休暇最終日。
俺はトライクの格納庫にやって来ていた。
……なんだかんだで整備は手を付けられていなかったからだ。
「よしよし、よく頑張ったな」
ちょっとずつ手入れしてやる。
油の匂い、実は嫌いではない。
本格的な整備は資格も技能も無い為出来ない。
「今日も精が出るな、イサム。休みなんだろ?」
「こんにちは、主任」
そこにやって来る主任。
そう言えばこの人は休んだりとかしているのだろうか。
「全く、配送が終わればちゃんと整備してるんだから休みくらいちゃんと休みやがれよ」
「明日から仕事に復帰するんです。支度みたいなもんですよ」
「真面目だな」
「それが取り柄なので」
「無理すんなよ……あー、それと」
主任が言いにくそうに頭を掻きながら言った。
「……KAN-SENのお嬢さん達に言っといてくれないか。あまりここに顔を出さないでくれって」
「それは……」
実は、隼鷹達はあまり輸送部門によく思われていない。
と言うより一方的に『こちら』が忌避しているだけだが。
一騎当千の力を持つ彼女達は……戦えない俺達からしてみれば、あまりに眩しい。
「……言っておきます」
「お前にはいっつも割食わせて悪いと思ってる。野郎共がすっかりビビっちまうからな」
個人的に、隼鷹や愛宕さんまでそんな風に思われているのははっきり言って理不尽を感じている。
でも、それも仕方の無い事かもしれない。
ここの人達は、ここで仕事する事をよく思っていないのだから。
「邪魔したな」
「いえ……」
主任が持ち場に戻って行く。
もうトライクの整備も終わりが近く、何となく手持ち無沙汰を感じていた。
「……帰ろう」
整備を終わらせ、道具を戻し、リバーストライクを格納庫に仕舞う。
ちょうどお昼時。
さて、どうしたものかな。
「イサム」
主任が戻って来た。
「どうしたんですか?」
「……外で嬢ちゃんが待ってる」
誰の事だろうかと少し思案したが、考えるまでも無かった。
俺の事を待っていてくれる女性は、一人しか居ないから。
「ありがとうございます」
「なぁイサム」
呼び止められた。
何だろうか。
「はい?」
「……無理、してねぇか?」
「えっ?いえ、そんな事は無いですよ。お休みもしっかり貰いましたし」
「そうじゃねぇよ。お前さんの勤勉さにゃ助かってるが、その努力は誰の為にするか、ちょっとは考えな。……悪いな、呼び止めて」
俺の努力は、誰の為……か。
「イサム!おかえりなさい!お昼食べに行かない?」
外に出ると、隼鷹が笑顔で駆け寄ってきた。
思わず苦笑した。
「駄目だよ隼鷹、KAN-SENがここまで来ちゃったら」
「?いつも来てるわ」
「……そう言えばそうだったね」
これは説得するの時間掛かりそうだ。
ふと、誰の為に努力しているのか……何となく、思い出した。
いつか、隼鷹に恩返ししたい。
「?どうしたの?イサム」
「何でも無いよ。何食べに行こうか」
やっぱり、面と向かって言うのは気恥ずかしいけど。