「何してるんですか。今日は平日で、仕事の日ですよ」
ある日。
よくお参りに来ている重桜神社の階段に腰かけていた時。
体重を後ろに傾けて、後方を見上げる。
……黒のタイツに包まれた足と、長い、とても長い黒い髪。
「……能代」
「こんにちは、イサム。今日はどうしたんですか?サボりですか」
小ぶりな角が一対、額に生えている。
彼女もKAN-SENだ。
重桜海軍所属、阿賀野型軽巡洋艦2番艦……名は、能代。
数少ない友人の一人だ。
「能代こそ。今日出撃は?」
「最近はすこぶる平和ですよ」
「そっか……」
海から流れてくる風に目を細める。
この神社は、昔嫌なことがあったりしたらよく来ていた場所で……規模は大きくないが、地元の人々に愛されて支えられている場所だ。
ここにいると、何というか……大切にされている場所、と感じて心が安らぐ。
能代と初めて会ったのも、ここだ。
「訓練も勿論受けていますが……やはり、体が鈍る気がしてならないのです」
「ふぅん……」
あ、ちょっと嫌な予感。
「じゃあ、俺行くね」
「どうです、一戦付き合ってくれませんか?」
「そのセリフは俺の襟首掴んで動きを封じた上で言うセリフじゃないと思うんだ」
「どうです?一戦付き合ってくれる気になりましたか?」
「脅し?!」
「さぁさぁ剣を取ってください」
「何で常日頃から木刀2本持ってるの……?」
「知りませんでしたか?ここの神社木刀が常備してあるんですよ……ほら」
能代が指差す方を見ると、簡素な屋根が張られた小屋の下に木刀が物凄い数刺さっていた。
「えぇ……」
――――――――――
3時間後。
「ぐえっ」
「ここまでにしましょうか」
神社の境内を転がる。
もう何もかもどろどろである。
対する能代は涼しい顔して立っていた。
……あー、いや……薄っすらと汗はかいていたみたい。
「はぁ、はぁ……俺じゃ能代に勝てないって」
「分かりません。研鑽を積めば人間でもKAN-SENを凌駕できるかもしれませんよ」
「……現に俺は君から一本も取ってないじゃない」
「危うい一撃も多かったのもまた事実。強いですよ、貴方は」
立ち上がる。
もう膝もがくがくと笑っている。
「重桜軍の『狼』と呼ばれる御仁をご存知ですか?」
「狼?」
「ええ。何でも剣の腕前はKAN-SENをも凌ぐと」
「そんな人が居るんだ」
狼……聞いたことあるかな。
「イサムはもう少し足を使う事を意識した方が良いかもしれません。良い拳法を修めていますし」
「あー……意識しないとつい足出しちゃうんだよね」
「?何か問題でも?」
「女の子を蹴るのは気が引ける」
「………………」
能代が真顔で無言になった。
あれ、俺なんか間違った事言ったかな。
「……イサム、構えなさい」
「えっなんで」
「その甘ったれた性根を叩きなおします」
「いやいや待ってなんか悪い事言った!?」
「チェストォ!!」
「ぎゃっ!?!?!?!」
と、言う訳で能代登場です。
イサム君とよくチャンバラしてます。