違い、砲を撃ちだす為の装置が両サイドに展開される。
隼鷹の物より、より重厚と言ったイメージだ。
「行きましょう」
愛宕さんが海の上を滑りだす。
俺も後に続いた。
「それにしても、イサムくんの力は……本当に便利ね」
「そんな事ないですよ。他の人たちからすれば地味ですよ、こんなの」
火を起こしたり、そんな力と比べるととても地味だ。
「でも、この力でイサムくんにしか出来ない事をしている。聞いたわよ、赤城から特命を受けてるって」
「ええ……この国を繋ぐ、大事な仕事です」
重桜という国が繋がれば……この国は、まだ生きていける。
「……ねぇ、イサムくん。貴方は……戦うのは悪い事だと思う?」
そんな時、愛宕さんがそう聞いてきた。
「……どうでしょうね。少なからず傷付く人が出ます。俺は……それが、嫌なんだと思います」
隼鷹や……勿論、愛宕さんが怪我をするのを見ているのは嫌だ。
俺に何の力も無いから。
「私達の敵の事、イサムくんは知ってるかしら」
「セイレーン、ですよね。養成学校で嫌ってほど聞かされましたよ」
「そうよ。……私たちは、それを倒す為に生まれた」
いつになく、真剣な顔をしている。
「セイレーンが倒せなければ……世界は終わり。それでも……躊躇う事、あるかしら」
「それ、は……」
「相手は人じゃないの」
「……愛宕さんは、それを俺に言ってどうしたいんですか?」
逃げ。
自分でも嫌になるくらいの逃げ腰。
「そう、ね……私は、今に向き合ってほしいかな」
「い、ま……?」
「イサムくんが頑張ってる、楽しんでるのはおねえさんも嬉しいわ。でも……もう少し、視野を広げてみても、良いんじゃないかなって」
「それは、俺に兵器輸送を受けろって事ですか」
「いいえ。でも、これから……戦争が激化すれば、そうも言ってられなくなる。その時、イサムくんが苦しまないよう……助言……なんてね」
「……考えてみます」
愛宕さんのいう事だし、無碍には出来ない。
結局これだって俺のエゴなんだ。
「うん、良い子ね」
「……子ども扱いは、やめてよ」
「ごめんね。でもイサムくんはもう弟みたいなものだもの」
「む、むぅ……」
小さいころから面倒を見てくれているから、そんな扱いなんだろうなぁ。
「……行きますよ」
「あ、スピード急に上げないでよ!」
その日、装置を設置して納品を完了し……愛宕さんが夕食を奢ってくれた。
俺の、考え……か。